老いもせず、死にもしない。 そんな死神の恋―― 切なさが美しく心に響く、連作落語シリーズ。

コミック

  • 年々彩々(表題作 デラシネの花~落語「寿限夢」より~)

年々彩々(表題作 デラシネの花~落語「寿限夢」より~)

nennen saisai

年年彩彩

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表題作年々彩々(表題作 デラシネの花~落語「寿限夢」より~)

ホスト 寿限無(中略)長助 200歳くらい
貧乏神から転職した死神

同時収録作品金魚すくい~落語「貧乏神」より~

怠け者の与平
貧乏神

同時収録作品小向家の事情

その他の収録作品

  • 描き下ろし(デラシネの花)
  • カバー下表紙1【表】:キャラクターも登場のあとがきマンガ
  • カバー下表紙4【裏】:裏話[文字のみ]

あらすじ

【金魚すくい】
怠け者の与平と彼に取り憑く貧乏神。
二人はいつの間にか夫婦のような間柄になるが……
~落語「貧乏神」より~

【デラシネの花】
長寿を願い名付けられた寿限無(中略)長助さんは
幕末をむかえ、文明開化の音を聞き、二つの大戦を生き抜いて現代を生きていた。
そんな孤独に生きる彼の心の拠り所は、昔みた“死神”だった。
~落語「寿限無」より~

落語シリーズ二作ほか、短編一編&描き下ろし収録!

作品情報

作品名
年々彩々(表題作 デラシネの花~落語「寿限夢」より~)
著者
秀良子 
媒体
漫画(コミック)
出版社
祥伝社
レーベル
on BLUE comics
発売日
ISBN
9784396783389
4

(200)

(106)

萌々

(34)

(38)

中立

(8)

趣味じゃない

(14)

レビュー数
27
得点
788
評価数
200
平均
4 / 5
神率
53%

レビュー投稿数27

こんな神様なら、友達になりたいわっ!

最初に、秀良子先生〜大ファンです。
じんわり〜心に染みる、ストーリーが何度も読み返す理由ですね。
今回も、お気に入りの1つを再読しました。

本当に、こんな神様いるなら友達になりたいくらいだわ。

「金魚すくい」
気は良くてやんわり穏やかな、まったく生活能力ゼロの与平。
世に言う、ヒモ体質なダメ男。
そんな所に、やってきた貧乏神。
ヒモ体質な与平に、貧乏神様〜つかまったね。
夫婦の様な生活を送るが〜残念な与平さん、今回も、貧乏神にすら逃げられます。
学ぶことの無い与平さん。
けど、相手の喜ぶ事はしたいんだね。
金魚を貧乏神にプレゼント。

健気な貧乏神が美しくも〜儚げなでした。
最後に、与平さん〜死神となった貧乏神に、看取って貰えて良かったね。

貧乏神から、転職して死神になった所は、面白かったYO!!!

「デラシスの花」
永遠の生命を持つもの同士〜これからも、永遠に愛のある日々を!

この作品はネタバレ無しで、オススメしたい。

時は経っても、死神は〜洗濯してる所が笑える(笑)

この作品で、死神さんのファンになりました!

0

萌える落語の世界

同じ楽譜でもタクトを振る人によって、演奏にそれぞれの指揮者の色が出るのと同じように、落語も語る落語家の色が出ますね。
落語を元ネタにしたこちらの作品集。
秀先生の色が存分に味わえます。

【金魚すくい】 萌2
怠け者で女房に逃げられてばかりいる与平と、与平の家に住み着いている貧乏神。
ベースは落語の『貧乏神』に準えて、ディテールで秀先生節を効かせてきます。
本家では出て行く貧乏神に「辰っつぁんとこへ行け」というオチですが、この作品では貧乏神の深い愛情を感じられる展開になってました。
最後の一言に、ビンちゃんの健気さが沁みる作品です。

【デラシネの花】(前中後編) 萌2
「デラシネ」はフランス語で「根なし草」。
大層な名前のせいで病気もせず、年も取らず、生きながらえてきた寿限無と死神。
元々は長い名前のせいで、親父に殴られて医者に連れて行っても、医者と親が名前を言い合っているうちにこぶが治ってしまうほど時間がかかったとか、一気名前呼ぼうとした老人が息付きできずに…とか、「呼ぶのに時間がかかりすぎるほど長すぎる名前」というのがオチですが、前出の死神にジョブチェンジしたビンちゃんも登場して、不老不死の話になってました。
死ぬことも老いることもないせいで、誰かと添い遂げることも、ひとつところに居ることも出来ずに200年生きてきた寿限無が、ビンちゃんと出会って、誰かとずっと一緒にいられるしあわせを知る話。
末長くしあわせに過ごしてほしいものです。

【小向井家の事情】 萌2
夫夫の家の子の話。
市役所に勤めるお父さんと専業主夫の蓮司の関係が子供目線で綴られています。
学校の性教育、こっそり覗き見た父親と蓮司の夜のこと。
小さい頃からの刷り込みのせいか、「蛙の子は蛙」なのか、ラストが楽しい。

描き下ろしでは、死神と一緒に暮らすようになって、「生きていても意味がない」と思っていた寿限無が変わった様子が見られました。

秀さんの特徴として「発想力の妙」があると思うのですが、この作品集でも存分に発揮されていました。
切なくて、やがて萌えるBL哉。

1

長く生きる自分に寄り添ってくれる人

◆金魚すくい
 短かったけれど、とても心地良い余韻の残った作品でした。怠け者の与平は本当に働かなくてどうしようもないけれど、突然現れた貧乏神のことも邪険にせず、なんだかんだずっと一緒にいてくれて。人に借金してまで無駄遣いする彼にはなかなか同情しにくいかもしれませんが、貧乏神に金魚を買ってきてくれたその優しさに、心の温かさは本物なんだなと感じました。

◆小向家の事情
 貧乏神〜死神の話とは打って変わって、現代的な家庭の物語。『STAYGOLD』に近い雰囲気がありました。ゲイの父親を持つ少年の、父親の恋人への複雑な気持ち。なんで母親がいないの?という疑問はずっと昔に通り越しているけれど、父親が抱かれているのを見て、何とも言えない気持ちになるのは当然ですね。最後に自分も男の恋人を連れてきた彼ですが、それは父親達の罪なのではなく、彼の立派な自我の確立だと思っています。

0

金魚へのお礼が心に残った

金魚を買ってきてくれたから、買ってきたのが金魚だったから、家を出ることを思いきれたのだと思うのです
寂しがりやを置いていくのに生き物だったのが都合良かったと思います
そして、思い切って転職したから、このダメな男の最期を見取れたのですね
ダメな男って本当にダメです
こうして置いて行って最期迎えに来るのが憎まずに愛するたった一つの方法だった気すらします
お礼の言葉について何度も思い出して考えてしまいました

寿限無の長助さんは真っ当に生きて妻や子、孫らを愛して暮らしたのに死ねないというただ一点だけで1人根無し草となって不幸に生き続けていた
そんなところに死神に出会えて縋ったお話
長助の前から姿を消した期間に死を免れる方法を調べてきたのでしょうか
長助さん時代を超えてモテるイケメンだったのはラッキーだったんじゃないでしょうか
普通の人がただ命の蝋燭だけ長く持っても迷惑な話って(そうかも…)って心から頷けました

0

落語に明るくなくとも

作者さん買いしている秀良子さんの作品。
BLはもう全部読んでしまいました。
こちらが最後に手を出した作品。落語、和服、時代設定…あまり落語を知らない自分にとって、とっつきにくいテーマではありました。
寿限無くらいはなんとなく知ってる程度の知識。

しかーし!無問題でした。
じんわり切なく、暖かく、余韻を残すお話です。
BLなんだけど、たかが漫画なんだけど、人生においての何か教訓めいたものを感じられるお話が私は好きです。
単にエロいものも好きだけど、やっぱりお話のその後に想いを馳せられるものが神作品じゃないかと思っています。

0

デラシネ/根無し草

秀良子先生の作品が好き過ぎて偏っている自覚のあるレビューです。

落語が元ネタの「金魚すくい」(1話)、「デラシネの花」(3話)に繋がりがあって、ファンタジーではない別の作品「小向家の事情」(1話)も収録されています。

レビューで何度か書いてますが、やはり秀良子先生の作品は寂しさを抱えてるんですよね。露骨なお涙頂戴ではなく誰でも持ってそうな寂しさ。
寂しさを抱えながらもハッピーエンド、というのが私の見方なのですが、この単行本だけはどうも読後感が辛くて辛くてあまり読み返せません。
面白く無くて読み返さないのとは訳が違うので神評価です。

2

落語がらみコミックの秀作です。

秀さんの作品で一番好きなのがこの「年々彩々」。

上方落語好きの私はもともと枝雀師匠の「貧乏神」もとっても好きなのですが、女房のようになってしまうビンちゃんとの間に「恋愛」を足してこんなに切なく仕上げるなんて! ほんとに天才だなぁと思いました。色っぽいし。

そして長生きの「寿限無」に死ねない悲しみを抱えるバンパイヤものの味付けを加えるという発想もまた天才的。現代では夜の世界に生きてる…なんて設定も絶妙だし、死神とビンちゃんを絡めるあたりも脱帽。

キュンとしたり、切なくなったり、ジーンとしたりしながら「秀さん天才!」と唸りつつ何度も読み返しています。
私が、BL読みじゃない人にも折を見てはおすすめしている本たちの中の代表的な一冊です。

3

落語はよく知らないけれど、ガシガシと涙腺をやられます

秀良子さんは私の中でとても神率の高い作家様なので好きな作品はたくさんあるのですが、本作はその中でも特にお気に入りの作品。
強く長く心に残り続けるような神中の神作品です。
貧乏神ビンちゃんのダメンズウォーカーっぷりに乾いた笑いをこぼしつつ、デラシネ(根無し草)の孤独感と心の拠り所(救い)を描いたストーリーにガシガシと涙腺をやられます。



落語をベースにした「金魚すくい」と「デラシネの花」は、2人の根無し草のお話。
「根無し草に花は咲かない」と、かの経営の神様(松下幸之助氏)は仰っているわけだが、さてさて「デラシネの花」とはなんぞ?と。
この洒落のきいたタイトルに惹きつけられて読み始めてみれば、これがあとでグッと効いてくるキーワードだったことに気付かされる。
秀良子さんの描くお話にはいつも素敵なアンサーがあるのだ。

怠け者で貧乏神にすら見放されて独りぼっちになった「金魚すくい」の与平が最期にポツリと漏らす「さみしいなぁ…」
何百年も死ねずに独りで生きてきた「デラシネの花」の長助が死神に懇願する「傍にいてくれよ なぁ… 頼むよ…」
孤独の限界点を超えた2人の主人公が口にする言葉の先にある結末の差こそが、秀良子さんの提示するアンサーなのだと思う。
同じ根無し草でも、長助のように掴むべきものをしっかりと掴み自力で根を生やすことが出来ればいつか「花」は咲くのだろう。
だけど、「さみしいなぁ」と呟くことしかできなかった与平は根無しのまま死んでいく。

「デラシネの花」の対比として描かれている「金魚すくい」には教訓が詰まっている。
与平はビンちゃんに喜んでもらいたくて買ってきた2匹の金魚をビンちゃんが愛想を尽かして出て行った後も大切に育てているんだけど、そのうち1匹いなくなり、やがて残りの1匹もいなくなって…
一つの桶の中で飼っていた2匹の金魚は与平の理想の無意識の現れだったのだろうと思う。
だけど怠け者の与平は理想を眺めているしか出来なかった。
理想と現実のギャップを埋められないまま、公園でボンヤリとよその母娘を眺めている与平の視線が哀しい。
結局怠け者の与平が掴めた救いは、死ぬ瞬間のあの一瞬だけ。
与平の最期に再び現れて、金魚のお礼を言うビンちゃんの心を思うとやるせなさがこみ上げる。

この落語シリーズは、一つ一つは与平と長助の話なのだけど、二つが合わさるとお話の主人公がビンちゃんになるところもまた面白い。
「神様」という存在だったビンちゃんが一気に人間臭くなる。
与平を心にずっと住み着かせたままでいるビンちゃんが切ない。
長助と一緒に生きていくことにしたみたいだけど、ダメンズウォーカービンちゃんは果たして無事幸せになれるのか?!
「金魚すくい」の頃のビンちゃんが端々にデジャブる描き下ろしの長助との生活に一抹の不安が拭えません><
頑張れビンちゃん!!



タイトルの「年々彩々」というのは、禅語の「年年歳歳花相似 歳歳年年人不同(年々歳々花相似たり 歳々年々人同じからず)」をもじってあるのだと思いますが、「諸行無常の世界に彩りを添えられるかはその人の心次第」というふうに解釈しています。

最後にひとつ入っている現代モノの短編は、とても秀良子さんらしいクスリと笑えるオチ付きでほっこりしました。

【電子】レンタ版:修正◯、カバー下×、裏表紙×

6

魅力的な貧乏神

切なさが胸に響く、落語BLシリーズです。
落語は詳しくないけど、面白くて世界観に引き込まれて、一気に読んでしまいます。貧乏神や死神(同一人物)が、可愛くて魅力的で萌えます。

『金魚すくい』
貧乏神に働けと言われるほど、ぐうたらな与平。貧乏神に内職させる最低な男だけど、貧乏神が喜ぶかと思って金魚をプレゼントする優しい一面もあります。そして、とうとう貧乏神にも見放されて…。
月日が経ち、自分の死期を知って、一人は寂しいと呟く与平。そんな与平の前に現れたのは、死神の資格を取った貧乏神でした。
待ち望んだ再会が、最後の逢瀬になってしまった事実に切なくなります。

『デラシネの花』
死なない男と死神(前作と同じ、貧乏神から死神になったびんちゃんです)の話になります。
死なないことで200年孤独に生きてきた男が、ずっと探していた死神。やっと死神を見つけて、死にたいと懇願するのです。
死ぬことは叶わなかったけど、そこから始まる、おかしな付き合い。おまけに、会うたびに感じる、死神への愛しい想いと執着に戸惑います。
そして、とうとう死ぬ時がやってくるのですが…。
2人の最後の望みと、ハッピーエンドが良かったです。

人間味あふれる性格と黒髪長髪の美人な容姿で、死神のびんちゃんの魅力がキラリと光る、そんな1冊です。

4

食う寝るところに住むところ

一冊通してとてもコンセプチュアルで、秀先生は落語というテーマをこんな風に料理できるのか…!と、一話目を読み終わってすぐ次のお話が楽しみになる、読んでいてワクワクする本でした。
だめんずうぉーかーなビンちゃん、本当にかわいかったです。
「金魚すくい」では、だめんずな攻めってひとりにすると実は淡々と生きのびていくんだよな…という真理にも気付きつつ(でも受けの攻めへの献身を楽しみたいところもあるので、BL的には必要悪ですね)、ラストはやっぱりビンちゃんの健気さに切なくなりました。

また、「じゅげむ」のBLアレンジの発想が本当に面白くて…!
ちょっぴりコミカルにも描かれつつ、何度も投げやりになりながら時代を見つめてきた寿くんが切なかったです。
一番ドキリとしたのはやはり今際の際にビンちゃんがかの有名な名前を読み上げるシーンだったのですが、その中で不意にスッと切り取られる、「食う寝るところに住むところ」という一節となんでもない街の風景の挿絵になぜかすごくすごくぐっときて涙腺が緩んでしまいました。こういう演出は、やはり流石だと思いました…。

ラストは暖かい幸せもいっぱいで、時々不意に読み返したくなる素敵な一冊です。ありがとうございました。

3

本当素敵でした!

秀良子さんは、前に「宇田川町〜」を読んだのですが、全く響かなかったのでそれから読んでいない作家さんでした。絵や雰囲気は好きなのですが、あの話は駄目だったみたいです。

この本もずっと気になってはいたのですが何故か手が出ず、やっとこ購入。

あああ!これ!!!落語だ!
いやあ、まさかこういう系統とは!
元ネタを上手くBLアレンジしてあって、素敵です。
もっと早く読めば良かった。
BLですが、そういうシーンはほとんどありません。
でもそんなものなくても、これで充分伝わるのでいいのです。何よりビンちゃん(落語と同じだ!!)の存在が美しい。
彼、本当切ないですね。
貰ったものが、金魚とコロッケというのが好きです。
でも、一応ハッピーエンドだからいいか。
これ、貧乏神が死神になるって件は、特に表記はなかったですが「死神」も入ってるんでしょうか。

落語や古典が元ネタのBL、もっと読んでみたいです。
本当素敵でした!

3

キリヱ

yoshiakiさん

コメント有難うございます!
これ、いいお話ですね!
何故、すぐ読まなかったのだろう。(後悔)
落語で大好きな枝雀師匠で見た事があるので、驚きました。
BLにこういう切り口があるとは!
落語はそこまで明るくないのですが、たまたま知ってる話3つだったので余計に嬉しかったです。
落語や古典を題材にした新解釈のBL、もっと読んでみたいです!

yoshiaki

キリヱさま

こんばんは。答姐でいつもお世話になってます<(_ _)>
この作品面白いですよね~。
私も好きです(^O^)

>これ、貧乏神が死神になるって件は、特に表記はなかったですが「死神」も入ってるんでしょうか?

読んだ後私もちらっと調べたんですが、落語の「死神」もほんのちょっとだけミックスされてますね。
落語の「貧乏神」と「死神」を、神つながりでつなげただけじゃなく、ストーリーとしてもびんちゃんの転職に納得できる流れになっていて、しっかり読ませる話だなと思いました。
死神の装束がハレの日の衣裳というところも、好きです。
落語元ネタのBL、もっと読みたいですね☆彡

玉を集めて生み出すよ!

秀先生の柔らかいペンタッチには、こういった古風なお話がとてもよく合いますね。
カバーも和風で、読み始めることが楽しみになるデザインです。

私、落語を聞くことは今までほとんどなく、時折テレビやラジオから流れる落語をなんとなく耳に入れたりする程度です。その昔見たドラマでの落語もちらほら拝見してはおりましたが、印象に残っているのはまんじゅうこわいくらいなもので……そんな知識がない人間でも、一冊を充分に楽しむことができました。
貧乏神も寿限無も、落語を聞く人が周りにいたため存在こそ知っていたものの、本当のオチ(サゲ)がどうなるかは今なお知らずにおります。(ただ、真の貧乏神でもビンちゃん呼びがあるというのは知りました。落語って硬いイメージがあったのだけど随分違うんだと衝撃を受けています。)
[年々彩々]でのオチは秀先生なりのもの(カバー下のあとがきでも綴られていましたね)なのですよね。オマージュ作品ながらも、BLであるがゆえに落としどころをうまーく作られているなぁと思いました。

>ビンちゃんのこと
ダメ男にハマってしまう人の典型といいますか、この頃のビンちゃんは良くも悪くもお人よしだったのでしょうね。与平さんが全面的に悪いのです、弁解の余地もなく、そしてビンちゃんは紛うことなき貧乏神であっただけです。
けれども、二匹の金魚が一匹になり、そしてそのこさえもおそらく死に、与平さん自身も肺を患い死神ビンちゃんが迎えるところは、寂しさと幸せの行く末を考えました。
そういったことがあっての寿限無ということもあり、えらく近代的になったビンちゃんには驚きつつもああ死神として生業を得ているのだなとホッとしたりもして。死神正装と思われる黒地に花柄のお着物はとても美しいです。
結果的に寿限無もややダメ男で(笑)ビンちゃんってばダメ男を寄せるフェロモンでも持っているのでしょうか。永らく生きているであろう(そして神であるならば寿命もなかろう)ビンちゃんが、唯一引きずる与平との思い出に寿限無のこともプラスされれば、きっとまた笑ってくれることでしょう。
200年も生きた寿限無が忘れられないほど、きれいな笑顔だものね。

>同時収録作
[小向家の事情]
切り口こそライトであれど、扱っていることは今の日本ではハードなことです。
救いなのはこのお話の視点が子供である颯太であるということ。男の子の方が、まだこの頃であれば鈍感でいられますものね。いえ本人のなかではド修羅場であったろうことは間違いないのですが。
颯太の目線での記憶と感情が、言葉にならずとも絵でこちらに伝われば伝わるほど、この家庭の事情が痛みをもって表れるように感じました。でも、まだ颯太が蓮司のことをちゃあんと好きだったから、大丈夫だったのですよね。
紆余曲折ありましたでしょうが、これまたオチがある意味で爽快でした(笑)

萌え如何の度合いを考慮すると評価が【萌】なのですが、秀先生の創られるお話は好きなんですよね。この一冊でもそれを強く感じました。

3

和のミニマリズム

3つのお話が入っていました。
あらすじは割愛します。

3つとも、オチがよかったです。やはり、落語はオチが秀逸であってこそ。
1つ目は切ない余韻の残るもの。
2つ目は明るさを感じるもの。
3つ目はどんでん返し。
あいかわらずうまいなぁと思います。

秀さんはもう世界が確立してらっしゃるので、あとは読む側の好みの問題。
秀作品の中では、これはスタイリッシュな方ではないでしょうか。必要な部分だけ描いて(画面上もお話上も)あとは余白にして、和のミニマリズム、という印象。
これを狙ってこう出されたのでは、うならざるを得ません。うまいなぁ、としか。
これまでの作品もよかったですが、ぐうの音も出ない作品はこれが初めてです。

4

幸せかどうかは自分が決める

 この貧乏神改め死神が、よくできた受けで…。
 
 表情乏しく淡々と生きているように見えますが、無限の時を諦めずに生きるって、ものすごい情熱家なんだろうなと思わされます。切なく儚げに見えて芯が強い。運命を嘆くでもなく、だめんずを恨むでもなく、しっかり自分を持って生きていて、それは幸せなんだろうと思います。だから美しく見えるのでしょうか。
 底の強さが計り知れない受け、大好きです。何十年でも何百年でもかけていいので、だめんずをしっかり調教してもらいたいです。

 らぶらぶな萌えはないですが、深い無償の愛みたいな萌えと癒しがありました。

2

だめんずと死神の、くされ縁的せつない恋の物語

◆あらすじ◆

落語を原典にした「金魚すくい」「デラシネの花」の2作のほか、「小向家の事情」が収録されています。
「金魚すくい」は落語「貧乏神」をアレンジした作品。
働かない男・与平は女房に逃げられ、金もなく独り身。そんな彼の前に貧乏神(表紙右)が姿を現し、働いてくれるように頼みます。
貧乏神は取り憑いた家の人間が働いた儲けを養分にして生きているらしく、与平は貧乏神も耐えかねるほどの怠け者というわけで…
そのうちに、どうにも憎めない与平にほだされた貧乏神は自分が働くようになり、まるで夫婦(勿論貧乏神は男なのですがw)のように暮らし始める二人。
しかし、貧乏神に依存しすぎた与平は、ついに貧乏神にすら愛想をつかされ、もとの孤独に戻ります。
長い年月が過ぎ、独り身を通してやがて死期を迎えた与平の前に、再び姿を現した貧乏神。
転職して死神になったと言う彼に、与平は嬉しそうに身を委ね…

続く「デラシネの花」は、やはり落語の「寿限無」が原典。長寿できるようにとの親の願いが叶って200年も老いることなく生き、ホストとして現代を生きる寿限無(表紙左)が、「金魚すくい」で登場した死神に出会います。

「小向家の事情」は、母親の代わりに「父親の友達」の男が同居している特殊な家庭を、子供の目線で眺めた作品です。

◆レビュー◆

「金魚すくい」は「デラシネの花」の序章と位置付けると、とてもスッキリと作者のメッセージが伝わって来るように思います。
この二つの作品はいずれも、落語の登場人物であるダメ男を題材に、彼らの生きる苦しみの部分にスポットを当て、苦しみの人生の唯一の救いとして死神を差し向けた点が共通しています。
貧困と孤独に苦しむ与平、退屈と孤独を抱えて長い長い人生を生き続ける寿限無。
彼らを救ってくれるものは、もはや死しかありません。彼らの死神への想いは、恋愛であると同時に、救われたいという切望でもあるわけで、そういう意味でここに死神が登場するのは、物語の必然という気がします。(貧乏神が死神に転職したのも、最期に与平を救うためだったのかも…)

死神に看取られて息絶えた「金魚すくい」の与平、対する「デラシネ~」の寿限無は、死に勝る生の喜びに辿り着きます。
彼に生きる選択肢を与えたのは他ならぬ死神自身…というところがオチ。
結局のところ、ダメ男に永遠に寄り添えるのは、死神(それも貧乏神出身の)しかいませんからね(笑)
そんなだめんずと死神のおかしな腐れ縁っぷりもまた、この作品のクスッと笑える味わいになっています。
これはかなり練られたストーリーだと思いますね。

落語の噺をなぞったような導入部は、ちょっと退屈しながら読み進めたものの、「金魚すくい」ラストで、桜吹雪の中、死神がハレの装束で与平の前に現れるあたりでガッツリ惹き込まれ、そのままのテンションで読み終えました。
個人的には「金魚すくい」の切なさが好きでしたが、秀良子さんの服飾描写のセンスが楽しめるのは、やはり現代モノの「デラシネの花」。
攻めの姉貴がいい味出してた「宇田川町で待っててよ。」同様に、今回も辛辣な女たちが、生きにくい世の現実を、主人公に容赦なく突きつけてきます。
うん、面白かった。もうちょい泣かせてほしかった気もしますが、この軽い後味が落語らしくて良いのかもしれません。

ちなみに、この作品を読んだ後落語の「貧乏神」を聴くと、ベツモノになりました♪
皆様ぜひお試しを。

7

読み応え◎

読了して、さすが秀良子先生!と思いました(笑)
ごく個人的な意見で言うと、同作者さんならば他作品の方がこの新刊と比べて面白いと思うのですが、やはり他にはないような話で素敵です。

二つ微妙に思ってしまったのは、主人公である死神が二つのエピソードをまたいでそれぞれ他のキャラクターとの話を展開する点(ひとつはプラトニックラブですが)と、NL表現が結構ある・女性モブがえぐい点です。

「落語シリーズ」と銘打たれていますが、特に意識することもありません。
評価は萌×2と迷いましたが、攻キャラを一つに絞ってほしかったな~ということで萌です。

3

読むたびに沁み入る……

déraciné
根無し草。転じて、故郷や祖国から切り離された人。

年々歳々、来る年も来る年も淡々と時間が流れていく。
古今東西、人が望んで止まぬ長寿。
でも、知る人が皆死んでゆき、一人生き続けて行く事は苦しいだろう。

落語の「貧乏神」と「寿限無」を題材にした作品。
最後に関係ない小品と、寿限無の書き下ろしが加えられている。
サラリと描かれた、深くて物悲しく、そして暖かな物語。


『金魚すくい』
時は江戸時代。
貧乏神(びんちゃん)は、取り付いたグータラ男・与平になんだか振り回されている。
甲斐甲斐しく生活を支えながら暮していたびんちゃんだが、
やがて与平に愛想を尽かし彼のもとを離れる。
時は巡り、桜の候、死神に転職したびんちゃんは与平の最期の時に訪れるが……


『デラシネの花』は、「寿限無」の名を付けられて200年も生きている男の話。
子や孫は勿論知っている人は皆死に、特攻隊で命を散らそうとするが失敗し、
山奥で暮したり街中で暮したり、名を変え転々としながらいつしか時は平成。
ホストとして刹那的に生きる寿限無。

実際の落語では「貧乏神」同様、前座噺として扱われる事が多い「寿限無」だが
この本の中では、落語に秀流オチをつけた『金魚すくい』を前座としながら
続く『デラシネの花』では斬新な発想で、
切なくも優しく愛おしい世界を描き出している。

平成版死神(びんちゃんのその後)は、長髪でクールななかなかのイケメンだが
昔出会ったダメな男の優しさを心の隅で引きずって、またこんな男に引っかかり……
浮世離れしたちょっとずれた淡々さと(そりゃ神様だしね!)
妙に人間臭い死神がいい。

年々彩々……
淡く色がついた彼らの時間は、今後どんな風に描かれていくのだろうか?


最後の短編『小向家の事情』は、短いが読み応えがあり読後感のいい話。
回想されるエピソードの挟み方が秀逸。
ラストシーンの「ざまぁ」が、落語のオチに似た味わいか。


本自体も細部まで何気なく世界観に彩られ、読むたびに静かに沁みる一冊でした。

14

落とし加減

表題作のベースになった『寿限無』と言うのは元々が滑稽話で
話す時のテンポ維持がさりげなく難しい事から落語を高座で
語る際の課題噺になっているとかいないとか。
その寿限無をこう肉付するかと舌を巻き、更に落ちでなんとまあと
あごを撫でたのが表題作でございまして。
表題作丸々元の寿限無も含めて噺に仕立てて高座にかけて欲しいと
言う感じですね。難しいとすれば男同士の艶もどうやって独りで
演じるかと言う辺りになるでしょうか。

巻頭作があるから表題作も光ります。
元々落語の中に生きてる人達ってのは綺麗事で生きてる人ばかり
ではありませんので、傍からみりゃなんてェろくでなしだと
言いたくなる人だっています。
誰からも愛される与太郎ばかりなら角も立たないのでしょうが。
ま、この受けの神様の前では人間は皆与太郎なのかも知れません。
だからこそ攻めは愛されてしまうのかも知れません。

「小向家の事情」、現代ものの筈なのに落語の匂いを感じて
しまうのは何故なんでしょうね。
ぐるぐる回りつ続けた何かを一気に回収してしまう様な落ちに
小気味良さを感じてしまいます。

12

貧乏は嫌ですがビンちゃんは好きです

■【金魚すくい】
まさか秀良子さんでタイムリーに精神的負荷のかかる作品をひいちゃうとは思わなんだ。
数日経ってから読んだらそうでもなかったですが、ちょうど…って日に読んだその日は号泣きでした。

人によっては攻めのダメンズタイプ(ぷー太郎)が苦手な方もいると思うのですが、
いやホントねぇ…。
あぁ世の中ままならねぇです。
情はあっても腹は立つ。腹は立つけど情はある。
どうして理想と現実ってこんなに違うのかなぁ(遠い目)

貧乏は嫌ですね~
BL貧乏みたいに好きなものに投資する貧乏はツラくても楽しいですけれども。
それとは別に、私みたいにしがらみ貧乏はキツイでございますよ。
宝くじ1等とまでは言わないから当たらないかな~w

ビンちゃんが家を出て行く時も切なかったです。
私が一緒にいたらあなたのためにならないから…。
ビンちゃんに感情移入MAX!

ビンちゃんが死神になって再び与平の前に現れた時、
「金魚を買ってきてくださってありがとうございました」という死神の言葉に、
じんわりとこみ上げるものがありました。
純粋に愛するって難しいと思うのですが…えぇ、しがらみがありますからねぇ…
でもこの二人にはそういう純粋なものを感じて、貴い人たちだなぁと思いました。

■【デラシネの花】
名前のおかげで長寿(200歳)になってしまった寿限無(中略)長助のお話です。
時は流れてホストになった寿限無(中略)長助は、
大戦時見かけた死神に偶然にも出会い、
今度は死神とメル友に。
寿限無は200年も生きてしまったからでしょうか、
何もかもが面倒臭いと思うような人になっていました。
そんな寿限無を振り切ることができない死神の、これまたその気持がよく分かる。
腹は立つけど情はある。うっちゃる(投げ捨てる)ことは…できない。

一つ気になっているセリフがあるのですが。
寿限無が死神を押し倒した場面で、
死神が「どうしてあなたたちはいつもそう…」と言うセリフです。
なぜ「あなた」じゃなくて「あなたたち」なんだろう。
死神さんの心の中に、寿限無以外の誰かがもう一人いる…?
その人は今どこにいるんだろう?
寿限無の中にいる?
それは誰?

ところでビンちゃん(死神)のキャラに萌えました。和装も洋装も両方好きでした。黒髪ロングの美人さんできゅん。健気さんなところもきゅん☆
笑いどころもあり、深い部分もあり。
こちらの作品は個人的にはアルバム的な作品として心に残りそうです。
◆描き下ろしの寿限無と死神がソファに座っているところ、自然なキスをするところが良かったです。流れた涙も描き下ろしに癒されました。怒っている死神さんにきゅん。

■【小向家の事情】
父親と父親の友達が一緒に住んでいる小向家。
その父親の友達というのは実は父親の彼氏で、そしてお父さんは受だった…
子供(颯太)は父親の彼氏(蓮司)のことが好きだったのですが…ショックな事実を知り・・・
数年後、彼氏を連れて実家に帰ってくる颯太。ビックリしている父親と蓮司を見て、心の中で『ざまぁ』と言っている颯太が愉快でした。

9

落語BLです

落語には全く詳しくないのですが、onBLUE掲載時に少しずつ味わっていたものが一冊分になると世界観を更に満喫出来ていいなあと思いました。
じっくりと読んで味わと日本人の奥ゆかしさのようなものを感じてしまう、そんな一冊です。

【金魚すくい】
今の時代でいうところの「ヒモ」とでもいうのでしょうか、貧乏神が死神に華麗に転職。
なにもしないろくでなしの与一が、唯一買ってきた金魚の描写が印象的です。
毎日毎日ろくに働きもせず人の財布から抜き取るような与一でも、与一なりの温情があって貧乏神はそれを感じ取っていたのでしょう。
嬉しそうな貧乏神の様子にこちらは見守るしかない…!と腹を括ります(笑)
「金魚買ってきて下さってありがとうございました」と、与一を膝に寝かせて言う貧乏神、いや死神の描写が綺麗です。
このお話の雰囲気を得意だと思えないと美しいと思えない情景ですけれど、なんとなくさみしげでけれどようやく再会した二人の姿が優しげで素敵。

【デラシネの花】
寿限無(中略)長助さんと昔みた死神のお話。
二百年近く生きて、世の中にも自分自身にも飽きた長助さんが寿限無を観覧するという設定が凄く象徴的ですよね~。
ホストクラブで働いている姿もシュールながら面白い。
かなりぶっとんだファンタジーな設定ですが、現代までに生きて疲弊している長助さんがたどり着いた先が死神…というゆったりとした恋物語。
現代服を着た死神さんも可愛くて、書き下ろしで一緒に暮らす二人が夫婦みたいでこうやってこのあとも暮らしていくのかなと思ってしまいました。
死神さんサミット好きなのかなあ(笑)

【小向家の事情】
あ、これ見たことないなと思ったらon BLUEさんでなくdrapさん掲載なのですね。
お父さんに恋人がいて、それが男の人でということを大きくなってくにつれてどういうことなのか実感していくというお話。
性の目覚めみたいなものがテーマなのかな。
お父さんと蓮司どっちが受けで攻めなのか…気になって仕方ない!

この作者さんはあまり得意ではないのですがこの作品はじっくり読ませるタイプの作品で、とても素敵な世界観だなと思いました。
宇田川の時も思いましたが、この本も装丁がとっても素敵です。
表2・3部分であったり帯にもこだわりを感じさせるところがon BLUEコミックスの良いところですよね~装丁凝ってるの好きなのでニヨニヨしちゃいます^^

7

まさかの落語BL

登場人物が落語家な落語ものならまだありそうですが、まさかの落語そのものをモチーフとしたBL。
「金魚すくい」は落語「貧乏神」、「デラシネの花」は落語「寿限無」を元としたストーリーです。
しっとりと淡々とした印象の作品。貧乏神や死神がでてきたり、200年生き続ける男が出てきたりと、ある意味ファンタジックでありえないのに、淡々とした日常描写で、生活感のある生っぽいお話になっている印象です。

「金魚すくい」
舞台は江戸時代。超だらしない貧乏男と貧乏神のお話。ある意味悲恋ですね…
「デラシネの花」のプロローグ的な役割もあるのかな…

「デラシネの花」
「金魚すくい」に出てきた貧乏神(資格をとってw死神に昇格)×200年生き続ける寿限無(中略)長助さんのお話。
江戸時代から生き続けて、若いまま現代ではホストクラブで働く長助さんw
ぶっとんだ設定のはずなのに、しっとり切ない大人の恋のお話。

「小日向家の事情」
これは落語ではなく、単独のおはなし。
父親と、父親の恋人と暮らす少年目線の話。最後のオチがよかったw

6

人とは愚かなり

現代の死神の姿に萌えて仕方ないんですけれども…!
フェティシズムと云うのか個人的な嗜好なんですが、男性の正座にやられてしまうのです。色気と気圧される何かを感じます。

【金魚すくい】

与平はどうしようもない男のままだけれど、死神となったビンちゃん(名付け@与平)に迎えに来てもらって穏やかな末期を迎える。
ビンちゃんが洗濯の時に見た夕日に感じた事、家を後にする時に思い浮かべた与平の笑顔。
最後のセリフが胸に来ます。

【デラシネの花】

寿限無長助さんが江戸時代後期から現代まで二百年生きていて、落語「寿限無」を聞くというアイロニー漂うお話。
人の世の理から外れた長助さんの長い孤独に色付いたのが死神だった。

とにかくこの死神の色気にやられます。
洋服のおだんご姿やら本を読むときの眼鏡姿やら林檎すりながらの正座やら事後の正座やら、、、って云うか正座!
えーろーいー…v

描き下ろしは今の長助さんと死神の暮らしなんですが、これはブ○ダとイエ○じゃないか!^^
こうして二人で生きていくんだろうな、いいなと思える微笑ましさです。

"歳歳年年人同じからず"を"彩り"にして、無常の中にも色を付ける作者の眼差しの温かさを感じました。
落語がそもそういう視点を持っていますしね。

ページ数が縦に漢数字で表記されてあるこだわり、カバー下も楽しい一冊です。(神龍に叶えてもらって出来たんだ、死神)

欲を云えばまるっと一冊死神さんのお話を読みたかったな。
【小向家の事情】は切ない性の目覚めのお話です。

8

死神は

死神は最も優しい天からの救済。

on BLUE誌掲載時に「金魚すくい」と「デラシネ~」のどこか1回分くらいは読んだことがあったとおもうが、改めてちゃんとまとまった物を読むと、元貧乏神の死神君が、とっても美形で色っぽい。

「金魚すくい」
この1作だけだと、「まぁ、随分と変わった趣向のマンガだけど、、、ふぅん」程度の、
与平のキャラが限りなく「しゅみじゃない」よりで、なんというか、後味悪い作品だったけど、
「デラシネの花」
こっちの寿限無のキャラは、こんなダメ男に成り下がるだけの諦観があって、受け入れやすかった。
現代風の服装の死神が、また、色っぽいの。
「小向家の~」
このお父さんとレンジも、颯太も、受け攻めはどっちなのかしらね。

4

じっくり味わって読む、大人の落語BL

落語の「貧乏神」と「寿限無」をモチーフとしたお話。
まさか落語がBLのモチーフとなるとは…!驚きです。

「寿限無」は知っていましたが、「貧乏神」は今回初めて知りました。
ちなみにデラシネとは、根なし草のことだそう。
転じて、故郷や祖国から切り離された人のことをいうそうです。

今回特に落語を下敷きとしているからか、単なる萌えではなく、情とか色気とか侘しさとか、そんなものがたくさん織り込まれているように感じました。
秀さんの作品はセリフも少なくさらっと読めてしまうから、物語の行間や表情を味わえるか味わえないかで、作品への評価が分かれてしまう気がします。何度も読み返して味あわないと、本当のおいしさはわからないのかも、と秀作品はいつも思っています。
正直、私個人的にも、一度読んだだけの状態ではあまり好みではなかったのですが、本作の「金魚すくい」を読んだ後に落語の「貧乏神」を読んだら、一層物語がわかりやすく、そして味わい深くなったような気がしました。

今回は、「リンゴと蜂蜜」シリーズのような、わかりやすい萌えで万人受けするタイプではなかったのですが、最後に収録された「小日向家の事情」は唯一万人受け。
個人的には、お父さんカップルの過去に妄想が膨らみました(笑)
たとえば、二人の関係を息子へ隠す日々なんかを読みたいなーと思ってしまいました。

onBLUEさんの本、すべて読んでいるわけではないですが、新たな試みのある作品や難解な作品が非常に多いなぁという印象です。
自分の心に余裕があるときに、じっくり味わって読みたい本です。

9

暗闇の中の光だからこそまぶしいのだろうか。

死神。好きな設定でした。
秀さんの作品イラストは得意分野じゃないのですが、読み返すことが多かったので、今回も迷わず購入しました。

今回は好きになれなかった。
1つの作品は好きだった。
小向家の事情
これだけ大好きでした。
生まれた時からお母さんのかわりに身の回りの世話をするのが
男の人であること。
思春期の気持ちが当たり前に描かれていました。
それがとても心地良かった。

表題の死神の作品は
死があることで描けることではなくて描ける作品でもあったと感じた点から深い興味をいだけませんでした。

お金にだらしなく、働きもしない。自分のお金じゃないのに
酔いどれる
金魚を買ってくる優しさが
暖かいとは思えなかった。

すみません。

7

落語が漫画になるとこうなるのね。

読んで初めて落語からの作品なのだと気がつきました。
初めの金魚すくい、これって落語作家の小佐田定雄さんの作品なんですよね。
知り合いが落語をこよなく愛しているので、桂枝雀さんのテープを聞いたことがあり、
秀良子さんの手によってコミックスになるとまた違う味わいがあると
かなり心惹かれてしまう最高な作品に仕上がっていますね。

落語でも貧乏神の可愛らしさを感じたのですが、画でみると一段とですね。
内容的にはミイラ取りがミイラになったような話ですが、これが心に染み入ります。
落語家さんの話で感動もしたのですが、この作品でも視覚から感動を得ました。
これも画力と作家さんの解釈のたまものですよね。
是非皆様におススメしたい1冊だと思います。

表題作は寿限無寿限無でおなじみですが、長生きしすぎて現代ではこうなりました!
とんでもなく奇想天外であり面白くも切なくもありでしょうか。
200年生きたらどうなるのか?長寿を願う親子愛の落語がこんな風になるのだから
面白い、それに出てくる死神も心惹かれます。
この作品は取りあえず騙されてもいいやのつもりで読んで下さい。
高確率で面白いと思えるはずです。

10

死神の恋

onBLUEでの連載「落語シリーズ」2作に、drapからの短編と、描き下ろしを加えて構成された一冊。
落語シリーズは既読でしたが、その2作品とも切なさや、恋焦がれる気持ちが溢れて涙なしに読めなかった!

【金魚すくい】
怠け者すぎて女房に逃げられた大工の与平の元に現れたのは、家に取り憑いている貧乏神。
彼が言うには、取り憑いた家の人間が働いた儲けを養分にして生きているのだとか。
全然働かない与平によって貧乏神を失業してしまう為に、「働いてください」と言いたくて出てきたのです。
仕事道具も質に入れた与平は貧乏神に金を貸してくれと頼む始末。
日銭を稼いではすぐ使ってしまう。腰が痛いと言っては休む。
貧乏神も働いて、そんな二人の奇妙な共同生活が始まります。
そんな与平が貧乏神の為に買ってきた金魚。
食べられないけど綺麗だった。そして与平は寂しがりの甘えん坊だった。
どんなに健気に尽くしても、与平の怠けグセは治らずとうとう貧乏神は与平の元からいなくなる。

食べ物じゃなかったけど、金魚をプレゼントされてきっと貧乏神は嬉しかったのだと思う。
私といるとこの人は駄目になる。
そんな男も世の中にはいるもので・・・貧乏神を失業して転職した彼がなった職業は・・・その再会はとても悲しいものだが、「金魚ありがとうございました」この言葉に与平への愛は感じられないだろうか?
或る意味バッドエンドなのだけど、貧乏神がいなくなって彼はきっと金魚をその代わりにかわいがったのだと思う。
駄目な男の末路にザマァという気はおきなくて、やっと訪れた彼の平穏と会いたかった人との再会が果たせて彼は幸せだったのだと、思えるのです。

【寿限無】
初めて出来た子供はめでたくて、長寿になれる名前をと付けられたその名前のせいで、死ねなくてずっとずっと生きて、都会の街にまぎれてホストとして生きている寿限無。
彼はとうとう見つけるのです、その昔特攻隊の飛行場で見た死神を!
人としての限りある命に憧れる寿限無は、ひょっとしてその時に死神に恋をしたのかもしれません。
そうして、メールで呼び出しては会う仲になり、その執着は身体の関係にも発展し。

寿限無は取り残される寂しさをずっとずっと味わってきたんですね。
自分に死を告げる人、そして彼も死なない人。
寂しくて、人恋しくてそんな彼の想い人は待ち人でもある存在。
死神だってひょっとして同じかもしれません。
そしてやっと訪れる死の宣告。だけどその時残るのは未練。
この終わりはハッピーエンド。
でも、何故かちょっぴり切ないのです。

この「寿限無」が始まった時、与平さんは?ってとても気になりました。
死神は与平さんを好きでなかったの?死んでしまった人とは生まれ変わりで再会してそれで、とかそういう展開じゃないの?って、全く独立した別モノの展開になったことに、ちょっぴり救われない気がしたのですが、でも、別の話し!と割り切りました。
コレはコレ。アレはアレ。

そんな二人が仲睦まじくしている描き下ろしに、少し癒されて、死神はツンデレクーデレだと認識するのでした。
愛されて幸せ。

【小向家の事情】
drap掲載の1本です。
少年の頃知ってしまった父親の事情。
自分の家は普通のお父さんお母さんのいる家と違うのは、父親だけだからじゃない。
父親に恋人がいるからだ。
それを受けれて7年後、自分も男の恋人ができました♪

落語シリーズだけの掲載でもよかったのですが、ファンタジーでない現代モノが入ったことで、口直しな役割をしているかもしれません。
秀さんの作品は、これまでどれも全部はずしてない(自分的)今回も素敵でした。
萌えを超越して心を揺さぶります!

8

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