そのとき…男の愛は牙を剥く──

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表題作ラ・テンペスタ

元刑事の構成員 宮城文雄 30半ば
組長の息子で内気な大学3年生 生野孝義 20歳

その他の収録作品

  • リビラチオーネ
  • あとがき

あらすじ

父親がヤクザの組長である孝義は、東京を離れ地方で平凡な大学生活を送っていた。ある日、抗争が勃発、孝義の身辺警護にと組員・宮城がやってくる。寡黙で忠実なその姿に孝義が心を許した途端、男は凶暴な本性を現すと彼を凌辱し……!?

痛いほど不条理な愛の嵐
水原とほるが描く究極の執着愛です!
(出版社より)

作品情報

作品名
ラ・テンペスタ
著者
水原とほる 
イラスト
葛西リカコ 
媒体
小説
出版社
ムービック
レーベル
LUNA NOVELS
発売日
ISBN
9784896018493
3.2

(24)

(4)

萌々

(7)

(9)

中立

(0)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
7
得点
75
評価数
24
平均
3.2 / 5
神率
16.7%

レビュー投稿数7

題名でほぼネタバレ・・美への執着愛

水原先生のややソフトな狂気溢れる執着愛。
題名と内容を象徴する美術品が二つ登場。

一つは、タイトルのラ・テンペスタ 原題 “La Tempesta” 「嵐」
母乳を与える座る女性の右の地面に、乳児が座る
背後の雷雲、周囲の大地、水、大気、火
・・謎の多い「聖なる会話」と言われる作品。

もう一つは、作品中に登場する美術品、”Vergine delle Rocce” 「岸壁の生母」
聖母マリアと幼児キリストを礼拝する洗礼者ヨハネという主題、
受難の予兆を表す象徴的植物トリカブト、シュロの葉、アヤメ。

暗示するのは、親の庇護から離れる子供が味わう動乱。
でも内容は、攻の一目惚れで起こる受の嵐。

1

雷に打たれたかのような出会い

ラ・テンペスタ 
イタリア語で「嵐」という意味なのですが、ジョルジョーネというイタリアの画家によって描かれた「ラ・テンペスタ」というヴェネツィア派のルネッサンス絵画がモチーフとなっています。
この絵は「嵐」と名前が一応ついてますが、本当に嵐というタイトルでいいのか、そもそも描かれている内容は何を表しているのかがはっきりせず研究者によっても解釈が様々異なる絵画なのですが、まさかこの絵を元にBLが生まれるだなんて想像もしていませんでした。
この絵をググっていただければわかると思うのですが、野外で授乳する母親とそれをチラ見する男という絵なのでどこにも腐要素がないんですよ!
男同士ですらないのに、これを元にBL作品が生まれちゃうとは!という衝撃を受けました。

さて内容ですが…。
ヤクザの組長を父に持ちながらも組との関わりを持たず、京都で平穏にイタリア美術を学んでいる孝義の前に、宮城という男が「お前を守る」といきなり現れます。
父の組で抗争が勃発したため警護のために送り込まれてきたのですが、傲慢な命令口調で有無を言わせない雰囲気といい、あまりにも他の組員とは毛色が違う宮城。
おまけに「やっと会えた」だの「おまえは俺のもんだ」だの「ほしいのはおまえだけだ」だの言った挙句に、無理やり押し倒してきて……。

とにかく超〜執着男です。
組長に命令されたから警護にきたのは確かに事実であるけれど、あくまでそれは坊ちゃんに近づくための手段にすぎない。
なんでこんなに孝義に執着しちゃってるのかというのが後半に明かされていきます。

水原さんは初読み作家さんなのでちるちるのプロフィールを見たら
「受けが容赦なく痛めつけられる事が多い水原さんの作品。
痛めつけるにはそれなりの深い理由があり、ストーリーづくりが上手い。」
とあり、思わず納得。

後半は「それなりの」「深い」理由が描かれてまして、12歳のぷるぷる震えるいたいけな美少年に一目惚れしてしまった己はショタコン……などでは決してなく、あれは至高の美だったんだ!!神からの啓示だったんだ!!と力説しまくってる宮城…おつ……みたいな感じでした。
あれを深いと感じるかどうかは別として、とにかく受け様に出会う前、出会った後で人生がガラリと変わってしまった…ドッカーン!と雷に打たれちゃったんだなぁと思いました。

友人達と談笑しながら歩く中学時代の孝義の姿を影からこっそりと見つめていたという宮城の述懐に至っては笑うところでは全然ないのに、なんかもう笑ってしまいました。
ただの乙女じゃん……みたいな。

宮城に対していいなと思った点は、孝義がイタリアルネッサンスを学んでいるのでフィレンツェ留学の話が出るのですが、「戻ってくるというなら待っている」と送り出すんです。
もし「ダメだ!俺から離れるな!!」みたいなことを言ったら、私の宮城に対する評価は地に落ちていたはずなのですが、半年の話が延びて一年になってもそのつもりで送り出していたという宮城、なかなかやるじゃん!と思いました。
ただし「待ってる」の前に「もうずいぶん長くおまえを追いかけて、俺も少しつかれた」と言ってるので、宮城でも疲れることってあるんだなぁ…とついニマニマしてしまいました。

4

ドラマチック展開が読みたい時に最適なお話

電子書籍で読了。挿絵なし(このイラスト、見たかったな~)。あとがきあり。

ヤクザの家に生まれた孝義は実家を出て大学で美術史を学んでいます。母は既に他界していますが、父によって孝義は慈しみ育てられました。家に出入りしている組員との交流はあるものの、組とは無関係な暮らしを続けてきました。しかし、父の組をめぐる抗争が勃発し、巻き込まれることを恐れた父が、孝義の身辺警護のため宮城という男を送ってきます。今まで接してきた組員とは異なる雰囲気を持ち、父親の安否など詳しいことは全く話さないままに過剰とも思えるほどの制限を強要する宮城に孝義は反発を覚えますが、宮城に「お前は俺のものだ」と触れられて恐怖を感じます。しかし、刺客に襲われた孝義を恐れる事なく身を挺して守る姿を見て、孝義は混乱していきます。抗争が長引くにつれ、孝義の身辺はさらに危険になっていくのですが……

水原さんのお話をそれほど読んでいる訳ではないのですが、読んだもののほとんどが『運命』っていう言葉が頭に浮かんでくる様な話なんですね。
今回もそう。
孝義は知らずして宮城の運命を狂わせちゃっている訳で。
いやー、でも、本人が気づいてやっているのではないので、孝義としては怖かっただろうな~と思うのですよ。私は「話せば解る」派なので「もっとちゃんと話せばいいのに」とも、身も蓋もなく思うのですが、まあ、そうなっちゃったらドラマにはならんしな。
『昭和の男』とでも言うべき宮城あってこそのドラマチックな展開。

あ、参考までに、
水原作品の中では、痛くないです。安心してお手に取りください。

4

狂犬に愛された天使

思わずタイトルの絵画をググってしまいました。
確かに美しい。
こういったことを話に盛り込めるのがすごいと思います。

攻め様が登場したときから少し様子がおかしいです。
坊ちゃんに対して、偉そうな態度、そしてちらちら見え隠れする執着w

受けの孝義はいい子ですね。やはり生まれが組長の息子なのでいろいろと苦労することもあったのでしょう。ゲイですし。これからも苦労することが多々あると思いますが、是非攻め様が邪魔者を排除し続け、孝義の生き方を守り続けてほしいです。

らぶ・エロだけじゃなく、ストーリーとして楽しめました!

3

無茶ぶり加減が半端ない攻め様~

元刑事でヤクザの攻め様が、そのヤクザの組長の一人息子である受け様を
ビックリする程の自己中な執着愛で捕まえ逃がさないように愛するお話です。
だからと言って監禁ものではないのですが、それに近い雰囲気もあります。
訳も分からず狙われた受け様がお気の毒で、訳を知った後もその一方的な
理不尽な執着愛には脱帽してしまうような内容なのです。

受け様は関東でも大き目の組のヤクザの組長の息子なのですが、
亡くなった母親の希望もあり、受け様は実家からなるべく離れた場所で暮らしていて
綺麗な物や美しいものが好きな受け様はルネッサンス芸術を勉強していて
京都の大学で学んでいたのですが、ある日眼つきの鋭い男が現れ受け様の護衛だと・・・
いぶかしむ受け様ですが実家での抗争の詳細を知り、納得出来ないままに従う。

でも、この攻め様、護衛だと言う割には組のお坊ちゃん相手に尊大な口を聞くし、
交友関係も必要以上にチェックしたり、挙句コンパで女性を紹介されると聞き及び
受け様の下半身のお世話まで無理やりしてしまうような横暴さんなのです。
そんな事をする攻め様に反感や不信を抱きながらも初めて身の危険を本気で感じる
出来事があり、攻め様に助けられ、自分の為に怪我をした攻め様に罪悪感を抱く。
そしてちょっとしたプライベートの行き違いで攻め様に今度は無理やり抱かれ、
受け様を自分のものだと言い放つようになる攻め様に受け様は動揺する。

一応、再会ものでもあるのですが、一方的と言った方がいい過去の出来事が
受け様の一生を、そして攻め様の今まで生きてきた全てを覆してしまう事に・・・
下手なストーカーよりも怖い思い込みの攻め様なんですが、無理やりでも
受け様に受け入れてもらえたから良かったものの、下手したら受け様に害をなす
存在として抹消されても文句が言えないような攻め様でした。
過程環境から荒んでいた攻め様が受け様を天使だと、美しく守るべき存在だと
思った事から始まる執着愛、理不尽だけど、面白かったです。

4

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