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表題作飼い主はなつかない

作倉哲志 ,高校生 ,17歳
浅井夏生 ,臨床検査技師 ,23歳

その他の収録作品

  • 飼い主は騙されない

あらすじ

子供の頃から、人の周りに色付きのオーラが見える──。特殊体質のおかげで、繊細な見た目に反して、人嫌いで無愛想な夏生(なつお)。そんな夏生が出会ったのは、綺麗な金色の光を放つ、高校生の作倉哲志(さくらてつし)。夏生の行きつけの店でバイトする男前は、家事が苦手で生活能力ゼロの夏生に、「心配で放っとけない」と宣言!! 邪剣にされても甲斐甲斐しく世話を焼く作倉に、夏生は初めて他人への興味を覚えて…!? 
人ならざるモノも見えてしまう人嫌いの青年が、金色のオーラを纏う高校生になつかれて…?年の差センシティブLOVEv(出版社より)

作品情報

作品名
飼い主はなつかない
著者
菱沢九月 
イラスト
高星麻子 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199005886
3.2

(22)

(2)

萌々

(5)

(11)

中立

(4)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
10
得点
67
評価数
22
平均
3.2 / 5
神率
9.1%

レビュー投稿数10

前半は好きだった

普段レビューは書かないのですがかなりモヤモヤしたので自分の思いをまとめてみようかと思います。

受けの夏生がとっても可愛いんですよ。
不思議なちからとそれによる弊害から、人と関わらないようにする、嫌われるのも別にいい、そんな風に他人と距離をとってきたナツが出会った金色の作倉くんはまさに運命でしょうね。
コミュニケーション能力が壊滅的なナツの正直で素直でストレートな物言いがすごく可愛いんです。
そりゃ作倉もかなわね~ってなりますよね。
前半の初々しい初恋がすごく可愛くて楽しく読んでいました。
ドライのお話にもほろりときました。

で、ページ数がまだまだ半分は残っててそのボリュームがすごく嬉しかったんですが、後半はひたすらモヤモヤしました…。
脅されて付き合うって一昔前のBLにはあるあるで見慣れたもんですが本っっ当に意味がわからないんです。
一番最初の「相談にのる」のを何度も断ってるのにナツにしつこく話しかけてくるのがね……飲食店ですからね、そんなんじゃろくに食事とれないしこれはもう店長呼んで何とかしてもらうでしょうね私だったら…。
そういう少し現実的なことを考えてしまいました。

菊池のことを心底嫌っていることを作倉がたしなめるなのもなんというかね……そのくせしてラストでは浮気はしないと「信じてる」ってどういうことよと思ってしまいます。
「信じる」のベクトル違くない?
そんなことを言うなら最初からナツのことを信じるべきだったでしょうに。
言うべきことを言わずに拗れていくのってこれまたBLでよく見かけるんですがモヤモヤするしイライラしますね。
ファミレスでの話し合いも兄弟の態度が酷くてもうほぼ読み飛ばす勢いでした。

前半がすごく良かっただけに残念。
好きな部分とモヤモヤ部分あわせて中立かなぁ。

視界いっぱいの金色に溶けだす藍色、その美しい描写がとても好きでした。

0

不思議なほっこり系

2010年刊。
この本、約360ページあって従来のキャラ文庫と比べるとボリュームのある一冊となっている。
にも関わらず、出逢いから両想い、その後の甘々なムードや当て馬が絡んできてのハプニングも楽しく読めたのは、主人公・夏生の個性の強さが自分の好みのツボに嵌ったからだと思う。
普段の自分ならばお互いが恋心を意識する過程を気にするのだが、この話に関しては夏生と作倉がすごく自然に好きな相手に馴染んでいる様子を受け入れていたのだった。
メインは不思議系ではなく初々しい初恋成就ものだが、全体的にほっこりした話だった。

周囲にいる人物の認識方法が通常とは違う夏生は、顔ではなくオーラの色で相手を覚えるといった風変わりな男だ。
夏生にしか見えていない動物のエピソードにホロリとする場面がある一方で、彼自身の逞しさ天然さの妙が何とも面白かった。
思ったままの事をずけずけと言えて、自身がどう見られようがてんで構わないが、その反面、作倉が傍に居ないと途端に寂しがったり好きって言葉が自然に出る辺り、素で天然なんだなって感じる。

夏生の天然具合は特に後半の『飼い主は騙されない』にて遺憾無く発揮されていて、当て馬となるはずのキャラが夏生に振り回されて横恋慕どころではなくなっている(笑)
当の夏生は「二人の関係をばらすぞ」と脅された為、作倉を庇うのに懸命だった訳だが。

人付き合いと縁の無かった夏生だが、作倉に絆されていくのを通して周囲の人達とも馴染んでいっている様子が伺えてほっこりする。
高校生である作倉の友人、宇佐美と有為子もおおらかで、年下の彼らに世話を焼いて貰っているのを素直に受け入れている姿は可愛い。

夏生が単に繊細系ってだけに終わらず、案外パキッとした一面も見せてくれたからこそ最後まで飽きずに読めた。

1

不思議な力を持った年上美人を溺愛する世話好き高校生

菱沢九月さんの作品では『小説家は懺悔する』のシリーズ以来久々に萌える作品に出合いました。
悪くないけどそこまで萌えないと言う感じだったのでご無沙汰してしまいましたが、不思議設定が気になって読んでみました。

浅井はオーラや死者の姿が見えてしまうというだけで、悪霊と戦うとか悪の組織に狙われるとかファンタジー設定は無しです。

だけどそんな変わったありがたくもない能力を持ってしまったことから人間不信になり家族からも受け入れられず孤独でいることに慣れた人です。

遊んでいた友達や話しかけられた相手が誰からも見えない人だったり人がみな色や光で縁どられていたら怖くて見たくないし、ほんとに人なのかを確認しないと反応できなくなってしまうだろうな。
人と距離を取って声をかけても無視されるのだから嫌われても仕方ないかもしれないんです。
そんな、寂しい人が光り輝く美しいオーラの持ち主に出会い恋をして、変わった能力も含めて理解して愛し合うまでの恋物語です。

高校生の作倉が17歳とは思えない包容力と優しさで出来た子なんです。
やっぱり自分が傷ついたり辛い目にあって痛みや悲しみを知っているからかもしれませんね。

心が通い合うときれいなオーラが混じり合い長年連れ添った夫婦は溶け合うというのが素敵だなと思いました。

浅井の上司 塚田さんがいい味してました。
変わり者の部下を普通に扱い、浅井も肩の力が抜けてラクに居られる職場なんだなと思いました。

3

不思議なお話

分厚い本なのですが、面白くてスラスラ読めました。しかし、カップルの萌えとはちょっと違うな~と思ったので評価を迷いました。
ストーリーは面白かったです。

主人公のナツは変わり者です。
見えないものが見える能力を持っていて、そのために人間と関わらないようにしていて、普通の人間が認識できない。認識しないのかできないのか、人に声をかけられても立ち止まらない(生きてる人間じゃないかもしれないから)ということが小さいころから癖になっていて、態度も冷たい。理由の分からない回りの人からはただの冷徹な変わり者に見えてしまい、遠巻きにされるタイプの人間です。

お相手は喫茶店で出会った作倉で、まだ高校生です。
彼は金色のオーラを纏った稀有な人間で、非常に心の綺麗な子。
ナツは彼にだけ心を許し、作倉もナツに懐いて、佐倉がナツの部屋に入り浸るようになり…。
自然と距離を詰めていくお話でした。
このままなら、ちょっと変わった社会人と健気な高校生の歳の差ものなのですが、それがナツの持つ能力の説明、ナツがどう人間と関わらずに生きてきたか、佐倉の過去の傷などと絡んで丁寧に描かれているのがよかったです。かわいらしいお話でした。

ただ、全部がナツの持つ能力に依るお話になっていたので、純粋に恋愛部分だけ抜き出して見たときにあまりに綺麗にまとまりすぎてるというか、お互いいい歳の男性が会ってからすぐ互いを好きになって、好き好きと口にして、特に葛藤もなく結ばれているのがちょっと「物語的」過ぎるきもしました。

後半は佐倉のバイト先に現れた怪しげな男にナツが脅されてつきまとわれるというお話です。悪役(?)がいた分、ストーリー性はこちらのほうがある気がしました。
ナツは自分の能力から、彼が外見はいいのに中身はドロドロだとわかっています。この男、嫌な奴なんですが、どうしても憎み切れない人間でした。綺麗な人もドロドロした人も紐ほどいて裸にしていけばそれなりの理由があり、とても人間らしいと思えました。 

しかし、ナツが奇妙な男に付きまとわれるのを作倉は浮気じゃないかと疑いつつ、「ナツを信じる」と言っていますが、ナツが「あの男は気持ち悪い、嫌い」と最初に訴えてるのに信じてあげなかったのが何だか不思議な気が。最初に信じてあげていたらあんなことにならなかったのではと思います。
ナツの能力を知ってるのに「人の事を悪く言うもんじゃない」とたしなめるのは、普通の人間相手ならともかくナツの力や性格からしてもうちょっと違った対応ができたのでは…。

作倉がとてもいい子で、困った人をほうっておけなくて、ナツのもそうしてほしいと言い、まさに金色のオーラを持つ人間。
あまりに欠点がない綺麗な子だったので、私は逆にどんどんこの子の存在感が薄く感じてしまいました。
ひねた言いかただけど、ここまで綺麗な人間だと面白みがない~^^;

この2人は本当に最初から最後まで互いを「好き」「可愛い」「優しい」「傷つけるものは許さない」「あなただけ」とう感じで障害も苦にしない感じですので、ふたりだけの世界が既に出来上がってる感じでした。
誰がどう入ってもきっとずっと2人で幸せにやっていくのだと思います。
その分、こちらはご馳走様でしたという感じでなんだかこの2人のラブストーリーそのものにはのりきれない感じでした。
お話は4、BLとしての萌えは2くらいだったので、間をとって星3にしました。

2

のりきれなかった…

なんででしょう?
好きな作家さん、好きな年下攻め、好きなツンデレ受け、好きな展開なんだけど、なんかのりきれませんでした…。
嫌な感じとかは全然ないし、そんなに物語の破綻とかもないし、文章ももちろん上手です!萌えだってあります!
年下攻めが頑張ってる感じとか、耐えてるシーンなんてキュンっとします!
後半の話とかはラブラブシーンも多くて良い感じです!
でも多分最初のくっつくまでのところでのりそこねてしまったのかも…。
ちょっと時間おいてまた読んでみよう思います

0

色が見える男

帯『料理も掃除も愛想笑いもできなくて、駄目なあなたが好きなんです』

夏生〔受〕は子供の頃から他の人が見る事の出来ない人の声を聞いたり見たり出来るという不思議な能力を持っている。
そしてそれだけではなく、彼は人の周りに色が見えるんですね。
そんな能力を持って生まれた夏生は親からも敬遠され、また話しかけてきた相手がホンモノの人間かどうかも分からないので人との接触も極力避けて生活しています。

しかし夏生をやたらに面倒を見てくれるのが、行きつけの料理店の店員・作倉〔攻〕夏生には彼の色は金に輝いて見えます。

家事能力ゼロな夏生を作倉は放っておけずなにくれと面倒を見る事になっちゃいます。
基本的に人は苦手な夏生ですが、作倉には何か押し切られた感じでいつの間にか彼の事が不快ではなくなっていき、むしろ生活の一部として組み込まれて行く。
作倉は学生で、夏生より6歳年下なんですがかつてはバスケ選手として有望視されていたものの事故での足の怪我でもうバスケ選手としては第一線に戻れなくなってしまっている。
そんな作倉にとっては、バスケ時代の自分を知らない夏生のところで彼の面倒を見て必要とされているといのは彼にとっても嬉しい事、であったのですな。
まあこの2人はくっつく訳ですが、後半からの展開で夏生が作倉のアルバイト先の同僚となる男を色が違うからといってどうしてそこまで毛嫌いするのかがちょっと分からなかったです。
その辺のエピソードはやや蛇足的に感じる、もしくはもっと説得力を持たせるかして欲しかったかな。
前半は良かったです、いない筈のハツカネズミを探すくだりとかね、良かったと思います、それだけに後半の展開がちと微妙。

1

まさになつかない猫

主人公の夏生はまさに猫って感じです!
外見が綺麗で人になつかない感じとかマイペースさとか…

攻めの佐倉に会うまでは真剣にただの「顔が綺麗なイヤな奴」ですよね(^_^;)

本人に傷つける気がなくても淡々と述べる言葉は鋭いしよく佐倉は相手してられるよなあと高校生ながら器の大きさに何度も感心しました

佐倉みたいなのは爽やか包容攻め、でしょうか

夏生はクールというわけでもなく素直だけど人嫌いでマイペースな…何とも形容し難い受けですねえ

不思議な人、ってよく言われてますが納得です

でもこんな綺麗な外見なのに家事はてんで駄目で部屋が恐ろしく汚いっていうのが理由でフラれてましたが

これはいいギャップ萌えだと思うのは私だけでしょうか!

何でも完璧にできるより実はだらしなくてほっとけない一面がある方が、きゅんとくるはず!
現に佐倉もそういうギャップにやられたかんじだったし。

ただ主人公が嫌われる奴っていう設定が苦手な私としては、理由があるとはいえ幼子にも優しくできなくて冷静に佐倉に説教されたりするシーンは…我慢ならなかったですね(笑)

佐倉は夏生のどこを見て優しいと評してるのか…そこが理解できなかったので二人の恋も盲目的にしか見えなくてイマイチ萌えられませんでした܂ۂ

佐倉は文句のつけようがない好青年なので、夏生みたいなダメダメな年上を見ると世話したくなるんでしょうかねー

まあエッチの時には恥という感情を置き忘れてきたかのような夏生の素直な態度は可愛いかもしれませんが普段はやっぱり…顔だけ男って印象です

二人がくっついてからの後半のお話は正直蛇足かなというかんじ

夏生の雰囲気もずいぶん柔らかくなっていて逆に個性がなくなっちゃって魅力半減してたような気がしますn[g2

事件の大元となった人騒がせな双子の兄も、弟がとんでもないことをしでかしたのを棚にあげて夏生を責めるという愚かさ…

夏生の意見は正論だしそれゆえに厳しいかもしれないけれど迷惑で済まされない迷惑をかけた双子は殊勝に聞くべきなのでは?

あの航大の態度は弟かわいさからか知らないですけど被害者にとるべき常識人のものとは思えませんでしたȂモヤモヤ…

つべこべ言わず謝れ!って私がイラついてしまいました(笑)

後半の話はない方がまとまっていて素敵なままで終われたような…

ただ前半は文句なしに萌えだと断言できます!

1

きれいなお話

はじめてこの方の本を読みました。
最初はイラストで気になって購入したけれど、
中身もイラスト通りの美しいお話だったv

受けの子がツンというのはよくある話だけど、
最初のツンのレベルが高すぎて、逆にすがすがしいくらい。
ツンというようりも、人嫌いというか、人間を人間と思っていないからなんだろうけれども、ここまで来ると人に好かれるのは無理だろうなと。

なのになのに、攻めの子は、綺麗なお顔だなってことで、ちょっかいをだしてきて、気が付けばラブ!
やっぱり人類、顔が大事なんでしょうかw
(もちろん、内面的にも惹かれていく深い理由があるのですが……ネタバレなのでいえない)

全体的に、きれいにまとまっていていいお話でした!

0

変わってる受けだけど、とっても好き。

あらすじからして、もっと軽めの内容だと思ったのですが、結構ヘビィまではいかないものの不思議なお話でした。どちらかと言うとオカルト系?かな。

人には見えないものが見えるナツ。そしてよく食べに行くレストランで会った金色のオーラの高校生のお話なんですが、途中何度かホロリと涙を流しました。ナツの生い立ちも辛いものがあるし、事故にあった事がある高校生の作倉・・・。そんな二人が出会ってお互いが成長していく物語みたいな感じでとても気に入りました。

生まれたときから視覚障害?この辺はあまり詳しく書かれてなかったのですが、人がはっきりみえない?色で人を識別している感じですね。小さい頃は幽霊なんかも見えて、どれが生きている人間で誰が死んでいる人間なのかは小さいナツにはわからなかった。そんなナツを両親は疎い、辛い幼少時代を過ごします。そこでナツが見つけた解決法が誰とも関らないって事です。特に初対面の人間に関しては返事もしない・・・。そんなナツがちょっと可哀相でした。

二人で買い物に出かけた時に小さい男の子がお母さんと離れて迷子になってしまって、ナツに探してくれと泣き出すのですが、ナツにしたらこの男の子が死んでいるのか生きているのか分からない・・・。周りの人間はそんな男の子に近づきもしないから、きっと見てはいけない存在なのだと、思ったのに、作倉には見えていた。そう男の子は生きている人間だったんです。何故放っておくのか!と攻められたナツがちょっと可哀相だった・・・。

恋愛面も良かったんですけど、そういった一つ一つのエピソードが愛しかったり、可哀相だったり、微笑ましかったりと色んな感情が溢れてきた作品でした。
特にハツカネズミの『ドライ』と後半に出てくる猫の『シロ』のお話は泣けてきましたね。

どちらかというと人間関係とか恋愛関係とかよりもそういうお話の方が色濃いく出ている作品なので、そうのうが苦手な方はイヤかもですね・・・。最初の方のナツのキャラもどうかと?思うほど、愛想もない、冷たい人間に見て取れるので、それを乗り越えれば可愛いナツに会えます♪

1

素敵な世界を私も見てみたい

ファンタジーなのに現実的。攻めも受けもとても好きでした。

はじめは人から話しかけられてもわざと無視したり、返事もとても棘があったりして、読み始めた途端「この受け超嫌い」と思いました。
人の顔が見えないからなかなか覚えられなくて、知らない人かもしれない相手から話しかけられたりするのがわずらわしくて、だから誰とも接触したくない、という理由がちゃんと書かれているのですが、「だからってその態度はねえよ」としか思えません。
自分が人に好かれないってことは夏生本人も自覚しているのですが、だからって可哀想だとか苦労しただろうねとか、能力のせいで人付き合いが難しいんだよね、なんて気持ちにはこれっぽっちもなれないのです。自業自得だとしか。

これはもう、このあとどんだけこの受けの辛さやこれまでの苦労を書かれたところで好きにはなれんだろうと思っていたのですが……。

いやもう、このひと可愛い!
過去の辛さなんてさらっとしか書かれていなくて、それよりも夏生がどう人を受け入れていくのか、その過程をじっくり見せてもらえたから、卑屈さや嫌味がなかったです。
というか、後出しの設定がひとつあって、それで「ああ、それで」と納得できるんですが。

そしてなにより私が感じる夏生の魅力は、夏生自身が「人に好かれていない」と自覚しているだけではなくて、「自分が人を好きにならないんだから、好かれないことが当たり前」だと知っているということです。
そのことを寂しく思ってはいるけれど、だからと言って自分を可哀想だと思ったことはない、だって、この処世術を選んだのは自分だから。
そう言い切れる強さが、本当に素敵でした。

人付き合いを避けてきたせいで対人スキルがまったく培われず、ポンポン思った通りの言わなくていいことまで言っちゃうところも、読み進めるうちにドンドン魅力に変わっていくから不思議。
嘘がなくて妙な駆け引きを知らない分、想いを交わしてからの夏生の、作倉の求め方はめちゃくちゃストレートでつるっとエロかったです。
そこがまた可愛いっ!

攻めの作倉は、これはもう、どう仕様も無くいい男!
こんな子世の中に居るのかしら?って思うくらい、何でも出来て性格もよくてカッコ良いスーパーマン!
攻めについてもアレコレ語りたいくらい大好きなキャラでしたが、「良い男」以外の言葉がでないので割愛で(笑)

ともかく、夏生はストレートに好意を言葉にするし、作倉もとても夏生を大切にするし、しかも夏生には作倉の気分や落ち込みが色で見えるので、一度くっついちゃえば安心して見ていられるカップルです。

作倉の金と、夏生の青が、エッチすると溶け合って天の川みたいに見える…ってのが、2人が本当に求め合って交じり合ってる感じがして、とても素敵でした。

書き下ろしには当て馬が出てくるんですが、こちらはミステリーで言われる「3大タブー」みたいなオチなので、それこそ「なんじゃそりゃ」な感じなのですが。
夏生の心が作倉に触れたことで、いままでパッタリと止めていた成長をいまやっとし始めたんだなぁ…と感じることの出来る、これまた素敵なお話でした。
今までスルーしていられたことをスルー出来なくなった、そんな感じのお話ですが、これはネタバレしたくないのでこの辺で。


ぶっちゃけ後出し設定については、それは最初に教えてくれていればもっと夏生を早くから好きになれたのに…と思ったり、いやけど、後から知ったから逆にガツンと来たのかもと思ったり。
いや、伏線は充分にあるので、途中で自分で気付くんですが。
それにしても最初の「受け超嫌い」って思った自分に、時間を巻き戻して説教してやりたい気分になります。
作家さんって、こうやって読者とも駆け引きをしているんだなぁ…と、ちょっと感嘆しました。

夏生の目にだけ見える、天の川のような2人の色や、咲く直前の、生命力に満ちた満開の桜の色を、私も見てみたいと思いました。

4

この作品が収納されている本棚

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