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表題作ちゃんとわかってる

大滝,鳶職の恋人
井川彩,公立中学の数学教師

その他の収録作品

  • やっぱりわかってる
  • あとがき

あらすじ

これ以上、邪魔されてたまるか
中学教師の井川は鳶職の恋人・大滝と秘密の同棲中。ところがそんな井川のプライベートが大ピンチに…!?

「好きだ」と言われ、「そうか」と返したあの日から十余年。公立中学の教師を務める井川は、鳶職の大滝と同棲中。
ある夜、風呂場で週末のお楽しみの真っ最中、生徒の曾根が自宅を突き止め訪ねてくるという事件が。さらに大滝の
「俺は井川に好きだって言われたことがあるかな」という想定外の一言に、後ろめたさがじわじわと刺激されはじめ…。
多忙でも振り回されても、大滝との生活を守るため、信念をまげず生きる井川の愛と葛藤の物語!

作品情報

作品名
ちゃんとわかってる
著者
谷崎泉 
イラスト
陸裕千景子 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
発売日
ISBN
9784576141558
2.8

(20)

(3)

萌々

(4)

(3)

中立

(7)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
5
得点
47
評価数
20
平均
2.8 / 5
神率
15%

レビュー投稿数5

学園ドラマ?

谷崎作品なので、別にラブラブ!キュン☆を求めているわけでは無かったのですが。
学園ドラマが読みたいわけでもなかったんだよなぁ…というのが感想。

キャラはいいんです。
一見冷たそうに見えても自分の情熱をしっかり持ってとことん付き合ってくれるし、なんだかんだと面倒見がいい。
そしてちゃんと本気で叱ってくれる、井川みたいな教師。
大切な人を暖かく見守り、包容力があり落ち着いている。
料理も得意だし、一途で硬派、そして優しい大滝。
なのでキャラ自体は魅力があって好きなんですが…いかんせん生徒たちが出張りすぎていて大滝と井川の関係性にノリきれなかったよ、もったいない。
日曜10時放映の学園ドラマを見た気分。笑

井川と生徒との距離が曖昧、近すぎるとは思いますが、それは別にいいんです。だって物語だし。
でも、家来すぎだよ。と突っ込まずにはいられなかった…。しかも増えていってるし(苦笑)

あーー、すんごくもったいない。
もっとちゃんと二人に焦点をあてたお話だったら、きっと評価はグググッとあがっていただけに惜しい作品でした。
キャラ自体は好みだったため、とりあえず萌評価で。

1

甘くないのはかまわない

 中学の先生と鳶職という およそ接点のなさそうなお仕事同士のカップルだというので、そこに焦点を当ててるのかと思いきや、描かれるのは専ら先生の方の生徒に振り回される日々でしたね。鳶の日常ももっと読みたかったなあ。仕事柄鳶が命に関わる怪我をして、先生が病院へ駆けつけて「死ぬなっ!」とかいう展開があるのかと勝手に予想してたら、なんと病院送りになったのも先生の方だったし。そういえばわたしの同級生でも何人か教師になった子がいましたが、夜中に「担任の生徒が駆け落ちした」と呼び出されたり、生徒同士のけんかを止めようとして怪我したりと、身も心もタフでなければ務まらない職業だと思います。

 教師が生徒をどこまでプライベートに立ち入らせるか、という問題については、今のご時世、個人の判断のみに委ねられているわけでもないのでしょうが、線引きの難しいところではあります。でもわが地元では、担任の先生の住所まで非公開とかって今でもありえないと思います。家に押し掛けるかどうかは別にして、年賀状のやり取りとかはごく普通にアリなので。むしろ、地方と東京ではそんなに違うのか、と驚きでしたね。リアルの点で言うなら、東大卒の公立中学教師って確かに少数ではあるけどいないことはない。でも本作の井川は法学部卒。専門科目だけでも忙しいと聞くのにそれプラス畑違いの数学の教職の単位を取るのはさぞ大変だったんじゃないかなぁ・・・とか、変なところが妙に気にはなりましたが。

 後書きで作者ご本人もおっしゃっている通り、濃厚なエロ描写を求めてわざわざ谷崎作品を読む人はいないと思うので、お仕事9:ラブ1くらいの分量比でも別に不満はありません。ただ、この作品に関して高い評価をしきれなかったのは、井川と大滝の関係の発端があまりにもサラリとしか触れられてなかったのが最大の要因でした。中学の同級生で、重い過去を共有するふたり、という関係性は「リセット」の高平と橘田をほうふつとさせますが、そこから先の進路が大きく隔たってゆくので、親密さを維持するには双方余程の努力も必要だったはず。そのへんの描写が、裏表紙のあらすじにもある「『好きだ』と言われ『そうか』と返した」ー これっぽっちではどうにもおなかいっぱいにはなりません。いまのふたりの関係は安定していて特に揺るがすような波風も立たないのですが、だからこそ起点の部分はがっつり押さえといてほしかったと思います。

 あと、絵師さんのご都合ということで中の挿絵なし、という変則的な仕上がりになっています。働くおじさんスキーのわたしとしては、陸裕さん描く大滝の鳶の正装(?)を拝めなかったのはまことに無念でした。

 

3

ほのぼのとして好きなストーリーです

低い評価が続いてますが、私は
このストーリー、ほのぼのとして好きです。
現実の公立中学の教師の制約とか知りません
フィクションの世界なので、そのまま受け止めています。

受け様 井川は、淡々と教師の仕事をする。
生真面目で、融通が利かない、しかも東大法学部卒の変わり種。
学校と離れたところに 住むのは
同性の恋人との同居を隠すため、
同性の恋人との生活も、「好き」という言葉が飛び交う甘いものではない。

そんな 平穏な生活が、一人の生徒が家を訪ねたのをきっかけに
次々と、事件に巻き込まれ、
訪ねてくる生徒の数も増えていく。
平穏な同棲生活が騒がしくなっていく。

 「好き」という言葉、今まで口に出すことがなかった、井川に
ちゃんと 言える時に「好き」と言わなくちゃ後悔すると実感させる
事件までおきました・・・

受け様の仕事が中心にストーリー展開されているので
攻め様の大滝サイドの ストーリーがすこし寂しいです、
これから 真田くん指導していくのかな
受験の結果が出ないままなのですか・・・
登場人物たちのそれからが気になります。









1

架空の話とは言え対応が緩過ぎる気がしました。

井川のような公務員の教師ではありませんでしたが、一般の学習塾で長いこと働き、ある種の職業倫理に染まったせいか、今回のこのお話はちょっと受け入れ難く、井川のなあなあ加減は不快でさえありました。こんなにも特定の生徒達との関係を教師の個人的なエリアにまで踏み込ませるのはどうかと思うような場面の連続です。BLはファンタジーと思おうとしたのですが、どうしても個人的には目に余ってしまいました。

過去の学校でのトラブルにより厳重に管理されていた筈の教師の住所をどこでどう知ったのか、生徒である曾根がある日突然井川の自宅を訪問して来た事が物語の始まりなのですが(まぁこれは勿論曾根が悪い)、一度目は仕方ないとしてもそれ以降もずるずるとなし崩しに訪問を許したり(おまけに途中から生徒のメンツが増える)、突っぱね切れずとは言え何度も家に上げたりご飯を食べさせたりするのがどうにもこうにも……。教師と生徒の線引きがあまりにもなっていない気がして。

生徒が悩んでいれば力になってやりたいのは勿論解りますし、自分も似たような体験をしましたので井川の難しい立場も解るのですが、全ての生徒にそういった私的範囲に踏み込みを許す対応を取れるのでないならば、特定の生徒とだけああいった濃密な時間を持つ事はもっときっぱりと避けるべきというのがやっぱり自分の頭にはあって、その辺の葛藤で読んでいてもやもやしました。彼の行動は自分が働いていた時の職業意識としては受け入れられないし、また同時に許されないものでもありましたので(せめて彼らの家の中と外、そこにしっかりけじめをつけてくれていたらまた印象は違ったと思う)。谷崎さんは大好きな作家さんで御本も同人誌もほとんど持っておりますが、今作はちょっと自分とはソリが合わなかったようです(勿論、こんな風に井川が緩くないと、そもそもお話が成立はしないという事は解ります)。自分の仕事が違っていたらもっとこだわりの無い気持ちで読めたかもしれないです。残念だな。

その他の、この物語の全体的な内容や特色、BLとしてちょっと足りない点などはまさにKrovopizzaさんの的確なレビュー通りで、自分も本当にそう思いました。線引きが曖昧な点以外は、いい先生のいいお話でしたが、BLにする必要があったのかはちょっと微妙なところです。いっそのこと井川と大滝をただの友人にして、担任の先生とその気のいい友人のお兄さんが色々助けてあげる学園生活みたいな、一般の物語を扱うティーンズノベル風な青春小説でも良かったんじゃないかな。


※陸裕さんのご都合がよろしくなかったようで、口絵を除き本文には挿絵が一切ありません。一応書き添えておきますね。

5

Krovopizza

rhodoriteさん、こんばんは!

実際に教育の場にいらっしゃった方のご意見、大変興味深く拝見しました。
確かに井川と生徒たちの距離は近すぎますね。
私も、クリスマスにまで押しかけるのはどうなんだと密かに思っていました(笑)

谷崎さんの作品、私も好きなので(特に『ファーストエッグ』などの刑事/裏社会モノが好きです)、今回はアレレ?という感じでした。
rhodoriteさんの仰る通り、非BLで生徒たちメインの青春小説であればもう少し印象が変わったかもしれませんね!

学園ドラマ9割、ラブ1割

公立中学の数学教師・井川(受け)は
鳶職の恋人・大滝(攻め)と同棲中。
高校受験を控えた生徒たちは
それぞれ不安を抱えており……


BLというより、学園ドラマに同性愛要素が申し訳程度についているような作品。
生徒と井川のやり取りが物語のメインで、恋人の大滝は井川に助言したり、家で料理を振る舞ったりと、サポート役に徹しています。

絡みはラストに一度だけ。
その他キス等のイチャイチャは数回あり
付き合いの長い恋人同士の落ち着いた雰囲気自体は素敵でした。

学生時代から付き合っている二人。
同じ学校というだけで特に接点のなかった二人が
なぜ今のような関係になったのか。

その謎はラストに明かされますが
「心配」が恋愛感情に変わる過程も
男同士で付き合うことへの躊躇も
何も書かれておらず、説得力に欠けます。
この二人の恋愛要素は、あくまで物語の味付け程度に捉えて読むのが正解かと思います。


では学園ドラマとしてはどうかというと
これも物足りない。
生徒たちのステレオタイプな悩みや家庭事情等を通り一遍に紹介するのみで、大きな感動や問題提起等は何もありません。

「イイ話」ではあるのですが、それだけ。
生徒の悩みと井川の学生時代をリンクさせるのであれば、もう少し井川の過去を掘り下げるべきだったのではないかと思います。


結果、中立評価となりました。
ラブ要素が足りないから低評価なのではなく
仕事描写も含め作品として読み応えに欠けると感じた故の中立評価です。

BLに本格的な仕事描写が不要とは
全く思いません(むしろあった方が嬉しい)が
今回は仕事描写メインのわりに
掘り下げが浅いと感じました。
大人が頭の中のイメージで作り上げた学園ドラマ、
という印象です。

8

rhodorite

Krovopizzaさん、初めまして、こんにちは。rhodoriteと申します。ご丁寧にコメントをくださいましてありがとうございました。

Krovopizzaさんのレビューが本当によくまとまっていらしたので(内容もですが、書式もとても読みやすかったです!)これ以上は蛇足な気もしたのですが、やはり看過出来ずに書いてしまいました。はい、今はもう辞めているのですが、かれこれ12年間ほど勤めておりました。ですのであの頃の日々を思い出すと何かどうしても彼らの距離がねぇ……と気になってしまいまして……。あまりに実際の事を物語に当てはめちゃいけない、それを言っちゃあおしまいよと解ってはいるのですが(苦笑)

谷崎さんいいですよね~。『ファーストエッグ』ですか!あれはかなり硬い感じの作風ですよね、『リセット』(この作品大好きです)とかの系譜と言いますか。高御堂の愛が見えないようで見えるようでもどかしいのも結構ツボです。しあわせみたいなのも大好きですが、私もああいうの好きです。4巻の発売が楽しみですよね!

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