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愛したい < 信頼されたい < 友になりたい。愛と友情に揺れる男たちのlove story。
男同士の多様な関係性がテーマの作品で、モチーフになった童話の内容に絡んだ謎解きとともに、
この小説に登場する人物達でどういう関係性が繰り広げられるのか、期待感を持って読み進めました。以下辛口感想になります。
ところが、真相に関わってくる男爵家の秘密は、悲愴感もあり、描き方次第ではもっと鮮烈な印象が残るはずなのに、肝心な所があっさりとした描写で、印象に残りませんでした。
登場人物の関係性も童話のモチーフになぞらえているんでしょうが、関係性の描写の印象が薄く、萌えまで至りませんでした。童話の内容の方が萌えました。。
一見濃い内容の小説に見えるのですが、蓋をあけると、意外とライトな小説だったという期待ギャップが残念でした。モチーフにされた童話の内容が腐女子的にクる内容のものだっただけに、本編の登場人物達の関係性が、もっとシンボル化され、分かりやすい構造であれば、もっと印象に残る作品になっていた様に思えます。童話の登場人物が本編の登場人物に暗喩されている試み自体は面白く感じたので、今一歩深さがあれば…と感じました。
そう、エロなしなんですが、これはBLのLもなし、というとんでもなく珍しい作品でした。
レトロちっくな舞台設定で、素敵で剛胆で新しいものの考え方をする男爵家当主と、ゲイの探偵のお話。
盗まれた、同人誌的な童話を探すという仕事を依頼された探偵、神足。まだ神足に執着する元彼や、仕事をまわしてくれるかつての戦友、そして強い絆で結ばれた加瀬(性的関係はない)、執事などがそれぞれしっかりキャラが立っていて面白かった。
この、男同士の友情の深さって、BのLを超えるんじゃないかと思うことがあります。元彼が嫉妬するのも分かる。
そして、神足は当主である匂坂に思いを寄せるようになるのだが、匂坂はたぶんそこまでではなく、やはり人間同士の交流だったのだろうと思います。
面白かったです。おすすめ。
童話っぽい話。というのが珍しくて興味を持ってみたものの、手に入れたあとは正直退屈そうだなーと思ってしばらく積んでた本。
実際読み始めてみても、内容的にはたいして事件も起こらないし、主人公の探偵は淡々としてる。感情的ではないので情が薄いようにも見える。だいたい戦争体験者の気持ちなんてこっちはわからないし、感情移入しにくい主人公。わかりづらい。でもわかりづらいってのは他の登場人物にも指摘されてること。厄介な奴だなと。
この話にはそういう主人公がよかったんだと思う。淡々と惹き込まれる。
誰が王で誰が料理人なのか、と考えながら読んでたけど、誰が誰、ではないのね。
公爵が弱味を見せるいちばん駄目なシーンが、辛いんだけど一方で救いでもあるのがなんとも。
鳩村衣杏さんの作品は数冊読んでおりますが、本作は他のどの鳩村作品とも違う異色な魅力を放っています。
BLというよりも、作者様の意図通り『ホモセクシャルとホモソーシャルの狭間の話』であり、エロがどうこう恋愛がどうこうという物語ではありません。
舞台は戦後、男爵家の当主と盗まれた童話の原稿を探す依頼を受けた探偵、そして男爵家の執事。
童話の内容は王様と、彼の料理人と、料理勝負をする捕虜の話。
そして、探偵にはかつての恋人であった新聞記者と、戦地で命を救ってくれた戦友がいる。
「3人の男」というパターンがアラベスクのように反復して響きあう…
童話の中では、自分の愛する料理人と料理勝負の相手の捕虜が料理を介して通じ合っているのでは?と邪推する王様が描かれる。
探偵の以前の恋人は、戦友という絆を至高と捉え、自分はその輪に入れないと詮無い嫉妬に苦しみ続けた。
そして、精悍で粗野でそれでも品位のある男匂坂男爵と、父親の代から彼に仕える執事の五十嵐との絆(恋愛とは違うけれど)を傍観する探偵の神足。
原稿探しの調査を通じて匂坂の秘密を知る神足。匂坂の孤独。五十嵐の献身。
神足は匂坂に愛の感情を抱くが、匂坂との一度だけの行為(決して性交ではない)は、もはや愛というよりもやはり死にたくないという叫びであり恐怖であり、子種を残してはいけない気持ちが神足に向かった一刻の触れ合いだったのでしょう。
全てが終わった後、神足の流した涙。話をして、彼の生を自分に刻みたいというラスト。
生きていくことはただ遺されて置いていかれることではない、まだ一緒に生きることもできるのだ、と言われているような、そんな余韻を感じました。
BL以外の作品を含め、ここまで胸に刺さる小説を久しぶりに読みました。
舞台は終戦から数年が経った頃の東京。はじまりは一冊の童話「王様と二人の料理人の話」…王様と、彼が愛した料理人、そしてこの料理人と見えない絆で結ばれたもう一人の料理人の物語です。どう読むか、誰に感情移入するかでまったく違って読めるこの不思議な童話の直筆原稿を巡って、主人公である探偵・神足、原稿の持ち主である男爵・匂坂、彼に忠義を誓う執事・五十嵐、そして神足の親友である加瀬、神足の元恋人・野依――様々な人物の想いが交錯します。直筆原稿の謎を追う神足はやがて真実を突き止めるのですが、そこには悲しくも崇高な決意が秘められているのでした。
どう読むか、誰に感情移入するか。それはこの小説そのものにも当てはまります。誰が王様で、誰が二人の料理人なのか――人の想いはままならず、自分を、相手を受け入れるということはとても難しい。性愛を、あるいは生死を超えて想いを昇華させようとする男たちがとても愛おしく、王様と二人の料理人の葛藤を自分の中に抱えてしまいたいと藻掻く神足がとても健気で胸が詰まりました。
いい歳になった今でも、死ぬってなんだろう…と時々考えます。考え始めると怖くて眠れないほどで、私自身はまだ何も覚悟できていないと痛感するばかりです。匂坂が彼らしくない――ある意味では非常に彼らしい感情を吐露するシーンに共感しすぎて涙が出ました。もちろん唯一無二の答えなどは無く、前向きに言えば、無いからこそ人生は楽しいのかもしれませんが、この作品では最後に一つの答えが用意されていて、また涙が出ました(涙腺弱い)。
戦後という時代背景も含め、設定や登場人物のキャラクターに無駄やブレがなく、最後まで硬質でありながら、とても重厚かつ優しい物語でした。謎解きの面白さがちゃんと盛り込まれている点も含め非常に完成度の高い作品で、BLという枠を越えて多くの人に読んでほしいと思いました。素晴らしいお話を書いてくれた鳩村衣杏さんと、答姐トピで紹介してくれた皆様に感謝します。