「お前と同じで 俺もラリってんの」

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表題作B.S.S.M.

井上凪央(なお)・高校生
相澤圭馬(けいま)・高校生

あらすじ

そんなのが 恋だなんて 思ってもみなかったーーーー

ちょっぴりやんちゃでアブナイことが大好きな、けいま。
口数少なく、大人っぽく、いつも何を考えているのかわからない、なお。
同じクラスの二人は友達同士…のハズなのに、
なぜか◯◯◯をこすり合ったり、なめ合ったりする間柄。
ある日、けいまの"友達"と二人で会った後に、
なおから「お前なんか一人ぼっちになればいい」と告げらたのは…?

思春期の恋とかラブに
リビドーのスパイスを効かせた
注目の"井戸ぎほう"最新単行本!!

作品情報

作品名
B.S.S.M.
著者
井戸ぎほう 
媒体
漫画(コミック)
出版社
茜新社
レーベル
EDGE COMIX
発売日
ISBN
9784863495227
3.5

(160)

(61)

萌々

(32)

(26)

中立

(14)

趣味じゃない

(27)

レビュー数
17
得点
525
評価数
160
平均
3.5 / 5
神率
38.1%

レビュー投稿数17

考えるより、感じろ!

発売当時、帯の“お前と同じで俺もラリってんの”が衝撃でした。
アンダーグラウンドな世界を日常に落とし込む手腕がお見事です。

読んでいて幻覚を見ているような、掴みどころのないふわふわとした感覚があり、それでいて常にぴんと張った糸のような緊張感が漂っている不思議な作品です。

単純明快なお話ではないので、分かりやすさや直球の萌えを求めている方にはおすすめ出来ないと思います。
しかしその分想像の余地があり、読後感も含めて面白い作品でした。

0

ブラッドシュガーセックスマジック

圭馬の可愛さと狂気のバランスが絶妙。凪央の冷静さと情熱のバランスも絶妙。井戸先生の丸っこくて黒目がちな絵柄がヒヤッとするシーンにエモさをもたらしてます。

圭馬が祖父の受け売りで、同級生に向かって恋をロマンチックに定義するところに、彼の真に純粋なところが見える。序盤は純粋さと狂気、やや狂気が勝ち気味で、そら凪央も気が気じゃないわよと。ただ圭馬がヤーさんの家と理解しているのかいないのか凪央が帰るなら帰れるあたり、凪央も圭馬を見捨てることはないのだろうなと思える。見捨てられないところが彼の背負った業かもしれないが。
登場人物について考えを巡らすことのできる程度に彼らの感情についての余分な説明が減らされ、読み取らせる漫画なのが井戸先生の作品を愛してやまない理由のひとつ。

圭馬が凪央に硬い椅子を買ってあげることだって、恋だよ。

0

ほんとうに大好きな作品

井戸ぎほう先生の作品は全て好きなのですが、中でも今作「B.S.S.M.」は1番心に残っています。

凪央は内向的で落ち着きがあり、派手ごとや危険を嫌う性格。一方で圭馬は社交的で落ち着きがなく、無知や好奇心も相まって次々と新しい物事に挑戦したがる性格です。この2人はこの性質の凹凸が見事はまってまるで親友のような関係でいるのですが、段々と互いの相手への思いの色の違いがはっきりし始めることによって、これまでのような”親友”という関係が段々と崩れていきます。

私はこの話から、「所詮人と人とは他人であり、それゆえ完全にわかりあうことはできないという人間の抱えるさみしさ」「それでも一緒に生きるために絶えず努力をし、手を伸ばしてわかり合おうとすることの美しさ」「そしてその原動力にあるものこそが恋」というテーマを読み取りました。運命的な話が多く好まれるBL界において、全くちぐはぐで、ある意味運命ではない2人を丁寧に描くこの作品の根底には、人間愛が感じられるような気さえします。もちろん、運命的な2人を描くBLも好きですが。

1番好きなシーンは、ラストの凪央の寝顔を見ながら圭馬が涙を一筋流す場面です。よく笑うようになった凪央。一方でよく泣くようになった圭馬。そしてその互いの変化に気づいている2人。このことからも、この2人が時間をかけながら相手のことをわかろうと努力してきたことが痛いほどに伝わってきます。余裕がなくて、一緒にいるだけで必死で、気持ちは抑えられなくて、でもその気持ちをうまく言葉にできなくて。この、かつて凪央が抱えていた”恋”を理解できたからには、2人はきっと強いよ、と圭馬に教えてあげたいです。

2

好きな人に感じる「さみしい」気持ち

開けた圭馬と閉じた凪央の違いが切ない。
他作品もそうですが井戸ぎほう先生は好きな人に感じる
さみしい気持ちを描くのが本当に上手ですよね。
圭馬が凪央のさみしさに気づいてくれて本当に良かった。
淋しいでも寂しいでもなく「さみしい」なのも好きでした。
途中までは圭馬の危なっかしさにハラハラしましたが、
凪央を想う涙にとても感動しました。
「その後」の2人の変わり方が良くて、
互いを大切にし合ったことで弱くなった圭馬と強くなった凪央の
2人の関係性が胸にじんわりと滲みました。

0

柔らかい空気の中に潜む切実さ

 こんな雰囲気の作品は初めてだなぁというのが、最初に抱いた印象です。とても不思議なストーリー展開でした。主に受けの圭馬の天然且つ無垢な性格が、その空気をつくっていたのだと思いますが、攻めの凪央もただ寡黙なわけではなく、心の中では圭馬に対していろんな激情を抱えていて、どちらも珍しいキャラに感じました。

 これは圭馬が、凪央が自分に恋をしていると気付くまでの焦れったい過程でもあったし、彼がそれに気付くまでの時間を存分に使って、凪央が彼への気持ちを整理する過程でもあったのかな。凪央は物語開始早々に圭馬に性的行為を施すけれど、はっきりとした言葉は絶対言わないんですよね。だから同性愛だなんて考えも及ばないであろう圭馬は、凪央との行為の本当の意味がいつまでも分からないままで。友達を増やすこと、友達と互いにメリットのあることを共有すること、それが圭馬の考え付く限りの最大の楽しみであり、凪央との関係は圭馬の中でなかなかその域を出ないわけです。

 終盤までずるずると曖昧な関係を続けた2人。だからこそ、クライマックスの涙を流し合う彼らが非常に印象的でした。正直、途中までこの作品で井戸先生が描きたいことって何なんだろうと分からずに読み進めていましたが、2人の涙を見て、感覚的ではあるけれどもすとんと理解できたような気がします。自分とはまったく違う価値観を持つ人間相手に恋をした時の複雑な心情が、井戸先生独自の表現で掘り下げられた面白い作品でした。

0

危うさと伏し目

このふたり、終始実に危ういです。
受けの圭馬くんは無邪気さと好奇心と行動力が剥き身のナイフのようだし、攻めの凪央くんの重さ暗さがハンパなくて、読んでる途中次の一コマでどエライ目に合うのではないかとヒヤヒヤしてました。
ヤバそうな世界ってのは平和な日常のすぐ隣にあって、二人ともそのボーダーラインの上ではなく、一歩二歩中に…
そこのセンスが絶妙です!持ちたくて持てる感覚ではないですねー素晴らしい。

絵柄もフリーハンド多めで勢いと強さ、ほんのりと温度が感じられて好きです。
特に曇り空と伏し目が秀逸。

あと、今作ではモブ的にしか出てこないのですが、この人の描く成人男性が皆どこかしらアレで妙な魅力にあふれてて心に残りました。登場人物の年齢高めの作品読んでみたいです。

1

賛否両論に納得しつつ、神一択!

カップリングがネクラ×ネアカってことで、読み終わってパッと思い浮かんだのがおげれつたなかさんの「エスケープジャーニー」なんだけど、あっちがメインストリームなら、こっちはオルタナティブってところ。
メインストリームもオルタナティブもマンガに使う言葉じゃないと思うけど、タイトルの「BLOOD SUGAR SEX MAGIC」ってレッチリの「BLOOD SUGAR SEX MAGIK」から取ってあるんだろうし、この作品にちょうどいいでしょうと。

で、タイトルがタイトルだからドラッグがもっとガッツリと絡んでくるのかと思ったけど、そこまでアウトローな感じの話ではなくって、10代特有のちょっと危なっかしい部分はありつつも、若者が真摯に純粋に真っ向から「恋」について考えている作品でした。
モノローグの表現が詩的だし、マンガとしては少しとっ散らかってる感じもあって、一読だと焦点の置きどころが少し分かりにくいんですが、分かると一気にキます(T_T)
私は迷わず神評価!
2人がそれぞれに泣いちゃうところがすっごくイイんだな〜。
思わずもらい泣きしてしまいました。

一番の賛否両論の分かれ目は、受けの〔けいま〕のキャラだと思いますが、個人的にはこのけいまのキャラさえハマれば、この作品は萌えきゅんの宝庫なんじゃないかなと思っています。
けいまは一見おバカっぽいけど、その分杓子定規な考え方をせずに何でも自分の頭でしっかり考えてると思うのですよね。
何に対しても誠実で、好感が持てます。
その誠実さが良くも悪くも明らかに悪そうな大人達(やまちょー先輩と日車さん)までをも引きつけちゃってる訳ですが。
見た目の幼さもあいまって、人から好かれるのが分かる何とも愛らしいキャラです。

一方の〔なお〕は、口数少なくてよく言えば落ち着いて見えるんだけど、言い換えれば10代らしさに欠ける、心の中に色々溜め込んじゃうタイプ。
こっちはモロ自分と同じタイプなんで見てて全く可愛げがないですね…
ただ心の中のぐちゃぐちゃ感が手に取るように分かるからストーリーには入り込みやすかった。
溜め込んだものがとうとう溢れ出して、泣きながらけいまに洗いざらい吐き出すところは、ちゃんと吐き出せて良かったねと。

終わり方もいいのですよ。
終わりだけど終わりじゃない、幕が下りない感じと言うか…
そんなとこも含めてのオルタナティブ。
最後のなおのセリフの先にある思いがきっとこれからもなおをグジグジぐるぐる悩ませるんだろうなぁ。
最初は危なっかしいけいまをなおが見守ってる感じだったけど、いつの間にかけいまがなおを見守る感じになってるのですよね。
この変化にもきゅんときます。
けいまはこのめんどくさい奴(なお)にこの先も色々苦労させられるんじゃないかな。

4

この作者ならでは

バカ可愛いのではなく、白痴悲しい話ですね。
圭馬が頭の弱い子みたいで。
これで貧しい家の子だったら相当悲しかったけど、そうではなく、学校に友達もいるし、よかった。

凪央は圭馬のことをかわいそかわいいと思っているのかと思ったけど、
どうやらもっと聖域的な感情を持っていそう。
身体を張った救世主くらいの存在なのでは。

とても観念的な、断片的なロードムービーのような話だった。
明確な希望やハッピーエンドはなく、
二人とも今は紙一重で転落するところを踏み外していないだけ、
という物悲しさが付きまとうのが、この作者ならでは、のように思う。

1

なおの恋は俺だったの?

この台詞が腹の底にギュンときました。

井戸ぎほうさん、例に漏れず今作も心理描写が複雑。(前作、前々作に比べたら易しいとは思いますが。)
台詞まわしや言葉遣い、コマ使いが独特で難解。1回じゃ理解できないので2回以上は必ず読みます。(読解力が無いせいかそれでもなんとなくわかった気がする、レベルです汗)
そしてちまっとした絵、ちょっとしたやりとり、服が可愛い。

結論としてはハッピーエンドなんですが終わり方がちょっと切ない。超幸せ~!という感じではなくエピローグのせいか切なさ残るラストです。
他の方も仰っているようにやまちょー先輩と日車さん、そしてその2人の関係は結局なんだったのか、ちょっと引っ掛かります。

けいまくん、ちっちゃくて華奢でやんちゃでみんなに可愛がられていてとにかく愛しい!マシュマロのシーンは可愛すぎて何度も見返しました笑

3

これも若さと言うものか

理の道筋より感覚で色々切り拓いている
作品です。
だから賛否が割れるのも当然でしょう。
かと言ってこの作品について行ける事が
是とは評者は思っていません。
若さの暴走と言うのは瞬間の出来事だからこそ
懐かしんだりも出来るものですから。

完全な虚構として捉えるなら闇もぶっ飛びも
大歓迎です。この作品には説教臭さが
混じっていないのでそういう意味では
愉しめるでしょう。
良い意味でなる様になって話が進んでいて、
そこから数ページ切り取ったら本になるだけの
濃い部分でした、と言う感じかなと。

2

最後まで読んで、読み返して

POPそうに見えて、なんだか居心地悪い色遣いのカバーイラストが目を惹くこの本。
井戸さんにしては病み感ないかもと思って読み始めると、、、
なんなんだ、この圭馬ってやつは?
話してておもしろいからって、見るからに怪し過ぎるおっさんから薬もらってやってみたり、一目見ればバレバレな危ないヤの付く偉い人の名刺もらった上に平気で家にまで遊びに行っちゃうしで、凪央からしてみれば、圭馬のすることも、そんな圭馬を好きな自分も、勘弁して欲しいって、泣きたくなるのも当然だよ。
で、この圭馬が、このままの圭馬だったら、多分しゅみじゃない評価なんだけど、この圭馬が、ある日、雷鳴のように、「恋」に、恋の意味に気づくのよ。
私は、視点が凪央から圭馬に移る3以降でがらりと評価が変わったけど、圭馬をどう受け止めるかでしょうね。

1

賛否両論分かれそうな作品

表紙のポップな印象とは一転して、毎度ながら病み感というか危なっかしいお話でした。
井戸さんの作品を読むと、改めて自分は病んでる作品はあんまり好きじゃないんだなーと思い知らされます。
個人的にBLにはそこまで複雑な繊細さとか主人公たち以外の諸々はあまり求めていないので。。
受けのぶっ飛んだ感じというか、無邪気に危ない道に突っ込んでる感じが苦手です。
あとリバ感も。。
攻めが受けのこと大好き過ぎて。。というお話は大好物なのですが、退廃的な雰囲気に浸れませんでした。

4

危うい少年と、その思い人。

表紙の絵を見ると、テンションが高く、明るくはじけたお話かなぁと予想しましたが、内容は割と淡々としていて、どちらかと言うと、ダークな感じが見え隠れする、切ないお話だと思いました。
お話の内容は、無口で大人っぽいなお×やんちゃで人懐こいけいまのCPのお話丸々一になります。受けのけいまなのですが、好奇心旺盛で警戒心が無いせいか、犯罪者やカタギじゃない人達と知り合いになります。取り返しのつかない世界に足を踏み入れて行くのではと、ハラハラさせます。そんな、けいまに思いを寄せるなお。幼すぎて、恋愛をいまいち理解していない、けいまに嫌だと思いながらも、思いは募っていきます。なおも本能では、けいまの事を求めてるとは思うのですが(においが好きとか)気持ちのズレは生じます。その結果の「お前なんか一人ぼっちになればいい」のセリフはすごく切なさがこもっていて、良かったです。ラストは、けいまがなおに「ピカピカの恋」をきっとあげる事が、出来るだろうなぁと思えるお話だったので良かったです。切ないお話が好きで、学生のCPがお好きな方は、きっと楽しめると思いますので、おすすめです!

4

一冊で終わるのが勿体ない。

危なっかしい話でした。
でもずっと読んでいたかったので、最後急ピッチで終わったような気がしてちょっと残念でした。やまちょー先輩と日車さんは一体何だったの?先輩(お爺さんにしか見えないが)にヤクみたいなものを渡されていましたが、あれはどういう意図でだったのか、とか。ああいう裏社会の人に一度関わったら簡単に逃してくれるのかな、とか。気になるところは多々ありました。お気に入りの一言で片付いているのに驚きました。犯罪者ホイホイな受けだな~と思いました。BLだけどその脇キャラのほうが存在感があって気になりました。
主役の二人がくっつくかくっつかないかをダラダラと繰り返して2~3巻続いても、買ってました。この独特な空気感に浸っていたいと思わせる作品でした。

4

きみに恋をあげたい

井戸ぎほうさん待望の新作は、元(一部)が同人作品で
そこから商業誌でプロットを練り広げられた物語ということなので
序盤の危険な香りがする描写にも、それ程抵抗を感じませんでした。

キケンなことにも興味津々、物怖じせず他人と仲良くなれる圭馬くんと
無愛想で人付き合いに不得手で不器用な凪央くんは
同じ高校で友人関係を築いてきたけれど、
あることが切っ掛けで体を触り合う仲になる。けれどその変化に伴って、
お互いの気持ちのズレやすれ違いが露わになり―

相手を大切にし合っているにも関わらず、
気持ちのズレやすれ違いに切なさが溢れ
それぞれが傷ついたり涙を流すシーンが幾つも描かれており、
それが非常に印象深く、心揺さぶられました。

圭馬くんは元々、”なおがさみしいのはかわいそう”とか
”親友になってやろう”という気持ちを凪央くんに抱いていて
無鉄砲なところもあるけれど、あらゆる場面で
凪央くんのことを大切にしていることが分かります。
だからこそ、凪央くんに『お前なんか一人ぼっちになればいい』と
言われた時の彼の傷ついた、すれ違いの描写には胸が痛みました。

一方の凪央くんは、圭馬くんに対し
置いて行ってほしくないと思いながらも
(自分を置いて)外へ向かっていくような圭馬くんのことが好きという
複雑な想いを抱いているのが厄介でいて、切ない。
圭馬くんがおじいちゃんのことで悲しい想いをしているとき
そばにいるのに慰めの言葉もかけてあげられないことに
涙を流すシーンには、圭馬くんへの想いの強さを感じました。

個人的なみどころは、何と言っても
圭馬くんが凪央くんの自分への恋心に気づく場面、
『そんなのが恋だとは思ってもみなかった』と
凪央くんに対して『ごめんね』と何度も謝るシーン。
ベッドに潜って涙を流す圭馬くんと、
出会った頃を思い出しながら、雨に濡れて帰ってきた凪央くんの対峙は
ぎほうさんならではの卓越した表現力で満ちています。

又、幸せにしたいのに幸せにしてやれないと泣く凪央くんに対し
彼を泣かせたりしない”ぴかぴかする恋をあげたい”、と
圭馬くんが強く願うシーンも秀逸で、期待以上の読み応えを感じました。

大切に想い合う気持ちを抱きしめるように重ねた後、
『その後』では、これまでと違ったふたりの成長が描かれていています。
旅行中、ふたりが体を繋げる描写は熱を溢れさせながらも、
迎えた朝には、静かで希望に満ちたラストシーンが用意されており
読み手にゆるやかな余韻を残していました。

全体的に会話もモノローグも多めで、無粋な説明がない分
キャラクターの表情や間合いで読み手に語りかけてくるので
追いかけるのがすごく大変なのだけど
それでも確かな読み応えと圧巻の表現力で溢れており、
どこを取っても、唸らざるを得ません。

序盤の同人部分の危ない描写を含め
怪しいやまちょー先輩と、穏やかだけど黒い稼業の日車さんという
非日常的キャラクターが登場しており(個人的には好き。特に日車さん♡)
読み手を選ぶ作品かも知れませんが、上記の理由から
選択肢は一択、”神”評価とさせていただきます!

9

なんだかハラハラする。だがそこがいい

親友同士の気持ちのズレやすれ違い、でもとても温かいお話でした。
圭馬(けいま・受)に想いを寄せる凪央(なお・攻)と、親友として凪央が好きな圭馬。
親友でクラスメイトの2人は、あることがきっかけで体の関係(キスやこすり合い程度)を持つようになります。
平穏だった友人関係に変化が生じ…というお話。

凪央(表紙左)はクールで内向的で真面目、圭馬(右)は明るく単純で素直という真逆の性格です。

ここから感想です。
友人がどうくっつくかという過程を楽しんで終わりではなく、2人の内面や成長がきちんと見れました。
達観するにはまだ幼い凪央と、繊細な感情を知っていく圭馬の成長などです。
2人の幼さにハラハラするし、甘酸っぱさを感じて凄くキュンときました。
私は凪央の淡々としたポーカーフェイスから滲み出る感情に引き付けられました。
相手が振り向かない切なさとはまた違う、恋する寂しさがとても伝わってきます。
そういう感情って男同士とか関係ないですよね。
なので凄く胸に迫りましたし、そんな凪央が可愛かった…

あと、受けの圭馬がなかなか厄介。
頭が緩く単純な性格で、何に対しても臆することがない怖いもの知らずな子猫みたいな子です。
圭馬が一番ハラハラしました。
タブーに対するハードルも低く、危なっかしいです。
だからこそ凪央との体の関係も抵抗がなかったのだと思いますが、凪央にしてみればとても歯がゆいと思います。
軽い気持ちでクスリに出をだすほどのバカだけど、”気づかなくてごめんね”という優しさを持ってるんですよね。
憎めないし、成長する圭馬にとても希望を感じました。

凪央は、圭馬の保護者的な役割でもなく、友人として同じ立ち位置なので2人がギクシャクする所などもハラハラしました。
凪央はまた傷ついてるんだろうなとか想像できてしまって、なんとも切ない気持ちになりました。w
でも、友達同士ってそうだったかもと説得力を感じます。

注意書きとしては、インモラルな描写が、インモラルなのにサラッと描かれてるので読む人によっては地雷だと思います。
私は”甘酸っぱい青春物”という頭で読んでいたのでどん引きしました。
でも、どん引きしたことよりも良かったことの方がはるかに上回りました。

登場人物がとても魅力的で、脇役も存在感があります。
ヤクザの幹部(日車)が出てくるのですが、もの凄く不気味でした。
この人の話読みたい!!!
妄想だけど、日車×凪央もとっても萌えた…

7

涙が美しい井戸作品

前作「やさしくおしえて」「夜はともだち」で井戸先生にはまり、今作も楽しみにしていました。

あらすじは簡潔に書く力量がないので割愛させていただき、感想をば。

井戸先生の描く話って、最初から中盤にかけては多少ボコボコがありつつも平坦な道をヌーーーーンっと行って、終盤で激坂がきて、最後はまたヌーンっていうイメージです(意味不明ですね)。激坂といっても最初の平坦と比べると"激"な感じで、特に衝撃的なことがあるわけではありません。
今作も最初はおクスリに手ェ出してその流れで擦り合ったりしつつも"友達"のまままったり進んでいき、終盤でけいまがなおの気持ちに気付き、友情→恋にちょっぴり進展します。
やっっと気付いてもらえてよかったね、なお!
けいまのあの性格となおの寡黙っぷりで、けいまは一体いつ気付いてくれるんだろう、言わなきゃ伝わらないんじゃないか、とややヒヤヒヤしておりました。

あと結局、やまちょー先輩と日車さんは何者だったのか...

ひとつ残念だなと思ったのが、帯の煽り文句?の「お前と同じで俺もラリってんの」というやつ。いやまー、インパクトとしては十分だと思うんですけど、個人的には裏表紙側の帯の「そんなのが恋だなんて思ってもみなかったーーーー」の方が断然ぐっときます。作中でもこの台詞のシーンは泣き顔が素晴らしくって好きでした。このシーンに限らず井戸先生の描く泣きが大好きです。

あとがきに、今作は同人誌が元で、第2話はまるまるそれだと書いてありました。
こういう風にコミックスの形にしてくれて手に取りやすくなり、有り難いなあと思いました。

13

この作品が収納されている本棚

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