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仕事に厳しく人にも冷徹な上司・柏邑と、殺伐とした職場に慣れない貴逵。だが、柏邑の抱える深い傷を偶然知ってしまい!?
コレね~、表紙絵ですごく損してると思うんですよ。
涙を搾り取るようなドラマティックこそないものの、喜怒哀楽のバランスといい、
読ませる力といい、地味ながら相当の良作です。
受けがかなりキャラ立ちしてるし、文章がとてもわかりやすい。
銀行の審査部勤務の貴逵(たかつじ)は4つ年上の上司、柏邑が嫌だった。
タカツジに限らず、部下やパートからは疎まれている…というのも柏邑が
ありえないほどに嫌な上司だから。モノは言いようなのに、正面切ってキツイ言葉は
浴びせるわ、愛想はないわ、美形なのに血も涙もない罵詈雑言に辟易。
序盤からもう柏邑の嫌味と冷静な罵詈雑言はパンチありすぎるw
そこまで言うか!と胸糞の悪さを禁じ得ないレベルです。
しかし、貴逵が朝、近所の河原をジョギングしていたら、柏邑が犬相手に
いつもと全く違う優しい表情をしていた――。
その後、貴逵は徐々にサボテンのように刺々しい上司の不器用さや寂しさを知っていくわけですが、そのプロセスで交わされる会話にクスッと和む。
飼い犬の名前を「ポチ」にするか「リッチー・ブラックモア」にするかで揉める兄弟。
…って、なんでリッチー・ブラックモアw ななめ上すぎるヨ…。
辛辣きわまりない上司と、食い下がる部下のともすれば漫才じみた会話に笑えます。
それとは対照的に、銀行での不正融資疑惑を暴いていく過程が実にスリリング。
そして柏邑の触れられたくない過去も…。
ライトな作風ながら、大変盛りだくさんに楽しめます。
逆に筆が達者すぎ、バランスよすぎでインパクトが薄いのかも…?と疑うほど。
イラストレーションはもう少し空気感の出せる方でもよかったかな、と。
内容がいい割にイラストレーションはB級臭。
ちょっとこの作者・安曇ひかる先生は追っかけてみたくなった!
*リッチ―・ブラックモア…伝説のハードロック・バンド、ディープ・パープルとレインボーのギタリスト。現在でも彼の作曲した「スモーク・オン・ザ・ウォーター」はロックギターをはじめる人が必ずと言っていいほど弾く定番曲。ステージ上でギターを叩き壊すパフォーマンスの始祖もたぶん彼。性格はかなりの偏屈だと言われています。
こちらでお教え頂いて読んだ作品です。
BLジャンルの小説はほぼ読んだ事がない為、こちらの作家さんも勿論初でした。
読み終えて、一つ深呼吸しました。
山あり谷ありでもなく、ハラハラドキドキがある訳でもなく。
いうなれば淡々と、ストーリーが進められていく感じ。
勝手な私の価値観と言うかイメージと言うか、映画も殆ど観ない私が最後まで観た数少ない作品の中で、【ベンジャミン・バトン】や【鉄道員(ぽっぽや)】を思い出されるような、実にうまく細やかで時折グッと心を掴まれるような、そんなお話でした。
「あぁ、私はこういうのが好きなんだ」
と同時に認識されました。
『動物の死』というのが苦しくなるのも、こちらの作品で再認識しました。
(河原で貴逵が目にする、柏邑とポチの2ショットだけでも、何故か目頭が熱くなる始末…重症・笑)
兎に角柏邑の境遇が切なくて、そしてポチの死も辛くて、何度も涙してしまいました。
(すぐ感情移入します、泣きます、笑います、私)
私的にはこのまま致すシーンが無くても大満足だったのですが(笑)、やはりあったらあったで萌えますな(爆)
思い込みや外に思いを吐き出しきれない柏邑を、これからどんどん貴逵が棘を溶かしてくれるといいなと思います。
柏邑もきっと、貴逵に「好き」と言えたのだから、もっと色んな人に思いが伝わると思う。
あとから気付く優しさがあってもいいのだと思いました。
(※余談)
安曇さんのHPを覗いたら、こちらのその後のSSが有りました。
柏邑目線の短いお話しながら、柏邑の可愛さが半端じゃない…っ!
いや、SS読んで又本作読み返したくなっちゃいました。
丸ごと1冊表題作です。貴逵の目線でストーリーは進んでいきます。
銀行の審査部に勤める貴逵(攻め)にとって、柏邑(受け)は苦手で頭にくる上司。ところが、休日に犬と戯れる柏邑を見かけ、興味を抱きます。犬が死んで弱って甘えてくる姿に惹かれていき…。
冷酷な上司の意外な面を発見して、惹かれていくのはよくあるパターンなのですが、そこに、柏邑の同期・堺と、融資先の関係者・水島が強引な追加融資を柏邑にさせようとする仕事の話が加わります。
柏邑らしからぬ水島への態度に、やきもきする貴逵。柏邑の過去に何があったのか、という謎もあり、水島の言いなりに融資をしてしまうんじゃないのか、というドキドキもあり。飽きさせない展開でした。もやもやしたまま終わるのかな、と思ったらちゃんと勧善懲悪なのもホッとしました。
恋愛オンリーでなく、色々盛り込まれていて、読み応えがありました。
キャラ使いもすごく良かったです!
貴逵のまっすぐな行動は読んでいて気持ちよかったですし、柏邑の冷たいようで実は優しいというのもツボでした。そんな柏邑にちゃんと気づける賢い貴逵は、良い男だと好感がもてます。
悪事に加担していた堺。彼の処遇も一筋縄ではいかず、単に水島に脅されて従っていたというわけじゃないのも見事でした。
柏邑の兄・優一や、ポチの扱いも素晴らしく、突然出てきた感はなかったですし、貴逵が柏邑を抱く時に謝るとか、ちゃんと最後まで登場させてくれたのが動物好きには嬉しかったです。
題名と内容が合致しているうえ、覚えやすい題名も良かったです。表紙イラスト、題名が「サボテン」なのに桜吹雪?と思ったら、ちゃんと内容に即したもので、申し分なかったです!
融資とか資金流用とか金融関係の話が出てきますが、丁寧に書いてくれているので分かりやすいです。また、読み飛ばしても問題ありません。
切ない場面もあるのですが、底辺にコミカル要素があるので、重く辛い印象ではありません。「大変失礼な発言をかます」とか面白かったです。
仕事もの、まっすぐ熱血漢年下攻め、ツンデレ上司受け、ハッピーエンドがお好きな方に、お勧めします!
マイブーム中です。
安曇ひかるさんの作品を、ちょいちょい読んでます。
まず文章が全く気にならない。読みづらい文章は言うまでもないですが、上手さと言うか表現過多な部分が目につくのは、気になってお話に入り込めないので、その点全く気にならない。理想の文体です。
程よい切なさと、変化に富んだストーリー展開とで楽しめました。
ただ、ちょっとお仕事部分が多かったような。というか、なじみのない部署だからか頭を使いました。あと、名字も読みづらいのですぐ読み方を忘れてしまうという……漢字苦手なもんで。
でも全体として、心地よく読める作家さんです。
お仕事BLは数多くあるものの、ここまでしっかりと描かれていて、でもBLとしても良い出来というのはなかなかないです!
仕事が銀行の監査ということで堅いです。
でも難し過ぎることなく、ちゃんと理解もできるしくどくないから読みやすいです!
ちゃんと働く男性という感じがします。
そこにはもちろん近づきたくない上司や噂好きな女性、不満ばかりの同僚だっています。そんな中、近づきたくないトゲトゲした上司の柔らかい姿を見たら…気になりますよね?異性同士ではそこからすぐ恋愛感情が芽生えてもおかしくないけど、そこは同性同士。ちょっとずつ気持ちが傾いて行く描写をお仕事の中に盛り込み、かつミステリーも少し加えて、最後は…ってかんじで一連の流れがスムーズで、文章がうまい!
萌えやエロさは少ないものの、一つの作品として良作です!