名前を奪われたら、たましいを縛られる。

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川果町よろづ奇縁譚

kawabatamachi yorodukientan

川果町奇缘谭

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表題作川果町よろづ奇縁譚

魚住,鈴島鑑定調査事務所の社員
鈴島,鑑定調査事務所の社長

同時収録作品川果町よろづ奇縁譚

天花寺,偶然出会った少年
平子千佐,事務所アルバイトの大学生 

その他の収録作品

  • 描き下ろし

あらすじ

この世ならざるモノも扱う鈴島鑑定・調査事務所。そこでアルバイトをする大学生の平子千佐は、昔から怪異に狙われやすい体質。ひょんなことから年下の少年・天花寺に出会い…。年下攻の不器用な恋愛が彩る、不思議エブリディ。描き下ろし後日談収録。

作品情報

作品名
川果町よろづ奇縁譚
著者
四宮しの 
媒体
漫画(コミック)
出版社
祥伝社
レーベル
on BLUE comics
発売日
ISBN
9784396783334
4.2

(87)

(44)

萌々

(28)

(10)

中立

(3)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
15
得点
365
評価数
87
平均
4.2 / 5
神率
50.6%

レビュー投稿数15

和菓子みたいな

表紙からして美しい。スマホ電子だと試し読みクリックしない限りこれが大きくは表示されないのか…そう思うと紙の本が売ってるって大事よね。

絵のタッチがたまんないのよね〜
"誰からも誰かに似ていると言われる"っていう設定と蝶の掛け合わせからしてもう大大大好きなんだけど、ストーリーも絵も演出も百点満点だから花丸です!大きい花丸!!可愛い!!!

天花寺くんと平子の関係性の作られ方も好きだし、鈴島と魚住も大好き。四宮先生の作品て一冊の中で登場人物も多く、付き合っている2人も多いのに、過不足なくまとまって満足感がずっしりあるのが不思議。優しい作品なのにこの満足感。和菓子みたいな。

0

BLに留まらない興味深いテーマ

 不思議な世界観とテーマでした。BL色はそこまで濃厚ではなく、章の端々に少しずつ挟まれる程度。この作品においてはそれで十分だったと思います。主人公の平子はお人好し且つこれといった特徴のない平凡な学生で、会う人会う人にその人にとって大切な誰かや印象的な誰かと重ねられてしまい、悪い気を引き寄せやすいキャラです。本人もそれを自覚しており、自分自身の意思は周りにとって重要ではないんだと、誰かの面影を重ねられることを抵抗することもなく受け入れて生きています。

 そんな性質のおかげでいろんな事件に巻き込まれる平子。しかし、中盤までは自分という存在の曖昧さを甘受していた彼ですが、ある案件で天花寺という少年と出会ったことで、徐々に考えが変化していきます。もちろん祖母に教えられた風習のせいもあるだろうけど、彼自身が自分の存在は軽視していいと思い込んでいるからどんどん面影を重ねられやすくなっていったんじゃないかな。天花寺への想いに気付いて、揺るがぬ自我を確立させたいと平子が望んだ時は、本当に嬉しかったです。

 軸となるテーマを支えている「名前」。真の名前を晒すことは確かに弱みを見せることになるのかもしれません。でも、ジブリの某映画じゃないけれど、自分自身を表す名前を大切にすることは、自我を保つのにとても重要なことなんだと思います。本人が望めさえすれば、仰々しい風習を跳ね除けることはいくらでもできる。これからは彼自身の人生をしっかりと歩んでいって欲しいですね。彼のバイト先の事務所の魚住と鈴島の出会いや、天花寺との過去の話も、四宮先生ならではの世界を見せてくれて面白かったです。魚住と鈴島のスピンオフを読みたくなりました。

1

読み返す毎に感動が深くなる

「銀のくつ」で出会い、この作者さんの作風に惚れ込んでしまい、これを購入してみました。1度目読み終わった時は、「うん、変わってるし面白かったね。」程度だったのですが、ストーリーを知って読んだ2度目、主人公たちの感情に注意して3度目と読むと、この作品の味わいの深さに感動さえもおぼえてしまいました!主人公とそのアルバイト先の2人、縁がとりもつ不思議な世界が素直に優しく描かれています。また読み返しては優しい気持ちになれる作品に出会えて、良かったです。これから、今日は四宮しのさんの他の作品、購入して来ます!

2

春の夜のお供にこの1冊を

春っぽいもの読みたいなーと本棚をあさって目に止まったこの1冊。
表紙の印象そのままに、優しい雰囲気で描かれる「名前」と「縁」にまつわるちょっぴり不思議なお話です。

“「”呪(しゅ)” とはなんであろう?」
すると晴明は、庭に咲く花を指差して答える。
「あそこに花が咲いているであろう。あれに人が”藤”と名を付けて、みながそう呼ぶようになる。すると、それは”藤の花”になるのだ。それが最も身近な”呪 ”だ」”
このひらひらふわふわとした不思議なお話を読むにあたって、「陰陽師」のこのフレーズを頭に置いておくとだいぶん読みやすいかもしれません。
「名前」を題材にした作品といえば中村明日美子さんの「ダブルミンツ」が真っ先に思い浮かびますが、あれもまさしく「名前」の奇縁に導かれ「名前」の呪いに囚われたみつおとミツオのお話でした。
読み終わった後「名前」についてもう少し調べてみると、昔の人は自分の本当の名前(真名)を明かす相手をごくごく一部の人間に限っていたとか。
これは本作にも繋がります。

実際に想像してみると解るけど、「名前がない」存在というのはなんとも心許ないものです。
それはそのまま、訳あって自分の本当の名前を知らずに生きてきた主人公〔平子〕の存在の不確かさに繋がっていきます。

そんな平子が自分の名前を知る決心をする過程が良い。
自分の名前を知るということは自分をその名前で縛るということ。
名前を呼ぶことは相手の魂に呼びかけること。
名前を知られることは相手に魂を奪われること。
「だから君に俺の名前を知ってほしい。」

そして、途中でサラッと明かされる魚住と鈴島の関係、これもまたこれだけでもう1冊いけたんじゃないかと残念に思うくらい素敵な関係でジワっときました。
会社でヤるような節操のないおっさん達にこんなエピソード用意してるなんて四宮さんずるい!

こういう不思議な出会いをテーマにしたお話っていいですね。
今の季節にピッタリな1冊じゃないかなと思います。

【電子】ebj版:修正-(描かれていない)、カバー下なし、裏表紙なし

2

千の蝶に助けられる男の子と、めぐる奇縁と

ふたりの男の子を守るように千々に飛ぶ蝶たちが
とても美しい表紙。やさしい雰囲気が象徴的です。
 
四宮しのさんの今作は
摩訶不思議で、どこか狐につままれたような印象を受ける
ちょっぴり切なくて、心がじんわり温かくなる奇縁物語です。

”赤ン坊の名前がつかないうちに雷が鳴ると魂が奪われる”
そんな迷信の元に産まれた平子くんは、
隠された名前とちょっと特殊な性質を持つ大学生。
ひょんなことから鑑定・調査事務所のアルバイトをすることになり
依頼による、様々な不思議な現象と共に
”誰か”に重ねられることで、そこに詰まった想いを知っていく。
ある依頼で知り合った年下の少年・天花寺くんとは
以前どこかで出会っている気がしてー?

平子くんはその特殊な性質から、いつも誰かに重ねられては
自分ではない誰かに向けられた想いを受け容れて生きてきたけど、
それはどこか他人事だった。
そんな平子くんが事務所の魚住さんや社長に見守られ
オカルティックな依頼を受けていく中で、
”本当の自分の名前”を知ろうと決意するまでの過程が
蘇る記憶、過去と現在を交錯させながら丁寧に描かれていて、
とても魅力的でした。

必見のクライマックス、未来を跨いだ後の
『魂を半分奪われているような』天花寺くんへの告白シーンが秀逸で、
じわじわ噛みしめるように、この物語が好きだと実感しました。

魚住さんと社長・鈴島さんのお話も非常に読み応えがあり、
直接描かれてはいないものの、魚住さんが人さらいの人魚になって
愛されなかった悲しい子供時代を持つ鈴島さんを
約束通りに攫ったなんて、ロマンティックで素敵...(今はあれだけど笑)
そしてその魚住さんが、実は
平子くんの隠された名前に奇縁を持っていたところもすごく面白い。
ちりばめられためぐりあわせと結びつきが
この物語の醍醐味なのだと、改めて胸に響きました。

犬丸ちゃん視点の描き下ろし番外編もとってもキュートで、
プクッとする天花寺くんにきゅんときました♡

ゆるっとした独特の絵柄に
不思議だけどしっかり練られたテーマとプロット、キャラ設定、
切なさとやさしさ、そしてほっこりBL具合、
そのバランスがとても良い、素晴らしい作品でした。

ほんのりしたオカルティックBLとして、
これからの夏の夜のお供にもおすすめです♪

3

出会いは必然で

不思議な雰囲気に引き込まれて、読後には心がホッコリと温かくなるお話です。最後まで読んで、分からなかったパズルがピッタリはまった時の爽快感もたまりません。

この世ならざるモノも扱う調査事務所に、アルバイトをすることになった大学生の平子。平子は、昔から影が薄く、印象に残りにくいという特性があります。
そんな平子に初めて、平子自身を見てくれる人が現れます。その人は、アルバイト中に知り合った、年下の少年・天花寺です。

平子の出生の秘密や、子供の時の天花寺との出会い。巡り巡っての、平子と天花寺との再会。
それらの一つ一つが、気持ちいいくらいに繋がって話が進むので、夢中になって読み進めてしまいます。
未来と現在が重なって、出会いの必然さが分かった時には感動すらします。
不思議な事件を解決していくのも面白いし、もちろんBLとしてもキュンとできるし、お気に入りの1冊です。

5

不思議な世界観を堪能

【奇縁】意味:思いもかけない不思議な巡り合わせ

BLっていうよりも不思議な世界観を堪能したくて読み進めた作品です。
写真で魂を閉じ込める・呪術・人魚…など面白かったです。
こういう妖や呪術が絡む不思議な話、大好きです!

平子くんは“名前のつかないうちに雷が鳴ると魂が奪われる”という祖母の言葉により、11歳まで祖母の家で女の子として育てられました。
本当の名前を知るのは限られた人間のみで、平子くん自身も知らないのです。
会う人会う人に誰かに間違えられる…カメレオンのように擬態して生きてきた平子くん、そんな自身のあり方に疑問を抱いている彼の本当の名前はなんなのか?
読者には最後までわからないままでしたが、本人は名付け親に会い教えてもらってます。
それもまた思いもかけない“縁”でした。
そこまで守られてきた名前を教えてもらえるって、すごい信頼ですよね。

天花寺くんと平子くん組は可愛いです!
ってか平子くんがもう危なっかしくて…天花寺くんがハラハラキリキリするのわかります。
なんかね、風にふわふわ~って飛ばされちゃいそうな感じ?

社長と魚住さんは、過去編だけ読んだら魚住くん攻めっぽく思うのに成長したら逆転してんのがw
あんなちみっちゃくて弱そうでしゅーんってなってる子が飄々とした大人(社長)になるなんてねー…。
どうせなら“ひとさらいの人魚”話も読みたかったですね。

それにしても犬丸可愛い。
もうちょっと可愛い名前つけてやれよって思ったぐらいにオマケ漫画が可愛かった。

3

優しいファンタジー

発売当初から気になっていた作品でしたが最近になってやっと購入しました。

全体に優しい雰囲気の作品になっています。イラストがあたたかく描かれてあり、そのためかストーリーが怖い流れになってもさくさくと読みすすめることができました。

がっつりファンタジーなので、大人の現実味のあるストーリーを読みたいと思っている方にはオススメできない作品です。
一方で非BLではありますが、CLAMP先生のxxxHOLiCが好きな方にはたまらないBL作品ではないかと思います。

2組のカップルがでてくる優しいファンタジー作品です。ちょっと疲れた時に読むと元気が出る作品だと私は思います。

5

実は絵が苦手ーなんですが、平子の顔に惹かれて購入〜。
ん〜当たりでした!
可愛いな平子!!天花寺くんも可愛いな!!
呪い?人の欲や執着、そんなのにつけこまれる平子メインなお話しです。
縁で繋がった人たち。なんかあったらいいな、こうだったらいいな。って思いました。
会えるよいつかきっと!ってなんか断ち切れたはずの関係でもどこかでつながってまた出逢えたら寂しくないなぁなんて。



社長と魚住カプも好きー!!
君たちいいね!過去があるから二人の関係がより萌えました。しかし不思議なお話しです。
しかし、リバデスかうまいすな(^ω^)
時代設定は今なはずなのに、人魚の見世物小屋があったりでてくる人たちも不思議な感じで一回読んだだけじゃ理解できませんでした。
平子と天花寺くんの大人になった様子がまたキュンとしました。

4

めぐりめぐる縁の物語

良縁・奇縁・めぐり逢わせ。
そんな"えにし"に引き寄せられた人たちの不思議なお話でした。
それぞれの人と人は切り離された関係ではなく意味を持って出会っている、と。
過去であったり、今であったり、未来であったり。
このお話にはそんな人たちの過去の出会いから今現在と、
そして少しだけ未来まで描いてありました。
そこに不思議なもの・怪奇的なものが絡んでいて面白かったです。

「名前を奪われたら魂を奪われる」、
元となる考え方は陰陽道だと思いますが、
そういったことを知らなくても彼らの過去や今が丁寧に描かれているので、
あまりその部分は深く考えなくても充分楽しめる作品だと思います。
私は不思議なお話は好きなのでもっと突っ込んだ内容だったとしても全く問題なかったのですが、
そうした好みは別にしても、良いお話だと思いました。

お話は平子千佐がバイトを探しており、鑑定・調査事務所を訪れたところから始まります。
この鑑定事務所にはガラの悪い不良社員・魚住とひょうひょうとした社長・鈴島の二人がいました。

平子千佐は特殊な魂を持って生まれた子でした。
悪いものたちに見つからないように「本当の名前」は誰にも教えてはならないと、
言い聞かされて育ってきました。
平子千佐という名前は本当の名前ではありません。
平子は魂を蝶のように擬態させているので、
周りの人間からは「知り合いの似た誰か」に見えてしまいます。
そうやって魂を奪われないようにするために魂を隠して生きてきました。

ところがそんな平子の本当の魂を見抜くことが出来る子がいます。
「似ている誰か」ではない、本当の平子を見ることのできる子に出会うのです。
天花寺という男の子でした。
彼は能力者の家系に育った子供です。
実は天花寺と平子は子供の頃に出会っていたのでした。
平子は忘れていましたが、天花寺は運命を感じていたようです。

天花寺の気持ちに答えることができない平子。
彼は長らく魂を擬態してきたので、本当の自分の気持ちに気がつくことが難しいのです。
それでも平子はなぜか天花寺に魂を奪われている(惹かれている)ことに気がつくのです。
それが意味するものとは。

作中、平子と天花寺の未来が見えましたが、大人になった天花寺くん格好良かったです!
平子と天花寺くんのラブラブな様子にドキドキしました。

そして喰えない大人組の魚住と鈴島の関係もかなりツボでした。
リバな関係に萌えましたw
お話の最初の部分では魚住と鈴島の関係はよく分からないのですが、
後に彼らが小さな頃に出会ったときのお話が出てきます。
彼らの過去にどんなことがあって今の関係があるのかが分かって、
そのあたりが回収されていて良かったです。

テーマを丁寧になぞり描いているので、読後にとても充足感がありました。
出会いというものに意味があると考えると、不思議と心があたたまりました。

11

不思議、大好き。

不思議な雰囲気をまとう平子千佐は、我の薄い性格の持ち主。
怪しげなモノも含めて色々と引き寄せてしまうタイプで、怪しげな鑑定調査事務所のアルバイトに誘われて、バイトを始めることに。
そこでの仕事から、魂を奪われそうになった過去の出来事や、未来での恋人との邂逅、出生時の命名の鍵を握る人物との再会…など、自身に深く関わる理を知っていくことになる……

といった展開の、独特な奇譚ファンタジー。
この作者さんの「魔女と猫の話」(非BLだけど独特の魔女世界設定がストーリーのキーになってる)でも思ったけど、既存のオカルト世界観をまんま使うのではなく、かといってオリジナル過ぎて納得がいかないような設定でもない、という面白い不思議設定に魅せられました。
日常なんだけど、異界の住人たちがひっそりと存在しているという、不思議な味わいです。

ついついファンタジーとしての面白さを語ってしまいましたが、BLシーンも有り。
事務所の魚住×事務所社長の鈴島のなれそめとなる、子ども時代のエピソード(魚住の正体と、千佐の命名のエピソードにつながっている)もあります。
千佐自身も、自分というものがわからなくなった時に自分でいられた力を与えてくれた相手と、運命でつながっていたかのように再会して、自身の魂のありようを確信します。
恋なんだろうけど、スピリチュアル的にもつながってる感じが、この作品らしいなぁ…と思いました。

7

このいとおしさ

読了後、胸がじーん…と熱くなり、
甘やかな気持ちが広がってゆくのを体感致しました。


以下ネタバレ+超個人的感想です。


まず装丁。
いま、水彩なら四宮先生!というほど先生の色使いや筆致に惚れ込んでいるので、手に取って思わずうっとり。舞い上がる綾錦の蝶にいつまでも見惚れていました。
そして表紙の素晴らしさに劣らず、内容もとても満足できました。

設定は民俗学…ファンタジー?とでもいうのでしょうか。
主人公 千佐のバイト先、オカルト対応可の探偵事務所を中心に展開します。
千佐と天花寺、事務所の鈴島と魚住…みんな「ワケあり」の人物で、依頼人や事件、過去を通してそれぞれの関係が明らかになっていきます。

私はふたつのカップルの過去編が印象的でした。
擬態で本当の自分を隠す千佐と、呪いを扱う家系に生まれた天花寺。
愛されない子供の鈴島と、逃げながら生きる人魚の魚住。
ふたりが出会って約束した「運命」は、今にちゃんと繋がっていて、これからも続いていく。
物語の終盤、千佐は今まで受け流してきた「千佐」自身を受け止めます。
鈴島のために身体を変えた魚住も、天花寺と向き合おうとする千佐も、
誰かが 想う相手のために動く姿はたまらなくいとおしい。

画面の描き込みは細かで、人物は可愛らしくもあり、色気もあり…。
物の怪の描写も雰囲気があってよかったです。
そして柔らかな線で描かれるHシーンは独特のエロさ。
まるで溶けるように交わる描写は艶めかしく、
「とととんでもねえ色気だ…!」とたいへん悶えました。
その他にも、何気なくふと語られる会話の中から、千佐という人物がするすると見えてきて、そういった所も四宮先生のうまさを感じました。

ページをめくるたびに起こるいろんな気持ちを、何度でも味わいたくなる作品です。

12

男女では無いけれど縁は異なもの

ひらひら舞う蝶の表紙イラストも素敵なノスタルジックな雰囲気があり、
更に人の縁が結ぶ不思議を感じさせる作品でとても面白い。
古き時代の迷信や言われ、古いものには森羅万象、八百万の神が宿っているような
アニミズム的な世界観も感じられるし、呪詛なんて怖いものまで感じられる。

そんな不思議な世界観がありながらも、人の縁と相手を思う気持ちまで描かれていて
読み込めば奥深い作品だと、かなり味のある内容で面白い。
この世ならざるモノも扱う調査事務所にアルバイトとしてスカウトされた平子。
偶然の出会いが必然だと、必ずいつかめぐり合うように縁が組まれていたと
思えるような展開が次第に明らかになるように描かれていて、
作者の不思議世界にどっぷり浸ってしまうような作品。

6

出会いは因縁

今回のこの表紙とても素敵で思わず見惚れてしまいました。
デビュー作から拝見させていただいておりますが、最初の頃稚拙な…などと比喩してしまった絵も随分こなれてきまして、それが独特の味になり、
特に今回は今まで少年を描くことが多かった世界に大人が登場したことで、また淫靡さも見せ、更にこの作家さんの魅力にはまりそうです☆

今回このレビューを書くのは大変に難しかったです。
何をどう伝えたらいいのか、う~む。。。
一言イメージで言うと今市子さんの百鬼夜行抄の世界を連想すると、それに近いものがあるのかな?と思います。
人でないものも、不思議な力も登場しますが、妖怪やお化けが出るわけではないです。
因縁や因習が、人が残した想いや相手に対する想いを通して、めぐりめぐって人の結びつきとなっている。
それが紡がれていく様がこの一冊を通して見せて行くその展開が、実に面白い!
絵柄に少し、好みを選ぶ作者さんかもしれないのですが、百鬼夜行抄や幻月楼奇譚などが好きな方には是非オススメしたい作品かも?

とても存在感が薄く、いつも誰かに似ているといわれる大学生・平子千佐が品物の価値や真贋を鑑定・調査する会社にスカウトされてアルバイトすることになります。
大きな軸としては、この平子のその存在感がないという特性が招く色々な出来事と、壺の預かりとスリ換えの事件で登場した天花寺という少年との出会いにより、この二人の若者カプの成立を。
事務所社長の鈴島と、所員の魚住の大人カプの存在も絡めながら、この4人は何らかの因縁で繋がっている関係であることが解ります。


以下ちょいネタバレします(ゴメンナサイ)


平子の存在感のなさ、いつも人が平子を通して誰かを見ているというその媒体になるような性質は、実は真名を隠していることに起因するのです。
曽祖母が因習により、彼の真名を隠し、性別も女装させて11歳まで親元を離れさせて育てる。
実は天花寺少年とは、この時に会っているのです。
そして少年もまた真名を人にいってはいけないと、同じ境遇だったということ。
天花寺君の平子を想う一途な心に、他の人が見せる好意は平子を通した別の人への好意だが、天花寺君は平子自身への愛情だということが解った時、自分の「好き」という感情がどれも同じで特別がないことに気がつき、自分の真名を知りたいと望む。
その時こそ本当の平子になるという、
その進展を見せるストーリーの展開がまた摩訶不思議な、実に因縁なのです。

大人カプについても、子供の頃の出会いがあります。
魚住は人魚で見せもの小屋からつれだしてくれたおじさんと転々として暮らしていたのですが、たまたま縁あって一時鈴島がそこに預けられるのです。
そこで出来た結びつきもまた因縁。
このカプ、さりげなくリバのようです(驚!)

平子くんのぽやや~んとしたなごみ系キャラに、
気が強いのに真っ赤になって照れるちょいツンデレの男前な天花寺少年。
のんびりしていそうで、魚住ラブで甘えん坊な鈴島社長。
キザギザの歯に、一見チンピラみたいな人相が悪いのに働きもので鈴島に執着している魚住。
ちゃ~んとそこにはLOVEが存在しています。
今までの作品だとほぼエッチなしでしたので、今回そんなシーンがあるのも大人が登場するからかと。
因縁で結びついた関係だけに、かなり相手に対して愛が深いです。

縁は異なモノ味なモノ。

描き下ろしは、平子くんが拾った犬=犬丸を擬人化させて・・・女子学生になってたw
天花寺くんとのデートにヤキモチをやいて、天花寺くんは犬丸にヤキモチをやいてという平子くんが愛されてるお話がありましたv

7

合縁奇縁

奇縁と奇譚。ちらばる巡り合わせを繋ぎあわせた不思議なストーリーでした。
ジャンルは、BLというよりもファンタジーと表するほうが個人的にはしっくりきます。ボーイズラブの側面はたしかにあるのですが、それよりも主軸のお話に目が向きました。キャラクターたちが話す言葉を考えながら、おとぎ話のような世界を1ページ1ページ捲っておりました。
またこのストーリーに対し、四宮先生の絵柄がとてもよくあっています。ふわっとした流れるようなタッチと線の細さだからこそ描ける世界なのだと思います。
たしかに、設定などでややオカルトな面もありますが怖い描写は特にありません。心霊とか怪談…とかではなく、なんというのでしょう可愛い感じ。不思議な話。そしてよく聞く話ですが、幽霊とか呪いとかより怖いのは現実の【人】ですね。

舞台はまぎれもなく現代、現代のようででもこの今とは異なるパラレルワールド、とかではないように感じました。でももしかすると、登場する彼らにとって呪術や異形のものの存在はありふれていることなのかもしれません。細部に至るまで描き込まれた背景やコマの間の植物なども、キャラクターたちに対する想像をかきたてます。
ごくごく普通に、怪異と関わりあいながら(こういう仕事をしていると、やまほどこんなもの見る。と作中にありましたが特殊ですよね)進むストーリーに対し、はじめは「薫る程度のBLを怪奇物語に混ぜてほのぼのさせた感じだろうか?」と考えておりました。
しかし、徐々に紐解かれてゆく主人公・千佐の生い立ちと彼(幼き頃に女の子の格好をしていたのは、きっとそれもまた魂を奪いに来るモノから守るためなのでしょう。目くらましのような)が過去に関わった人々の今が分かってゆく都度、うーんなるほど! と唸りました。このページ数だけではもったいないと思います。四宮先生のなかではもう少し設定もあるのでしょう、でも規定のなかで収めるためには精一杯の情報量なのかな。
途中、千佐と天花寺の話に至るまでに人魚のストーリーがまじります。鈴島と魚住、この魚住が人魚だということ。
一連の、少しの毒を混ぜた柔らかいストーリーの流れのなかで、このふたりの話だけは特に不思議で、けれども織りなす性行為はとても妖艶でした。匂わす程度のBLでなくなったのはココです。魚住が今、男としての形を保っているなら、鈴島の「女にならないで」という願いを受けたということですよね。鈴島のためにと思うとクるものがあります。
それと、これは千佐と天花寺の話ですが、未来と今とが混じり合うシーンでの大人になった彼ら(またこの大人になった天花寺、猫目の男前でかっこいいんです…!)が交わるところもまた艶があって素敵でした。妖しい世界のなかでの行為ですから、一層ミステリアスな面が引き立つというか…。神秘的でした。
巻末の犬丸のお話も可愛かったです。そうだと分かって、また一度頭からお話を読み返すと一層深みが増して楽しめました。

千佐にみっしりと詰まった魂の蝶々がふわりふわりと舞うところも個人的に好きです。表紙イラストの、蝶々の意味合いというかそれが千佐であると分かってからはこのきれいな蝶々たちは千佐の歪むこともズレることもない心だろうかと考えました。
縁って不思議、出会うべくして出会っているんでしょう。この千佐もそうで、千佐を好いた天花寺もそう。…アルバイトの勧誘も偶然なのでしょう、でなければ面接のときにイタシている…わけがないと思いたい(笑)けど縁というのを考えれば…もしかして見つけたからとか…うーん知りたいけれど、ここは想像するだけのがいいのかもしれません。
きれいにころっとまとまったお話だと思いました。千佐のほんとうの名を知りたいのですが、でも天花寺だけ知っているのがいいんでしょう。なにせ“嫉妬深い”らしいですからね。
最後のページ、幸せそうに楽しそうに笑うふたりがとても素敵でした。

5

この作品が収納されている本棚

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