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表題作いとし、いとしという心(2)

井筒千秋,29歳,老舗旅館・井筒屋の若当主
観月侑央,28歳,紙司・兎月の跡取り息子

その他の収録作品

  • ユキウサギ
  • 啼かぬ蛍が…

あらすじ

屈指の名門旅館の跡継ぎである兄の陰で、ひとり鬱屈した思いを抱えていた千秋。彼にとって、素直で愛らしい隣家の幼馴染み・侑央は唯一の救いだった。侑央が兄に恋い焦がれてさえいなければ──。侑央を抱きしめ、兄に似た声で侑央の耳に甘くささやく。「目ぇ、閉じとき。そしたら兄貴としてるみたいやろ?」大人気の「いとし、いとしという心」待望の続編! すべての因縁が始まった高校生編と大量書き下ろしを収録!
(出版社より)

作品情報

作品名
いとし、いとしという心(2)
著者
かわい有美子 
イラスト
南田チュン 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
シリーズ
いとし、いとしという心
発売日
ISBN
9784862636836
4.3

(105)

(60)

萌々

(25)

(17)

中立

(0)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
21
得点
451
評価数
105
平均
4.3 / 5
神率
57.1%

レビュー投稿数21

前半と後半のギャップ

前半の高校時代のすれ違いが苦しい、にがい、しんどい…
千秋の思惑とは裏腹にどんどん頑なになるユキ。
拗れに拗れたことを自覚して、千秋が「もう逃がしたるわ」と去っていくのが切なかったです。こんな別れ方をしたのに…って思うと、1巻での要求や千秋の想いも深まります。

そして、1巻の続き、現代に戻るわけですが、
前半がヘビーすぎたので、あれ?こんな仲良かった?と戸惑い、1巻に戻る羽目に…
少しユキの心が解れてきたとこで、次巻やったねと思い出すものの、気持ちを整理するのがちょっと大変でした。

気持ちはハッキリ伝えないものの昔みたいな幼馴染みの気安さ、恋人未満な甘さが可愛くて、変わらぬ千秋の周到さにもニヤニヤしちゃうわけですが、千秋の結婚話!!ユキが迂闊に母親に話したから変に大事になったのでは?ちょっと考えなしなとこ多いな…とイラっときてしまいました。が!千秋の「ボクと一緒に地獄まで堕ちよ」には、うわーーーって頭の抱えました。好きが深すぎる。狡くて甘い!!最後の膝枕もほっこりして、あ~良かった!なんですが、電子はあとがきもないので、あれ?終わった?老舗を担う2人の未来は?え?ってなってます。

0

成仏できました

京都BLの名作の呼び声高い作品ということでずっと気になっていたのですが、やっと読めた達成感と余韻にしばし浸ってしまいました。京都弁って、もだもだしてる2人の関係性を伝えるための最高の言語ですね。いい歳した大人の男の同士の”ちゃん”呼びにも萌えポイントが高いです。

前作読み終えたときに、”え~、受の気持ちが決まってないやん!”と攻が不憫な気がしてならなかったんですけど、やっと成仏できました。これはまとめ読みじゃないと、気持ちがおさまらないやつですね。千秋の育った環境ゆえの屈折がめちゃくちゃわかりやすいだけに、ユキちゃんの靡かなさ(一途さ?)にはじれったすぎて悶えました。そのじれったい続きで、”高校生編”って!?(しんどいやつ?)と不安に慄いたのですが…、確かに千秋がユキを好きすぎててしんどい、、という部分もありましたが、2人とも若すぎて互いの気持ちを慮る余裕がなかったんだな(本当はユキ→千秋も大事な存在だったのに)と現在の関係修復(誤解を解いて再構築?)にスルっとつながりました。

やっと恋人っぽさが出てきた“啼かぬ蛍が…”のいちゃこらが最高でした。特に、千秋の結婚話にユキがモヤるところがいいです。え、あのユキがここまで千秋に対する感情をあらわにできるようになったの?おめでとー!な気分でにやにや読み耽りました。

0

しっとり、しっぽり。

2巻まとめての感想です。
電子なのであとがきはなし。

・京言葉素敵。
・作品に満ち満ちている京都の風情が、関東のマンション住まいの私からするともはや異世界。
・侑央の未亡人感ときたら……!!

・気持ちの一方通行感がすごくて「ままならなさ」を強く感じた。
大好きな侑央が、兄に想いを募らせていく様子を傍らで見続けなくてはいけなかった千秋の苦しみ。ツラァ……。
そして想い人が死んじゃった侑央。
おまけに死んでもなお侑央の心をとらえ続けている兄。

・弟への不遇な扱いに気づく事がなかった兄にやり場のない怒りが……なんで気づかない。
不憫な千秋……

・やっぱり執着攻め、最高。粘り勝ち。

・壮一へのあれほどの想いから、やがて千秋へと移り変わっていくところが、なんか微妙にはぐらかされてる感。
壮一への想いを完全昇華してほしかった。

・心のうちでユキに別れを告げるシーン(下巻)が切ない。

・あの女帝のような祖母をギャフンと言わせてほしかったけど、ああいうふうに人誑し全開でだまくらかす方が千秋っぽいなと納得。
「一緒に、地獄まで墜ちよ」というところが痺れたけれど、最強の狐となった今、周囲をうまく籠絡して「男同士云々よりも、千秋に井筒屋を去られるほうがよっぽど地獄」みたいな状況に持っていくんだろうなぁ。むふふ。

5

学生時代と、新店舗開店までの物語

感想
侑央がもし女性だったら、長男の壮一の嫁にすんなり納まっていたかもしれない。
侑央が男性であったから、この物語のようなおもしろい展開になったんだけど、本当に長男の壮一は、侑央の気持ちに気づいて居なかったんだろうか、と疑問。
薄々気づいて居たんじゃないかと思う所がありました。

二巻は、学生時代の思い出に頁を多く割り割かれていて、読みたかった新店舗開設とこれからの事についての物語が、頁数が詰まって少なくなってしまった感じを受けました。尻つぼみ。
それで、調べるとこの二巻の後の続きが、小冊子で出ています。
著者のHPに同人誌の紹介があって、HPからリンク先のサークル名義の頁に行くと、ダウンロード可能です。今現在の価格は¥462。会員登録なしでゲスト購入が可能でした。45頁ほどが¥462の価格設定が、安いのか高いのか分からない。
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https://bit.ly/32z6Fbw
寝ても覚めても忘れぬ君を… A5、P44 オンデマンド本
「いとし、いとしという心」の番外編。子供時代から、大人になって二人で花見に出かけるシーンまで、こまごまとした古都の日常です。千秋と侑央の子供時代から、今の二人のいる風景まで。
サークル名 Blue on the Heaven
2010年12月発売
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発売日が2019年03月24日付けになっているので、DL委託先を都度変えているのかもしれません。著者HPのチェックを是非お勧め、です。



1

文句無い名作…

一巻でお家事情や、複雑な恋愛関係を知った上で臨んだ二巻は、登場人物の過去の境遇や心情等がより鮮やかに描かれていて、更に物語に入り込める仕様になっていました。恋愛部分もしっかり描かれつつも、京都の街での家業の日々の営みや季節の風情も堪能でき、非常にバランスの取れた理想的な小説に思いました。味わい深い作品ですので、読み継がれて欲しいです。

高校生編では、侑央から荘一、千秋から侑央への一方通行の想いが決して交差される事が無い様に読んでいて切なかったです。千秋の家庭事情もリアルで、千秋が複雑な人間性を持つに至った過程に説得力がありました。一巻では、それほど侑央に思い入れがなかったのですが、一途で好き嫌いがはっきりしている所に好感が持て、途中から千秋目線で楽しめました。健気で可愛いw

一巻、二巻通して、千秋や侑央の気持ちが痛いほどわかり、続編の中で余りに長い年月を経てやっと二人の心が通じ合った時は感無量で本当に良かったなーと思えました。千秋と祖母キミとの和解(?)のシーンは涙がうるっときました。恋愛は辛口気味ですが、かえって味があって良かったです。
千秋と侑央は幸せになって良かったけれど、高校生編を読むと、荘一の事を考えてしまって辛い…。こういう事って世の中に普通にある所が人生ままならず、人生色々…と実感しますね。読後に余韻が残り色々考えさせられる作品でした。

3

男女問わず京言葉は色っぽい

前作は侑央がやっと千秋への態度が和らいだ…というところで終わってたから、もどかしさが残っておりました。
なので今作の侑央の気持ちの変化が嬉しい!
今後結婚やら跡継ぎやらで揉める事必至な二人だけど、とりあえずハッピーエンドです。

本は二編に分かれてて、一つが2人の高校時代の「ユキウサギ」、もう一つが前作の続きの「啼かぬ蛍が…」。
「ユキウサギ」は読むのが辛かったです。
二人の交わらない届かぬ想いがなんとも切なくて。
前作で千秋贔屓となってしまったからか、侑央に対して酷い事しているのにもかかわらずやはり千秋に同情する割合が大きかったかな。
千秋が侑央を解放する場面では胸がしめつけられそうでした。

そんな切なさいっぱいの「ユキウサギ」に対し「啼かぬ蛍が…」はなんだか甘酸っぱい。
千秋の結婚話でモヤモヤしたりする侑央が見られるとは!
千秋良かったね…(;ω;)

二作通して、京都のしっとりした雰囲気がとても素敵でした。
交差しない片想いのお話が、京言葉が相まって切なくエロティックに作用していた気がします。
この寒い季節に似合うお話でした。

1

京都に行きたくなります♫

前作の終わりが「えっコレでおわりなの?!」という終わり方だったので、読み終わった後そのまますぐ続編へ。
この作品、この二巻まで読まなきゃ本当の作品の良さに気づけないと思います!その点では損している作品ですよね…。
今は二巻まですぐ読めるからいいけど、当時リアタイで一巻を読んだ姐さん達は続きが無いことにかなり焦れたのではないでしょうか。。。

私は一巻の追い詰める攻めの千秋と、それに戸惑うユキちゃんの仄暗い関係性にも最初から萌え萌えしまくってたんですが、やっぱり千秋への思いを自覚してからのエッチは甘くて幸せ〜〜な気持ちになりますね!
ユキちゃんが千秋を自ら求める姿に、ずっと千秋を応援していた私は、千秋よかったねえええ〜と感無量でした。゚(゚^∀^゚)゚。

かわい先生の書かれるストーリーと京都弁がしっかりマッチしていて、全体的にしっとり、、、
な中に時折千秋の熱情が織り交ぜられて、
まさに冷静と情熱のあいだ(古い…)なこのお話が大好きです!
同人でもいいので千秋にもっと幸せな思いをさせてほしいです…!

次のゴールデンウィークには、2人を求めて京都へ聖地巡礼に行く予定ですw

4

攻の必死具合が気の毒になる

いやぁ……前回、見事にモヤモヤエンドだったので、今回は素敵にほろ苦エンドでとっても良かったです。
無駄な甘さはなく、最後は静かに甘い。
苦いお抹茶を頂いた後に、落雁食べた時のような……そんな感じのいい塩梅でした。
甘酒と塩昆布みたいなね。甘すぎず、苦すぎず、しょっぱすぎず。

作品世界は相変わらず和風で、情緒の塊のような空気感です。
そして、ストーリーに抑揚は本当にありません。
こんなに山場のない小説も珍しい気がしますが、それが逆にいい味を出してます。
起承転結がはっきりしてて、次から次へと問題がわき起こるジェットコースターみたいな話が好きな方には向かないかもしれませんが、私はこういった淡々とした話は大好きなので非常にツボでした。
全体を通して静謐な空気が満ち満ちていて、ぬるっと話が進みます。
しっとりとしていて、静かな感情の動きも秀逸でした。

そうだ、京都に行こう。
と思い立って本当に京都に行きました。

4

天然毒婦、なるほど。

これ、1、2じゃなくて、明らかに前編、後編ですよね。
前回が本当、途中で終わっていたので、やっとこ完結した感じです。

前回は攻めのよさがいまいち分からなくて、受けに最後まで拒絶したれやとまで思いましたが、こっちを読むともしかしてユキの方が酷いんじゃないかしら?と思い始めました。天然毒婦、なるほど。
此処まで読んでやっと、「千秋が可哀想」と思えてきました。
過去編で上京する時の「もう逃がしたるわ」のシーン、此処はとても好きです。
過去あっての1巻目なので、これはもしかしたら時系列で並べた方がいい小説かもしれないです。ずっと引きずるほど、故人に魅力を感じないのもあまり切なくなれない要因かも。
皆それぞれいい人で、やり切れない感じだった方が切ない気がします。
何か皆それぞれ自分勝手なところが気になるかなあ。まあ、それがリアルだといえば、リアルですが。

BLはハッピーエンド?がいい派なので、ラストの話は二人が上手くまとまって良かったです。
よく考えるとこの二人に未来があるか分からないのですが。
取り敢えずは幸せそうで何より。

同人誌がニ冊ほど出てるみたいなので、もしかしたら色々補完されているのでしょうか?
もう読める機会はないだろうなあ。残念。
とても読みやすかったので、もう一歩踏み出してくれたら神評価だった気がします。
そしてやはり、京都物は色気があっていいですね。

1

ふしあな

つくづく、惚れた欲目って恐ろしいなあ、と思います。あれほど頭が切れてしたたかで、周囲の人々の思惑を読むのにも長けていて、向かうところ敵なしに見える千秋。なのにただひとり、心から愛した侑央(ユキ)を見る目だけは曇ってるんだよなあ・・・それが千秋のすべての不幸の源のような気がします。

 作者のかわいさんご自身がおっしゃる通り、ユキは天然毒婦の素質おおいにあり、です。「ユキウサギ」で描かれた高校時代にさかのぼる千秋との関係の発端も、1巻の再会後のふたりの歪んだ情事も、すべて原因は千秋のユキへの一方的な邪恋が原因で、ユキは姦計にはまった哀れな被害者であるかのように、当の千秋も、ユキ自身も思いこんでますがはたしてそうでしょうか? 本当に身もちの堅い未亡人なら、どんなに脅されようがすかされようが、手篭めにされるくらいなら舌噛んで死んでますって。だけどどんなに欲望に負けて痴態をさらそうと、千秋の瞳に映るユキちゃんは穢れを知らぬ白雪姫のままなんだよなあ。

 ユキがずっと思い続けてきた千秋の兄荘一は、ユキの想いに微塵も気づくことなく死んでいった。たとえ健在であっても、極めてノーマルで、全てにめぐまれすぎたがゆえに些か鈍感なところのある彼が、ユキに応えることなどあり得ない。強引な形で千秋に奪われなければ、ユキは一生あのミダラなカラダを誰にも許さず墓場までもっていっただろうか?それで幸せな生涯だったと心から思えるようなタマなら、千秋の所業はただの卑劣な暴力といわれても仕方ありませんけどね。

 とどのつまり、千秋はどうしたってユキには勝てない。惚れた弱みで、初めから勝負になんかなりはしないんです。ユキの身体を強引に手に入れ、その欲望に奉仕してても常に自責の念はあり、このままではユキを壊してしまう…との懼れから自ら身を切られるような思いをして東京に去る。再会後、曲折を経て関係の深まったいま、「誰かに奪われるくらいならいっそめちゃくちゃにしてやる」などと物騒なことを考えてはいても、いざとなったらユキを手にかけることなど多分千秋にはできっこない。そして最後の最後まで、ユキは本当の意味では千秋を理解していない。なぜ彼が別れも告げずに突然上京したのか。どれほどの長い時間千秋がユキだけを見つめ、どれだけの手をユキのために尽くし、何を想って過ごしてきたのか。私が千秋の親戚のおばちゃんとかなら、「やめときなよ、あんな悪女」と忠告してやりたいのはやまやまだけど、これも余計なお世話でしかないんだろうなあ…

それにしても、かわいさんの京都モノって格別ですね。男のひとの京ことばってどうしてあんなに艶っぽく響くんだろう。着物の微妙な色遣いとか、歳時記にのっとった暮らしとか。主要登場人物のものを除けば、実在の京都の老舗がたくさん出てきて、京都ビギナーの方には上質な観光案内として重宝しそうだし、土地勘のある向きには「ふたり歩いてて雨にふられたのはあのあたり」「ええとこのぼんぼんのいく私学ってやっぱあそこかな」といつもの妄想に臨場感がプラスされること間違いなしです。あの町で、ぼんやり路地にたたずんで、千秋の都々逸が聴きたい。(夜桜お七も捨てがたいけど)

8

狡いキツネと天然毒婦気味ウサギ

前半の『ユキウサギ』は高校生編で、荘一を密かに想う侑央と侑央を一途に恋する千秋の切ない心情が描かれていなす。
侑央が無邪気に荘一を見つめ続ける同じ時を、千秋は振り向いてもらえないことをわかっていても諦められないし告白もできない状態で見守っています。そして、追い詰められる気持ちが痛いほどに表れています。
荘一を好きだ好きだオーラを出しまくる侑央に勉強を教えたり、好物をあげたがったり、自分の気持ちは二の次にしても侑央を喜ばせたくて兄に誕生日プレゼントを用意させたりと健気すぎでしょう。
いくら自分の一方通行の想いにいっぱいいっぱいでも、これほどまで幼い頃から甘やかし大切に守ってくれている千秋の気持ちに全く気がつかない侑央をちょっぴり憎らしくさえ思えてきます。
最後には、これ以上そばにいると侑央を笑わせてあげられなくなるしもっと酷いことをしてしまうからと東京の大学に黙って旅立っていくシーンは泣けました。
『ーもう逃がしたるわ』のセリフが良かった。
ラストシーンの旅立ちの朝、京都駅に向かうバス停から侑央が通学する姿を一目見てバスに乗り追い越していく場面は、映像が浮かんでくるようです。
声に出さずに、「バイバイ、ユキちゃん」と言いながらきっと必死に涙を堪えてほんのり充血した目で小さくなる侑央の姿を見つめていたことでしょう。
できるなら、10年堪えろといってあげたいですね。
また会えるからねと。

後半の『啼かぬ蛍が…』は、一転して1巻めの後日談でラブラブ編。
頭が良くて口も気もまわるという要領のいい千秋が祖母を手玉に取り、縁談をなきものにし当分結婚話もなくなるよう丸め込むところが痛快でした。
また、結婚話に心を痛める侑央に問い詰めさせあわよくば好きと言わせたいという企てもセットになっていて、侑央の言う"狡いキツネ"の面目躍如?といったところでしょうか。

侑央の支店の秘密部屋は居心地良さそうで素敵です。

1巻のイラストはあまり好きではありませんでしたが、この巻の後半はよかったです。
侑央の膝枕にご満悦の千秋と共に描かれたキツネとウサギ。
着物姿の絡みは最高にいいです。乱れた着物の裾からはみ出した侑央の脚と足袋を履いた足をシーツに押し付けてるところなど萌え萌えでした。

5

見ればやさしや寄れば刺す

前巻、かなり読み応えのあった『いとし、いとしという心』の二巻です。
といっても、前巻でなんとなくふたりは心を通い合わせておりますので、この巻の方が重さは少ないかな。


前半の『ユキウサギ』では、攻めの千秋も受けの侑央も高校生。
千秋が侑央への叶わぬ想いを封じ込めるために、東京へ出て行くまでのお話です。

相変わらず千秋が切ない。
いわゆるヤンデレのようなタイプは苦手なのです。
でも、千秋目線も書かれているせいで、彼の侑央への愛情や葛藤が手にとるようでひじょうに心がキュッとなります。
とくに『ユキウサギ』では、まだ千秋の兄であり、侑央の想い人である壮一が存命なこともあって、よけい千秋が不憫なんですね。
この頃のふたりのベクトルはまったく別方向を向いていて、一方通行の想いをお互い抱えながらいるのが切ないです。
ラストのバスの場面は不覚にも泣きました。


後半の『啼かぬ蛍が…』は、前巻の後のお話。
ぎこちないも、侑央が千秋を受け入れ始めた頃。
千秋に結婚話が持ち上がりるというお話です。

侑央は動揺しつつも仕方ないのかと、読めない千秋の本心に笑ってみせることしかできずにいるし、そんな侑央のことを千秋は自分のことのように理解しているんですよね。
家のしがらみにしても、この関係がいつまで続くのか、続けられるのかはわかりませんが、今はふたりの決意が良い方向に転がって見えるので一安心なのでしょうか。
でも実際千秋なんて将来共にいられなくなったら、本当に約束通り堕ちて心中しそう…(苦笑


後書きでかわいさんが、前巻の千秋に同情票が多かったと書かれています。
そのため今回は、侑央に力を入れられたとのことですが、わたしには変わらず『千秋切ない!苦しい!』でした(苦笑

2

不自然な「僕」

 ユキちゃんに好かれようと、「俺」から「僕」と言い方を変える千秋、それでもユキちゃんは荘一のことが好きで、好きで…。私には、千秋はずっと報われない恋をしているとしか思えなかったのです。それでも、千秋は決して身を退くようなタイプではありません(笑)好きにならなくても、強引に千秋の方を向かせてしまうのです。 

 兄、荘一を取引材料にしても、強引に振り向かせる千秋ですが、「その性格は昔からなんだな」と思うとちょっと納得してしまいました。

 ユキちゃんは、色が白い、輪郭が柔らかい、透明感がある、白雪姫のようだと、BLの受け様の象徴的な人なのですが、荘一からは弟のようにかわいがられ、そして千秋からはこれでもかというくらいに愛され、実は本当に白雪姫のような人だったと思うのです。

 ユキちゃんは荘一のことが好きだったのに、だんだん千秋に籠絡されていく姿が気の毒でもあり、ちょっとだけずるいな(笑)と思ってしまいました。

 一旦は千秋はユキちゃんから身を引きますが、やはり最後は捕らえてしまいます。私には千秋は狼のようだと思ったのですが、千秋が便せんのデザインにした狐のほうがしっくりくるから不思議です。

3

京都の男

京都が舞台。
萌えポイントは京都弁・着物男子。
はんなりどすえ~。(この京都弁あってる??)
皆(攻め→受け→攻め兄)が一方的片思いだったこの話。
1巻で攻めと受けがぐるぐるして
2巻でまとまった。
これから今までの分 イチャイチャすればいいさ!!

高校生時代の『ユキウサギ』。
皆様が書かれている通りです。
私もこの話は好きですね。
最後のシーンが素敵です。
「もう 逃がしたるわ~」
って京都弁が利いてるわあ。
でも 結局 京都に戻ってくるんだぜ!
愛は忘れる事が出来ないのさ。

気持ちが通じた後の 膝枕っていいね。萌えました。

1

長い辛い片思いの行方

千秋の侑央に対する想いと言うか執着は確かに異常なのかもしれないけれど、侑央を愛する事で家族や周囲に対する苦しさを埋められたんだろうと思う。
千秋の愛の形、私は凄い好きです。寂しがりで、人との距離が上手で、ズルイ男なのかもしれないけれど。
侑央を愛するあまり、愛し方を間違ってしまった高校時代の千秋。
侑央がどんどん衰弱していき、心は拒絶されているのもわかっていながら
でも止められない。
結果、実家を出て侑央と離れる決心をする。バスの中で通学中の侑央を見ながら-好きだ-と心で叫ぶ千秋が切なくて切なくて。。。涙出ました。

一歩距離を置く事で、千秋を認め始める侑央。侑央の想いは壮一が亡くなった事で初めて千秋に向くのだろうと思うのですが、それもとても切ない・・
千秋はどこまでも壮一の次でしか無いというのが最後まで辛い。
侑央はこれから全身全霊で千秋を愛してあげてほしい。千秋幸せになってね(涙)

2

高校生編が神すぎる

前作を超えてる二巻。
とくに高校生編の『ユキウサギ』が神でした。
どうしようもないほど切なくて、胸が締め付けられました。
やっとラブラブになれた『啼かぬ蛍が…』よりも、どうにもやるせない結末で別離を迎える高校生編がイイ。バッドエンド好きにはたまらんです。
一巻のレビューで私、「続編よりも高校生編が読みたい!」みたいなことを書いたんですが、それが見事に報われた感じ。
「片思い」っていうのは、醜さと美しさの両方を持ってると思う。

『啼かぬ蛍が…』は、攻めがばあさんを丸め込むシーンがかなりツボでした。
受けのためなら、苦手な相手をも懐柔する攻め。彼の愛は揺るぎないね。

あとがきを読みながら思ったのですが、やっぱかわい有美子さんは分かってるなーと。
そう、攻めは本来はアホウなんだよね。一途な執着愛はけして正義ではないのだ。ぶっちゃけただのストカなんだけど、作者が愛情深く描くことによって愛しい存在になるのだ。
ぜんぜんタイプの違う話だしキャラなんだけど、水城せとなさんの『窮鼠~』の、今ヶ瀬の人気と恭一の不人気を思い出しました。

8

この二人がいとし、いとしです(*^_^*)

前作より内容を深く掘り下げたストーリーになってる2作目。


前作では、ぼんやりと描かれていた高校時代の二人の関係。

千秋の切ない想い、侑央の真っ直ぐな故に自分を責めてしまう辛い胸のうちが丁寧に書かれていて胸が締め付けられました。


そして、前作ではまだはっきりとしなかった二人の関係がここで決着を!


この読後に味わう胸キュンを貴方にも知って頂きたい!


作者様曰く「陰険腹黒ヤンデレ攻×天然毒婦受」


自分の気持ちに気付いた侑央の色香漂う仕草…


京都の男はいい!
和服っていい!
BLっていい!


最後らへんで千秋が侑央に言った言葉…


女子であれば一度は言われてみたいものです。


前作を気に入った方なら、満足のいくものになると思います。

1

殿方の京都弁、腹黒そうで好き

「腹黒陰険ヤンデレさん」と「清純天然毒婦さん」の、しっとりはんなりしたお話。
二人の高校生編と、前作に続くお話の2話構成。
「ユキウサギ」
高校生といえば、まだまだ子供、
千秋もユキも、お互いに肉欲に負けてしまいます。
といっても、キスやさわりっこ、素股止まりの関係ですが、お子様な接触の分、禁忌感が高くてよけいに隠微。
最後に千秋は、東京へ逃げ出すことでユキを解放するのですが、、、
ラストの、千秋が、バスの中から歩いているユキに「バイバイ」と告げるシーンが切ないです。
「啼かぬ蛍が…」
前作の続き、
10年以上の時が経ち、それなりの経験も積んできた千秋。
今度こそはユキを逃がさぬよう、ばあさんも平気でだませるような、悪い大人になりました。
ラスト近くの、ばあさんを懐柔するシーンがなかなかツボで、おかしかった。

これ、千秋を遊佐さん、荘一を置鮎さんでCD化してくれないかな。
ユキは絶対、京都生まれ、京都育ちの方で、
演技経験、出演経験はこの際不問。
とにかく京都のネイティブスピーカーで「若い子」希望

1

やっとラブラブになれる?

『ユキウサギ』は、千秋が侑央に執着を持ち始める頃のお話。
千秋視点でお話が進むため、狡さや執着や腹黒さ全開で、何を考えているのか丸わかりです。
それだけに、重い、重い。
体調次第では、鬱っとなりそうな気が。

千秋のあまりの執着さに、侑央がだんだんと笑わなくなっていくことに気が付き、ようやく自分のしてきたことを振り返るわけです。

ですが、千秋は侑央のことを『案外頑固』と思っているわけですから、ここまで流されるんじゃなく、嫌なら嫌だと言えばよかったのに。
笑えなくなる前に。
いやだって拒否されたら、千秋だってもう少しやり方を変えてきたと思います。千秋だって、嫌われたら元も子もないんですから。
それに、荘一には言えないなんて言わずに、当たって砕けたっていいんじゃない? とも思っちゃうから、やっぱり侑央だって狡く感じます。

どうにもならなくなった閉塞感から逃げ出すように、進学先を東京にした千秋。上京する朝、登校する侑央を、バスの窓からこっそりと見送るシーンは、ついホロリ……でした。

「バイバイ、ユキちゃん…、もう、さよならや…」
哀しすぎました、千秋が。

そして、前作の続き『啼かぬ蛍が…』
カラダを繋ぎ、なんとな~く恋人同士(?)みたいな関係になった千秋と侑央。
ですが、まだまだ甘さとは縁遠い感じ。もどかしい関係です。

ですが、千秋と侑央の前に現れた芸妓により、侑央は嫉妬するんですが、「結婚しないで」とは言えないんです。
嫉妬しながらも、そのことを言えずにいた侑央も、とうとう「一緒にいてくれる?」と言えるようになります。
カラダから始まった関係とはいえ、気持ちもどんどんと千秋へと傾いていくというか、搦め捕られていくというか。
ようやく気持ちがしっかりと通い合ったなぁ~と思えるラスト。
気の強い侑央ですから、まだまだ甘えたりはしてないけれど、千秋を膝枕なんかしちゃってるんだから、もう大丈夫かなぁ?

1

あとがきでかわいさんが、「陰険腹黒なヤンデレ男」と「清純派、やや天然毒婦気味」と二人のことを解説しています。まったくそのとおりですね。

京都の老舗旅館「井筒屋」の次男・井筒千秋と隣の紙司「兎月」の一人息子・観月侑央のシリーズ2作目。

【ユキウサギ】
侑央と千秋の高校生時代のお話。
お隣同士で一つ違いの二人は、兄弟のように育ってきましたが、侑央は千秋の兄・荘一に片想いをしており、千秋はそれを承知で侑央を思っています。
荘一は外見も性格も申し分のないくらいできた男ですが、意外に無神経なところも多いのです。
年の離れた弟たちのことを可愛がってはいるものの、侑央の気持ちに気付くわけもなく、侑央はせつない思いを募らせるばかり。
千秋はといえば、外堀から埋めていく作戦で、兄によく似た声を利用して侑央をからめとってしまおうと、なかなか姑息な方法で侑央に嫌と言わせることなくからだの関係に持ち込むのです。

小さなころから侑央のことだけを思ってきた千秋の気持ちは、高校生になってさらに独占欲を増してきます。
お話のそこここに、千秋の熱い思いが書かれていますが、侑央に接する時はその熱さを押さえ込み、優しく誠実であるように振舞います。
侑央以外はどうでもよく、代わりに似た人を抱くというのは、あまり許せないのですが、ほかは何もいらないから侑央だけが欲しいという気持ちは病的にも思えるのに、何故だか味方したくなるせつなさを持っています。

反面、侑央はそだちのせいか、おっとりと甘い感じの少年ですが、純情そうな外見の内に熱い欲望を潜めていて、時々その部分がせつなさを滲ませながら表面に出てくるときに、強烈な色気を発します。
下手をすると、甘え上手で嫌なタイプになりそうなのですが、後ろ暗さを引きずっているおかげで、嫌な奴にならずに済んだのかなとも思います。

結末は一作目でわかっているので、非常に中途半端な気分でスパンと切り取られてしまったような別れ方でしたが、実際、行き詰った挙句に逃げるというシチュエーションだったら、こうなるしかないんでしょうね。

【啼かぬ蛍が・・・】
こちらは1作目の後のお話。
「兎月」新店舗の侑央の部屋と、長唄のお稽古と、千秋の結婚話、千秋の防音設備完備の部屋・・・
未だ戸惑いつつ、千秋との関係を続けていた侑央が、はっきりと千秋への気持ちを自覚して、将来を約束させるまでのお話です。
途中千秋が口ずさむ都々逸が、いい感じでこのお話の世界観を表していると思いました。

千秋はやっぱりベタ甘で、ずるくて腹黒なのですが、侑央が世界の中心なので、将来を約束させられた時の表情で、本当の性格がはっきりわかっちゃいましたね。

侑央は振り回されていそうに見えて、結構千秋を振り回しているんじゃないかなって・・・なんだか、自分の使い方を良く知っている気がするんですよね。もう、お尻に敷く系ですよ。

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狡さはコンプレックスの裏返しでした

一作目「いとし、いとしという心」で思いを遂げた攻め様と受けちゃんの、高校時代のお話と、本当の恋人になるまでの現在のお話の2編が入っております。

一作目で、兄・荘一が亡くなったことから実家の老舗旅館を継ぐことを条件に、幼いころから心を寄せていた幼馴染のユキを手に入れた千秋でしたが、
実は高校時代も、ユキの荘一に対する想いを逆手にとって、自分のものにしようとしていた腹黒な千秋。
でも、それは誰からも好かれる兄・荘一や、兄ばかりをひいきして可愛がる家族たちへの抵抗と反発だったという、少し切ない事情がわかります。
ユキにしても、一番身近にいたのは千秋だったのですが、近すぎて見えなかったのではないかな?
これを読んで、ひょっとすると荘一に対してはアイドルに夢見て恋するような気持ちだったのでは?と思いました。
”荘ちゃんだと思ってごらん”といって、ユキの体を思い通りにする千秋の切なさといい、ユキの抗えない気持ちといい、読んでいて切ないです。
京都弁がはんなりと、やわらかいタッチの口調であるだけに、その奥に秘められる真実に悲しいものがあります。
家から離れるため、大学を東京にし、京都を出ていく千秋の最後の姿。
”バイバイ、ユキちゃん、もう逃がしたるわ~”
千秋は、もうユキには二度と会うつもりもない気持ちでいたのでしょう。
千秋の真の心に触れたので、この最後がジンときました。

そして「啼かぬ蛍が」では、再会してユキを自分のものにしたその後です。
ここでは、相も変わらず千秋がユキを独り占めしようと密かにクギをさしたり、画策したりとするのですが、もう彼の本心を知っている読者には、その懸命さがかわいらしくさえ見えます。
そして、長唄の会に参加したことで、そこの美人のお師匠さんに対する独身男達のいらぬ噂話が元で、ありもしない千秋の婚約騒動へ発展し、ユキが千秋と離れたくないと自覚するあたり。
千秋の防音工事の完成した部屋で乱れるユキが、いつもの貞淑な感じから一変してエロさ5割増しになったのが、読み手にも嬉しかったりww
そして千秋の執着も弱まることなく、用意周到に自分だけのものにしようとする姿が、相変わらずズルイな、、と思わせながらも、ホンワカしたユキだから頭がキレる千秋でちょうどいいのだわ、と、満足な最後でした。
ユキの膝枕で寝転ぶ千秋の絵が、夫婦みたいでよかったです。

前作もそうでしたが、登場人物達が話す京都弁のせいか、色気のあるシーンはさほど多くないのに、色香を漂わせる作品に仕上がっております。
女性の京都弁は好きでないけど、男性の京都弁はいいなーと思うのでありました。

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