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いいお話でした。
古書店いいですね。人と本の出会い、人から人へ渡っていく本。物語がありそうですね。
2つのお話が入ってますがお店とオーナーで繋がってます。
すずろ古書譚
元の恋が始まるまで色々ありましたね。
おばあちゃんが亡くなって本をちゃんと読みたくて砂子に会いたくて本が好きになって。
高校生や大学生ですからまだまだ大人の世界に入れませんよね。砂子に距離を置いてしまう、でも連絡が来ないかソワソワして何をしても楽しくない。本が好きなのかさえわからなくなって。
とりあえず大学に入ったら特にドロップアウトした人には変に肩身が狭くなる気持ちはわかります。
砂子も色々あってオーナーと出会って今の砂子になったんですね。
最後の短編では元はドイツから帰ってきたようです。あの教授の影響かな?やりたいことが見つかって行動できたんですね。良かったです。
ピロー・トーキング
25年何もなかった二人が急にお互いを意識し出して。何もなかった25年があったからこそお互いを知りわかりあいそういう時がきたのでしょうか。
知らない人と何故かその人と一緒だと眠れる。不思議ですね。
お互い絶対にないと言い切っていたのに、でも25年も一緒にダブルベッドを運んでどんどん引っ越して。住むところもランクアップしていって。
正直期待してなかったのですが、とても読みごたえがあり良い読後感でした。
2作品収録。
「すずろ古書譚」
「すずろ古書」という古書店を舞台とした、店員さん(←後に2代目店主)と常連客の恋物語。
この「すずろ古書」は、貴重な全集ものや、オーナーのこだわりで買い付けた書物を店頭に並べるような品揃えの古書店。
ある日、101冊で構成される大変貴重な全集の中の1冊が売れる。
ところが、売れた先はどう見てもその本に興味がなさそうな野球少年。
でも、欠け無しの全集がそんな売れ方で欠けていくことをオーナーはちっとも悲しまない。
修行の足りない?店員さん・砂子(いさご)は歯抜けが悔しい。でも結局この時の野球少年がその後、1冊づつ買い足していく常連さんになっていくのです。
砂子は、彼・智果(トモ)が1冊買っていく毎に一つの質問。
そうやって全集の行き先も決まったかな、と思っていたが、高齢のオーナーが倒れて…
すずろ古書の行方は…?
…店の存続と、2人の恋の行方が絡まる静かで優しいお話です。(エロも無し。キスまで)
ふるほんやさん、って本がはるばると旅をしているみたい。
『紫紺の河が流れ着く世界に捧げるーー』
流れ着き、また流れ行き……
「ピロー・トーキング」
今回、私コッチ推しです。
私は決してオジBL好きという訳では無いのだけれど、やはり恋の長い旅路、情熱のその次を読みたいとすれば、必然的に登場人物は年齢が上がるなぁ。
本作の登場人物2人は、恋人ではなくて「添い寝フレンド」、ソフレ、ベッドシェアリング。
恋愛感情が無いからこそ、安眠の友として一つ布団で眠る関係性。
片や、美形オジ。華やかで、魅力的で、仕事もできて、狩人気質の蝶のような男・沖。
片や、鈍臭い小太り、おしゃれ興味無し、お料理好きで恋に慎重系の犬養。
こんな2人は何も無いまま気づけば25年。
さすがの沖も寄る年波?ヘアワックスを切らし、時計をし忘れ、キライだった糠漬けを美味いと感じる今日この頃。
そんな沖を今更のように愛しく思い始める犬養は、一度意識し始めたら同じベッドが寝苦しい。
しかし、沖の方ももうとっくに…
多分2人共50才くらい?初めて「そういう風に」寝る、その瞬間。
『緊張するな すごくタイプだから』
…うわー。
この作品にもエロは無いんですよ。でもこちらは「すずろ古書譚」と対照的に性愛の空気を感じる。
この2人はこれから恋愛を始めるわけだけど、おそらく添い遂げるであろうし、長い旅路を共に歩んで行くのでしょう。安定感抜群。
「描き下ろし」
犬養が30年前から予約していた料理の豪華本を受け取りに、沖と2人で「すずろ古書」に出向くエピソード。勿論砂子とトモがお出迎えです。
一冊に【すずろ古書譚】と【ピロートーク】という二作品が収録されていて、書き下ろしでそれぞれの登場人物が絶妙に絡んでいます。
【すずろ古書譚】
古書店で働く店員の青年と店にやってくる少年とのお話です。
101巻全巻揃うことが稀な古書を欠けなく一揃い入手したオーナーとそれが誰の手に渡っていくのか見守る青年店員。そしてその一巻目を祖母にプレゼントされた少年。
当初、全く本に興味を持てない少年でしたが、あるきっかけを経てやがてそれを自分で買い揃えるようになります。
本棚の陰から見つめる少年の視線の意味に気づいたのか、その本を一冊売るたびに一つの質問を少年(今や成長して高校生)にする事を決めた店員さん。101冊と101個の秘密というのが何とも素敵で、彼の手元に本が揃っていくにつれて二人の仲が深まっていくなんてロマンティックです。
本の中身を読むことだけが本の全てではなく、本そのものが人と人を繋いでお話を紡いでいく、そして本に魅せられた人々が集まって物語を織りなしていくというストーリーとなっており、本好きには堪らない作品だと思います。また、この本を手に取る事で、まるで自分もこの古書店のお客さんとして片隅に加わる事が出来るような気分になれるのです。
そして舞台となる古書店はヨーロッパのようなアンティークな佇まいのお店で、入り口ドアのエッチングガラスは蔵書票のような模様だし、プレゼント用のラッピングも洒落ているし、紙袋も素敵。細部に至るまでいちいち素敵なんです。興ざめさせられる事がない。
BLとしての恋模様ももちろん描いてあるのだけどそれだけに終始せず、物事に対する視線や捉え方、そういったものが端々に書かれていてハッとさせられます。
なかでも埃について語る一節がとても好きです。
全てのものに物語がある、それに気づくか気づかないかは自分次第でありそういう目を持っていたいなと思わせる作品でした。
【ピロートーク】
ゲイ同士の二人。お互い好みとは全く異なるし、お互いに理解できないと一定の距離を保つ二人だが何故かそばにいると安眠できるという理由でベッドに一緒に寝ている。そして一度も過ちはなかった二人。
そうやってなんと25年もの年月が経ったある日、何故か安眠できなくなってしまい別々に寝たいと申し出て…。
そして書き下ろしがまた絶妙!
【すずろ古書譚】と【ピロートーク】の登場人物達が本を仲介役として交差しており、読後感がなんとも素晴らしかった。
答姐の「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」で教えていただいたのが、こちらの作品です。
伊東七つ生さんの作品を四冊読みましたが、こちらの一冊がまさに好みにどんぴしゃり!で感激しました。教えてくださり本当にありがとうございました。
すずろ古書店で繰り広げられる、本を介した人々の繋がりを描いたストーリー。オーナーのセレクトが評判で、書店員の砂子(いさご)はこのお店とオーナーとの出会いにより、人生のある局面で救われた人物。オーナーの遊び心で書店に迎え入れた、なかなか売れない101冊に渡る全集の一冊目を手に取ったおばあさんが、砂子と彼女の孫、智果(ともか)を引き合わせてくれます。
智果が体育会系から文学青年に転向しちゃうのがなんともセクシー。砂子さんもその豹変ぶりを目の当たりにして、意識するようになったハズ(憶測)。智果の方も101冊の本とともに砂子に興味を持ち始め、すずろ古書店で一冊ずつ揃えていきます。他方、砂子は智果が一冊買いに来るごとに一つの質問をして、彼の事を少しずつ知っていこうと決める。なんて奥ゆかしい恋の進め方なのっ。
この単行本にはもう一つのお話「ピロー・トーキング」が収録されています。お互い恋愛感情はないけど、同衾すると(身体の関係は無い)何故かよく眠れるので同居している中年ゲイ同士、サエない断食系・犬養と美貌の肉食系・沖の物語。このお話の結末が実に泣けるのですよ。描き下ろしと併せ、思わずエンディングで涙してしまう顛末をここで申し上げたいのですが、ネタバレみたいになってしまうので、気になる方は他の方のレビューをご覧になってくださいね。
この作品を読んで、改めて本を読むことについて考えさせられました。誰かが伝えたいことを物語にする。それを手に取る。読む。何かを受け止める。誰かに伝えたくなる。その本を別の人に託す。会ったこともない知らない者同士が一つの物語を共有することで心のどこかが繋がる。なんだかちるちるさんのサイトみたいですね。
この先生の時間の流れを大事に描くところが大好きで、今回は時間をかけて行う読書という行為に、人物たちの心の変化や成長していく姿が重ねられていました。セリフもモノローグも、全部心に刻みたくなるほど、さりげないのにとても深い。世界観があって、かつ作家さんの思想の片鱗のようなのものを垣間見せてくれる、随所に様々な愛の形が散りばめられた素敵な物語です。繊細系がお好きで、ストーリー重視の方にはご満足いただけるのではないかと思います。
本が好き、本屋さんが好きな人にはなんとなく萌えな話だと思います。
古書店員さんと常連の学生さんが本を通して惹かれ合い、支えあっていくのですが、そのまわりでアドバイスをしてくれるオーナーの老人や常連さん、大学の教授などが穏やかでいい味を出しています。
キスまでしかありませんし、萌えるような決め台詞もありませんが、優しい時間が感じられる癒される作品でした。