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表題作愛人関係 初恋

多数の店を持つ実業家 高島一成
過去のある高島の愛人 各務智之

その他の収録作品

  • 恋人関係
  • あとがき

あらすじ

過去の罪を償うために高島一成の愛人となった智之は、どこへ出かけるかも、何を話すのかさえも、彼に支配された日々を送るようになっていた。でも、それが自分が一成に出来る唯一のことだから… そう思っていた。けれど、智之に苛立ちをぶつけながらも苦しむ一成の姿に、智之はある決意をする。憎しみと愛情に囚われ、身動きがとれなくなったふたりの想いは──!?

作品情報

作品名
愛人関係 初恋
著者
椎崎夕 
イラスト
水名瀬雅良 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
シリーズ
愛人関係
発売日
ISBN
9784813012504
3.8

(20)

(5)

萌々

(9)

(4)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
5
得点
75
評価数
20
平均
3.8 / 5
神率
25%

レビュー投稿数5

セカンドラブを期待した

シリーズを読み始めた時から、事故の責任は智之だけにあるのか、子供に責任を押し付ける大人達はどうなのか、ずっと悶々とイライラした。
特に高島は子供のうちはともかく、大人になってもまだ智之のせいだと考えるなんて、生野も言っていたけど、智之の罪悪感につけこんだ腹いせで、智之の覚悟を利用した身勝手な八つ当たり。
高島は登場シーンから胡散臭く身勝手で不安定で、最後まで好きになれなかった。
BLはハッピーエンドが好きで読んでるけど、この作品の2人に関してはすっぱり別れて、智之は新しい恋人を作り祖母や兄に紹介するようなラストが欲しかった。
読みながら終始イライラしたけど、その分のめり込んだので、読み終わってしまったことがなんか寂しい。

1

杉原パターンを3冊かけて終了。

椎崎作品のパターンをしっかりと踏襲しています。
好き嫌いがわかれると思うんですが、椎崎パターンが好きな
私は3冊かけて椎崎世界を読むことができて幸せでした。


"受けがぐるぐる余計なことを悩んだ挙句に逆ギレ告白or失踪"
は杉原黄金パターン!
それでも一緒にいたいと押した受けの強さも立派なパターンです。
その受けの強さにいつの時点で攻めが気づくことができるか
(今回は最後の最後でした)というのも椎崎作品を読んでいくときの
楽しみです。



まず受け智之。
過去に許せない罪をおかしていることに起因して、かなり
自虐的な性格です。
自分が譲れば…自分が我慢すれば…控えめに生きて、周囲の
人のことを優先するべきだというかたくなな心。
そのくせ最後は計画失踪。
一成のことを思いやるあまりの失踪と言えば聞こえはいいけど
ひく方向でしか行動を考えることができないネガティブさは
背負っている罪の重さのせいだけではないようにも思えます。




そして攻め一成。
智之のことが好きで好きでしかたないのに素直に言えない人。
智之が過去におかした罪のせいで悲惨な子供時代をすごしたのに
肝心の智之は普通に生きていた(と思い込んでいる)のが許せず
ちょっかいを出し始めたのに、気づけば好きになってしまい、
許せない気持ちと好きな気持ちがせめぎあって自分の心を
コントロールできなくなってしまう。
智之が計画失踪してはじめて素直に好きと認めたけど時すでに
遅く、智之は手の届かないところへ。
1年半後に偶然が手伝って電話越しに会話、居場所を推測して
まちぶせて出会うものの、強引に手を伸ばすこともできない。。。。




智之、一成のそれぞれの気持ちとスタートとなった罪が絡まって
なかなか歩み寄れないもどかしさ、結局は忘れることのできない
罪をふたりで抱えて生きていくことになります。
その経緯がとても丁寧に(3冊かけてw)書いてあって満足でした。
その後の「恋人関係」では一成が自分のしてきたことで智之を
傷つけてきたせいで手を出すことができず、ここぞというときの
押しの強さを持つ受けのおかげでまた身体を重ねることが
できたというお話。
1冊を通してラブさがあまりなかったので萌えx2評価。

5

いきなりコレから読み始めてしまった

愛人関係ってシリーズものだったんですね…。いきなりこの最終編から読み始めてしまった。
でも、面白かったですよ。

BLという枠にはまらず、人と人との関係、あるいはある種の「原罪」めいたストーリー展開に引きこまれて、結局、一気読みしてしまいました。
智之の自虐的ともいえるトラウマへのこだわり、自罰的な思いには途中、正直かなーりイラッときましたw わかりやすくいえば、「過去の過失をいつまでもひきずってんじゃねぇ!」とw
ただ、自分のせいで他人が不幸になったという「自罰性」は多かれ少なかれ誰にでもあるものでそれが不思議な共感を覚えました
(ゆえにイラッとくるのでもありましょう)
智之と一成の関係が単に相手を攻撃的に傷つけあう関係ではなく、自分の存在そのものが相手を傷つけているという罪悪感によってさらに自分が傷ついていくという複雑なものだったので、いったいどうやってその絡みに絡まってしまった関係を克服するのか、のストーリーテリングに引きずられます。
また、智之と祖母の関係も、お互い無理をしたり遠慮したり、自分は相手になにもしてあげられないという諦め感からこじれているため、祖母との和解も見所のひとつでしょう。

ひとつだけ残念な点があるとすれば、最後はハッピーエンドとなるわけですが、その前後の心理のゆらぎみたいなものをもっと細かく丁寧に書いてほしかった。

3

傷つけあう関係に終止符を

シリーズ3作目の完結篇になる今回のお話、泥沼に嵌ったように
愛人関係を続ける二人なんですが、3作目でいよいよ攻め様の方が
精神的に壊れてくる感じでお話が進んでいきます。
前作まではあまりに受け様が可哀そうで子供時分の責任なんて
ある訳ないと思いつつ読んだ作品ですが今回はラストで救われる
関係になっていたのでほっとして読み進める事が出来ましたね。

憎みながらも、自分が言いがかりに近い八つ当たりの感情で
受け様を虐げているのを自覚してる攻め様。
でもいつの間にか憎しみ以外の感情で受け様を縛るようになる
せもそれは自分自身でも許すことが出来ない思いなんです。
そしてそんな思いに悩み苦しみながらも受け様を手放せない
そして攻め様はどんどん追いつめられていくんです。
受け様は攻め様のどんな扱いも甘んじて受ける事が自分に出来る
償いだと、そしてどんなに憎まれても攻め様を好きな気持ちが
あるから、自分から離れる事なんて考えられない。
でも攻め様が自分が傍にいる事でどんどん追いつめられ逆に
精神的に不安定になる事に気づき離れる事を決める。

それと同時に自分がいる事で祖母も攻め様と同じように傷ついて
いると考え、何もかも捨てて自分の過去を知る事のない場所で
生きていくことに・・・
そして2年近くの歳月が流れた時に運命が再び動き出すんです。
初めは祖母が意識不明で倒れた事をきっかけに受け様が知らされて
いなかった事実が弁護士と兄によって知る事になります。
知らない間に自分は守られていたことを、そして自分とは違う
立場で苦しみ悩んでいた者たちがいる事をあらためて知る。

そして攻め様との再会、そこでも受け様の知らなかった事を
攻め様に知らされる、二人の間に起こった数々の出来事は
決して消えないけれど、それでも互いに求めあう心は止まらない。
設定がシリアスなので、これ以上のハッピーな展開は無いと
言う感じのラストだったと思います。

書下ろし部分は愛人関係から新しい関係にスタートするお話です。
もう1度初めからやり直す二人の不器用でちょっぴり臆病な
それでも心が温かくなるようなストーリーになっていました。

2

智之はマゾ?

巻数を重ねるたびに、ハラハラしてイライラしながらも次へ次へと期待が高まっていたこの愛憎物語もこの巻で完結を迎えました。
しつこすぎるくらい丁寧な描写で、しかし衝撃的な「愛人」という立場へ智之を突き落し一成の憎しみの対象であることが明らかにされた第二巻から、今回は一気に物語が動きます。

そこには理不尽で傲慢で、復讐にしては異常なほどの束縛という執着を見せる一成の仕打ちと、それを当たり前のように受け止めて、わが身を嘆くでもなく媚びる為でもなく、ただ悪いと思って素直に「ごめんなさい」の言葉を繰り返す智之の姿。
ここで堪忍袋の緒が切れたら読者負けです(?)
もうこうなってくると、過去の事件や一成に対しての智之の態度は頑固な程に何もかも自分が悪いと悟りきって、自らバツを受けるのが当然としている無意識のマゾなんじゃないかって思う位で、
一度でいいから打ちのめされろよー!屈服しろよー!って思わなくもないんです。

智之を愛人にしてから、常に智之の行動を監視し、自分の店のスタッフと話をするのも厭い、提示に確認の電話をし、キレる一成が毎晩のように智之を抱いて体に無理を掛けても、智之は何も文句を言わず健気なままでいます。
この束縛とも執着ともとれる一成は、ひょっとしてこれが智之への復讐なのか?とも思えたりもするのですが、その割にすごく苦悩してるんです。
不眠もひどくなっているようで、
これで智之が泣いてわめいて、一成を責めたりもすれば、一成も気分が晴れるのかもですが、智之がそれを受け入れてしまってますから、復讐としては意味をなさなくなってしまってるんです。
店のスタッフも、生島も生島の妻も皆一成を、そして智之を心配しているのに、頑として受け入れない智之の頑固さに、2巻までは何となく智之ちょっとかわいそう、なんて思っていた部分がなくなり、智之も悪いんだって思えるように!?
この頑固さ、智之の祖母もそうでしたよね、、なんか血だなwwなんて思えるのですよ

それが色々と変化し出すのが、智之の店に彼の過去を持ちだして破壊してきた輩が現れた時。
この時、智之が小学4年生にして入水自殺未遂をしていたことを知る一成。
その日から外泊していた彼は家に戻り、だけど智之を抱くこともなくなり、めっきり束縛がなくなる。
それがきっかけでもあるし、何より自分に冷たいと思っていた祖母が一番自分を心配してくれていた事実を知った時、初めて彼は自分を内省して、やり直そうと思うのです。
変わる一番のきっかけはやはり肉親だったか、、でもそれだけ長く一緒にいましたからね。
そして、弁護士の多田の助けも借りて、生野にはいなくなることを知らせて、一成の前から智之は姿を消すのです。
それから1年半後、祖母が事故で意識不明になったという知らせでかけつけたことで、更にまた智之の変化があらわれるのです。

結局のところ、一成と智之の関係だけではどうにもならなかった。
一番変わるべきは智之だったのに、彼がかたくなまでに無意識に自分を責め、自分を閉じ込め、他を受け入れているようで寄せつけてなかった。
それを解らせるのは、肉親であるということ。
それらがあって初めて、一成を理解して対等の立場に立つことができる。
ここまで来るのにとても長い年月でした。
店での出会いから愛人になるまでと、なってからの1年、そして離れて1年半。
二人がそれまで抱えてきた苦悩の年月に比べれば短いけど、それでもそれだけ必要だったし、そんなにあいても互いがわすられなくて心をのこしているからこそ、今度こそ恋人としてやり直せるという、スタートラインに立つまでのお話だったのですね。

ぶっちゃけ、それまで長いよ、気のもたせすぎ、とかともチラともおもわなかったわけでもないですが、それなりに、このじれったさとイライラを楽しむことができました。
一成の心の変化は『恋人関係』で前半一成視点になっていることで見えますが、もう少し彼の惑う気持ちが知りたかったかもしれません。
やっとの完結。
激しくキャラクターやシチュエーショに萌えたというものはないのですが、お話として充分に堪能することはできました。
椎崎さんらしいお話だったと思います。
評価は全体を通してのものです

8

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