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表題作エディドヤ

年上に振り回される大学生 野瀬
隣に住んでいる謎のニート 篠田

その他の収録作品

  • バテシバ
  • アブサロムの沈黙
  • 二十三時
  • おまけのその後。

あらすじ

野瀬が住むアパートの隣の部屋に越してきた篠田という男。篠田は親から莫大な遺産を引き継ぎ、毎日同じ絵ばかりを描いて暮らしていた。彼は、自分の絵を「旧約聖書に登場する女、バテシバの絵」だという。(バテシバとは旧約聖書の英雄、ダビデに姦淫されてしまう女)しかし、目の前にあるのは、延々と続く風景画があるのみ………。男が見るこの風景の意味とは……?野瀬が感じるこの気持ちは、篠田への愛なのか………!?

作品情報

作品名
エディドヤ
著者
歩田川和果 
媒体
漫画(コミック)
出版社
メディエイション
レーベル
Hug comics
発売日
ISBN
9784870319097
3.8

(9)

(3)

萌々

(2)

(4)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
7
得点
35
評価数
9
平均
3.8 / 5
神率
33.3%

レビュー投稿数7

予想がつかない

表題作のシリーズ4作「バテシバ」「羊」「エディドヤ」「おまけのその後。」と、短編2作「アブサロムの沈黙」「二十三時」が収録されています。

表題作のシリーズが短編2作をはさんで展開されているので、短編の登場人物が、表題作のキャラなのかと邪推してしまいました(笑)

どれも、予想と違う展開でした。
私の脳でまずまず先が読め、ハッピーエンドと言い切れそうなのは、「二十三時」くらいでした。

「アブサロムの沈黙」は、好きな人に強姦されてしまい・・・はまだしも、勃起不全になってしまい、両思いだと分かってからも近づかれると吐きそうになる始末でビックリしました。

表題作は、ラストがいまいち曖昧で・・・。
篠田と千春は「聖家族」で暗示されてはいるけれど、幸せだとは限らないのでは?千春にはもう妻子がいたということはないのか?野瀬と次見は叶わない恋をずっと引きずっているようなので、二人が幸せな恋人同士になるのはどうなんだろう・・・とぐるぐる考え込んでしまいました。

ただ、明るくあっさりと描かれているので悲痛感はありません。
どこもかしこも丸くおさまってハッピーエンド!という作品ではありません。どの話も誰かしらフラれる人がいます。ですが、それが面白いとも感じます。勢いじゃなくゆっくりと読み進めるのがオススメだと思います。

1

途中から難しく考えるのを止めた。

旧約聖書が物語を読み解く鍵になる。
あらすじを読んで
それは分かっていたから、
少し構えてじっくり読んでいたのだけれど、
途中から、難しく考えるのを止めた。
結果、それでも涙は湧きあがって、
何とも言えないよいものを感じられたから
それでよかったと思った。


【旧約聖書】の話。
ダビデに姦淫され、身ごもる女バテシバ。
ダビデによって戦地に送られ
戦死するバテシバの夫ウリヤ。
【物語の舞台である現実】の話。
働かず「バテシバ」の絵を描き続ける篠田。
行方不明だという篠田の元恋人次見。
次見が好きで篠田との仲を裂いた井上。
その三人の過去を知ってしまう野瀬は
物語の新たなる人物のような主人公であり
キーパーソンである。

物語の進行と共に、
旧約聖書の記述が広げられて
それぞれが自分の気持ちと向き合うようになる。
読解しようと思いながら読んでいたけれど、
私はこの、篠田が絵を切り裂き、
野瀬と対話し進む決意をする夜は
難しく考えなくても感じられるシーンだった。
昔と向き合えずにいる男が、
背中を押されて決心をする話、
というだけでもあるし、
あまり複雑に考えずに
感じればいいのではないかな。

篠田が野瀬に伝えた「大好きだよ」は
野瀬が求めるものとは違ったけれども、
その夜の終りに後悔は無かったんだろう。
モノローグだけの2ページ。
地平線の上の言葉は野瀬。
モヤのかかったベタの上の言葉は多分篠田。
恋情としての気持ちではなくとも、
最後に交わした二人のキスはよかった…。
送られてきた絵ハガキで、
篠田の野瀬に対する特別な思いが感じられた。
バテシバが再び姿を現すという旧約聖書の内容が
最後にこう重なることも腑に落ちました。


野瀬と篠田は恋人同士になることはなかった。
それでもこれがバッドエンドだとは思わないし、
後味の悪さを感じることもなかった。
表題作シリーズだけの一冊でも
よかったんじゃないかという気持ちはあります。

聖書に明るくない方でも
感じられる作品だとは思いますが、
題材ゆえにどうしても小難しさはあるので
文系人向けだと思います。
行間を読むことに楽しみを見いだせる方のほうが
感じられる作品ではないでしょうか。
キスやその先も描写はあるにはあるけれど、
そこにあるのはキュンではない切なさ。
「萌えではなくツボ」系の作品なので
ラブコメやあまあまが条件という方には
オススメしない。
BL作品ではないのですが、
中村明日美子さんの『ウツボラ』が
好きな方は好きなんじゃないでしょうか。
同作品はサスペンスではないですけども、
読み解きたいと思わせるという点で
私はそう感じました。


私は絵画全般が好きなのですが、
作者の歩田川さんもそういうのを見るのが
お好きなのかな、と思ったり。
美術館が好きな方、アート作品が好きな方も
歩田川さんの感覚には共感を覚えるのでは。
あ!高校の授業で、
世界史の雑学的エピソードが好きだった方、
現国テスト問題の小説に
うっかり涙した経験のある方、
美術の授業では描かなくても
図録見るのが好きだった方、
これらに当てはまる方にも
ツボな作品だと思います。

1

エディドヤレビュー。

文系向けの作品。
人によっては小難しく感じるかもしれないが、その分奥が深かった。BL、それも漫画の場合はどんな話もある程度判り易さを考慮して描くモノだと思うのだけど、これはなんかそういう読者目線を考慮したポイントが独特だった。
小説とかじゃ、読者に考えさせたり伏線として忍ばせたり…ってのでよく見かける手法だけど絵で見せる漫画では難しいと思うんだ…。
そういう方面から見ると凄い作品だと思う。オマケに作風もアート系っていうの?個性派だと思う。

年下攻でした。
でも、なんか…。不思議な雰囲気の年下攻だった。聖書とか哲学とか、そういう方面に明るくない人でもベースは人と人の関係なのでなんとなくって感じで読み進められると思います。
もしかして…と、謎解きをする為に何度も読み返しました。読む度に、読後感が少しずつ変わっていく不思議な感じの作品。トントンっとした、ライトBLが読みたいという人には向きませんが、感受性の強い文系の人なら2倍楽しめる感じの作品です。

なんか、レビューするのも難しい作品なんだよなぁ。純文学っぽい要素もチラチラあるからコレはこういう作品ですって断言が出来ない。

2

私には向かないと思ったけど

レビューの評価は高いけど内容的に小難しそうなので読むのをためらってました

でも、読んでみたらそれほど聖書とか知らなくても(もっと言えば興味もてなくても)他の部分で楽しめたのでサラッと読めてしまった。ちゃんと人間同士の付き合いも描かれているのでボーイズラブとしても楽しめますXp[N2

それと、まず最初にこの本を読んでみたいと思ったのは、主人公が画家という設定だからなんですが、その部分もわりとしっかり描かれてて好きです。主人公は絵が下手だし、上手くなりたい欲もないけどただ毎日描き続けていますA[gXp[N2だけどそういう人こそ画家なんだと思いますよIただ描きたいから描くuIIv良いではないですかuIIvって……自分でもこだわるポイントズレている気もしますがFlこの作品は油絵描いてるってところが、やっぱ私にはポイントでした。

ところで、篠田が描いてる絵は100号だけど、木枠を家で組んでいる点、描いたらキャンバスは張り替える点(つまり絵を搬出入しない)に、これまたポイントズレてますが、共感しました。100号って下手したらワンルームのアパートのドアから出なさそうだし、100号を新しいの描くごとに木枠買ってたら、部屋が埋まっちゃう!と思ったのでFl


同時収録の「二十三時」も主人公が画廊の社員という設定だし、作者さんは絵画が好きな方なのかなHn[g

3

久しぶりに初読でドキドキ

個人的には神評価をつけたいところですが、
文学・哲学的で少し取っつきにくい部分があるのも否めないので萌に一票。
純文学嗜好の方にはおすすめです。逆に、純文学のにおいが苦手な人にはおすすめしません。

短編については先行のレビュアー様が紹介されていますので、表題作について、聖書の解釈を含めてレビュー書かせて頂きます。既読の方向けかも。

旧約聖書が手元にないので、情報がちょっと怪しいですがご了承願います。
表題作タイトル『エディドヤ』は『ソロモン』の別名で、主に愛された者、という意味のはず。
ソロモンは、ダビデが果たせなかった野望を次々と現実にしていく次代の王。
作中では(恐らく)バテシバ=篠田であり、ウリヤ=次見であり、ダビデ=井上。
バテシバが一度目の不貞を働いたのは本編以前。
そしてバテシバとダビデが2回目の邂逅を果たしたのと時をほぼ同じくして、主人公である野瀬と、篠田が打ち解けはじめる。
どうでしょう。タイミングから見て、野瀬の存在は、2人目の子供ソロモンに準えられているように見えませんか?
その後、己の罪を認めた井上は、篠田の背中を押すような行動を始める。
野瀬もまた篠田を止めることはできず、結局、最後はその背を押した。
篠田は次見を待っていたのではなく、地平線を超えたあちら側へ行く、その切っ掛けを欲していたにすぎなかった。
『存在が消えたかのようだったバテシバは その即位にまつわるエピソードで再び姿を現す  息子(ソロモン)の政敵を支援する者として』
……バテシバのその後について本編の中でも言及がありますが、これはラストにつながっているように思えました。
消えたかのようだった篠田は、最後に再び姿を現したんじゃないでしょうか。
名前のない絵葉書で、『恋敵』との安寧を報せるという形で……

以上、こじつけの混じった、独りよがりな見解でした。
こういう穿った考察をしたい方にはぜひおすすめしたい本、かもしれません。(笑)
もちろん聖書の考察など関係なく読んでも、じんわり感じ入るもののあるお話です。
私個人としては、絵も艶っぽいし、確りしたストーリー構成のできる作家さんだなあという印象を受けたので次回作以降がとても楽しみ。

3

kurokami

>久江羽さん

初めまして、コメントありがとうございます(^^)
私も専門家ではないので、あくまで表面上のことと想像での論にすぎませんが
少しでも参考になったのでしたら幸いです~。

聖書や神話からの引用を用いた作品は多いですが、
こういう愛憎の部分が大きくクローズアップされている作品は珍しいですよね。
英雄の活躍と没落~みたいな部分のほうがいじりやすいんでしょうね。
解釈が難しいぶん、ネタとして使うのにも勇気がいるのかも。

普段はこういう解釈とかあんまり考えずに読みたい派なんですが(笑)
たまには頭を悩ませながら読むのも良いですね。

久江羽

kurokamiさん はじめまして、こんばんは、
聖書物語の解説ありがとうございました。
聖書を引っ張り出してきたとしても、あの膨大なページ数ですから探せないだろうと思い、諦めていました。
子供の頃に、牧師さんのお話(聖書物語関係)が面白くて日曜学校通いをしていたのですが、
こんなに複雑な愛憎物語だと、子供の頃の日曜学校では習わなかったわけですよね。
参考になりました。

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