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表題作天涯行き

遠召に拾われた男 高知英利 24歳
ある人を待っている男 遠召結生 26歳

あらすじ

名前しか知らない相手と、夜ごと激しく抱き合って眠る──。旅の青年・高知(たかち)をなりゆきで家に住まわせることになった遠召(とおめ)。戻らない恋人を待ち続ける遠召と、人懐こい笑顔と裏腹に、なぜか素性を語らない高知。互いの秘密には触れない、共犯めいた奇妙な共同生活。この平穏で心地良い日々はいつまで続くんだろう…? けれどある日、高知が殺人未遂事件の容疑者として追われていると知って!?

(出版社より)

作品情報

作品名
天涯行き
著者
凪良ゆう 
イラスト
高久尚子 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199006715
3.7

(158)

(57)

萌々

(51)

(26)

中立

(9)

趣味じゃない

(15)

レビュー数
29
得点
576
評価数
158
平均
3.7 / 5
神率
36.1%

レビュー投稿数29

ミステリーっぽい

豆腐屋の気まぐれで高知を居酒屋に案内することになった遠召。酔いつぶれた高知をそのまま家に居候させることになる。

2人の同居生活を通してわかるのは名前、年齢、人となりだけ。そして2人にはそれぞれに何やら不穏な過去がありそうだということ。

どちらかの過去だけが謎に包まれている…というのではなく、2人ともに過去が謎というところがミステリーみのある展開のお話でした。

ここからはネタバレになってしまいますが、高知は愛する姉を死に追いやった義兄を刺したことで警察に追われていて、遠召は生い立ちから家族の愛に恵まれず、異母兄に心身ともに支配される生活を送っており、身体的な支配を逃れた現在においても心理的には支配下にあるというとても不憫な2人でした。

2人がお互いの過去を打ち明け、相互救済していく…とざっくり言うとそんな一文に纏まってしまうのですが、生きていく業というか、逃れられない苦しみ、自分や他人への怒り…みたいな、自分一人ではとても抱えきれそうにない重い荷物を2人で分け合うというような甘いものでは無いのだけど、お互いに支え合ってやっと立っていられる、というような不安定さをずっと感じていました。

なので途中まで「もしやこれはメリバなのでは?」という疑いを払いきれないままラストに突入するという、凪良先生作品では初めての体験をしました。

そしてタイトルが相変わらず良いですね。「天涯生き」。天涯の意味を調べてしまいました。だからこそ、2人のその後が読みたいなと欲に駆られてしまいます。2人が何に追われることも、何に縛られることも無く、心から笑いあっている未来を読みたいです。

0

罪は罪、なんだよね。やるせない。

天涯=空のはて。また、故郷を遠く離れた土地。 // 
遠い土地にきた高知は、何かから逃げている人。
軒を貸す遠召は、戻らない恋人を待つ人。 
 
遠召の勧めに従い、自主する高知。マットウに贖う事を選ぶ。
凪良先生の小説に登場する弁護士は能力低くて、被疑者を擁護しきれないパターンが殆ど。
この作品でも、高知に厳しい判決が出ている。切ないなー。

入所したとき、「待たなくていい」と断っていたけど、
出所した日が決まると、高知は緊張して眠れなかった。

豆腐を食べる途中で、寝てしまった高知の傍に座る遠召。
自分を待つ優しい人が出来て良かったね、高知。

架空の登場人物なのに、
読了後真剣に、二人の新しい毎日が幸せであるように祈ってしまった。

1

傷ついた魂が寄り添うやさしい世界

再読しました。
今読むと、「流浪の月」と重なるところ、通じるものを思わされます。
プロトタイプと言いますか。
家族のことで心にしこりを持つ二人が出会って、共同生活をするうちに、傷ついた魂が寄り添い、無くてはならないかけがえのない関係になっていく。二人のそれぞれの視点から描かれていて、とても好い本でした。
二人が隔絶されたような優しい街でのんびり過ごす場面とか、それぞれの傷に立ち向かうこととか、逃避行のような旅とか、とにかく心情描写も情景描写も丁寧です。
美しく儚くやさしい、そして強い作品と思います。

0

june発現代、みたいな。

重くシリアスなのだけど、どこかに「抜け」のある作品でした。
メインの二人はそれぞれに重いものを抱えた設定で、暗い闇を背負った者同士が出会い、どうしようもなく惹かれあっていく……という展開は往年の(?)june系の小説にでもありそうなものです。
しかしその行き着く先と淡々とした描写が現代的なんですよね。

ハッピーエンドの入り口に立ったような所まで描かれていて、一筋の光が見える結末です。(この先も決して楽なことだけではないでしょうけど)

丁寧で叙情的な心理描写が多い凪良先生ですが、今作では抑えめの表現になっているのも良かった。抱えているものが重いだけに、あまりウェットになると辛すぎるお話になっていたと思います。

大きなカタルシスがあるわけではないのですが、不思議に気持ち良い読後感の一冊でした。

0

はっきりと言わない優しさは だめなのか?

親として辛かったので、神にしたくても できなかったー。
BLとしてではなく、子供に対する思いが強く、そういう読み方になってしまった。
今回の本を読んで、ああ、子供が成人するまでは石にしがみついてでも
生きなきゃ とすごく思いました。(いや、不治の病とかではないが(笑))
そう、他の方のレビューがいっぱいあるので、書きませんが
歪んだ方々に歪められちゃった二人の、
二人で寄り添って生きていくまでのお話です。
決して軽いお話ではないです。

私はちゃんと子供と向き合えて、愛してるって伝えられているかなあ。
こんな人生をさまようような子供(もう大きくなってるけどさ)の話を
読むたびに、せつなくなる。
いろんな背景で子供は生まれてしまうけど、でも生んだからには
大人になるまでに、愛情を注がなければ、いびつになっちゃう。
最後、あの野郎(受け義理兄)は 自分で母親から離れようと頑張ったので、
まだ救われた気分になるけど、あの義理母は誰が救うんだろう。
あの逃げてばかりいる義理父は?どうして歪んじゃったの?

かたや、逃げてばかりいる受け義理父だけど、
それは結果として一つの優しさなのでは とも思ったり。
はっきり言うと言葉になって、記憶になって、
受けさんの中にしっかり根付いてしまう。
知らないことで聞かないことで覚えないことで
過去の事にするのが、早くならない?
あの義理父は大嫌いだけど、でも、なんか救いを見出したい・・・

人生に正解はない ですね。
二人でなら、より強くなる。
二人で歩いていける幸せをかみしめてほしい と強く願います。
あ、二人じゃなかった。ひやし飴色の犬 バカ エリも ですね!

5

奇跡のはなし

BLって一つの理想をみせるような、短い夢をみせるようなものだと思います。
でもこの作品ではエリもユイも完璧な人間ではなくハッピーエンドながらみんな深い傷跡がのこっています。
それでもこの物語がある一つの理想を描いているのは、ハッピーエンドで終わることができたのは、ピタリとはまる人に出会えた奇跡を描いているからでしょう。
いろいろな愛のかたち、人を殺すということ、許すということ、わかりあうこと、たくさんの重いテーマがBLという枠の中で丁寧にしっかりとかかれていました。
BLというジャンルからこの作品が生まれてきてよかった。
またこんなBLが読みたいですね。

4

シリアスだけど読みやすい

読後感がとても良くて自分でも驚きました。話の内容はものすごくヘビーで、主人公二人とも重たいものにとらわれています。しかし、凪良さんの文章の書き方もあり丁度いい感情移入が出来ました。

萌えはあまり感じませんでしたが、純粋に先が気になる内容で一気に読んでしまいました。二人の関係は共依存に近いかもしれませんし、正しく生きてきた二人ではありません。しかし、正しくない二人だからこそ唯一無二の存在なんだと、思います。
萌えは少ないと書きつつも後半の、遠召の健気に高知を想い続ける様子はとてもよかったです。
今は二人の幸せを願うばかり....

1

逃避行といえば。

一つの作品の中でユーモアとペーソスを交えて描ける技術も素晴らしいですけれど、コメディ・シリアス両方を描ける作家さんって、やっぱりスゴいなぁと思うんです。

サスペンスはあんまり好んで読まないので、このお話のようなソレっぽい感じの「風味」だと気負わずに読めて自然と引き込まれました。遠召と高知の視点が交互に配置された章立ても、二人ともあまり自分のことを語りたがらない境遇にある人物ゆえに、自ずとそれぞれの過去に興味をそそられる効果を増幅しています。

遠召の住む町にフラリとやって来た高知には姉がいて、彼女が好きだった"Calling you"という曲が作中に出てくるんですよね。その世代の者にとっては映画「バグダット・カフェ」を思い起こさせたりして、物語を読み進めていく上で主人公がストレンジャーと心を通わせていくイメージがリンクするなど、地味ながらオツな演出が仕込まれていたりするんです。今ではもう古い映画といっていいんだろうけど、トシを感じちゃうなぁ…。

遠召の過去はこのご時世のBLとしては珍しく思えるほど古典的にヘヴィなもので、なかなか意表を突かれました。高知も遠召の前で見せる朗らかな姿からは想像できない一面を持つ人物で、そんなワケありの二人が本当に一時だけ短いハネムーンを過ごすのですが…。二人は再び一緒になれるのか?物語は明確な結論を出さずに終えるのですが、それがまたイイんです。

愛や信頼のある関係って、相手の幸せを考えて自身を犠牲にすることではなく、相手の要求をきちんと聞けること。と同時に自分の要求を相手に言えること。それができていたら、この物語に出てくる誰もがきっと壊れることはなかったかもしれません。遠召と高知は、ずっと囚われていた忌わしい過去に向き合い決着をつけるため、運命的に出会ったラッキーな二人なのかな。

重めの作品ですが、凪良先生ってこういうお話もお描きになるんだと、守備範囲の広さに感服させられた作品でした。…けど、そういえばこれまで読んできた先生の作品って、家族や家庭に恵まれない不憫な受けばかり出てきていたのを思い出しました。。ってことは、実はこういったタイプのお話の方こそ得意とされているのかもしれませんね。

10

淡々と

凪良さんの作品はいくつか読んだことがありますが、ここまでシリアスなのを読んだのは初めてでした。
もう沢山の方がレビューされているので、ストーリーについては書きませんが、この作品が抱えている重さにしては、文章は淡々と書かれていて、それ程重くなりすぎない印象を与えているような気がしました。
主人公の2人どちらににも書き手が感情移入させない書き方というか、そんな風に感じました。
それでもラストにはちょっとグッと涙をこらえなければならないような感情が高まるシーンがあって、読んでよかったなと思いました。
淡々としている、とは書きましたが、かなり劇的な展開があって、先が余り予測できない作品だと思います。
決して言葉数が多い2人ではないのですが、その語りすぎないところが切なくて、私は結構好きでした。

2

ミステリーBL

最近「愛しのニコール」の影響で、凪良先生の本を沢山読んでいます。普通は先生特有の作風ってあると思うんですけど、凪良先生の作品には色々なテイストがあり、その中で自分にハマるものやハマらないものがあります。
今回の「天涯行き」は、その中でもハマらなかったものの一つです。あらすじを読んで、気になって購入してみました。
ハマらなかった主な原因としては、キャラクターに愛着が湧かなかったからだも思います。私は 特に受けキャラに萌えを求めてるので、それを感じられなかったのは残念でした。 ただ、過去に問題ありで心に傷を負っているため、過去から前に進めない遠召の姿がみていて切なかったです。そして、彼の過去を縛っている人は意外な人物でした。
一方の攻めキャラである、高知も何か秘密があるようで...というミステリーチックなお話なのですが、彼の秘密は思ったよりも軽めでした。軽いというか、想像の範囲内。
お話は二人の目線が交互で進んでいきます。この書き方も珍しいと感じましたし、臨場感が増していた気がします。

1

凪良さんいいタイトルつけるなぁ~

サスペンス的なBLと感じない作品をよんでる感じがしました。
先が気になり最後まで一気に読んでしまいました。

0

二人の天涯

不思議なタイトルだなーと思っていました。「天涯」とは、①空の果て、②遠く離れた地、という意味だそう。物語を最後まで読んで、絶妙なタイトルだなーと思い直しました。

遠召と高知が出会い、身体を重ねるまではさらりと描かれています。そして、いつの間にか揺れ動いていく二人の感情と、胸に抱えたそれぞれの秘密が、ゆっくりと丁寧に明かされていきます。夜が明けるように、視界がひらけるように。二人が辿り着いた「天涯」に胸が詰まりました。

クライマックスーー私は、このまま二人が心中してしまってもそれはそれで幸せなんじゃないかと思いました。BLに限らずどんな理由であろうとも死にネタは好きじゃないのですが、本当にそう思ってしまった。それぐらい感情が昂ぶって、あの一瞬、二人の間にあった幸せの形がとても崇高なものに感じられて、涙が出そうになりました。

それでもやっぱり、過去と未来と向き合う道を選んでくれてホッとしました。そして、その後の遠召が可愛すぎて笑い泣きしてしまいました。これまでを取り戻すぐらい、二人には幸せになって欲しいです。

3

苦しみ悲しみを乗り越えた先には

あてもなく知らない町にやってきた高知は、その町に住む遠召の家に住まわせてもらうことになった。
お互いに秘密をもった二人は、互いのことを詮索することもないまま同居生活が始まります。
自分のことを語ることもなく最低限の日常会話と何かを忘れるように体を重ね合わせる行為だけの二人だけど、何故か心地よく。

だけどそんな何気ない月日もずっとは続かず、二人とも隠していた秘密に向き合わなければいけない時が来てしまいます・・・

遠召の家庭環境の異常さ、高知の大事な家族を失った悲しみ。
特に遠召の過去は重く読んでいて辛くなりました。
でもお互いを支え合って前に進んだ二人が幸せになれて本当に良かったです。

2

辿り着いた果て

凪良さんの作品を読み始めたばかりですが、どうしましょう。
この話も大好きです!

暗い話ですが、ちゃんと消化出来ているので不快感はなかったです。
世捨て人の様な遠召と逃亡犯の高知。穏やかな日常の些細な会話がたまらないです。
それから最後の逃亡(?)シーン。
辿り着いた此処が果てなのだからという言葉が胸に沁みます。
こんなに暗く救いのない二人なのに、何故かとても穏やかに読めました。
どんなに深淵でも、必ず光は差すので凪良作品が好きなのかもしれません。

ただ、ちょっと遠召さんの設定は盛り過ぎかなあ。近親相姦の禁忌はちょっとそこだけ現実味がなく浮いているので、母が妹の旦那と不義を犯したあたりでよかったのでは。

高知さん、戻ってきたら指輪、嵌めてあげてくださいね。
末永くお幸せに。

2

未来はあるか、約束はあるか。

古い平屋で一人暮らしの遠召。
縁側でのんびりビールを飲んだり、豆腐屋に行ったり、自由気ままな生活……に見えてその内実は自分を支配する存在に怯え続けている鬱蒼としたものだった。
そんな遠召の前に現れた高知は太陽のようにプラスの存在。しかし彼もまた後ろ暗い秘密を抱えている。
程よい距離感を持って関わる二人の間に徐々に芽生える想いに胸が痺れました。
遠召の過去の話は特にしんどいですが、片膝を立てて孤独を抱える遠召が高知に心を開いて一緒にクッキーを食べたりスイカを食べる約束をしたり、犬小屋を作られて「エリ」と名を付けると約束したり、そんな些細なやりとりがとっても愛おしかった。
素性も知らない行き当たりの二人が、未来の「約束」を交わすようになり秘密を明かし逃避行するに至るまで。
高知が遠召への恋心を自覚する瞬間の描写にはおもわず全身に鳥肌が立ちました…!

高知をいつまでも待って、愛犬のエリと帰りを待つ遠召。
最後の約束が「一緒に暮らそう」というもので心から良かったと思えた。

4

暗いお話でしたが最後はハッピーエンド

受も攻も普通ではない過去をもっていて、2人とも自分を否定して生きている。みたいなお話です。
人には言えない過去を持っている2人だから分かり合える部分があり、許しあえる部分がある。胸がきゅんとなるよりも締めつけられるような息苦しさを感じました。
読んでいて苦しかったぶん、ハッピーエンドの結末に涙がでました。
凪良ゆうさんの作品を読むようになってから私の涙腺が壊れたように感動が溢れてしまうようになりました。

1

悲しみの先に光が射す様な・・・

みなさん書かれているように、確かに重く暗いイメージがある
シリアスもののように感じますが
それ以上に、人間として考えさせられるという意味で深いストーリーだと思いました。
内容が、殺人未遂、逃亡、近親相姦、家庭崩壊、浮気、、裏切り、自殺・・など
どれをとってもマイナスなイメージしかわかないワードばかりが
このお話にはてんこ盛りで、どう考えても暗いのですが
高知と遠召が二人で過ごした日々は、そんな暗さなど感じさせない
なにか昔懐かしい『ふつう』という最高の環境。
平屋の家、縁側、ビールに枝豆、花火にすいか・・・そして美味しい豆腐
甲斐甲斐しく掃除をしたり、遠召のために食事を作る高知。
そして毎日のように重ねるからだ・・・
普通の暮らしって何か最高なんだなぁ・・・と思わせてくれた。

高知と遠召が逃亡するところはスリルの中にも幸せやロマンスがあって
この幸せな時間は明日で終わると知っていて、
愛し合う二人のその時の気持ちを思うと、何とも言えず胸が締め付けられる思いでした。
人を傷つけ逃げていることは確かにいけないことで・・
でも、高知の気持ちを考えるとなんとかならんのか~と叫びたくなるような
亡くなったお姉さんの旦那に、やりようのない怒りを覚えたり
普通のほのぼのBL小説とはまた違った、ハラハラドキドキそしてイライラ感がハンパ無く
その分、高知が服役中の3年半、遠召が毎回面会しながら
本当にずっと健気に帰りを待ってたことが、すごく嬉しかった。
その気持ちに答えた高知もきっと勇気が必要だったし、だからこそ喜びも大きかったんだと思いました。

豆腐屋で出会って・・・また豆腐屋で再会する・・・

シリアスだけど最後に、二人のこれからに光が見えているようなラストだったので
安心して読み終えることができました。
辛い過去があり過ぎた二人に、どうかお幸せにと祈らずにはいられない
そんなお話でした。

2

シリアス

重く重くでも重いだけじゃない。

物語は受け側と攻め側と二人の視点で交互に話が進められていきどちらも重く苦しいものを背負っていてどちらもそれを出さずに話は進んでいくのですが、いざパンドラの箱を開けてみると重いこと重いこと…。

特に受け側は本当に良く生きていたよねって思えるほど苦痛だったのではなかろうかと心配になるほど酷かったです。
でも攻めの一言「生きててくれてよかった」って救われたと思いました。
受けだけでなく読者としての自分が…

体の繋がりもあるのですがそれだけでなく話がしっかり作られていて、悲しいところはきちんと悲しい…
けど希望もあるよっという終わり方で読み終わってモヤモヤすることはありませんでした。

只の一読者としてすんげー偉そうなんですが本当に話によってあげたり下げたりが上手い作者さんだと思いました。

ハピエン厨の自分としてはシリアス過ぎるのは苦手なんですがどうしても読まずにいられない作者さんです。
この天涯行きに関してはシリアスではあったのですがきちんと気持ちのいいとこまで書いてくださっていたので本当に良かったです。

1

2人の間違ってしまった過去

重たいものを背負ってます。暗いものが苦手な方は注意!!

2人の出会いは豆腐屋さん。行くところがないわけありの高知を遠召が家に住まわせます。2人は何があったか、お互いの事は言わないし聞かない。
そのまま不安や寂しさを埋めるためにセックスをする。ある日遠召に待ち人からの手紙が来ます。それを機に2人はそれぞれの過去と罪と向きあう決意をします。

高知は本当に家族が大事だったんですよね。やり方は間違ってしまったと後で後悔をしてちゃんと罪を償います。本当に良い人なんですよ。
ただ怒りに任せて間違ってしまった罪。

遠召に関してはもう家庭環境が可哀相としか・・・。子供の頃に本当の愛情を注いでもらえなかった遠召。唯一守ってくれる存在が義兄の充。でもその兄も狂っています。
遠召も誰にも助けを求めることなく間違ってしまった過去。

2人には拭えない過去を背負ってても幸せになってもらいたいですね。

はっきりと好みが分かれると思います。でも重たいものが大丈夫な方はぜひ読んでいただきたいですと思いました。

2

何もかも綺麗には収まらない。

夏の夜中に読み始めたら、止まらなくなってしまい朝が開けるまで読みました。
さすがの凪良さんです。受け攻めの交互のモノローグで少しずつ謎を明かしていくのと、先の展開が全く読めず気になって、どんどん読んでしまいました。
暗かった部屋がどんどん明るくなってくる様子と話の内容や情景が一致していって、より味わい深くなったような気がします。 不健康ですが、この作品の読み方としてはオススメです。笑
いつものことながら、読み終わった時には枕はびしょびしょで、でもとても満ち足りた気分でした。

ダークシリアスな方の凪良さんの本領発揮で、暗く重い話と評価されていますが、想像していたより暗くはなかったです。高久さんのイラストと相まって、とても情景の美しい映画のようでした。
ただ、近親相姦や凌辱という重たい設定に好き嫌いが大きく出る話だと思います。
しかし、同じく暗い重いで定評のある木原さんとはまた少し違い、凪良さんは甘さと優しさをたくさん用意してくれています。
話自体は萌えというより、凪良さん特有の、サッパリ簡潔な文章でぎゅっと胸を苦しくさせる泣ける描写がメインですが、攻の高知の優しさには切なくなるほどきゅんきゅんしました。
特に好きだったのは、辛い過去を語る遠召に高知がミントタブレットを口にいれるシーン。高久さんのイラストと相まって、とても好きなシーンです。

よくあるトラウマもの、同作者さんでも『積木の恋』と少し似ていますが、大きく違うのは、受けの心の傷を攻めが埋めるのではなく、お互い埋められないものを抱えながら一緒に生きていくというところ。
互いが互いを必要とする理由が丁寧に描かれていて、唯一無二の存在だと言い切れるBL小説はなかなかないのではないでしょうか。

テーマとして感じられる「どう頑張ってもわかりあえない人に対して、どう折り合いをつけるか」ということへの結論にはとても共感できて、私自身救われた気持ちがしました。
何もかもが綺麗に収まることはない。それがとてもリアル。
なかなかこんなことが描かれている小説には出会えないような気がします。
腹立たしく、でもどうしようもないことがあって、辛くて悩んでいる人、悩んだことのある人にそっと差し出したくなる優しい本です。

作中には二回の埋葬シーンがあります。
埋めたものはなんだったのか、きっと死体だけではなくて……想いを馳せるととても切なく、神聖なシーンです。

幸せな二人が読みたくなって小冊子を買いに走ってしまったのは、おそらく私だけではないはず。
本編、小冊子と読み終わってもこの世界に浸ってしまいなかなか戻れず、何度も読み直してしまいました。
唯一、遠召があれほどまでに過去にとらわれていた理由に納得がいかなかったのですが、ここまで二人の互いの必要性、そしてなかなか描けないテーマを描ききっているこの本はやはりすごいのでは、と思い「神」評価にしました。
これからもおそらく何度も読む、大切な本になりそうです。

11

水上

roseーlilyさま

コメント、ありがとうございます!
コメント頂けるのは本当に久しぶりで、すっかり見逃しておりました。
遅くなってごめんなさい。

本当に、この本は読んだ後数日引きずって考え込んでしまう程重かったですね。
お兄さんの変貌具合には私も驚きました。なかなか想像以上で、衝撃的でしたよね。
実は、私が天涯行きを購入する前、roseーlilyさまのレビューを読んで、他の本に浮気したくなるほど重いのか…と、かなり身構えておりました。笑
私も最初は3分の1くらい読んで明日に回そうと思っていたのですが、読み始めたら、roseーlilyさまが書かれていたように天涯行きは一度本から離れたら戻るのは辛そうだと判断し、一気に読んだんです。
おそらく途中で休憩を入れていたら、どこかで挫折して、半永久的に本の山に積むところだったかもしれません。roseーlilyさまのレビューに感謝です。
本当に、小冊子を読んで、やっと読み終えた気分でした。でも、小冊子は2つあるはずなんですが、最初に出た方の小冊子が手に入らず、未だに捜しています…。

凪良先生の文章、どんなに暗い作品でもどこかに優しさがあって、私も大好きです。
12月には、新装版かもしれませんが、また新刊が出るようなので楽しみです!
コメント頂けて、語れて、嬉しかったです。
私もまた読み直してみようと思います!小冊子込みで。笑

roseーlily

水上さま

はじめまして、rose-lilyと申します。
小冊子、私も買いに行きました!
幸せな二人が読みたくて…。
家族というものに深く焦点を当てたこの作品。
本編を読んだ時は、もの凄く考え込んでしまった作品でした。
一頁めくるたびに様々な事を思ってしまい、先へ進むのが怖かった事を覚えています。
特に、あの兄の最後の変化は相当辛くて震えました。
こんなに暗い話なのに、凪良先生が書くとやさしいから不思議ですね。
つくづく先生の文章は好きだなぁ、と思います。
小冊子の平和な空気に、ホッと胸をなで下ろす事が出来て、何だかやっと読み終えた気分になりました。
長々とすいません。
水上さまの感想を読んで、もう一度読み返したいと思い、コメント致しました。

家族とのバランス

すごく重いテーマでした。

読んでいて、自分のテンションが低い時、三回くらい合間に他の本へ浮気しました。
重い話を重めに書いたものなので、読むのが辛かったな。
いつもは、早ければ三日で読む私が、1ヶ月以上かかりました。

なのですが、結果的には、読んで良かったなぁと思います。
家族は人の基本部分で。
そこが歪んでいると、次の代にまで歪みが伝わってしまう。
そして、愛情が無さすぎても、深すぎても、人は歪むんだと思います。

幸せからドン底へ急降下する時期が早くても、遅くても、その落差に飲み込まれてしまう。
不幸になってから長い人は、なれて、麻痺して、空虚になるし。
突然不幸になった人は、現状をなかなか受け入れられず、冷静さを欠いて極端な行動に走る。

そんな、家族や他人との関わりを掘り下げた、なんともいえない世界でした。
偶然の出会いと交流が、二人の闇を少しづつ明るい方へ導かれていく。
同じようでいて、それまでとは違う風景が広がる。

出会えた事で、悲しいけれど、幸せでもある二人のお話でした。

2

希望はきっとあると思わせてくれた作品

天涯・・・空のはて。また、非常に遠い所。
タイトルを見ただけでせつない内容が伝わってきました。
なにかを待ち続けている遠召結生の生活に入り込んだ旅人、高知英利。
互いに自分のことは語らずただ抱き合うふたり。
遠召の過去と高知の今。
肉親に奪われた遠召と肉親を奪われた高知。
すべてが互いの心の中で解決?したとき二人は本当の意味でひとつになり別れを迎えます。
遠召が預かった「愛情の形」それはきっと・・・キャラバースデーフェアの小冊子に「天涯行き」の後日談が掲載されています。ぜひ、読んでください。

6

飛び出してきた果て

偶然出会った訳ありな感じの高知を、遠召は気まぐれで同居させます。
今まで何人もの男女を同居させてきた様に。
遠召は、古い一軒家で出て行った同居人を一人待っている。
最低限の事をする以外は、ぼんやりと怠惰に。
ある夜悪夢で目覚めた高知は、同じく眠れずに起きていた遠召に、
「しようか?」と誘われ激しく抱き合います。
その後、睡眠剤や鎮静剤みたいにセックスするのが常となります。

お互い人に言えない様な秘密を持っていて、明日の約束は決してせず・・・
でも、お互いの距離感や、まるで鍵穴のようにぴたりとはまる身体が、
二人は似ていて逆効果のように惹かれあっていきます。
なのに、どちらもそれぞれの呪縛から逃れる事は無く、
密に相手を想いやっている様子が、切なくて読んでいて胸が痛くなりました。

特に高知は「恋に、落ちてしまったのだ。」とはっきり自覚します。
遠召が、日ごとにやわらかくなっていくのを見ながら、
帰ってこない恋人との思い出と一緒に残して行きたくないと願いながらも、
姉の無念を晴らす事を諦める事が出来ずに悩む高知。
すいかの種飛ばしや線香花火、「エリ」と名付ける犬・・・
ほんの小さな約束をする様になった二人が本当に切ないです。

――このまま遠召をさらってどこかへ行きたい。
  でも、飛び出せる場所なんてどこにもない。
  飛び出してきた果てが、ここなのだ。―― 
・・・泣きました。

お話は、遠召目線と高知目線で交互に語られていて、
それぞれの重い過去が少しずつ見えてきて、読みだしたら止まりません。
高知の傷害事件は、本当に高知にもお姉さんにも同情して、久に腹が立ちましたが、
何より遠召の過去が、あまりにも痛くて可哀想で・・・

幼いころに両親を亡くした子供とは、これ程に哀れなものなのでしょうか。
そもそも遠召は、出生自体がとんでもなく痛いですが・・・
遠召が、義母や充に嫌われたくなくて、幼いながらも必死だった姿があまりに辛い。
充のいいなりにならざる得なかった遠召の気持が、痛々しすぎて泣きそうです。

それぞれが、お互い支え合って過去を乗り越えた後の、別れの前の海辺のシーン。
遠召が一瞬高知を見失ってパニックに陥ります。
この時の遠召が余りに頼りなく哀れで、泣きました・・・

それにしても、高知は本当にイイ男です!理想的な攻め様!!
重い話だったので、最後の爽やかなハッピーエンドがすごく良かったです。

7

読み返すには重いけど…

高久さんの絵の感じからは想像できなかったほど
ヘビーなお話でした。
でもだからこそ読後嫌な気持ちにならなかったのかな。
色々あっても未来が明るいような、という事もありますが。

何も知らない間柄で、お互い深く踏み込んだりしない。
関心も無いはずなのに一緒に暮らすことが思いの外苦じゃなく
むしろ少しずつ知りたくなり、
相手の“何か”を埋めたくなる。
いつまでも一緒にいるなんてきっとないのに、
縁側で「明日花火をやろう」とか小さい約束をすると
また一日延びてしまうとか
静かに積まれていく気持ちと、
別れが近くなるその日に胸が痛みました。

兄からの与えられた呪いのようなものと
気持ちに相反する快楽の記憶から
高知が優しく温かく徐々に解き放ちます。
抱き合う喜びと悦楽を高知が与えてくれる。
心底安心して溺れてもいい胸の中。
他の誰でもない、容疑者だって何だって
高知以外には何もなくなる遠召と
そんな遠召をいつまでも守りたい高知。

兄から言われた言葉を繰り返すところに、
心が縛られている様子が伝わってくるような気がしました。

どうやってもわかりあえない人間というのは
必ずといっていますし
過去の事は忘れたくても消せないし忘れられない。
二人が経験した事は例え死んだって無い事には出来ないけれど
そんな二人だからこそ、心から愛する人が傍にいるだけで
しあわせの意味がある。
ツラくても、待てる。二人だから。
お互いを思いやるエピソードにぎゅいぎゅいしました。

苦しい話の中に、ほっとするような風景や食べ物が出てきたりして
緩急もあるので読み進められた感じです。
(全部どっしりだったら挫折していたかも…)
とにかく高知が優しい!!
そしてエロせつない♪

実は空港内で夜明かししている時に読んだので
思いきり泣けず残念…。(しかも二回程)
そういや『まばたきを三回』も病院で読んだな…。
自分の中で、凪良さんは家でじっくり読もうと決意を新たに致しましたw
常にそうなるわけでもないのですが、
クる時はもう「……っ!!!」になってしまうので…。

評価もまちまちなように、お好みでない方もいらっしゃると思いますが
私は読めて良かったですし、凪良さん作品で5本の指に入ります♪



2

ん~。。

まぁ、申し訳ないけど乗り切れなかった。。というのが実際。
近親相姦万歳!禁忌万歳!手篭め!?はぁはぁ
シリアス路線でもぜんぜん私個人としては問題ないのですが
結局のところ、気持ちが上手く乗りませんでした。
結局どーなのよ。。。と思ってしまったというかなんというか。

巻頭と巻末のデジャブ感は凄く良かったですし
重たい過去、記憶を持ち、何もかもを失った二人が出会い
惹かれあう~の結論ではあるのですが、なんだろう
「ヤったら情が涌いた」感が否めないというかなんと言うか
デキスギテイル感が否めないというかなんというか
言葉のチョイスが綺麗過ぎるかな~というかなんというか。
おしい

3

どうにもならないこと

どうにもならないこと。
愛し合うことも、
憎み合うことも

遠召とエリの、一夏だけの暮らし。
お互いに秘密を抱えているだけに、どこか冷えていて、ことさら暑い。
この二人の距離感が、とても好き。
二人の抱えている物は、重くて、暗くて、
特に遠召を縛り付けている物は、根が深くて。
雁字搦めで虚ろな遠召の中を、夏の庭と、エリとのセックスが少しづつ満たしていく。

このお話、もっと書こうと思えば、遠召の生い立ちとか、いくらでも枚数を費やせる程、根が深い。
そんな濃密な背景を、よくぞこの分量に落とし込んだと。
この割り切る分量が、とっても私の生理に合っていて、内容は重いのに、読んでいて爽快で気持ちよかった。 
ちゃんと、変わっていく遠召の甘さも、心地よかった。

12

曲がりくねった道の先に光が見える

明日を望まず、何にも執着せず、ただ日々を生きている遠召結生(とおめ ゆい)。
偶然知り合った余所者の青年・高知英利(たかち ひでとし)を、
一人で暮らす古い平屋の家に住まわせることになる。
いかにも訳ありそうな高知だが、素性も事情も互いに語らないままの暮らしは心地よく、
やがて二人は夜ごと激しく抱き合うようになる。
けれどもある日、高知が殺人未遂事件の容疑者として追われているのを知り…

遠召にもまた、過去がある。
精神的な性的な虐待というべきだろう過去。家族をジワジワと壊した出生の秘密。
そんな中で縋り付くしかなかった義理の兄の歪んだ執着に
支配され、夢を見ることも息をすることもできなくなった心。

話はプロローグの後、遠召、高知、遠召、高知…と視点を交代しながら語られていき、
最後に「ふたり」という章に辿り着く。

ドロドロした重さではなく、透明な哀しみとやるせなさが迫る。
現実の状況をみれば、決して汚れていないとは言えない二人の心の中の、
小さくてキラキラときれいなもの。
過去の傷も罪もなかったことにはできない、
どんなに心を尽くしても分かり合えない人もいる、
自分達の中の美しい物を踏みにじるばかりの悲しみに満ちた世界で、
出会って手を取り合った二人。
憎しみもなくならない、悲しみもなくならない、でも一緒だから前に進める、そんな愛。
心を揺さぶられる。

これをBLとしての萌えかと言われると、自信を持ってそうだとは言えないし、
好みも分かれる作品かと思うのだが、読んで心に残る作品。

エロも結構あるが、まるでそれによってなんとか生きながらえている苦い薬のようで、
甘いというよりはむしろ読んでいて苦しいような気分だった。
話は、必要な月日が流れ再会したところで終わっているのだが、
これからの二人には未来と、そして本当に甘やかな抱擁が待っている…!!

困った…。評価、難しいんですが〜
離れている間、できるだけ高知と同じように暮そうとする
そんな遠召の女子中学生のようなけなげさには萌えました♪

9

この世の果てにいる二人

相変わらずの作家の力量を感じさせる作品で引き出しの多い作家さんだと感心するが
個人的に好きな作品かと言われれば、これは苦手な部類だと即答出来るお話。
内容がつまらない訳ではないが、シリアスでかなり心に重くくる話ではあります。
それに感動するか、共鳴できるかとなるとどうしてものめり込めない暗い部分が多く
ラストに光は感じるけれど、ハッピーエンドとは思えないのです。

主役二人が共に訳ありで、受け様はいつ戻るのか解らない恋人を長い間待っている。
それも普通の関係では無い恋人なんですよ。
そして攻め様は・・・犯罪者なんです。
どんな理由があるにせよ犯罪者でタイトルの天涯に逃げてきた人なんです。
そしてお互いに素性も過去も何も知らない詮索しない日々の中で穏やかに時間が過ぎて
二人は身体を重ねるようになってしまう。

ここで二人の気持ちに同調出来るか、理解出来るかでストーリーの評価が別れるのでは
ないかと思うのです。
実の兄と禁忌の関係になっていた受け様と姉の夫を刺して逃げた攻め様。
そして二人に共通するような暗い背景。かなり重いですね。
物語の中に特別に逆転的な話の流れがある訳でもないので、淡々と話は進みますが
受け様の待ち人からの手紙が届いた事からお話は少し過去への決別に動きだす。

萌え評価なんて考えると萌えを何処で感じればいいのか解らないってところが
感想だと思うのです。
内容的に浅い訳でもないのですが、この重めのストーリーが作品としてかなり
良いものだと思うのですが、個人的にはやっぱり好きになれない作品でした。
一般向きに萌えとは関係なく評価するなら神なのかも知れませんね。

8

未来に夢を馳せて・・・

凪良さんの、暗くて重い方のお話です。
お話の本筋がそれですから、エンド後は苦労はあるだろうけど二人にとっては幸せが待っているはず。
マイナスから始まったそのグラフが波打ちながら緩やかに上昇していく流れを見せます。
読後思ったのは、この本に登場する主要な人々は、皆何かに囚われて抜け出せないかわいそうな人たちだったということです。
それを打破できなかったり、しようとしなかったり、方法を間違ってしまった人ばかり。
そして、主人公の関係には依存が深く見られます。
とってもとっても重苦しい話でしたが、ものすごく痛いというほどでも(自分的には)ありませんでした。
むしろ、どうして?なぜ?
彼等に引きずられることなくかなり客観視できたということは、彼等は特に特殊な状態にあったのではないでしょうか。
かといって、この話がつまらなかったというわけではありません。
気分として映画を見ているような感覚に陥る情景の連続でした。
ので、その分幾分か冷静に読めたのだろうと思います。

豆腐屋の店先で寝ている男と飲みにいくはめになった主人公・遠召(トオメ)。
その男が寝てしまったために自分の住む家に連れ帰るのですが、何やらワケアリそうな彼を問い詰めるでもなく、ここにいればと置くことになる。
その男は高知英利だと名乗る。
ボロの一軒家に一人で住む遠召は誰かを何年も待っており、その相手が帰ってくるのを待っているのです。
部屋には、誰かが置いていったいくつかの痕跡。
過去にも高知を置いたように誰かがここにいたようだ。
遠召は不安になると誰かに傍にいてほしくなる、そして今回高知がきたことで、突然彼の体を求めたりする。
不安を解消するようにセックスをする二人。
高知にどうしてここに来たのか、何をしていたのか、何も聞かないから高知も言わないし、高知も最初に遠召に聞いただけで、過去を詳しくは聞かない。
体を重ねても、態度が変わらず人がいる暮らしの心地よさをそれなりに遠召は味わっている様でもあるが、時折不安定な部分を見せる。
そして、ある日多分遠召が待っていると思われる人からの手紙が来て、遠召が異常な行動を見せたことから、遠召は高知と一緒にその相手に会いにいくことにする。
そしてまた高知も決意をするのでした。

遠召の過去という部分がかなりズブズブです。
多分彼は悪くない、ただ間違ってしまった。
それは一種の洗脳に近い彼の家族の意図しないコントロールによる、一種の刷り込みによる思い込みであるかもしれない。
もう自分でわかっているのに、それにとらわれる理由が今ひとつピンとこないのは確かです。
高知にしても、後半で彼はもっと他に手段があったと反省していますが、理性的になれば罪は犯す必要はなかったのですが・・・
やはり彼も家族に対する強い思い入れというものがあったればこそなのだったのだと思います。
しかし、彼等がそんな風でなければ出会わなかったのですものねw

主人公は二人とも客観的にみれば、すごくバカです。
そして、ある意味同類です。
同居は二人に癒しと考える時間と、新しい空気の取り入れをさせることもできたけど、依存し合う関係でもあったと思います。
たった、あれだけのきっかけで二人が新しくやり直す気持ちになれたのは、一緒にいた時間が決して傷の舐め合いではなかったからだと思います。

きっと激しい熱のようなものがあったら、疲れてこの二人に対する印象や嫌悪感などもわいたかもしれませんが、淡々とした描写だったのが、結果よかったのだと思わなくもありません。
本編がどん底でしたから、きっと彼等の未来は明るいとそんな希望で終わる話でよかったです。

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