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短編集。これまたおもしろかったです。
□ラ・カンパネラ
「賢くて 暗くて 偏屈で」
「自信家で 卑屈で 差別主義者で」
「照れ屋で さみしがりの きみが」
わかる。こういう人いるよね〜と思いました。
頭がいい人って嫌でも周りの人のことを頭悪いなぁと思っちゃうんだろうなと感じておりまして。
無意識に差別してしまう(ま、頭良くなくても悪意なくとも差別心はたぶん誰にでもあると思いますが)
それは人に伝わるし、うまく交流できず孤立しがちになる。
そういう人にも良さがあり、それを見抜き惹かれ好きになる話。
□サタデー,ボーイ,フェノミナン
─ぼくをさらってくれUFO
─地球に未練はない
イルミナシオンでは神様に語りかけていましたが、今回はUFO。
わかります。ここではないどこか、誰かにすがりたい気持ちがよく伝わる。
□食・喰・噛
「カレーが食べたい」と言われながらカレーを作らない。
ずっと食べに来てほしいからですよね。
相手が結婚する、明日発つと聞き
「カレーは明日だ 残念だったな」が切ない。
□表題作
席が近いよ、どこで告ってんの、そんなことまで言う?!と笑ってしまいましたが。
店員Aの「おれはこーゆー純喫茶的演出がしたいんだ‼︎」に爆笑しましたw
焦りながらもプロの接客スキルと店員同士の会話と、お客たちのやりとりがよく出来た喜劇で最高でした。
後日談で、店員Aが常連客に陰でマスターと呼ばれてるのもツボでした。
□ワンス アポン ア タイム イン トーキョー
伊丹というのは兵庫県伊丹市のことですね。
伊丹と羽田は空でつながってるもんねと思いました。
自分的ツボだけ書きましたが、それぞれ薄めながらしっかりBL的な展開がありよかったです。
旧版ではあとがきが収録されていたようですが、新装版ではなく。
先生のあとがき大好きなのでそれがめちゃくちゃ残念です。
※旧版を読んでの感想
◆魔法使いの弟子
同性に失恋した男性と、世間から遠ざけられている彼を見つけて勝手に仲良くなる女の子の話で、BLらしいシーンは一切ないのですが、それが逆に胸に刺さるというか、寂しさが余韻を引く物語でした。お互い魔法なんて存在しない、と相手を否定するようなことを言わない人間性も素敵。きっと女の子にはいろんなものの声が本当に聞こえていたんだと思います。描き下ろしでは、男性が新たな恋に前向きになっている姿が見れてほっとしました。
◆cu, clau, come 食・喰・噛
これも結末が切ないのですが、それまでの2人のやりとりがほのぼのしていて、束の間の幸せという感じが寂しいけれど温かい作品でした。料理で確実に胃袋も心も掴んでいた加保だけれど、元々ノンケの城尾を引き止めるには不足で。お互い泣くくせに、一緒にはなれないもどかしさにたまらなくなりました。
◆ジュテーム、カフェ・ノワール(表題作)
さすがの表題作です。1つの狭いカフェの中で描かれる様々な人間模様。ゲイとノンケの友人同士、妹思いの姉、付き合ってない男女、そしてカフェ店員の2人。最初は独立して会話しているのが、時々絡み合うと面白くて噴き出したり、ちょっと切なかったり。でも、この作品のカップル2組には、きっとこれから良い関係になるだろうなぁという明るい希望が持てたので、すっきりと読み終えられトリに相応しい作品でした。
あーすごい!
すごい感性‼︎
優しくて切なくて苦しくて……
いろんな感情が引き出されるし、共感もできる。
ヤマシタ先生すごいなぁー
【ラ・カンパネラ】
賢くて暗くて偏屈な友人を好きなタカイチのお話です。
恋に落ちる時の様子を〝心で鐘が鳴った〟と表現されています。
好きな子の着メロが鐘の音なので、
むやみやたらにメールしては鐘を鳴らすタカイチ。
本当は両思い?と匂わせるだけ匂わせてハッキリしない。
もっともっと読みたくなる二人でした。
【サタデー,ボーイ,フェノミナン】
「オカマ野郎」という言葉で好きな人から傷つけられた高校時代。
……消えてなくなりたい……と思う気持ちが切なくて泣ける。
傷付けられた友人と再会し、
これからもしかして……?と思わせるラスト。
憎たらしい友人の男が可愛く見えてしまうから不思議……
ヤマシタ先生マジックですね!
【こいのじゅもんは】
RPG好きな主人公との噛み合わない会話が楽しいお話しです。
「……かけていいよ おれに 恋の呪文」だって^^
可愛すぎて悶える!
【食・喰・噛】
料理上手な主人公の元に毎晩夕飯を食べに来る男。
その男が好きな主人公。
「3ヶ月で人間の細胞は入れ替わる」
だから、3ヶ月で別人さ……と言います。
その後、友人が突然結婚することに……
3ヶ月で忘れるという主人公と、
忘れないという男……
切なくて切なくて苦しかったです。
きっと両思いだった……そんな気がします。
【ジュテーム、カフェ・ノワール】
3組のテーブルと二人の従業員のお話です。
それぞれのテーブルには悲喜交々の人生があり、
その中で何故かうまくまとまるのが従業員二人という(笑)
自然と起こる客同士の掛け合いが楽しかったです。
〝涙の止まるコーヒー〟いいよね^^
【魔法使いの弟子】
ヤマシタ先生の作品に登場する女の子が大好きです。
この作品は、男に手酷く振られたゲイの男と高校生?の女の子の交流を描いたもの。
女の子が魔法という名の優しさで、
過去の恋の呪縛から男を解き放ち、新しい恋に向かわせます。
とても切ないけど前向きにれるお話でした。
【ワンス アポン ア タイム トーキョー】
高校時代の恋を引きずる車掌。
人の行き交いにドラマが見える電車で見かけたのは、
かつて恋した男。
これから止まっていた恋が動き出す?
と思わせるラストに胸が温かくなりました。
各話の描き下ろしがまた面白くて、
なんであの切ない話を最後の最後に笑いにしちゃうの?
という、いつもの展開(笑)
それがまた、重かった心を軽くしてくれるのです。
とにかく、全てが素晴らしかった!
何度でも読みたくなる作品集でした。
「BL作家の心に残る一冊」という本でためこうさんが推してるのは、この「ジュテーム、カフェ・ノワール」に収録されている【ONCE UPON A TIME IN TOKYO】で、この本何度も読んでるくせに思い出せなくて、いつか読み直そうと思いつついつも後回しに……。
で、久しぶりに再読してみたら、あ〜!この話か!と。
地方から上京し、京急の車掌になった男が主人公。
勤務中の電車に、大好きだった同級生が乗ってきて……。
毎日、大勢の乗客による人間模様を見続けてきた男が、傍観者ではなく主人公になるんだけど、なんともいえない余韻を漂わせた終わり方が粋で、そして切ない…….
なんでこの話を忘れてたんだろう?と思ったけど、他の話が好きすぎるからだった。
一番好きなのは、【食・喰・噛 cu,clau,come】
好きなノンケ男のためにせっせとご飯を作るゲイのお話なんだけど、めーーーっちゃ切なくて切なくて…好き。
美味しい飯にありつけるなら、あいつの気持ちなんか知ったこっちゃねーよ!みたいな酷いノンケではないと思うんですよね。
もしかしたら、少〜しずつ少しずつほだされていたんじゃないかな。
もしノンケ男の父が倒れなかったら、恋愛関係に発展してた可能性があったかもしれない。
あいつが作るうまい飯を食べてる時が一番幸せだなぁ〜。
でもやっぱり俺、女が好きだしなぁ……でも……みたいな堂々巡りが絶対あったからこその、あの涙なんじゃないかなと。
何度読んでも切ない……。
他にも印象的な短編が詰まってますが、特に表題作は秀作で、とにかく読んでみて!の一言です。
新装版へのレビューをちるちるに促されたのでこちらに。持ってるのはBL漫画っぽくない表紙の旧版です。
友人でいたいのに、友人関係を壊したいような人たちが沢山出てくる短編集です。
「魔法使いの弟子」が好きでした。BL漫画の真中心からはだいぶ遠い作品です。ヤマシタトモコ先生らしい、絵本作家でゲイのおじさんと女子高生の組み合わせです。
BL漫画にハマりたての頃、先生の作品を立て続けに読んだので、必ずしも主役達は幸せにならない物語を沢山摂取することに。少数派なんですよね、そういうお話は。でも永遠の愛よりよほど自然なことだと思うので、そこも好きです。