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キスは痛いくらいがちょうどいい

kiss wa itaikurai ga choudoii

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表題作キスは痛いくらいがちょうどいい

小菅純太,24歳,デザイン会社バイトの留年美大生
波古一貴,28歳,デザイン事務所の雑務担当

あらすじ

金もない、夢もない、したい事もない…。堕落した生活を送っている美大生の小菅純太は、新しく決まったアルバイト先のデザイン事務所で、妙な男と出会う。誰とも口をきかず、目も合わせない、だけどとても綺麗な男。小菅は一瞬にして、この波古一貴(通称ハコイチ)の、神秘的な魅力に惹かれていくのを感じた。
誰よりも孤独で、何にも染まらない純真なハコイチを、独り占めしたい。小菅は少しずつ近づいていくことにするが、ある日偶然、ハコイチの驚くべき秘密を知ってしまい……!!

作品情報

作品名
キスは痛いくらいがちょうどいい
著者
千地イチ 
イラスト
奈良千春 
媒体
小説
出版社
竹書房
レーベル
ラヴァーズ文庫
発売日
ISBN
9784812448809
3.7

(58)

(20)

萌々

(16)

(17)

中立

(0)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
14
得点
215
評価数
58
平均
3.7 / 5
神率
34.5%

レビュー投稿数14

ハコイチさん……!

何人たりともハコイチさんを汚したり、損なうことができない不可侵ともいえる無垢さが愛おしかったです。

それに対して、借金まみれで自堕落な生活を送る小菅のダメっぷりときたら……。
そんな小菅の諦めと足掻きと自己嫌悪など鬱屈した気持ちが作品の中にぎゅうぎゅうに詰まってるけど、どこか嫌いになれませんでした。

デザイナーを夢見て美大受験に励んだ小菅は、受験で完全に燃え尽きてしまったんだなぁと。
素人同然でセンスのかけらもないというわけではないけれど、秀でたものがなければ「無い」も同じという世界で、この先ずっと勝負し続けなくてはいけないという現実に気付いてしまったんだなぁとか、センスと才能の塊みたいな同級生達を目の当たりにして、否応無しに自分を思い知らされ、描いていたはずの道を次第に見失ってしまったんだなぁ……とか。
だからといって逃げまくりの自堕落な生活を肯定できるわけではないのだけど、でも、なんかわかる。

性根は腐っていなかったはずの小菅が缶を持ち出し、ついに落ちるところまで落ちるのか……と思いきや、やはり救ってくれるのはハコイチさん。
ハコイチさんのクズ浄化力、すごい。

それにしてもおばあちゃんの手紙、泣きました。
だけどあんなお手紙を書くおばあちゃんに引き取られて育ったのに、何かにつけて暴力問題を起こしたってどういう事なんだろう……。
けっして騒がしくは無いけれど協調性はなく、文字は満足に読めないのに計算だけは恐ろしいほど出来たというあたりから何となく察するものがあるけれど。

小菅もハコイチさんも「攻めっぽい」とか「受けっぽい」といった安易なBLキャラではないところが、好き。
リバって欲しいなぁ。

1

ハコイチさんが可愛すぎて泣ける(;///;)

一言で表す言葉が見つからない…。
グッときた?
胸を打たれた?とは少し違う。
ううーん、語彙力の無さがもどかしい。
言葉に出来ない引力でグイグイ引き込まれるように読みました。

表紙・タイトル・あらすじ、全部微妙に外れてる気がします。
【どうしようもないほど「好き」って言わせてやりてぇ】(帯より)
甘いお話を連想させるけれど、ちっっがーーーーーう!
攻めにそんなセリフはけるほどの懐はなかったぞ…。
むしろ受けの包容力に助けられてばかりやんけ…。

ーーーと、外見の印象ほどホワホワではなかったのですが
優しさがジワジワと沁みて、受けの純真さに泣けるお話でした。


純度100%のものに触れたとき、
浄化される気持ちと、相反する気持ち。
綯い交ぜになる心に救われたり、逃げ出したり。

攻め・小菅はクズでどうしようもないなと思う点が多々。
自分の自堕落さを自覚しながらも言い訳に言い訳を重ねる。
抜けだすチャンス・恵まれた環境はあるというのに
卑屈精神ばかりが口先に立つような人です。
でも悪人ではないのが憎みきれない。
小心者だけど内に秘めてるものはあるのですよね…。

受け・ハコイチさんは純度100%の塊のような人です。
心が無垢で、真っ直ぐ。
「ぼくは、バカだから」と辿々しく話す姿が愛おしく思えます。
"バカ"というのは勉強が出来ないという意味もあり。
読み書きは小学生レベル、数字にだけは滅法強い。
心根や話してる姿は小さな子供のようなのに、
彼が背中に背負ってるものはおよそかけ離れたモノで…。
それらすべて彼の生きてきた道にありました。

2人が出会い、不安に揺れる時間を優しさで埋めながら、
小菅の借金&進路問題・ヤクザなどが絡んでストーリー展開していきます。

出会いは奇跡にも見えました。
悪いことがゴロゴロ転がって転落して行くときは
どうしても悪いモノを引き寄せると思うのですね。
でも悪循環の中で小菅には1本の糸が垂らされた。

その糸をたぐり寄せたかと思いきや、自ら切り捨てたり、
七転八倒し正常な判断が出来ず。
ハコイチさんを守りたくて、
ハコイチさんに守られたくて。
そんなどうしようもない小菅を見捨てなかったハコイチさんは天使にも見えました。

もっと早くハコイチさんと出会いたかったと言う小菅に対し、
「これからでもいいよね…」
「だって、出会えたんだから、いいよね…」
と返すハコイチさんに涙が止まらなかった(;///;)
ハコイチさんの浄化作用は次元を越えて私も癒やされた。

小菅の良かった点は、初めてセックスに及んだ時です。
その前にあった"事"のせいでハコイチさんの感情が高ぶり自分を見失ってる状態でした。
このまま衝動的に進むのはダメだと、優しく抱いてやりたいんだと、
1度落ち着かせていたシーンに愛情を感じました。
傷ついたハコイチさんに「好きだよ」と何度も口にした言葉は沁みるモノが…(;///;)
純度100%の塊のようなハコイチさんの中にあるシコリ。
小菅の愛情で少しずつ解かれていくようでジンワリしました。

…まぁでも、初セックスの翌朝ですべて台無しでしたがね(#`皿´)ウガー
ハコイチさん見守り隊(爆)が出張ってきてちょっとスッキリ?かな。

冒頭はハコイチさんは孤独で寂しい人なんじゃないかと感じたけれど
周囲からめいっぱい愛されてたのが伝わってこれまた泣けました。
終盤は号泣しながら読み終えました。

小菅には生まれ変わった気持ちでハコイチさんを幸せにしてあげられる男になって欲しいし、
ハコイチさんは小菅に今までとは違う世界を沢山見せて貰って幸せになって欲しいです。

1

おもしろかった〜

萌えたとか萌えなかったとかいう評価をするのは難しいのですが、何気なく読んでみて小説として面白かった一冊です。
消化不良な部分とか、突っ込みたくなる部分もあるにはあるのですが、定型に流れず個性的な作品に仕上がっているのが良いと思いました。デビュー作なんですね。うまい作家さんだと思いましたし、他の作品も読んでみたいと思いました。

ダメダメな主人公と謎の人物・ハコイチさん。実に不思議なカップルですね。

タイトルは、作者様がつけたのか編集担当の方がつけたのか分かりませんが、ちょっと作品の雰囲気に合ってないような気もして残念に思いました。

2

強くてピュア

表紙に惹かれて手にとってみました。
ちるちるの受け攻めだけをチェックして読み始めたんですが、そっちが受けかーい!…とビックリ。
でも読み進めてるうちに、この受け攻めがはまってるように感じ妙に納得です。

借金があり将来に希望が見出せない小菅と、頭が悪く壮絶な過去を持ちながらも心優しいハコイチ。
小菅はダメ男(理由があるから憎めない…!)なのでさておき、ハコイチが愛おしくって!!
高身長のイケメンなのにバカだから喋るなと言われその言いつけを守るほど素直だわ、強いわ、背中に刺青を入れた経緯は切ないわ…とギャップ萌えな人物でした。

小菅の借金元はそうなんだろうな〜とは思ってたし、偶然すぎるだろ…とツッコミたくなる箇所はありました。
しかし読後感が非常に良かった〜。
根っからの悪人が居なかったからかな?

今作がデビュー作との事、凄く読みやすかったです。
別の作品も読んでみたくなる作家様でした。

0

人生はシンプル。

作家さまデビュー作。奈良先生のカラフルなカバーイラストに心踊ります♪

読みやすい文章、脇キャラの濃さ、メインカプが惹かれ合う条件、エッチシーン。(喘ぎ過ぎない受け←重要)さりげなくて素晴らしい。ツボ過ぎる。

借金を背負って苦学している美大生の小菅純太と、彼のバイト先であるデザイン事務所社員、波古一貴(ハコイチ)のお話。ハコイチさんという男の人生に全て持っていかれちゃいました、わたし。

総勢五人の小さな事務所で働くハコイチさんの仕事はデザイン以外に関すること。資料整理やお茶汲み、昼食の準備、そしておそらく、経理関係。黙々と仕事をするハコイチさんに新入りの小菅が話しかけていると、やがて彼にだけ口をきいてくれるようになって、二人は、あ、あんなことに…はゎゎゎ。。。

美大に入学後、自分の実力の程度を知って受験前の情熱を失ってしまった小菅は、遊びに逃げて借金まみれになった。取り立てに怯える日々の中、小菅の救いになってくれていたのがハコイチさん。なのに、小菅はハコイチさんを裏切ってしうまうのか?

濡れ場に滾りました。滾りますとも。久し振りに滾りましたわ。ハコイチさんの背中には虎の彫物が。

彼の人生、物語でぜひ追っていただきたいです。

おばあちゃんからハコイチさんに宛てた手紙に、思わず涙しました。ハコイチさんが、彼を大切にしてくれた人たちから受けた人生の指針はとてもシンプル。それを素直に実践してきた彼の素朴な生き様に、慰められました。

2

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