こんなバッドエンドが見たかった

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表題作アンノウン

フランツ・シューマン
ジェイ

同時収録作品Robot

先生
ロボット

同時収録作品アイ・ライク・ユー アイ・ラブ・ユー

アーノルト
ミカ

同時収録作品正方形のアイスクリーム

大杉先生
藤本燐

同時収録作品たのしいのかたち

西島
吉野

同時収録作品Make haste slowly.

宮田栄二郎
よみ

その他の収録作品

  • Bonus track

あらすじ

”こんなバッドエンドが見たかった”
報われない片思い、身体を張った献身、嫉妬によるすれ違い…
健気で一途な男たちの恋は、痛々しくも愛おしい


新進気鋭のフォトグラファー、フランツ・シューマンはある日運命の出会いを遂げる。
漆黒の髪、憂いを帯びた新緑の瞳、陶器のような白い肌を彩る数々の痣すら神々しい、美少年…ジェイ。
素性を一切語らない謎めいた彼を専属モデルとして傍に置くフランツは、時が経つにつれ、ジェイを心から愛し始めるがーー。
表題作をはじめ、胸が締め付けられるほどの”切なさ”を凝縮した
たらつみジョン、デビューコミックス。


駆け出しのカメラマン×ミステリアスなモデル
ほか、6つのカップリング

作品情報

作品名
アンノウン
著者
たらつみジョン 
媒体
漫画(コミック)
出版社
ふゅーじょんぷろだくと
レーベル
POEBACKS ~ポーバックス~【非BL】
発売日
ISBN
9784865890266
3.5

(74)

(28)

萌々

(16)

(10)

中立

(9)

趣味じゃない

(11)

レビュー数
11
得点
243
評価数
74
平均
3.5 / 5
神率
37.8%

レビュー投稿数11

ごめんなさい…理解不能

予備知識なしに知らない作家さんを開拓…と購入。
BLだからLしてるものと思い込んでいましたが、L要素は微かに感じられるほどで、全編を通して、むむぅ〜と目を背けたくなる場面ばかりに私は感じました。

絵柄や雰囲気は好きなんですけどね。
(ちなみに同先生の「アルコホール・コミュニケイション」はBLしていて不快感なく好みの作品でした)

アンノウン
傷がグロいし痛そう。
正視できない。
モデルも写真の作品の良さもわからない。

Robot
ロボットとは言えあんな暴力は見たくない。
傷が正視に耐えない。
Lを感じられない。

アイ・ライク・ユー アイ・ラブ・ユー
これはミカが「好き」という気持ちはみじめで気持ち悪いと思っていたけど、告白されてそうでもないてことを描きたかったってこと?
(理解力なくてすみません)

正方形のアイスクリーム
これはダメでしょ。
枠からはみ出るために女装するのはいいとして、そんな生徒を教師が騙して薬使って強姦して撮影するて。
やられた本人は解放された、てことにしたいんでしょうけど。
胸ク○悪いですよ。

たのしいかたち
唯一少しLを感じたけど、先輩の裏表の闇感とかピアスのくだりが痛そうで、そっちばかり印象に残ってしまった。

Make haste slowly
過去、恋人を妬んで傷つけて別れて、その後、元恋人が成功したのを知り、振り返って反省するという話。
どこにおもしろさを感じたらいいのかわかりませんでした。
ま、普通の人のよくある話だと思うから共感できるのかもだけど、Lも萌えも感動ポイントもなく、ああ、そうですか、で終わってしまった。

評価としては、趣味じゃない、ですが、内容を確認せず購入した私が悪いので中立です。

0

後日談はなくても良かったかも

 バッドエンド集だと期待して読むのはやめた方が良さそうです。あと一歩ですごく余韻の残るバドエンになりそうだけど、ちょっと惜しいかなぁという作品が多かった印象。最後に全短編の短い後日談も収録されていて、いつもなら嬉しいところなのですが、余韻を大事にしたい作品が多かったので、明るいトーンの後日談はあまり読みたくなかった気もします。本編と同じ時系列で視点を変えた描き下ろしとかでも良かったのかなと。

◆アンノウン(表題作)
 美しい容姿のジェイを、カメラマンのフランツが囲ってしまいます。撮影時に魅力を引き出すため、合意を得た上で、ジェイに暴力も振るうフランツ。愛というよりは、妄執的なものを感じました。ある日ジェイのおかげで名声を獲得したフランツが帰宅すると、彼はいなくなっていました。数年経って、荒んだ生活を送っていたフランツは街でジェイを見かけます。囲っていた日々からは想像もつかないような眩しい笑顔を見せ、友人に別の名前で呼ばれるジェイを見て、フランツは彼のことを何も知らなかったことを思い知ります。これはもう少し長ければ!と思った作品。ジェイに妄執を注ぐフランツと最後に愕然とするフランツとの対比を、もっと楽しみたかったです。

◆正方形のアイスクリーム
 一番好きな作品です。教師×女装癖のある生徒で、母親から異物扱いされ家に居場所のない燐を、教師の大杉が居場所を与えるふりをし、狡猾に自宅に誘います。いい雰囲気になったところで、急に別の男達が現れ燐は戸惑いますが、言葉巧みに逃げ道を封じる大杉に逆らえず、男達に犯されて大杉に動画を撮られてしまいます。生徒の未熟で飢えた心を利用して喰い物にする大杉を酷いと感じる一方で、生徒の哀れさに惹かれてしまう作品でもありました。

◆Make haste slowly.
 大学時代に付き合っていたけれど、別々の道に進んだ宮田とよみ。2人が別れたきっかけとなったのは、よみが映像作品の才能をなかなか認めてもらえず燻っていた時に宮田が賞を獲り、そんな彼によみが酷い言葉を吐いてしまったこと。よみの気持ちを考えると共感できなくもないんですよね。自分が結果を出せない時に、他人の成功を聞かされるのはとても辛いですから。デザインの道に進み、結婚もして子供もできたよみは、テレビで宮田が映画の賞を獲ったことを知ります。妻にも当時のことを吐き出し、少しすっきりしたようにも見えたよみ。もし別れていなかったらどんな未来が待っていたのか、よみの想像の中の2人が切なかったです。

0

バッドエンド

私にはバッドエンドという感じはしないです。

というか、最後に各ストーリーの後日談があるわけです。

バッドなのは正方形のアイスクリームの男の子だけかなって。
後日談の男の子は別の子だし、捨てられたんだろうなと。

I like you,I love youは実らない恋で可哀想かなと思ってたけど、妄想でアーノルトとセックスしてたりするし。
でも、最後はアーノルトとの恋よりアーノルトとの友情を選んだのかなって。当たって砕けても良いからどっかで告白しようと思ってる笑顔にも見える。


アンノウンは特典ペーパーでフランツが新しい彼とイチャイチャしながらモデルで出てきたアッシュを称賛しているし。

たのしいのかたちは卒業して一緒に暮らしてるし。
痛いことしててもそれがお互いに好きならしょうがないです。別に無理矢理な感じはしないし愛があると思うから。

robotの話はケガしてないのに胸が苦しくて痛いのは故障かなって悩んでたりして、そのロボットの気持ちが先生に伝わらないのかなって思いましたが、ロボットの喘ぎ声や反応をプログラミングしたのは先生、先生って変態って言ったところで先生に殴られてました。なんだ相思相愛かと思いました。

私にはバッドじゃない。皆ちゃんと良い恋してる。
その恋の途中のバッドな部分をピックアップしてる。後日談も含めて読むと全体で見たらハッピーエンドです。


正方形のアイスクリームを除いては。この話だけは先生最低です。

3

漂う痛みを掴んでみたい

予備知識無しで購入。
短編集で、ラストの一作以外バッドエンドでした。そして読後に帯を見たら「こんなバッドエンドが見たかった」。
そうだね!その通りだ。
この需要と供給を見ると、BLの多様化を感じます。
BL黎明期のバッドエンドは禁断の恋でお別れ、みたいな、死んで結ばれる、みたいな。今求められている世界とは違うよね…それからハッピーエンドがフツーになって、ほんとに色んな設定が出てきて、いつの間にやらバッドエンドがタブー?になって。そんで今また新たな需要が出てきてる。
本作の収録作はそれぞれに違う読後感があって、一口に「バッドエンド」と言っても多様な展開の解釈があることがよく分かる。

「アンノウン」
ミューズとしての美少年がある日突然消える。捨てられた?写真家。捨てた少年の方はそんな意識もなくあっけなく新しい自分に。再会しない結末もあったと思うんだけど、あえて会わせて写真家の衝撃を描く作者の企み。
「Robot」
美形ロボットに暴力を振るう美形先生。多分先生はロボットに惹かれてるような気がする。ヒトとロボットの境を越えられないのは先生の方?。体の痛みは勿論感じないけど、どうやら感情が生まれ先生に恋してるらしいロボット。平行線の2人。
「アイ・ライク・ユー アイ・ラブ・ユー」
ホモ嫌いのアーノルトに恋してるミカ。勿論隠して隠して。そんな自分にまっすぐ恋心をぶつけてくるダサメガネ。オレは誰にも言えないのにムカつくんだよ。しかもオレがアーノルトを好きな事気づいてるし!
「正方形のアイスクリーム」
女装高校生。これぞ救いのない正統?バッドエンド。高校生がヒドイ目にあっちゃって、私的に読むのキツかったです。
「たのしいのかたち」
真面目そうな先輩をゲイSMAVで発見!しかもタトゥー&乳首ピアス!もう後輩君は先輩の事が気になって気になって。で、流されて?気が付いたらアッチ側に行っちゃった。あれ、バッドエンドじゃないかも。
「Make haste slowly.」
TVで元カレが映画の賞を取った事を知り、過去を回想する。嫉妬も僻みもあったけど。今は2人にとってはキラキラした過去になってる。
ラストにこの話があって、この一冊が明るい雰囲気になりました。
また、書き下ろしでそれぞれの後日談がコミカルに描かれていて、この作者様の引き出しの多さも感じられました。

4

痛いのは

これは、スキキライが分かれるとレビューにありましたが、私は後者の方でした。
趣味の問題なので、ダークなもの、暴力や裏切り、それに女装などが大丈夫な人には受け入れられるんだと思います。

どれも眉間にシワを寄せて読んでいましたが、唯一普通に読めたのは、最後の元カレが映画監督になっている話。よみ君は学生時代にカレがいたけど、その後色々あって結婚して子供もいる。そのよみ君の回想話なんですがすごくリアルな気がしました。学生時代は、才能のあるカレを妬んで、酷いことを言って別れて、最低な男なんですが、自分にカレがいたことを奥さんに話しているところが好感が持てました。
カレからのメールの返信が優しいのも救われました。
このくらいなら大丈夫なんですけどね。
痛いのは、ほんと、ごめんなさい。

2

いろんなバッドエンドが味わえる作品

6つのお話が入った短編集。
帯の煽り通りバッドエンド率高し。好みのわかれる作品だと思います。
一般的な、ボーイズが恋をして、ドキドキして、チュッチュして、エロエロして、めでたしめでたしという流れが全くない。多くは語らず、「考える」より「感じろ」系?
短編で、この作風だから許される(いい意味での)後味の悪さもクセになる一品です。
個人的には報われない恋もオケなので好きな作品です。

♦︎アンノウン♦︎
駆け出しカメラマン×ミステリアスなモデル
フランツが偶然出会い、一瞬で虜にさせられた絶世の美少年“ジェイ”。
彼の名前も、傷だらけの身体の理由も、何も知らない。
ふたりの間にあるのは、フランツの一方通行な愛と、ジェイが望む暴力的なセックス。
モデルとして世の中にジェイを送り出し、地位も金も手に入れた矢先に、ジェイはフランツの前から姿を消します。
ジェイを探し求めて廃人生活を経た数年後、街中で明るく笑う青年を見かけて…

痛切ない〜…
世界中を虜にしたジェイにいちばんハマったのはフランツでした。
カメラマンとしての名声全てを手に入れた代わりに最も欲していたものを失った不憫さ。
そして追い求めた彼は自分の知らない間に幸せに暮らしてて、再会ラブもなんもあったもんじゃない、報われなさすぎのカメラマンの恋でした。

♦︎Robot♦︎
ロボット学の博士と彼の美しいロボットの短いお話。
殴っても痛みを知らないロボットを欠陥品だと罵る博士に対して、ロボットが恋の痛みらしきものを感じるという内容。
8ページしかないのに読ませるお話でした。

♦︎アイ•ライク•ユー アイ•ラブ•ユー♦︎
ゲイ嫌いの友人アーノルトに片思いをするミカ。絶対に叶わない恋の相手をおもいながら虚しく自分の身体を慰める日々を送ります。
恋なんて惨めなものだと思うミカに、好きだと気持ちをぶつけてくる地味めの同級生。
自分とは正反対で恋に一生懸命な彼が羨ましくて輝いて見えて…
絶望的な片思いをしている青年が、こんな片思いもあるんだと思えた、この本の中ではちょっと前向きなお話でした。

描きおろしで、数年後で地味同級生シモンが男らしく成長してミカのモロタイプになって再会するお話があったので、このふたりに恋愛フラグ。

♦︎正方形のアイスクリーム♦︎
母親の窮屈な教育から逃避するための女装という性癖をもつ高校生と、それを優しく受け入れてくれた教師。
やっとあまあまなお話か?と思ったらとんでもないドンデン返しでした。
生徒思いの優しく明るい先生が、すんごいゲスになり、母親の前での良い子に疲れたDKは好きな先生のためにやっぱり良い子になるしかなかったイタイお話。
モブ姦、クスリ有。

♦︎たのしいのカタチ♦︎
憧れの先輩がAVに出演しているのをたまたま見てしまったDKが、謎めいた先輩のどツボにどんどんハマっていき、最終的にはソッチ側にご招待〜なお話。
明るくて優しい先輩が、服の下にはタトゥーとニップルピアスを隠している倒錯感。普段標準語なのに時々関西弁になるギャップがいいと思ったけど、まさか後輩くんも乳首ピアスでソッチに開発されるとは…
そしてループなフラグもたってる?

♦︎Make haste slowly♦︎
妻子持ちとなり平凡に生きる主人公が、映画監督として成功した元カレを見て昔を思い出すお話。
当時、恋に浮かれながらも将来の見えない生活を送っていた受と、それとは逆に、映画製作の才能を開花しようとしていた攻。
何をしてもうまく行かない受は、大事な恋人だけど全てが順調な攻に、羨望と嫉妬をおぼえてしまいます。
それ故にヒドイ発言をして、別れたきりのふたりが、歩み寄ろうとします。
受は妻子持ちだし、攻と元サヤにはなりませんが、この中ではいちばん明るいお話かな。
受が現在ちゃんと幸せに暮らしているるのが良かった。バイだった夫に理解ある奥さんと、かわいい子供に好印象。

描きおろしで、最後にまとめて全てのお話のアフターストーリーが1〜2ページずつあります。これがギャグをまじえてコミカルに描かれているので、重い•暗い•痛い•切ないオンパレードの本編のお口直し的な効果があって良かった。
好き嫌いわかれるとは思いますが、実力ある作家さんなことは間違いないかと。

4

いい!んだけど…

帯の「こんなバッドエンドが見たかった」という言葉に惹かれて買ってみました。

絵とかストーリーの設定自体はすごく私の好みに合っていて、いいじゃーん!て思ったんですが…やっぱり私はハッピーエンドのほうが好きみたいです。バッドエンドもいいんだけど、キャラに愛着がわくと余計に、幸せにしてあげてー!!って思ってしまうんですよね…。
でも、確かにこんなバッドエンドもたまには見たくなる。
これはいい作品だと思います(^^)

1

こんな作品を待っていた


ふゅーじょんさまの「へんたいプレイ」アンソロジーで拝読して以来、コミックス発売をとても楽しみにしていました。このアンソロジーに載っていたのは若干のSMモノでしたが、とても衝撃的な作品でした。
今回、コミックスにまとめられておりましたが、やはり何度読んでも素敵でした。

オビにもある通り、少し薄暗い作品が収録されている短編集です。全部が薄暗い、というわけではないのですが、ダークなモノが好きな方には是非手に取っていただきたい一冊です。

作品の並べられ方も秀逸で、かなり後に引く作品が多いにもかかわらず、わりとさっぱりとした読後感を覚えました(本当に救われないモノもありますが)。また、話としては王道モノが多いですが、独特の絵柄と見せ方で引き込まれます。

悩むなら買うべき作品です。

3

苦く笑う恋の記憶

発売を楽しみにしていた一冊です。

表題作の『アンノウン』をはじめ、六つの物語が収録された短編集。

【アンノウン】
フォトグラファーのフランツはゲイバーで傷だらけの少年ジェイと出会う。一瞬で彼の魅力にとり憑かれたフランツはモデルとして彼を手元に置くことに。創作活動の一環として、またジェイの求めに応じるままに彼の体に傷を負わせるフランツは狂おしいほどの愛をジェイに向ける。

表紙にも描かれている二人です。
虚ろな表情で苦痛を求めるジェイ。彼は傷の理由や出会う前のことを何も語ろうとしません。ジェイを愛していると心のなかで叫びながら、彼に刻まれた傷を自分が与える痛みで上書きしていくフランツ。
フランツの激情が真っ白なページに凝縮されているこのシーンは引きこまれました。
全体的に映画を観ているような気分で、短いですが一番印象的なお話でした。

【正方形のアイスクリーム】
親や他人が求める型に自分をはめて、彼らの期待通りの人間でいること。
それが高校生である藤本燐(りん)の処世術。
教育熱心な親によって窮屈な生活を強いられていたりんは隠れて女装をすることで窮屈な自分を解放していた。しかし教師の大杉に女装のことがバレて、一度だけ女装を見たいと言われる。女装の件で両親の言い争いを聞いたりんは、衝動的に女の姿で大杉の家へ向かう。

期待通りの形でいないといらないプリントのように捨てられると思っているりん。くしゃりと潰されるりんの心から、たちまち女の子へ変身するシーンがとても好きです。後日談は大杉だけでなくりんくんも入れてほしかった。

【Make haste slowly】
大学時代に付き合っていたよみと栄二郎。
二人は喧嘩別れをしたまま、何年も互いの所在を知らぬままでした。ある時テレビ放送されていた映画の受賞式に栄二郎の姿を見たよみは、思い切って彼にメールを送ってみることに。

最後を飾るのにぴったりのお話でした。
過去から長い時間をかけて二人がたどり着いた現在。
もしかしたら存在したかもしれない幸せを思ってしまいます。
ちょっぴり切なく、ほんのり温かくなるラストでした。
個人的に一番好きなお話です。

読んでみるのが一番ですが、『バッドエンド』という文句は決して悪い意味ではないんですね。

【アンノウン】【アイ・ライク・ユー・アイ・ラブ・ユー】【Make haste slowly】など後日談も含めると、かつての苦い恋の記憶をあんなことあったよなぁ、と思い出して苦笑するような。切ない痛みを抱えつつも、それでも前に進んでいけるような物語だと思いました。

ピリっとした緊張感のあるお話もあるのですが、最後の後日談が小気味良い調子でまとめてくれているので、むしろ楽しく読むことができました。叶わない恋もありますが、叶いそうな恋もあるように見えます。

本は全体的に絵と文字のバランスがとれていて読みやすかったです。
たらつみさんは見せ場の描写がとても素敵ですね。
新しい本などが出ればまた買いたいです。

4

一筋縄ではいかない

新人さんとのことですが、ものすごく推されてるので気になって購入。
私自身基本なんでもござれで、暴力も女装も好きなテーマだったので、この本、かなり、凄く、良かったです。
バッドエンド、とひとくくりに言うことは出来ない、多種多様な作品群が詰まっていました。

それぞれの話が、ショートフィルムを見ているような感じ。
一貫した「静けさ」が作品の中にあって、ものすごく盛り上がるわけではないけど、その静けさが「燃え上がる」瞬間が確実にある。

表題の『アンノウン』
とにかくジェイの美しさに説得力がある。しっとりと濡れたように光る深緑の瞳に、厚く層を重ねるようなまつ毛の密度、薄い唇。何より傷だらけで、プレイの問題もあって痣が消えない身体というのがたまらない。
創作活動の一貫としての、暴力を伴うセックス。そうカメラマンであるフランツは納得しようとするけど「愛している」という気持ちに相反する行為でもある。どうしても逃したくない、という執着心も相まってか、この時のフランツの表情がたまらなかった。
なんとも言えない表情を描くのが、この作者さんはうまい。なんとも言えないのに、ドラマティックなんです。
ラストの展開も、個人的にはものすごく落ち込むとか、本当に悪い意味での「バッド・エンド」とは思わなかった。
むしろ、胸が梳くような、爽快感すら感じる終わりでした。

その他の作品も(特にラストの「Make haste slowly.」は涙が出た。今があるから過去があり、過去があるから今がある。セリフのひとつひとつがひびきます)、ただひたすら恐ろしいとか、苦しいとか、辛いとか、そういう話は一本もない。
「こんなバッドエンドが見たかった」というのは、多分、そういうことなんだろうなあ。
読み終わってやっと本当の言葉の意味が分かるというか、かなりいいキャッチコピーだと思います。最初の一歩は躊躇するかもしれないけれど。

まだ色んな描き方を試行錯誤している段階というのが見え、作品によって若干タッチが違っていたりもするのですが、これから絶対伸びる作家さんだと思っています。
次にコミックスが出るならまた買おうと思うし、あと明るい話も描いて欲しい。コミックス描き下ろしでかなり救われて、こういうノリもイケるんだ!と思ったので。
これからに期待しています!

6

新人さんですが新鮮味にかける

王道大好きな私ですが、この単行本に収録されたすべての話がどこかでみたような話ばかり。作風、絵柄においてそうです。
オリジナリティに欠けると思います。使い古した設定でもうまく料理するのがお上手な作家さんはたくさんいらっしゃいます…

ここで他の作家さんを挙げるのは迷惑なのでやめておきますが、4ー5年前の東京漫画社さん、茜新社さんのオペラ看板作家さん複数名をリスペクトしているのかな?好きすぎて似てしまったのかな?と。

後半は同じふゅーじょんさんから出ていた大活躍作家さん(最近ヤの3Pで話題)の絵柄と作風と被るなぁ。と…


お耽美、異国、教師と生徒、女装、片想い、同性愛者嫌悪の脇役、クズ攻、精神錯乱、暴力とセックス
題材と表紙の雰囲気、帯、あらすじともに好みだったので購入しましたが、趣味ではありませんでした。

この作者さんは二次創作畑の方で人気があり、ピクシブを見ていて絵柄が好みだっただけに残念でした。あの絵柄で統一すれば良かったのでは…?

8

この作品が収納されている本棚

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