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表題作トリガー

三井貴浩,商社のエリート課長
曽根,高校時代に攻に告白してきた元同級生

その他の収録作品

  • ビューティフル・サンデイ
  • サニー
  • トリガー1.5(描き下ろし)
  • あとがき

あらすじ

とある
クズエリートの
人生の崩壊。
……と、恋愛。

「オナホールぐらいには
なるんだろう?」

三井貴浩、商社のエリート課長。
汚点なき人生を歩む三井だったが、
離婚を機に暗転。
生活が荒れていく中、
三井は元同級生・曽根に再会する。
曽根は、高校時代に三井に
告白してきたゲイで、
現在はノンケの同居人に片想い中。
それを察した三井は、
「バラされたくなくば」と
曽根を強引に犯し――。

クズエリート攻×包容力受の
激しい人生恋愛、
エピローグ20Pを描き下ろし!

作品情報

作品名
トリガー
著者
イシノアヤ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
祥伝社
レーベル
on BLUE comics
発売日
ISBN
9784396783662
4

(198)

(104)

萌々

(41)

(29)

中立

(9)

趣味じゃない

(15)

レビュー数
33
得点
780
評価数
198
平均
4 / 5
神率
52.5%

レビュー投稿数33

因果応報、勧善懲悪が好きなのです

なんだかんだでスッキリするお話が好きなんですよね。いい人が報われる話。
なので、クズい三井が聖母のような曽根くんに救済されるお話は、なんて三井に都合いいんだ!って思ってしまう。

三井のクズいところ
・妻が愛されてると感じていない形式上の夫婦関係(本人は無自覚)
・離婚以降生活が荒れ、職場でも態度が一変
・学生時代に告白してきた曽根の事をゲイだと噂を流して転校させた
・隣に越してきた曽根を捌け口として乱暴に抱きまくる
・行為が終わると早く出て行けと邪険に扱う
・むしゃくしゃして曽根の二の腕にタバコで根性焼き(3箇所)
・無職になり自暴自棄になった三井を心配して介抱してくれた曽根の同情を利用してSEX。その最中に曽根が片思いしている同居人佐倉をメールで部屋におびき寄せSEXしているところを見せつける。

こんな事されても曽根は寄り添ってるんですよ。
三井は、性志向が男性である事を認めきれてない、本当は学生時代から意識しているのは曽根の事だったのに恋愛感情だと気付いていない。
佐倉にSEXしているところを見せ付けたのなんて、完全に子どもっぽい嫉妬。
中学生の時の教育実習の先生の冗談での手コキがトラウマだったのかもしれないけど、だからって人にそんな態度取っていいわけ無い。

曽根の優しさでこれから変わっていくのかもだけど、絶許な気持ちが拭えません。
攻めザマァを求めてしまう私がいます。
なので、本編でリバが見たかったです。
曽根に抱かれてグズグズになってるところ見せやがれ!と。あんなに酷い扱いしてた曽根に縋り付いてるところが見たかった。

これが、曽根主人公のお話なら読めるんだけどな。(よくあるありきたりなお話になっちゃうな)

クズ攻め救済だから、珍しさがあるんだろうな。

シーモアで購入
ほとんどが修正の要らない構図。1箇所だけ薄消し

0

クズなんだけど

三井の自分の性癖や弱さやズルさを認めれずに曽根に全部ぶち撒ける姿にクズいなと思いながら、人間臭いなとも思いました。
自分にも思い当たる節があるし、結局自己嫌悪で落ちていくのが分かり過ぎてしまう。
曽根はダメ男好きなのか結局ずっと好きだったのか、三井からのメールを待ってることに「お前が甘やかすから!」とも思いましたが、三井をボコボコにしたのには驚いたし、「良くやった!」と感心しました。
甘やかすことだけが相手の為になるわけでもないですもんね。
しかし、そうかぁ、三井ネコちゃんだったかぁ~。ニャンニャンしてるとこが見たかったなぁw

0

全ては偽りから始まった。

三井という男の、偽りから始まった転落と再起の物語。
自分のセクシャリティを否定する深さのリバウンドが、よりダメージの幅を大きくさせている様子が良かった。
仕事では高スペック。確かに、三井という男は出来るやつ、これはゲイでも結果は同じだと思った。しかし、家庭では妻子に対して良き夫、父であるのは全て自分の為で、そこに幸せと感じる家族は無かったんだな。
離婚理由が、私を欲してくれる人と暮らしたい。あなたはただ離婚したくないだけよ。
これ、奥さんに言わせたこの言葉決定的。

対して、曽根はあとがきに〜それなりの経験はあると、記載あるけど〜これ無かったら、本当にイカれた奴としか思えなかったわ。
曽根の包容力に乾杯です。
曽根の物語を読んでみたいと思った。
学生時代に、三井に告白していじめで転校して、再会して散々な目にあって、途中でおいおいとなりましたが、三井には一生大事にして貰って下さいね。

1

ガチガチの観念からの解放

攻めザマァな作品と言えば必ず挙がるこちらの作品。
攻めザマァ萌えも萎えもないのですが、読もうと思っていたのに先延ばしになってしまっていました。

確かに三井はクズな部分もあるんだけど、なんだか"可哀想なヤツ"という印象でした。
ただ自分がゲイだってことを認められず、どんなに否定しても同性に惹かれる自分に対する怒りを他人にぶつけていたのだろうと思うんです。

三井だけがクズなんだろうか。
話し合いもろくにせず別れた妻も?
生徒にイケナイコトした教育実習生も?
ゲイに理解の無い世の中も?
その逆で、誰が1番の被害者なのかとかも考えてしまって、BLコミックを読んで色々考え込んでしまったのは久しぶりでした。

とにかく三井が曽根と再会できて、曽根という理解者を得られて良かったです。
「ヘテロの男役をもうだれも強要しない」
このセリフ最高でしたね。三井が世の中のマジョリティの概念から解放される兆しが見えた、素敵なラストでした。

1

与えられたトリガー

イシノ先生の絵はとても好きです。
言葉数少なく絵で語る作風も好きです。
背景が時々歪む手法も好きです。

お話としては、隠れゲイが「正しく」人生を送ってきて、愛情がないため妻に離婚をつきつけられる。
高校の時にふった同級生と再会、しかもお隣。
↑BLあるあるですよね。イシノ先生もあるある設定を描かれるんだなぁと。

三井はこれまで自分を偽り、苦しいながらも体面を保ってきて、それが全てだった。
が、失ってしまい、空虚感を味わう。

そこからは、荒れ放題で。
それなのに、曽根に見捨てられたり逆襲されるどころか愛されて。
息を吹き返す。

ある意味しあわせですよね、三井。
全てを失うと同時に曽根と再会して。
すぐにトリガーを与えられて。
再生できて。

恵まれているお話だなぁ、というのが感想です。

曽根としても自分を必要としてくれる三井の存在がうれしいんでしょうね。

萌えは「はんぺん」でした。

0

何が君の幸せ

賛否両論あるのを知ってためらってたら、むしろ私が好きな方の作品でした。
クズの救済が好きなんです。クズがクズらしくクズをまっとうし、かつ実はいい人的なフォローがあるわけではなく、ただそれが愛でもって救われる話が好きです。変わろうと思えば人間は変われるけど、思わなければそのままだし、誰かの助けが必要になる時も多い。それがその誰かを傷つけていい免罪符になる訳でもないけれど、その誰かと出会えるかどうかも自分のこれまでの行い次第なわけで。
最後に明確になる彼がそちらを望んでいるという描写もかなり自分の好みでした。

4

地獄から天国へ

あとがきまで読んで納得できる作品でした。
『トリガー』の意味……うん、素晴らしい。

三井という一人の男を通して、自分に正直に生きることの難しさを感じました。
マイノリティなら尚更。

クソ男の生き方にもそれなりの理由があり、経緯がある。
そこを後から丁寧に描いていく構成も素晴らしかった。
そんなクズい男に傷付けられながらも寄り添う曽根。
そんな曽根もまた、三井という理解者を得たのかもしれない。
ゲイ同士でないと分からない事もあるんだと思う。

あんなに強気に振る舞っていた三井は、本当は抱かれたい方だったんですね。
作中でリバには至らなかったけど、これからを予感させる終わり方も良かったと思います。

傷付け合わなければ分かり合えないとしたら悲しいけど、三井は曽根と再会できたこと自体が幸福だったんだと思う。
曽根は、ずっと強くてかっこよかったなあ……

3

ひねくれ男の愛し方

幸せを願いたくなるクズ。
三井はとても酷いしクズエリートなのだけど、葛藤した過去や心中を思うと、そろそろ素直に幸せになって良いんだよ、と母心のようなものが芽生えます。
何より曽根が良い人すぎて、ひねくれた三井を幸せにできるのは曽根くらいだよな、出会えて良かったな、と再び親心のようなものが芽生えてほんわりします。
そして、書き下ろしのリバも大変大変おいしくて最高でした。イシノアヤ先生、ありがとうございます。

1

もしかして

三井が自覚して恋した相手は曽根だけだったのではないかと思った
保険委員会に出なかった理由は曽根がいるからで、思春期に意識しあってるとしたら感じる物だろうし、曽根が告白したのも可能性がないとは思ってなかったのではないかと思う

曽根も両思いのような気がした相手が三井だけだったのだとすれば、再会してからの三井の呼び出しに確信を深めて、三井が自分を少なくとも過去には好きだったと知っているから責任を取るよう求めたのだろう

タバコの火傷は本当にひどく、その場面で何かを考えることができなくなるくらいショックだったし、高校でのアウティングも辛い話だけれど曽根は転校したってことは、親にもゲイだと知れていてあの様子ならば受け入れてもらえたのだと見えるのでそれだけは良かった
三井は職場でも再びアウティングしたってことで本当に何がしたいのか…曽根の気持ちが欲しかったのだろうか
ゲイを否定して頑張った自分が失敗して、ゲイを認めている曽根が隠して上手くやるなんて許せなかったのだろうか

裸の曽根が女のような体格でもないところがとても良かった

二人共が互いに愛されている幸せを感じながら、優しくしあって生きていって欲しい

1

続きが気になります

ゲスい攻めの作品が大好きなので、最初そういう感じかなーと思っていたのですがお話が進むにつれこの人は弱い人なんだなと思いました。弱さを隠すために自分より立場が弱いものに暴力を振るう子供みたいだなという印象。だんだん可愛く思えてきて不思議です。
ストーリーが進むにつれ、当初の印象と逆になっていくのが面白かったです。一見気が弱いように見えた受けさんは意外としたたかだし、クズに見えた人は可愛い人だし。

最後リバっぽくなるのも好きでした。セリフ違うかもですが
「ヘテロの男役を誰も強制しないから」
自分を抑制しながら生きてきた人に、これを言ってあげるんだな。かっこいいなと純粋に思いました。その後「俺は女じゃない」を連発しますが、女になりたくないのには過去のトラウマやら色々あるんだろうな。考察力をもっと磨きたい。何度読んでもここでうるっときます。この2人の続きが気になるなと個人的には思います。

3

最初に読んだ作品

イシノアヤ先生の作品で初めて読んだ本です。

皆さんのコメントで 「椿」シリーズとは違うよ。
という事を知り、この作品の後で「椿」シリーズを読むのですが。
同じ方の作品とは!とびっくりしました。

この作品の表紙が大好きです。
三井のクズっぷりがよく表れています。

前半のエリートサラリーマン三井の曽根さんに対する所業は
「あれ?三井 いくつだっけ?なんだコイツ(怒)」
の連続です。
いい大人が根性焼きなんて、しますか?

仏の曽根さんが三井の全てを受け入れて
「僕は幸せだと」ニコニコしてますので。良しとしましょう。
 
抱かれたい三井の気持ちを察知して、二人の今後が変わっていくで
あろうラストが大好きです。

1

「ヘテロの男役をもうだれも強要しないから」が強烈に耳に残る

 途中までは物語に引き込まれはしたけど、内容的にすごく萌える!とはならなかったんです。でも、攻めの三井の子供の頃の話を読むと、彼の印象が大分変わりました。自分の性癖を彼が頑なに受け入れようとしなかったのはなぜなのか。私は彼が曽根に比べて、大人になっても見栄っ張りで未熟なままだからだと思っていたけれど、子供時代に経験したことは、彼を固い殻に閉じ込めてしまうのも納得だと思い直しました。

 いじめられたわけでもないし、強姦されたわけでもない。ヘテロの男の子だったら誰でも経験しそうなこと。でも、それらはゲイになった途端、すべて違う意味を持ってくる。周りの男子が簡単に受け流せそうなことを、受け流せない自分への不安や嫌悪感。そして、誰に強制されたわけでもなく、気付いたら自ら異性愛者という本来は嵌まれないはずの枠の中に自分を無理矢理押し込んだ三井。結果、ゲイとして生きることを受け入れている曽根に、今までの苦しさの反動をすべてぶつけてしまうんですよね。

 三井の曽根への態度はけっして褒められたものではないし、彼に捨てられなかったことは本当にラッキーだったと思います。どれだけ今まで辛かろうと、他人を傷付けていい理由にはなりません。でも、そういう不器用な態度、コントロールを超えた感情、何もかも投げ出したくなる無力感などが、どうしようもなく生きている人間の現実だなぁとも感じるんです。自分が蔑んできた人間が、実は一番自分に寄り添い安心感を与えてくれる存在だった。いろんな犠牲を払ったけれど、自分を好きになれなかった少年が、ありのままの自分を晒け出せる存在を見つけられて本当に良かったと思いました。

2

ゲイであることを受け入れる

連載時から追っかけてました。
こうして単行本になって、連続した物語として読むと格段にいい本です。

お話の最初は、ゲイであることをひたすら、自分にさえ隠してヘテロの理想生活を築こうとする三井のお話。
しかし、もちろんその擬態は続かない。妻は体を含めた絆がないことに絶望して子供とともに去って行く。崩壊する三井。
このあたりがまず痛々しい。

しかし、本当に痛いのはこれから。
偶然(普通はないと思うが)、高校時代自分に告白した曽根がマンションの隣人となる。ノンケの友人と同居している曽根。今はそのノンケに密かな思いを寄せる、そんな同級生、曽根。

すさんだ自分をあざ笑うように、曽根を脅して犯してしまう、三井なのです。
曽根を傷つけ、自分も傷つく三井。

やがて三井はアル中になって仕事も辞め、あげくには、曽根の同居人をわざとH中に遭遇するように仕向け、出て行かせる。曽根を自分のものにしたかったのかな。

しかし、曽根がすごい。母なる愛かな?
どこまでも傷つき、すべてを失った三井を、包み込むのです。愛だ~

奇特なやつ、と三井が呼ぶように、曽根はかつて好きになった三井を優しく包み込み、更生させる。そこまで考えていないかも知れないけど、三井の苦しみをともに分かち合おうとするのです。

おれはゲイだ、と叫ぶ三井の姿に涙がでました。
自分を認めてあげた三井、そしてそこから、本当の彼の人生が始まる。そのときに、そばにいる人がいてよかったなあと思います。
曽根の助言を受けながら、仕事をみつけ、二人で暮らすようになる。

あとがきでイシノさんが書かれているように、曽根の方はほんわかしているようにみえて実は色々経験豊富で、だからこそなんだろうなと思います。ゲイの、そして人生の先輩だね。

意外と世間知らずな三井、よちよちと歩き出した姿はかわいいですね。二人とも幸せになって欲しい。

3

クズ攻めと天使のような受け

神評価がとても多いですね。自分の読解力に自信がなくなります。

最後まで読めば包容力受け(?)による攻め(?)の救済のお話なのかな?読後は休日の街中を買い物に行く爽やかさを感じます。

ただ三井がクズすぎて。ゲイを隠して生きていくことはこんなにも人を歪ませるのかな?
離婚を言い出された時の反応もなんだか。それでどんどん荒んでいきますね。

隣に引っ越してきた曽根。せっかく片想いの相手と仕事して同居もできてるのに…。

高校時代の曽根への仕打ちといい、オナホールがわりといい、タバコの跡をつけたり蹴りだしたりとにかく曽根への扱いが酷すぎて。

曽根が脅されてずっと言いなりで。

会社を首になった三井がとうとう曽根まで引きずり落とします。なぜそこまでするのか。

ゲイだからの同族嫌悪なのか?

そしてなぜ妻側から離婚を言い出したのにあんな条件で離婚になったのか?

曽根は三井を許して同居してベッドを買ってもらって幸せそうで。三井は足掻いてますが曽根に救われてるんですよね、きっと。

曽根の態度は根底に高校からまだ三井が好きな気持ちがあったのでしょうか。なぜあんな仕打ちを受けてこの展開になれるのでしょう。

三井のクズさがどうしても拭えず中立で。

2

萌えられないタイプのクズ

これはもしかしたらダメかもな〜と思いながら買ったコミックではありますが、思った以上にダメでした。

一口に“クズ”と言っても色んなタイプのクズがいますが、この三井みたいなタイプはホント笑えない、私がリアルでガチに嫌って生きてるタイプのキングオブクズなので、申し訳ないけどまっっっっったく三井に情が湧かない。
三井の可哀想な過去話を読ませて同情を誘おうとするこういった作品のよくある手法すら、もはや鬱陶しいことこの上ない。
三井のようなタイプの何がそんなにダメなのかと言うと、ひとつずつ説明しきれないくらいに何から何まであれもこれもダメですね。。。
そんな中で敢えて言葉にするなら、多分この「自分だけが可哀想」みたいなのがとにかくダメなんだろうなと思います。
自分の苛立ちを発散するためだけに曽根の腕に消えない傷(根性焼き)を付けた瞬間、アーこれは無理だわと。
傷や刺青に萌えを感じる属性だからこその余計に許せない決定的瞬間でした。

モヤモヤを吐き出したいだけのレビューをしてすみません。
イシノアヤさんがダメなわけではありません。それだけはここでしっかり断らせてください。

6

ゲス野郎の自分勝手な苦しみとファンタジーではないBL

ああ、ひどい作品でした。
こんなにひどい男の話を読まされて、最後はその男がこの先もしあわせであるように願ってしまうなんてひどいにも程がある。

三井という男の半生が描かれています。
エリート。会社での評判も上々。3LDKのマンションに美しい妻と私立に通う娘。何不自由なく、家族が欲しがるものは全て与えられる甲斐性のある自分。誰もが羨む「男」の生活。
三井が叶ったと思っていた理想の生活はもう崩れていたのに、目を背けていたんですよね。夕飯を食べる三井の前で、ごはん代わりにサラダ味のスナック菓子を食べる妻。突然の離婚の話に手放したくないのは「彼女たち」ではなく、「既婚者である自分」という世間からのレッテルだと気付く。必死で築いた砂の城が崩れたあとに頭をもたげてきたのは、隠し続けた本当の自分。

そこに現れたのは、過去に自分に想いを寄せていた同級生の曽根。
曽根の弱みにつけ込んで、何度も何度も乱暴に体を奪う。あまつさえ消えない傷跡までつける。曽根の腕に3つ残された跡は、脆くも消え去った自分と妻と娘を象徴しているのか、それとも曽根と曽根が想う友人と自分なのか。
てっぺんから底辺まで落ちて、手にしていたはずのものが何もかもすり抜けていったとき、本当に欲しいものはただひとつだけだったと気付く。
自分を受け入れるまでのショック、否認、怒り、承認そして受容。

とにかく痛いです。どこからどこまでも三井はひどい。曽根を酷く扱うさまは目を背けたくなるほどです。
三井がずっと否定してきた「同性愛者である自分」を受け入れている上に好きになった相手に告白までできる曽根への蔑みと無意識な羨望、でも結局はゲイであることを隠して好きな相手のそばにいようとする曽根の狡さを断罪したい気持ち、そして何より自分自身を受け入れられない苛立ち。
そういうドロドロした感情をすべて曽根にぶつけているのです。自分を痛めつけるには三井は自己愛が強すぎる。だから曽根に自分を投影してぶちのめす。でもいくら殴っても傷つけても、痛みも苛立ちも消えないし、罪悪感まで生まれて自己嫌悪がひどくなっていくばかり。

悪循環で残っていたはずの社会的地位まで失ったときに、狡猾なやり方で三井は曽根の秘密を暴きます。曽根も自分のように何もかも失えばいいと思うと同時に、そんな自分を見捨てないでほしいという微かな願いすら感じる場面に、もしかして同居人に暴きたかったのは曽根の性癖ではなくて、曽根は自分のものだということだったのではないかと思うのです。

「同性愛者かもしれない」という事実を受け入れるのって、本当に難しいことですね。いくつかコラムや記事も読んだことがありますが、「ふつう」でないことを認めたくない気持ちが強ければ強いほど、より「男性らしく」いようとして、強烈なホモフォビアになってしまうそうです。
最も憎むべきものが自分の真ん中にもあって、いくら蔑んでも罵っても全部自分に返ってくるだけなんてどれほどの苦しみでしょうか。受け入れられたら楽なのにと思うのは他人事だからなんですよね。それだけ枠から外れるのは怖ろしいことだというのを全部は理解できていないからなのかもしれません。ゲイフレンドリーなひとだって、ゲイフレンドリーであるがゆえにゲイの人を傷つけることもあるし、本当に難しい問題だと思います。
三井が妻子を不幸にしたことや曽根にしたことを「酷い」と言い捨ててしまうのは違う、と考えさせられました。

三井が必死で打ち消そうとした種を芽生えさせてしまった教育実習生の存在も不幸。妻を愛し切る演技すらできなかったのも不幸。自分ひとりでは受け入れられずに曽根に当たってしまったのも不幸。
だけどこれからの三井にはしあわせだけが訪れてほしい。すべて気付いた上で離れずにいてくれた曽根がいてくれる限り、大丈夫だと思える、希望に溢れた作品でした。

11

ビビらずに読んで!最後にはクソゲスカスに萌えますよ!

この作者さんの「椿だより」を読んであー、ホワホワポカポカ、良かったね、で終わってそのままだったのですが、この不穏な作品紹介!あの方がこんなん書くの?と買ってみたら、まぁ、ガッチガッチのガチのMLでリアリティありでした。

いたしてるシーンもあり、それもハラハラさせられるものなので涙目になっちゃう事もあるかもしれませんが、さすが先生!最後の最後、書き下ろしまで読んでいただければあのクソゲス三井に萌えを見つけらます。あぁ!読んで良かったの読後感。「椿だより」系でなきゃ絶対にダメ!という以外のBL読みさん達にはぜひオススメしたい作品です。せっかくBLというジャンルに萌えを見いだしてらっしゃるんですもの!

しかし、どなたかのエッセイでチラリと読んだのですが、ほんの30年くらい前かな?今はなき某有名ゲイ雑誌の編集長さんが『ゲイの人もゲイライフを楽しんでいい年になったら前半の三井みたいなライフスタイルを送りなさい、子を成しなさい』と話してたというのを読んで、そんなにゲイのそばにいる人もそんな考えするんだ!とビックリした思いがあったので、クソゲスカス三井に同情と哀れみを持ちつつ読んでたのも最後に三井に萌を見いだしてしまった理由かな、って腐嬢さま方は「え?30年前って大昔じゃん!」と思うかなー(笑)。

あ、忘れてた!あの教育実習生に精一杯の罵声と暴力をあびせたい!!!私、本来ビビりの運動嫌いだから遠くから石投げるくらいが精一杯だけど。ダセ。でも本当のクソゲスカスはヤツだから!残念!!!

5

自己抑制と解放

イシノアヤさん好きと言えどもこの作品は皆さまのレビュー読んだだけでびびって、これ(自分にとって)ヤバいやつだ、読まないでおこ、と封印してました。
でも結局、好奇心が優ってついに読んでしまったのですが、結論から言えば読み応えがあり読んで良かったです。
最初はビビりながらも、そして途中からぐいぐい読み込んでしまいました。

ゲイである事を否定して生きてきた三井。「ヘテロの男」の仮面を被り続ける事によって得た妻や子供を失い残されたのは養育費とローンだけ…。
三井が曽根にやったことは確かにクズだし弁護できない。だけど彼の背景を知ると救いようのないクズとばっさり斬り捨てられなかった。

自分が「普通」じゃないかもと気づいた三井の少年期。葛藤する間も無いままバカなノンケ教育実習生(男)による勘違いスキンシップで強制的に性に目覚めさせられてしまい(あれ性的虐待だと思う)背徳感を植えつけられてしまったのが本当に可哀想。
男に欲情する自分は気持ち悪い、けがわらしい…そんな自分は隠さなくてはと思う三井。そして告白してきた曽根を「俺は変態じゃない…!」と拒絶した。

結局、お互いにちゃんと恋愛したのは初めてなんじゃないかなぁってあとがきを読んで思いました。(三井に再会するまでほんのり好きになった人はおそらくみなノンケとある)
高校時代の恋のやり直しというんでしょうか。下手すると初恋どうしなのかもしれない。
「俺はゲイだ」「奇遇だね ぼくもさ」
ぎゃーどうしてこういうセリフを考えられるのでしょう。イシノさん神過ぎます!!泣けちまう。

「ヘテロの男」を演じ続けてきた男の底には受け願望があったというところまで描かれているところが好き。
そしてそれを曽根が見抜いて、「ヘテロの男役をもうだれも強要しないから」と言って今まで彼を縛り付けていたものから解放してあげるところが一番いいと思います。
だから、三井が受けやってるところまで(つまりリバ)描いて欲しかったなぁ。
絶対喘ぐのに三井は抵抗あると思うんだけど曽根がそれに気づいて声を我慢しないで…とか言っちゃうの。で、アンアン言っちゃう三井をかわいい、かわいい、と曽根が言う。かわいいと言われることにも三井は最初戸惑いを感じるんだけど、かわいいって言われることも悪くない…どころかこれを望んでたんだ…!ぐらいになって生きてて良かった〜!ってくらい感じまくるセックスをして欲しかったです。
三井は絶対かわいくなっちゃうと思う、というか、「この家で俺以外の人間(男じゃなくておばさん相手に嫉妬)の話をするな」とか言っちゃってて、すでにかわいいし。

そしてこのまま途中、三井は自殺でもしちゃうんじゃないか…と思ったシーンでのはんぺん買ってきてメール。あそこが秀逸でした。

9

LGBTの向き合い方

ゲイである事を受け入れられなかった男と向き合っていきてきた男の話。かなり面白かったです。
どうしてもBL内だとゲイへの許容範囲広くなりがちですが、リアルではこの2人のようにどちらの道を選んでも厳しい事が多いんだろうなぁ。
三井の曽根へのもろもろは鬼の所業。
それって結局三井の自己否定って所が絶妙に描かれていて、一概に三井を軽蔑も出来ず愛おしくなってしまいました。曽根お疲れ様…
邂逅の後の三井のデレがさ、曽根の幸せそうな感じがさ、ホント堪らない。
そしてリバ匂わせ終わりが口惜しい!
これリバ後に2人の関係性またちょっと変わるんだろうなぁと妄想膨らませることしか出来ない。そこまで読みたかったよ!

2

自己肯定の分かれ道

初読み作家だったのですが、表紙の絵が苦手なタッチだったので合わないかなと思いつつ、試しにサンプルを読んだら先が気になる感じだったので購入。
攻めの三井は読んでいて西田東さんの「君が僕のすべて」の武田を思い出させました。エリートなのに奥さんに離婚されるところとか、プライドが邪魔して人生損してるところとか。

最後の最後まで三井がそういう展開になると全く思わなかったので驚きましたが、逆に全てが腑に落ちました。これはやられたなー。
まさに自己肯定できたかどうかで完全に人生が分かれてしまった2人です。
曽根くんは完全にダメんずホイホイ体質な気がしますが、今度は曽根くんが三井のトリガーになって、思いっきり振り回して甘やかしてやって欲しい。

3

エリートが踏み外した道

心の奥底に押し込めた「ぜったいに認めたくない」欲求。
三井の分厚い化けの皮が剥がれ落ち、自分自信を騙し続けた男の縋るモノが何もない虚しさが、落ちぶれていく過程の中でじっくりと語られていきます。
曽根が脅しに屈する理由も、関係を続ける理由も語られないまま。
憂さを晴らすためだけに曽根を嬲り続ける日々。
同情とは別な所で三井をサイテーな男と蔑むことができました。
けれど全てを失って、曽根にすら殴られ蹴られ、ぼろぼろになった姿を見るとつい切なくなってしまいます。
社会の秩序に従う人生を選んだはずが非を問われ、切り捨てた世界に踏み込む覚悟もない。
そんな心の弱さを愛しく感じてしまいます。
曽根の恋愛観も並行して語られればまた違う思いが巡ったかもしれませんが、三井の大きな分岐点となった出来事を締めくくるラストの一言が幸あれと言わんばかりの希望の言葉となって、感慨深いラストとなりました。

1

相変わらず困り顔がツボ

結構狡かったり卑怯だったりするキャラの心理を描いていらっしゃる作家さんなので、決して一筋縄ではいかない作風だと思っていましたが、本作のように人間の負の部分を一つのお話で全面に出されちゃうと、予期しなかったのもあってなかなかキツかったです。最後の描き下ろしで温かさを残してくれていたにしても、読後はズシッと来ました。

己の性的指向を自覚しながら受け入れられず、抵抗し続けてきた三井。かつて告白を受けた元同級生の曽根に自身の姿を重ね、彼を蔑み、罵倒して、傷つける。自分の見たくない部分を映し出してくれたのも曽根だが、ゲイであることへの妄執に近い嫌悪感を徐々に解消してくれたのも曽根だった。

もともと三井のことが好きだったにしても、あんなに酷いことをされているのに彼を受け入れてしまう、曽根の気持ちの変化が見えづらかったのですが、三井の転落ぶりを目の当たりにして気の毒になったのでしょうか。弱くて救いようのない男と身体の関係を重ねるうちに、「アタシがついていないと、このひとは…」みたいな愛情が芽生えたのかな。

高校生のあの時に、三井がゲイであることを受け入れていたら、二人はすんなり幸せになれていたかもしれない。かつて自分のことを想ってくれていた曽根と再会するまでに三井が辿った道のりは、彼にとって必要な年月と経験だったのでしょう。三井の気持ちに寄り添ってみると、たとえ回り道にみえても、人生において無駄な時間はひとつもないんだよね、って訊いてみたくなる。

確かに三井の振る舞いは「クズ」と呼ばれてもしかたがない。でも、三井は根っからのクズではなかったと思います。ある意味ガチガチに真面目過ぎたために、自分の手に負えない本性と向き合わざるを得なくなった時、クズみたいに振る舞うことしかできなかったと。俺の人生は失敗だったのか?と問いただし、あるいは俺は間違っていないと言い聞かせ、ずっと「努力してきた」彼なのですから。

そんな三井を受けとめてくれた曽根との出会いはやっぱり、運命。運命的カップルの再会を痛い角度から描いた、イシノ先生の新境地を見せていただいたような気がします。

7

確かにクズ。だけど可哀想で切ない。。

私がBLに求めるものはひたすら萌えなので、そーいった意味で中立で。。
作品としては色々考えさせられました。
自分の性癖をなかなか認められなくて、それゆえ酷いこともいっぱいしたけど、相手に受け入れられてやっと救われた主人公。
深層では受けになりたいみたいです。
リバ苦手ですが、確かにお相手の方が包容力がありそうなんで、そこまで拒絶反応はなかったです。
特に幼少時代に教育実習性にほのかな恋心を持っていたのに軽く遊ばれちゃったところは可哀想でした。。
ゲイの悲哀というかリアルな切なさがありました。。

3

ちょっと苦手方面のイシノさん

あああーうううー、これどうしたらいいんだろう。
こういう屑って本当にいるから嫌なんですよね。だからって「趣味じゃない」とはいえない完成度。嫌いじゃないのですよ、よかったのです。
イシノさん、やはりすごい。
作者買いしてるくらい好きなんですが、作風が広過ぎて本当毎回買うのは冒険です。
だって、椿びよりを描かれた作者さんですよ。曽根くんがちょっと似てるし、椿くんがこんな目に遭ったらと思うと想像だけでも泣けてしまう。う、うわーーん。
他の著作でも、包容力のある相手に酷いコトして喜んでいる「あまのじゃくの恋」がありますが、これが悪化するとこうなるのですかねえ。
依存度はクズ攻めの方がすごいんですよね。

本当、神としゅみじゃないをシェイカーでしゃかしゃかしても、すぐ分離してしまう様な読後感です。
結果よかったから、「神」かなあ。うーん。
なので真ん中で。

3

想像してたのと違ったけど、むしろ凄く良かった…

なんとも言いがたい読後感に包まれました。
いろんなタイミングで、読み返したくなる作品です。

4

深く沁みます

ぐっわぁーんっとやられてしまった。なんと書いていいのやら...自分のような人間の場合は好きな作家のレビューほど書こうとするなって話なのかもしれませんが、それでも少しだけ。

『トリガー』とタイトル付けた所以
作品を通して表現したかったもの
登場人物の裏話・裏設定
どれもあとがきにて、作者の言葉でなめらかに語られていました。

あとがき最後の「2015.07 イシノアヤ」(手書き)まで進み、自分が漠然と、だけどたしかに感じとったこと、との答え合わせじゃないけどそんな感じで深く沁みる作品だったなぁと再度振り返ることができました。私なりの言葉で表すとすれば、これもまた "壁ぶち抜き男" 作品です。

元気がなくなるたびに読みたい。

10

クズでどーしよーもない男だけど

この攻の三井がほんっとにクズでゲスで!
ゲイであることを隠し生きてきた男。
妻に離婚を言い渡されて、それを機に荒れた生活を送るようになる。
そんな中、隣に引っ越してきた元同級生の曽根を、彼の同居人にゲイだとバラさないという口止め料としてオナホがわりに無理矢理抱くようになります。

この三井!
ゲイである自分を取り繕ってうまくやってきた人生が一気に転落して落ちぶれてく感じとか。
昔こっぴどく振った曽根を犯し、暴力をふるい、結局は最悪の形で曽根の同居人にバラす鬼畜っぷりとか。
最後、包容力ありまくりの曽根が三井の全てを受け入れて側にいてくれるようになったときの、三井の曽根への依存度とか。
この下衆っぷりは木原音瀬先生の小説に出てくるクズキャラに通じるものがありますね。
こういうクズが、ボロクソに扱ってた相手にいつのまにか依存して、その人がいないと生きていけないーって感じになってくの、嫌いじゃないです。むしろ大好きです。

こんなゲス三井ですが、書き下ろしを見て最悪だった印象が一変!なんだよかわいいじゃないか!と思ってしまう内容でした!
実は本当は心の底で『女』にされることを望んでいて、しかも!こっそりアナニーまでしていたなんて!!!
自分の願望を曽根に見透かされたときの、羞恥に真っ赤になる顔が萌えた!
曽根×三井のエロはなかったのですが、三井がお尻で感じまくって曽根にアンアンよがりまくってるのが見たかった…!!そりゃあもう本気で見たかった!!!!
マジでいつか描いてほしいです!心からお待ちしてます!!

8

苦手設定なのによかった

 帯のまんまでした。
 「とあるクズエリートの人生の崩壊。…………と、恋愛。」
 「恋愛」の文字がちいちゃいのよね。

 私はイシノさんの描く何気ない幸せな日常の様子が好きです。なので今回はどうなるかと思いました。

 クズが、本当にクズでね! こういう人は現実にもいそうな気がしますよね。私はクズも嫌いだけど、ダメンズウォーカー的なそんなクズでも愛し続ける人も嫌いで、共依存BLはほんと苦手なんですけども……
 これはクズの過去も描かれていて、クズの暴力は許せないし同情したくはないけども、なるほどねと思いました。
 プラス、彼を受け入れる曽根くんが、クズな三井には依存してなくて、ただ彼の苦悩は同じゲイとして十分わかっているんですよね。結果的に殴り返したのもよかったし。

 そして最後には、やはり日常に救われるんです。

 あとがきにもあったけど、自分を偽るのは苦しいですよね。三井は曽根くんを大切にして、お尻を差し出して欲しいです。そして、そこをね、もっと読みたかったですよね!!!!!!! クズな三井が曽根くんにメロメロになったところをね、もっと読みたかったです。

7

はんぺん買ってきて

再読にてレビューします。

帯に、とあるクズエリートの人生崩落とありますが。
お話の内容は、このクズエリートの攻めである、三井の事を中心に一冊まるまる同じカップリングのお話です。

この、三井は離婚を機に転落していくのですが、初めは本当にクズです。脅し犯し、受けに対して愛情もなく酷いです。受けの曽根は、そんな関係に苦しみながらも最終的には、反撃をした後、三井を受け入れます。そのシーンがすごく良いです。その後で、三井の過去か出てきてストーリーがより深くなりました。(教育実習生の先生が本当にクズだわ)

勝手な期待ですが、クズエリート攻め×包容力受けから
リバになって、包容力攻め×クズ卒業ツンデレ受けの続きが読みたいです。

5

俺はゲイだ... 奇遇だね ぼくもさ

エリートサラリーマン三井の転落から始まる物語
隣家に越して来た曽根は高校時代に俺に告白してきた男だった...
ゲイだった事をひた隠して必死に生きてきた人生を根底から覆され、自暴自棄に陥る三井

隣家に友人と同居している曽根の同居人への思慕を強請りのネタに体の関係を強要する

ここまで見ると鬼畜の三井何ですが、ここがイシノさんの描き方の妙で、露悪的では無いんです
鬼畜さを押し出すのではなく、あくまでも話の構成上として書いてます
三井の壊れてしまった心を描くのに必要だと言うように。

壊れた三井に菩薩の様な包容力の曽根
三井に嗜虐的な行為を繰り返される曽根
それでも、三井に情をかけます
そんな曽根の前で涙ながらに初めて告解する三井
『俺はゲイだ..』
『奇遇だね ぼくもさ』
このやりとりに号泣しました
まるで、この言葉を三井に吐かせる為に腐っていく三井を見捨てず、離れずに曽根はいたのかと思う程しっとり受け止めました

このままでの包容力を見せつけた曽根がある意味怖く成る程でした

ゲイとしての自分を認めず、否定し続けた三井の過去を遡るプロセスをしっかり描いた事がこの作品の真価だと思いました。
人と違う自分を受け入れる事がどれ程怖くて苦しくて辛いことなのか...
弱くて脆い三井には目を背けるしかなかったのかと。

曽根はある意味とても強いのです
誰のせいにもせず、受け止め辛くても向き合い生きてきたのですから

これからの二人にささやかな幸せが訪れます様にと願いました

甘さとは程遠い作品ですが、人間の弱さと強さをしっかり描いた良作だと思います

最後に曽根が三井の恥部を暴いた時に『うわぁ やっぱ曽根怖い笑』と思いました

魔性の菩薩系ですよ曽根はww

最後に少しづつ甘くなっていく曽根と三井に絆されました

イシノさんの新境地を見せてもらいました。
心に響く素晴らしい作品です

18

ヘテロを偽った男の転落から息を吹き返すまで

日常系でもほのぼのでもない
イシノアヤさんの新境地作品『トリガー』。
シリアスで痛々しいシーンも含め、
ひとりの男の転落が、暴くように徹底的に描かれた秀作です。

順風満帆なエリート商社マンの三井は
不足のない人生、不足のない生活を送ってきた。
それは努力の上に成り立っているもので、
彼には絶対に認めたくない、封印すべき”ゲイ”という根幹があった。
そんな彼が妻から言い渡された離婚を機に
人生の歯車が狂っていく中で再会を果たしたのが
高校時代自分に告白をしてきた男・曽根だった。
ノンケの同居人に恋心を抱いている曽根を無慈悲に、
強制的に抱く三井だったが、更なる転落に陥っていき―

前半部分、三井が曽根にしたことは鬼畜で
どんな理由があっても許されることではありません。
脅して、凌辱して、ボロボロの自分に手を差し伸べる曽根を
どこまでも陥れる三井の姿は痛々しく、読むのはとても辛かった。

けれどこの作品の素晴らしさは、
グズで弱い三井から逸れずに、徹底的に彼に焦点を当て
読み手に納得のいく形で描き上げられたところにあると思います。
過去から現在まで、物語の視点は終始三井によるもので
曽根はモノローグですら語ることはないのだけれど、
他者の視点を入れないことで
三井という男の人生をぼかさなかったところに強い好感を抱きました。

徹底的に傷つけられた三井だけど、一方的にやられっぱなしではなく
曽根の卑劣さを蔑むように三井に拳を向けた後、
キスをし、涙で震える三井を抱擁するシーンには
これ以上にない見応えを感じ、
その後、三井のずっと認められなかったことに対する告白と
曽根の返答には、目頭を熱くせずにはおられず...
こちらの一連の描写は本当に素晴らしかった。

描き下ろしがまた秀逸で、読み応えと共に萌えが詰まっています。
三井が曽根のために購入したベッドの上でイチャイチャする中、
本来”受け”であろう三井のことを察し
まるごと受け止めようとする曽根の言動は
包容力の塊で、格好良いとしか言いようがなく、
恥ずかしがりながらも、彼なりにそれを認める三井の可愛さときたら...!!
キュンキュンキュン!です!!
(あと、以前三井が曽根につけた傷を舐めるシーンもすごく良かった...)

ぶれることなくひとりのグズで弱いヘテロを偽った男の転落と
息を吹き返すまでの道のりが見事描き切られた、素晴らしい作品。
個人的に”抱擁受け”に絶賛注目中なことも手伝い
評価は迷うことなく”神”評価とさせていただきます!

25

よかった

自分はきっと普通じゃない……ゲイであることを心の底では自覚しながらも、どうしても認められない三井。そんな心の闇を、仕事はエリートで家族にも真面目に向き合う生活をすることで埋めてきた。三井はどこまでもまっとうであろうとし、道を外れることを深くおそれている。それなのに妻から離婚を突きつけられ、ここからどんどん三井は崩れていく。
一緒にいるからこそ、奥さんも三井が自分自身を愛してくれているわけではないとわかっていたんでしょうね。別れたくないんじゃなくて離婚がしたくないんでしょう?っていう妻の言葉に三井も絶句しています。
苛立ちとこころの隙間を埋めるように昔自分に告白してきた隣人の曽根を犯すようになるのだが、体を痛めつけたり気持ちを踏みにじったりするようなやり方でつらい。酒を飲みまくる三井を心配して咎めるもビンタされたり…。それでも、酷い扱いを受けても曽根は健気です。突き放しても自分を見捨てなかった曽根に、ようやくポツリと本音を漏らすシーンは淡々としていながらもよいシーンでした(´ー`)
崩れ落ちそうになる三井の脆い心をそっと支えてくれる曽根。何もかも捨てて逃げ出してしまおうとするも、曽根の何気ないメールが三井を現実に引き戻してくれます。一見弱々しく見える受けが、実は脆い心を持つ攻めの背中を押してくれるってなんかいいです^^
酷いことをした分、これからはめちゃめちゃ甘やかしてあげて欲しいです♪

10

ゲイである自分を認めたくない男の話

離婚を言い渡されて、
妻と子供に出て行かれてしまったエリートリーマン(攻め・表紙の男)と、
その攻めのマンションの隣りの部屋に引っ越して来た、
高校時代に攻めに告白をした過去を持つ元同級生のゲイとのお話です。

ふたりは再会してすぐに、
離婚して荒んでいる攻めが、受けを脅す形で無理に抱き、
関係が始まります。

でもこの本は、ふたりの恋よりも、
ゲイであることを認めたくない、認められない男(攻め)の、
その非道ぶりや、そうなる引き金となった過去、暴かれた本心などに、
焦点が当てられて、それに受けとの関係や恋が絡んで魅せていく…
そんな描かれ方をしている本だと感じました。

とにかく攻めは最初、ものすごく嫌な奴です。

何度も何度も受けを無理に抱くし(描写自体はそんなに多くないです)、
酷い言葉を浴びせるだけじゃなく、
無理に受けの腕に煙草を押し付けることまで…!

この本のとてもよかったところは、
攻めがそんな嫌な奴になった経緯(過去)がちゃんと描かれている事、
そして、健気でされるがままなっているように見える受けですが、
受けが反撃する場面もちゃんとあって、
そうできるのに、そのうえで、攻めを包み込んであげているところ。
あと、
ちゃんと途中に攻めが辛いめにもあったりと、
ハッピーエンドだけど現実的でもあるところもよかったな。

攻めが、自分が散々酷いことをしてきた受けに縋って、
その懐の深さを思い知って、
自分はゲイだ…とやっと涙ながらに認めるところとか、
攻めが現実に打ちのめされて逃げ出したくなっている時に、
受けからの「はんぺん買ってきて」のメールに救われるところとか、
描き下ろしで、
本当は攻めは女役をやりたいんじゃ…と受けが気付いて、
服越しに後ろを弄られた時の攻めの表情とか、
胸を掴まれるシーンがいくつもありました。
(そのうち逆になりそうですが、この本でリバるシーンはありません)

本当は、もっと関係がより深くなったふたりの様子も見たかったな。

本の最後の言葉と、
あとがきを読んで本のタイトルの秀逸さに、ため息が出ました。
とても素敵な本でした。
神寄りです☆

15

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