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表題作桜の下の欲情

九重鎮之,36歳,日本画家
本郷秀明,27歳,雑誌編集者

あらすじ

豪胆かつ繊細な筆致で、百年に一人の天才日本画家──。美術は専門外なのに画壇の寵児・九重鎮之(このえしげゆき)のイラスト連載を担当することになった編集者の本郷(ほんごう)。けれど九重は、初対面から傲岸不遜で威圧的。知識不足を糾弾するように「おまえの取り得は身体ぐらいだ」と迫ってきた!! 原稿のためにはこの屈辱に耐えなければならない──。以来、自宅に通っては執筆の合間に抱かれる日々が始まって!?
出版社より

作品情報

作品名
桜の下の欲情
著者
秀香穂里 
イラスト
みずかねりょう 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199005435
3.2

(12)

(0)

萌々

(5)

(5)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
5
得点
37
評価数
12
平均
3.2 / 5
神率
0%

レビュー投稿数5

芸術の永遠性と星の瞬き

秀先生お得意の「お仕事BL」系統の作品。
カップリングは、画家x編集者。
「編集者」ってBLでよく出てくる職業ですよねー。攻めが「作家」で、原稿と引き換えにヤらせろ、みたいな展開が鉄板ですが。
本作もそれにのっとっております。
編集者・本郷は異動で畑違いのエンタメ誌の、しかも美術に全く興味が無いのにイラストコーナー担当になり、若くしてすでに巨匠的な日本画家・九重との打ち合わせに臨むが…
上っ面な受け答えを良しとしない九重に、取り柄が無いなら枕営業しろといきなりキスされーー。
…というある種お決まりのセクハラ展開。
九重にゲイ設定は特になく本郷はノンケですが、九重の圧倒的な作品の力、そして傲慢な心の下にある繊細さに惹かれるという設定です。
九重が天才肌の画家という設定なので、内容にはある種の「芸術論」、また描かずにはいられないdemonish な衝動に突き動かされる芸術家の「業」についても。
それはさておき、私がいいなぁと思ったのが、九重の描く野の花のイラストに添えられる本郷による百字の「見出し」なのです。
はじめは何の面白みもない文章で副編集長からもダメ出し連発なのですが、九重と一線を越えた後急にしっとりとした素敵文章になる。
各号の九重の新境地である小さな野の花のイラストに、より一層の彩り、より一層の香り高さ、より一層の煌めきを添えるその文章。それを書いてる秀香穂里先生がすごいな、と率直に感じました。
本郷ははじめこそ傲慢な天才である九重に対して気後れしていたけど、徐々に一歩も引かぬ対等性を出してきます。決して主体性もなく抱かれるだけの受けではない、そこは好ましい関係性です。
イラストはみずかねりょう先生。美麗です。

2

一途に一生懸命

 今まで関わっていた科学雑誌が廃刊になり、週刊のエンタメ系雑誌の担当になった本郷。
 仕事のやり方も何もかも違い戸惑うばかりの本郷だったが、日本画家・九重鎮之にイラストを描いてもらうコーナーを担当することになった。
 その日本画家は、豪胆かつ繊細な筆致で百年に一度の天才と呼ばれている。
 美術は専門外であり、まったく絵のことは分からない本郷は戸惑う。
 おまけに、九重は初対面から傲岸不遜で威圧的。知識不足を糾弾するように「おまえの取り得は身体ぐらいだ」と迫ってくる。
 押し倒された本郷は、それを必死に拒むけれど、今度は店に呼び出され、女の子たちも一緒に王様ゲームをさせられるハメになる。
 我慢しきれなくなった本郷は、、九重に向かってキレてしまう。
 その晩、強かに酔った九重を家に連れて帰ると、代表作の桜とは違う丁寧なタッチで描かれた野に咲く花のスケッチを見つける。
 本郷はそれをぜひ雑誌に載せたいと考えるが、九重はそれに対して条件を出してきて……

 という話でした。
 本に書いてあるあらすじのところに「原稿の代わりに身体を」なんて書いてあるので、どんな悲惨な話なんだ……と思って少し敬遠してしまったんですが、なんのことはない、確かにそういう言い回しを九重はしたけれども、最終的にその形になったのは、そんな繊細な絵を描く九重に本郷自身が惹かれていたからでした。
 そこからしばらくすれ違いは続きますが、最後はちゃんとハッピーエンドでした。

 今まで仕事一筋で、融通も効かず、真面目一辺倒でわき目も振らずにやってきた本郷が、九重に興味を抱き、真面目すぎるが故に時々無神経にでも一生懸命に九重の心に触れて、開いていく物語だったように思います。

 真っ直ぐで一途な恋物語が好きな方にはオススメです。
「原稿の代わりに身体を……」的な無理やりドロドロ系が好きな方は、ちょっと期待はずれになってしまうかもしれません。

1

強引だと思われた攻めが実は

異動して新しい職場になかなか馴染めず、居場所のなかった本郷。
九重と組んだ仕事によって認められ、この先編集者としてやっていく自信をつけることが出来ます。
そして、とある理由により傷つき、絵が描けなくなっていた九重。
傷ついた原因を、ちゃんと確認しないといけない! と、腰の引けている九重を叱咤する本郷。
そして、きちんと本当のことがわかったときは、なんか私までホロッと来ました。

二人が、お互いの存在によって信頼を築き、自信を取り戻し、愛を育んでいったわけですが、ここで尻込みをしてしまう本郷。
男同士で、まして自分なんか愛されるわけがないと離れていくんですよねぇ。
仕事が忙しいと距離を取る本郷を、わざわざ編集部へ乗り込み、攫っていく九重は、相変わらず傲慢ですが、こんな傲慢さならOKです。

そして、ラストは本当に変わった二人。
この二人の関係が、ものすごく羨ましく感じました。
久しぶりに、仕事もエロもいけてるお話だったと思います。

1

計算されたストーリー作り

天才と称される日本画家・九重とメディアフロント「ブラスト」編集・本郷のお話。
科学専門誌の休刊で、畑違いのエンタメ誌に転属された本郷は、ゲーム会社ナイトシステムとのタイアップ企画の担当になり、ゲームのキャラデザインを担当する九重のイラストを取ってこなくてはならなくなって・・・

キャラ文庫の秀作品ではおなじみのメディアフロントやナイトシステムが登場し、やはりお話の軸にお仕事がある展開になっていますが、
今回の主人公は二人とも暗中模索している状態で、お仕事姿のここに萌えるというのではなく、ともすれば深い穴に落ちていってしまいそうな二人が、支えあって這い上がっていく姿に感動できるお話なのだと思います。

二人の関係は、どうしてもイラストが欲しい本郷の枕営業的なことからはじまるので、ちょっと展開が安易なのでは?とも思ったのですが、
基本二人とも正直で意固地で、真面目で勤勉なので、自分でできないと判断したことは、きっぱり諦めてしまうタイプですから、こんなきっかけでもないと山も谷も、それこそ恋愛成就も無いお話になっていたかもしれません。

悩みながら流されて、いいように抱かれてしまう感じやすい本郷ですが、母性本能くすぐられると強くなる、肝っ玉母さん的なオトコマエです。
反して、基本俺様の九重は、天才というより努力家で、マイナス思考で甘えん坊の寂しがり、いわゆるヘタレでございます。
前半は俺様九重が引っ張り、後半は本郷おかあさんが面倒見るという展開は、始まりの強引さをどうにか緩和してくれました。

九重の製作背景と本郷の星オタ話、九重の数々のイラストと一作ずつに添えられる百字丁度の本郷の文章、九重の師でもある叔父の存在と残された言葉などが、お話に奥行きを出してくれてホロリと泣かせたりキュンとさせてくれたりすると思います。
(計算されている感じがちょっと引っかかる感じもありますが、それでも計算した努力と挑戦を評価したいと思いました。)

1

一見強引で俺様風だったのですが実はものすごくナイーブでした

秀香穂里さんで出版社ものと見て思わず「他人同士」のスピンオフかしら?などとちょっと期待したりもしたのですが、全く違うお話でした。
受け様はツンデレ装いですが実は前向きで、攻め様は一見俺様風の強引・我儘なのかと思ったら意外にヘタレでナイーブな人だったという、
本の帯に「泣いたからって許すと思うか?俺を最低の男だと罵ればいい」
なんて俺様発言が書いてあったのですが、虚勢だったのですね。
最後には、「お前がいないと俺はダメだよ~」とまでは言ってませんが、その位になってますよww

今まで在籍していた科学雑誌が廃刊になり、週刊雑誌の編集部に移された本郷は、全く感心もない日本画家のイラストとコメントという記事の担当を命じられます。
仕事と割り切って、日本画家九重の家に出向くものの、本郷のうわべだけを見破られてキスされてしまいます。
最後まで明かされませんでしたが、ひょっとして九重は本郷に一目ぼれしてたんじゃないかな~?
その後、九重の今までと違ったタッチの絵や未完の大作を見てしまったことにより、本郷は九重に対する関心が深くなっていきます。
3日毎に通っては、九重の面倒を見たり、時にはキスをされたり、体の戯れがあったり、それでも本郷は少しずつ九重が好きになっている気持ちを隠していました。
九重と話をしていくうちに、彼が大作を描けなくなっている原因というものが見えてきます。
読者側からしても、それってアレじゃないの?みたいな簡単な仕掛けの展開で、そんなことでクヨクヨ悩んで落ち込んでいた九重って、すごくナイーブ?それともネガ?天然?とか、九重ってばそれで本郷の母性本能がっつり掴んじゃったんではないのとか、心のツッコミが入りましたが・・・
でも悩んでいる本人にとっては、ものすごく重大なことだったりするんですよね。
本郷は、最初のうち畑違いの絵の仕事をやらされてる感だったのですが、どんどん前向きになって、しまいには九重のケツをひっぱたくほどの面倒見の良さを発揮します。
エッチの方も、前向きでありまして、この本の中で本郷の株はかなり高いと思いますよ。

何だかですね~秀さん今悩み時なんでしょうか?少し迷いがある文章のような気がします。
夏に出ていた「真夏の夜のお伽話」みたいな軽いタッチのはよかったと思うので、一つつきぬけてほしいなとエールを送ります。

3

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