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この小説は帝政ロシアの時代に生き別れの双子が、革命にまつわる対極的な立場で運命的に再会する事から物語が動き出します。ストーリーは王道中の王道です。帝政ロシアの時代考察や風俗も調べられていて、その時代のロシアの空気感が伝わり、先も気になる展開で面白かったです。舞台となったサンクトペテルブルクという美しい街にも興味が出てきて、行ってみたくなりました。
ただ不満な点もありました。この上巻では、キャラメイキングが薄く、それぞれの双子を見守る幼馴染み達の双子への愛情が読者には伝わりにくかったです。特にマキシムがユーリを愛しているのに受け入れない理由があかされず、ああいう結末になってしまってポカンとしました。(下巻で明らかになるのかな??)全体的に各キャラクターの感情描写が弱く、他のキャラクターへの愛憎が印象に残りにくかったです。ここに力が入っていると名作になっていたと思うので残念です。
BL面やキャラクター面では辛口になりましたが、夢中になって一気に読んでしまったので購入して良かったです。当然下巻も読みます。ロシアが舞台の小説は限られていますので、興味のある方は読んで損しないと思います。ただしBL部分に過度な期待は出来ませんのでご注意を。
ちょっと前に答姐で「季節感あるお話」とご紹介いただいていた記憶のある本。タナトスとはギリシア神話に登場する「死そのものを神格化した神」だそうで。本当にその印象通りの、シリアス路線まっしぐらなお話でした。舞台が主にロシアなので、めちゃ寒い。しまった冬に読むんじゃなかった と思います。1912,1917の2冊同時発行だったみたいで、これは是非2冊横に並べて、表紙の美しさをまずご堪能いただきたいです。本当に美しい・・・。
カラー口絵はマクシム+双子が寝っ転がってじゃれてるシーン。私はマクシムが大好きだったので、当巻は非常に・・・・(泣)。幸せハピハピでろ甘本ではないので、それだけは重々ご注意ください。
舞台は帝政ロシア末期。近衛師団に所属するオルロフ侯爵家跡取りであるユーリが副官ヴィクトールに〇えさせる という、ヴィジュアルからは想像できなかったシーンから二人のお話は始まります。双子のもう一方、ミハイルは家族で経営している下町の食事処で店の仕込みをする という日常だったのですが、どっかで運命の歯車が狂って なのか、定められた道筋だったのか、二人が出会ってしまい・・・
私には悲劇としか思えなかったんですけど、因縁?運命?双子の業?ってこういうものかもしれない とも思いました。
えーーーーーーーーーーっ と絶叫するところで1912は終わりです。
この作品、歴史ものだし、軍服ものだし、イラストが高階佑さんだし。じっくり楽しめそうな要素がいっぱいだと思ってわくわくしながら読みました。
天使のように美しい容貌を持つ双子の兄弟ミハイルとユーリ。この二人が帝政ロシア末期の混乱の中、憎しみあう話。しかも憎しみあうことになる最大の原因はオトコっていうね。
双子のどろどろもさることながら、ユーリの副官であるビクトールが良かったなあ。上官であるユーリに思いっきり欲情してるし、その上ユーリの首を絞めるし。不敬罪もいいところ。彼のどSっぷりが下巻でますます発揮されるといいな。
ドラマCDのほうが先だったんですが、原作も1912~1917と立て続けに読んでみました。
結論から言っちゃうと、
小説ヴァージョンのほうは1912のほうが整合性があって読みやすい。
ユーリとミハイル、二人の「ボタンの掛け違い」や「生育環境の違い」が
対照的に表されているので、混乱が少ないんですよ。
ただ、和泉先生作品を読むと、設定は壮大でマスな感じがあるんだけれども、
人物描写というか、心理描写が非常に弱いので、あんまり感情移入もできなければ、
こころの移り変わりがどーも漫画ちっくで「は?どしてこうなるわけ?」になりがちです。
なにしろ、ユーリが表裏ありすぎで、よくいえばギャップ萌えなんでしょうが
ここまで人格がコロコロ変わっちゃうようだと、
トラウマというよりおぼっちゃま軍人の気まぐれにしか思えない。
1917で重要なファクターとなりうるヴィクトールについても、
ユーリを軽蔑し、しかし惹かれるアンビバレントな感情を持った人物、
というオイシイ特性を持っているのに、その心理がノーヒント。
ストーリー展開は紆余曲折、先が読めない楽しさがあっていいです。
それだけに、人物描写のお人形さんっぷりが残念でならない。
イラストはかなり美麗。
どうでもいいが、読んでいたら無性に「シチ」が食いたくなったw
シチ(またはシー)は生キャベツまたはザワークラウトのような発酵キャベツと
ビーツ(赤カブ)などなどの入ったスープのことですが、その代表格が「ボルシチ」。
ビーツが入っているので、色はワインレッドの具だくさんスープといったところ。
日本ではトマト入りのボルシチが多いと思うんだが、それは実はウクライナ風なんだそうな。
ビーツとかその他もろもろの野菜やキノコが入っていて、牛肉が入るのが正統派、
それにスメタナというサワークリームをのせて黒パンと一緒に食すわけですが、
ロシア料理は昼にこういうシチやウハー(塩味のスープ)が出るんですわ。
で、寒いところだから、冷えた体に熱いスープ&濃厚なスメタナとくると
心の底から叫びたい衝動にとらわれるほど うまいんです!
それにバガジンスキーっていう、酸味のきいた重い黒パンがあったら最高です。
お暇な方はインターネットで調べて自作してみてください。
『陽気な子豚亭』はサンクト・ペテルブルグの貧民窟にあるんで、
たぶん、肉は入ってないか、ちょろりと得体の知れない肉ですね、たぶん。
CDを聴いてから読みました。
読後感は…一言でいうと、混沌というべきか。
ぐわーっと心を溢れる衝動はあるんですが、実に色々な想いが駆け巡って複雑な心境という意味でカオスです。
この作品にはいくつかの愛の形が出てきます。
恋愛の成就だけを目的とした観点でこの作品を評価すると、まったく適さない。
愛を求めて、彷徨う想いが交錯しているお話です。
そしてそこから付随する様々な感情が、うねる波のごとく主人公たちを飲み込んでいく。
切ないのは、主人公の双子ユーリとミハイルが幸せを感じて過ごしている時期が余りに短い。全体を通して、悲しみや怒りの感情がほとんどと言えるくらい、舞台がロシアであるとともに、凍てつく寒さを想わせる印象でした。
離れ離れになってしまった数奇な運命に突き動かされ、ユーリとミハイルをそれぞれ二つの愛が苦しめます。
お互いを想う家族愛以上の、さらに双子ゆえに半身とさえ言える唯一の愛。
焦がれるほどに欲するマクシムへの愛。
どちらも比べられない、選べないほどの究極の選択肢を迫られる苦しみ。
自分の半身ゆえに、譲れない想い。
更に揺るぎない格差社会の溝もユーリとミハイルの根底に立ちふさがります。
読んでいて、やりきれないやり場のない苦しさにかられました。
一緒にいたころの双子の無邪気なシーンを想えば想うほど、切ない残像となって読み手にも苦しさを連れてきます。
和泉先生の描かれる登場人物は、断ち切ることのできない過去や境遇、因縁の楔を抱えている場合が多く、人を愛することを簡単にさせない。
相手に好意を持っていても、恋だと自覚してもなお、自分の想いのまま恋の選択肢をまっすぐには選べない複雑な愛の形を魅せてくれます。
この作品もまさにそうで、登場人物たちはそれぞれ愛を求めているのに、交わらないスパイラルのようなループ。
確かに在る愛の矢印が切ないほどに交錯し、噛み合わない歯車のようで…。
単に、愛や憎しみ、嫉妬や羨望という言葉では括りきれない情動を感じます。人の心の中に芽生える感情が、一つの単体ではなく、時にあまりに複雑すぎて表現することすら難しいのだと思いました。
どのキャラクター視点でお話を見るか…その点でも複雑になるかと思います。
どうレビューを書いたらいいのか分らないほど、感情が絡み合う作品でした。
そして。最大の神たるは、高階先生の秀麗イラスト!!!
これはやばい。高階先生の作品の中でも傑作と呼べるレベルだと思います。
表紙はさることながら、マクシムを挟んだ双子の扉絵カラーは感動しました。彼らの柔らかな笑顔が、ストーリーと対比して切なくなります。
そして、原作イメージをアップさせるほどの引力あるイラストだと思いました!やはり力あるイラストは、作品のレベルを上げるほどの影響力があるんだと感じます。このイラストたちだけでもとても感情を揺さぶられる完成度です★★★何度見ても美しい~~(涙)
今後の双子がどうなっていくのか。
彼らを慕うヴィクトールとアンドレイの愛の形は。。。
お話としてはまったくの途中で終わっているので、次巻を読まずにはいれません。
後編は幸せが訪れることを願ってます。
評価迷いますが、、、これほどの説明しがたい愛の形を描いた点と、高階先生の美麗イラストに神を。
そしてCDもとても素晴らしかった!!のでぜひに聴いてみてください♪
ありがとうございました