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表題作MO’SOME STING

浅黄圭治 ・ 王狐文
田貫将義 ・浅黄圭治

あらすじ

死にたがりの法律屋・田貫と、裏世界に片足突っ込んだ浅黄、微妙な友情の2人。浅黄の姪・十和子がヤクザに命を狙われ始めてから、彼らを巻き込んで命がけのゲームが始まった…! 要領よく生きてきた男たちが、一人の少女を守るためどんどんピュアになっていく──。
出版社より

作品情報

作品名
MO’SOME STING
著者
ヤマシタトモコ 
作画
ヤマシタトモコ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
リブレ
レーベル
ゼロコミックス【非BL】
発売日
ISBN
9784862636676
3.6

(27)

(12)

萌々

(1)

(8)

中立

(5)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
15
得点
93
評価数
27
平均
3.6 / 5
神率
44.4%

レビュー投稿数15

衝動、咆哮!

日常から切り離された世界へ連れていってくれる(でもちゃんと戻ってこれる絶妙な距離)、ヤマシタ先生が描く物語。

お気に入りの服を着ている日にアンラッキーな事が起こったり、大好きな曲が 必ずしも幸せな思い出と結び付いているわけではなかったり、人生って割と多くの「こんなはずじゃなかった…」が散りばめられている。それを「なんのこれしき!」と力強く踏み越えていける日もあれば、足踏み尻込みしてしまう時もある。
かと思えば、後が怖くなるような幸福が舞い込んできたり。
読みながらそんな事をぐるぐる考えていた。

十和子(16才)と 彼女を取り巻く少々難アリな大人たちの疾走感溢れるストーリー。
清らかな人間関係やスマートに生き抜く術なんかとは無縁に思える彼女や彼らが発する言葉が しばらく頭から離れてくれない。
恋愛色は薄いのだけれど ふいに挟まれる「そういう雰囲気」のセリフが効果的で、登場人物の心の動きを追うのが楽しい。

好き のベクトルの全くかみ合わない彼らだが、少しずつ見えてくる ラブみたいなもの。
あぁ、ラブの意味って人を好きになることだけじゃなかった。「生」への執着もラブだし 死ぬのにしがみついているのも、ある意味ラブと言えるのか。

十和子の 脆さを抱えていつつ、あくまで潔いソウルフルな人物像に対しては好感と共感しかない。
「いちばん大事なもの」が分かっている人って、とても強い。

読んでいると「これでいいんだ!」と、凄く救われた気分になる瞬間がある。その心地好さを味わいたくて、また最初に戻ってページを捲る。
そして、口絵のカッコよさが強く印象に残る作品でもある。

3

難しかったです

 いつも無力感の漂う田貫は、小さな法律相談所を経営しています。といってもこの相談所は、ヤクザがらみの相談所で、おおよそノーマルではありません。
浅黄の親戚筋にあたる十和子がかばんに詰められてやってくるのも、冒頭から訳ありな感じが漂います。

 結局は十和子は命を狙われているのですが、実はこのお話のどこにBLがあるのかよく分からなかったのです。
 
 もちろん、田貫と浅黄の間には恋心があったりもするのですが、生きることと死ぬこと、命がけで逃げることというテーマの方が前面に出ていた様に思います。

 最後に、心だけは暴力に屈しないという十和子の言葉が印象に残りました

0

死を望む事は悪なのか?

どいつもこいつも、相手を想っては一方通行で、絶望的に交わる事がない。
しかし生きることとは、とどのつまり愛である、と説かれた気持ちだけが残る。

BLジャンルだけれど、あらかさまに体を重ねるシーンは1つもない。
ホモです、バイです、ホリました、ハメ撮りしました。言葉だけで説明したり、そんな1カットがある位。

私は単純に、出てくる人間の苗字にアソビがあるのが好きだ。
今作は正にそうで、
【ヤクザでホモ・浅黄(サギ)】
【マゾの自殺志願者・田貫(タヌキ)】
【何にも無関心な保険屋・射立(イタチ)】
【オタクでバイでヤクザの息子の中国人・狐文(フーウェン)】
【全うに真面目に生きる女子高生・久末(クマ)十和子】。
主要人物だけかと思いきや、少しだけ出てくる、狐文のお付の名は【縮見(シジミ)】、女性弁護士の名は【久白(クジラ)】等々、隅っこの方まで徹底されていた。
何が好きって、サギが40超えたクタビレ風親父ヤクザでしかもホモ、メス嫌いなのに姪っ子は溺愛、という所。これは単なる私の好み(笑)


全体を通して、何が生なのか、それにどんな意味があるのか。
生きる先には何があるのか、今の思いは何なのか。
そんな事が万遍なくちりばめられている気がする。
暴力あり、流血あり、1コマでの台詞の長文が半端なかったり、割と殺伐とした雰囲気で空気が締まってる感じはあるけれど、どこかで必ず誰かのネジが外れている。

紅一点の十和子が一番強かったりもする。
狐文が、一番十和子の影響を受けた気がする。
冷血無関心な射立は十和子に惚れるし、彼女の伯父の浅黄は射立に「太もも見んな」と不快感を露わにする。
一番何も考えて居なさそうで一番十和子に興味があるのは田貫のような気もする。
生きる意味とは、とどのつまり愛なのだけれど、ここでは誰の愛も交わらない。
交わらないけれど、相手を思って心がクッと上がる感覚。それが少しでも続けばと願って前を向くのがいい。
ささやかな願いが、生きる活力になればいい。


――と、ここまで顔真っ赤っ赤なクサイ言葉を羅列しつつ、私の感想と言う名の愛を語らせて貰ったのだけれど、最後に。

「死にたがるお前は醜い」
「何もかも虚しくても生きるのが人間」
「ドキドキするのは生きている証拠」

ペシミストが結果主役に感じる。
私は、自ら経つ命が悪いとは思いません。
否定も肯定もしません。

神評価ですが、時折目が点になる事もあります。
深いとかそういうんじゃなく、こう、重たくなる。
浮上するきっかけを与えられたのも、生きている証を与える為だったりして。

きっともう1度読んでも、最後はずんと重たい感覚を味わうんでしょう。

3

死にたがりに捧ぐ!


「ーー久間さん 教えて きみは知ってるの
 ーーー生きる意味ってなに?」

「・・・ひたすら・・・・・真面目に・・・
 ずるをしないで全うした最後にとうとうわかるんだと思ってる・・・・・」

死にたがりには少し苦しい話です。
漫画読んでこんな何とも言えない感情になったのは初めてでした。

王狐文がすごく素敵でした。
人を支配しながらも、父親という絶対的恐怖に支配されている。
サギが好きで好きで仕方なくて
手に入れるためなら全てを利用してやるって。
自分のくだらん人生に光を見つけるために。
私にはすごく人間らしくて美しくみえました。

みんながみんなに惹かれあっている関係性もいいなと。是非。

0

生きる意味を知りたいか?

どいつもこいつも一癖ある登場人物を各章でメインとしつつ、
この中で一番まっとうなヒーローにしてヒロインの女子高生、
十和子を中心に一同が入り乱れる群像劇でもあります。
裏社会で生きる男達の、暴力と諦めと
ままならない想いにもがく姿と息をもつかせぬ展開に引き込まれました。

ヤクザでホモの浅黄は死にたがりの田貫が好きで
歪んだ執着心を持つ王は浅黄が好きで、
平凡な保険屋の射立は田貫が嫌い。
誰一人として互いの気持ちが噛み合わなくて振り回される中、
身一つで理不尽に立ち向かう十和子の肝っ玉には惚れ惚れします。

死にたくないのに命を狙われる彼女が言い放つ言葉は、
ともすると青臭くて赤面モノなのに、
ハイテンションな展開と変人どものお陰で、
そのストレートさが光ります。

そしてホモでヤクザだけど、至って正常、
女嫌いでも大切な肉親である十和子を、
体を張って守ろうとする浅黄がすごく好きです。
どうしようもなく田貫が好きなのに、全く見込みのない
その想いを少しでも長く抱えていたいなんて、なんて・・・(落涙)

もう変わることなんて無いようだった男達が、
彼らの半分も生きていない十和子に関わった事で、
確実に何かが変わっていきます。
この世界、もっと読みたいと思わせて、あっさり切り上げるも、
ちょっと笑いを残していくセンスに毎度参ってしまうのでした。

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