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私の中の一穂先生の作品は、すっごくハマって大好きになる作品と、ぜんっぜんハマらず琴線に一箇所も触れない、みたいな作品の両極端なんです。
それもこれも私の価値観の中のことなので良い悪い、という訳ではなくただただ相性の問題なのだと思います。
キス、ラブはもうどっぷり浸かって心に刺さりまくっている物語である一方、藍より甘いは全然掠らなかった作品でして。
かくいうこちら、キス、ラブ、藍より甘い、に続いての4作品目なのですが、大当たり。
一穂先生の作品全体に漂う、夕暮れ時の淋しい感じ、けれど明日が待ち遠しい、みたいな不安で不思議で温かいような感覚、わかりますかね。
それがじんわりと伝わって、一穂先生独特のセンスで紡がれる文章が心に刺さりまくって大変でした。
内容は他の方も書かれているので割愛しますが、
キス、ラブが好きな方は好きなんじゃないかなぁ。
キス、ラブのような苦しさは少し和らいでいますけれども、主人公のなんかしらの生きづらさというのがもしかしたら、共通して心になんかしら訴えかけられる要因なのかなと思います。
現実のように痛い気持ちを、物語のようなちょっと現実感の薄い奇跡や運命で紡いでいく一穂先生の物語は、とってもとっても美しいですね。
作中、カズが言っていた言葉で、
目が見えてからは地獄だった。のくだり。
24時間起きても寝てもくたくただった、って言葉。
すごくわかるなぁって思います。
そういうの、抱える苦しさ、そこから日常に紛れてどうにかこうにかやっていく日々。
縁が、叔父さんに向けて「日常に支障がないからそんなこと言えるんだ」って怒った場面。
叔父さんが縁の為にサングラスをかけ続ける理由。
それを知っていて優しいと言いきれる関係性。
空白の期間を感じさせないカズと縁の会話。
どれをとっても切ないのに優しい、すごく幸せなお話でした。
一穂先生もムク先生も好きなので買わねば!と購入してたのですが、
長らく積んでて、やっと読了しました。
文芸み強い一穂作品でした。攻と受が抱えているものがしんどいですが、ラストに向かってそのしんどさが解消されていく、優しい作品だなと思いました。
あれ?BLだった?と確認するほど、情報量が多くて…勉強になりました。世の中には様々な苦しみがあるんだなと。特に、縁(受)が抱えている問題がシリアスで胸が痛みました。(切ないというか辛いです。)彼が長年抱えている苦しみを、早く手離して(数真(攻)に打ち明けて)、楽になればいいのに(そしてラブラブになればいいのに)と、何度となくじれったさを感じてしまいました。人を信頼するということは、なかなか勇気のいることなんですよね。
「ときめきとは、胸の中に温泉が湧くようなこと」とか「見えても見えてなくても、世の中の不確かさは変わらない」とか、心に残る素敵な表現と出会えることは、一穂先生の作品を読む楽しみの一つです。
人の気持ちも、世の中も不確かなのは仕方ないので、せめて、見ているものだけじゃなくて、感じていることに正直でありたいものだと思わせる作品でした。
一穂ミチさん5作品目
「ふったら~」「ハートの~」「さみしさの~」「ぼくのスター」
今まで読んで全部ハズレなし。鉄板作家さん認定しちゃう!
凄いですね。どの作品も全部キャラクターが生きてる。
BLの決まったオチに向かって似たようなキャラクターが似たような出来事を経ていく。
別にそれはそれでOKですが、一穂先生のキャラクター…というか人物設定なのかな?どれも具体的でリアルで個性がある。
それこそBL界ではモブ扱いが定番の「女の子」でも、本当に実在しているかのようにそれぞれに個性があって生き生きとしている。
一人の人物が何でこんな多彩な個性を一人一人生き生きと表現できるんだろう、と本当に不思議に思います。
今回の受けさんは人の顔を覚えられない人。
初めてこういう人がいるんだ、、と知ったのは京極夏彦先生の「狂骨の夢」を読んだ時。読んで「そんな人いたら多変だな、、」と思い、また別の本で「顔を覚えられない」系を読んで「本当にいるんだ、、」と知り、今回この作品を読んで、なんだかもう受けさんの痛みとか恐れ・怯えみたいなのが伝わってきて、プラス初恋が実ってもう、、よかったねぇ、、と感激してしまいました。良かったです。
この攻めさんなら受けさんを受け止めて、末永く続いていけそうです。
表紙に惹かれて購入した、初めての一穂ミチさんの作品。
仕事の飲み会で仁科縁は岩崎数真に出会います。
その席で数真は、目が見えなかった幼い頃に出会った初恋の「ゆかりちゃん」の話をし、縁は目の前にいるのが「かず」たど知ります。
でも、縁は自分が「ゆかりちゃん」だとは名乗り出れない訳がありました。
実は、縁は相貌失認で人の顔を顔として認識できないんです。パーツの違いは分かるけど、「顔」の違いが分からないから、個人を特定するのが苦手で、そのことを知られたくないと思っていて・・・
縁と数真が「ゆかりちゃん」と「かず」だということも、縁が相貌失認だということも、小説の早い段階で読者に明かされます。
縁が待ち合わせには必ず早く行く理由とか、この時点で分かってしまう。なるほど、このせいかーって、伏線が回収された気になるんですが、そこからが、一穂さんのすごいところだと思います。
大きな事件が起こるわけじゃないのに、ページを捲る手が止まらなくなるんです。
「ゆかりちゃん」と「かず」の過去の話も、縁と数真の会話のテンポも、縁の心理描写も、すごく良くて!!むしろ、いつもの私がBLで楽しむエロが邪魔だと思ってしまうくらいに。(苦笑)
そしてラストに明かされる「ゆかりちゃん」と「かず」が過ごした最後の一日と、「かず」のその日の続き・・・もう、せつなくてせつなくて!!!
縁は数真に嫌われたくなくて、数真は縁に心を開いて欲しくて、互いに一生懸命だったんだなぁって思うと、読んでいて泣けました。
あと忘れちゃいけない、縁の叔父の訓さん!
皆様レビューで書いていらっしゃる通り、訓さんが本当に優しい、いい人です。
訓さんの優しさがこの話に溢れてるから、読み終わってこんな優しい気持ちになれるのかも・・・って思ううぐらいに、訓さんがいいです。
小椋さんの優しい絵が似合う素敵な話だったと思います。
あああ。やっぱり一穂さんの作品はいいなあ。綺麗な文章だなあ。好きだなあ。
子供のころ目が見えなかった岩崎数馬と人の顔が識別できない仁科縁の話。縁が、数馬に病気のことを知られたくなくて逃げる逃げる。本当は、数馬のこと好きなのに。好きな人の顔さえ覚えられない自分など、人から好かれる資格がないという心理。あああ、切ない。そんなゆかりの魂胆に、結構初期から気づいていた数馬がすごい。今回は、数馬が最初から覚悟を決めて、縁にモーレツアタックしてくれてたから、ものすごい安心して読めた。サトシさんという味方もいてくれた。私は、このサトシさんが本当にいてくれてよかったと心から思う。サングラスを貸してくれてありがとう!!
アイズオンリーとは、「見るだけの重要機密」の意。転じて、プライベートという意味になる。この作品を読むと、この言葉がなぜタイトルになったのかが分かります。