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受けがDVなど酷い目に遭うような作品と、そんなこともない作品(男前受け率高し)に大別される水原作品(最近は後者が多い?)。
今回は、そんなこともない作品の中でも特に、受けの魅力が際立っていました。
持ち前の洞察力・交渉力で危険を切り抜け、攻めに抱かれてても主導権を奪う機会をうかがっている男前女王様受けが魅力的です。
また細かいことですが、水原作品の「ひぃっ…」という受けの喘ぎにどうしても笑ってしまう私は(すいません)、今回それがなくてエロシーンに集中できて本当に良かった。
台湾と日本という二つの国にバックグラウンドを持つ大学生・俊明(受け)は、
他人だけでなく自分自身に対しても常に一歩引いた見方をしていて、語り手として非常に優秀です。本編がマフィアとの対決やアクションシーンなどで香港映画に近いノリを見せたり、中国語にン?となる所があったりしつつも物語としてテキトーな感じがなく、ちゃんと台湾を感じさせるのは、俊明が自分のアイデンティティについて冷静に分析しているためだろうなと思います。
また、同胞や友人を非常に大切にする情の熱さもあり、ちょっと出来過ぎ?と思いつつも人として好感を持てる人物です。
そんな俊明のバックグラウンドの一つで、本編でその身を助けることにもなる京劇。
二大流派の北京・上海ではなく、台湾で京劇を習う…って意外性のある設定ですが、
特定の国や生き方に固執しない俊明のニュートラルな一面が表れていて興味深いです。
物語の主な舞台は日本ですが、俊明の目や記憶を通して語られる台湾の街・人々はとても生き生きとして魅力的で、日本で暮らす俊明が、生まれ故郷・台湾も深く愛していることが伝わります。
そして、第二の故郷・日本で俊明が強く興味を覚える存在・三島(攻め)。
元刑事の探偵で、ヘタレを装いつつ俊明を翻弄する侮れない人物です。
刑事だった頃に同僚と片足の自由を失った過去があり、死を覚悟した者特有の寒々しい空気感をまとっています。
俊明は三島の孤独な姿に、二つの国を行き来しつつどこにも属していない自分に近いものを感じて惹かれたのかもしれません。
また、過去に大切なものを失った三島も、自分の幸せは自分で決めるとキッパリ言える俊明の強さに惹かれたんだろうなと思います。「おまえがいてくれたら、なんか生きていけそうな気がする」という三島のふざけているようで真摯な告白にはグッときました。
依存・干渉し過ぎないという点では糖度の低いカップルですが、俊明の母親のような包容力や互いへの信頼感にチラ見えする甘さがいいです。絡みもしっかりエロイv
二人が事件をきっかけに知り合い、一緒に色々切り抜ける過程で恋人になり、探偵コンビを結成?したところで終わってしまった本作品ですが、是非ともシリーズ化してこの二人の活躍を色々見たいと激しく思いました。
面白かったです!
初めて「受け」様が「攻め」様の探偵事務所を訪ねたシーンなんて、
二人共、最初なんも喋らないんですよ!お互いの観察に忙しくって。
いざ喋りはじめたら、食うか食われるかって感じの腹の探り合いで・・・。
「受け」様は典型的なツンデレですね。
あー言えばこう言う、でも別れ際には甘い一言。
「攻め」様が翻弄されているのが目に浮かびます。
でも、ただのやさぐれ探偵ではないからこそ
人間観察の厳しい「受け」様も惹かれるんだと思います。
一回りほど年は離れているけれど、二人の魂は対等です。
最後の方なんて、「受け」様の方が母親のようです。
台北で「受け」様を想う、京劇のハンサム男優も出てきて、
いろいろ妄想が広がります~♡
中華モノ(台湾・香港・中国大陸ふくめ)というのがしばしば適当な書き方されているBL小説で、はじめて見ましたマトモな中華モノ!
ということで、神評価。
いやだってビッグネームな作家さんのモノでも
さっぱり調べてないのがわかるぐらいテキトーなのがあったり・・・(涙)
ファンタジーだからいいだろとは言えないレベルで。
日本に置き換えていえば、
京都へ行ったらトイレは全部和式でっせぐらいのムチャブリ描写があるのが中華BL。
正規・非正規でそっちらへんの国で翻訳されちゃったりしてる現実考えると、正直、
どうにかしろと思っていたところ。
なぜに台湾で京劇なのか(京劇はやはり北京が本場)というツッコミはあるにしても、
テキトーなことは書いていません。
ムチャな中国語が出てきたり、発音表記があやしいのはあるにしても、目をつぶれる範囲です。
難をいうならば、台湾の猥雑でカオティックな空気がもっとあってもいいかなってのはありますが、真摯に書いている点は好感持てます。
もーこういうところはとりあえず神評価つけちゃおう~。
さらに、水原とほる先生の作品てのはどうにもこうにも痛いのが多くて、
文章がうまいわりにはなかなか入れないものを感じていましたが、
これは恋愛と事件のシーソーゲームを突き放した寒々しさで書いていて、
なかなか読みごたえもあります。
ストーリーは、オリジナリティはあるにもかかわらず、
「あれ?なんかこの雰囲気・・・なんかあったな」という妙な既視感が。
しばらくウニャウニャと思いかえしていたら、ふた昔まえに大流行したウォン・カーウァイの映画みたいなんだな。
そこのアナタ!
その昔、「ブエノスアイレス」とか「天使の涙」とか「恋する惑星」とか見ましたよね?(笑)
シーンを乱暴にぶったぎりながらも、離れられない運命をなんとなーく感じるってあたりがウォン・カーウァイ映画みたい。
最初はハードボイルド風に進行するのかと思ったら、そうでもないです。
むしろ、お互い持ちつ持たれつで恋に落ちていくさまがかわいらしい。
とても面白かったです!
受けが見た目は美人で中身が強くて男前なのが良すぎです。
あらすじは他の方が触れていますので自分はノータッチです。
水原さんの作品ですが、DV要素ゼロで痛さも殆どありません。(銃撃による流血表現や受けによる攻めの傷の治療シーン(受けは医者ではない)等の物理的な痛さはありますが…)
主役二人のキャラが魅力的で、特に受けの俊明が心身ともにとても強いので読んでいて気持ちが良かったです。
周りの人も基本的にいい人揃いですし、読んでいて不快になる要素は全くありませんでした。
注意点としては帯と裏表紙のあらすじに嘘があります。
帯…「京劇役者見習い」ではありません。京劇学校に通っていましたが父の死亡(というより母の再婚で日本に行く為)により諦めます。
裏表紙のあらすじ…「手付金代わりに凌辱」されません。手付金として強引に唇を奪われただけです。
凌辱物を期待して読むと肩透かしです。
エッチは一応合意ですし。
その後の二人…というか凸凹コンビっぽい二人のやり取りをもっと見たいのでシリーズ化希望です!
拉致された時の攻めと受けと張とのやり取りが本当に面白かったです。
読んで京劇が見たくなり台湾にも行きたくなりました。
それ程話に入り込みました。