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表題作三色混ざれば黒になる

羽沢辰吾,28歳,チンピラ
巽,24歳,ヤクザ組長の長男

同時収録作品三色混ざれば黒になる

智巳,巽の弟
巽,24歳,ヤクザ組長の長男

あらすじ

奪い合われるヤクザの息子。
その愛はどちらの手に…?

組長の息子・巽は跡継ぎながら、その立場を受け入れられず、
放蕩な日々を過ごしていた。

「愛され、満たされたい」
そう願う巽に甘く淫らな快楽を与えてくれるのは、不良集団のリーダー・辰吾。
一方、家族としても、それ以上にも無償の愛を注いでくれるのは弟の智巳だった。
巽の切なる欲望を満たすのはどちらの男かーー。
そして愛されたがりが見つけた答えとは?

前作『バラ色の時代』スピンオフ作!

作品情報

作品名
三色混ざれば黒になる
著者
恋煩シビト 
媒体
漫画(コミック)
出版社
祥伝社
レーベル
on BLUE comics
シリーズ
バラ色の時代
発売日
ISBN
9784396783747
3.3

(63)

(13)

萌々

(13)

(26)

中立

(5)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
13
得点
200
評価数
63
平均
3.3 / 5
神率
20.6%

レビュー投稿数13

かんたんには理解しがたい愛の在り方

半グレ集団のリーダーの辰吾と実弟の智巳、
二人の男の間で揺れ動くヤクザの跡継ぎの巽。

一向に満ち足りることのない心。
求めていたのは男の腕に抱かれること、愛されること。
辰吾に抱かれて巽はそのことに気がついてしまう。

辰吾は優しく、孤独な巽の唯一の理解者のように思われた。
けれど、巽が辰吾を抱きしめる背中でこっそり暗い笑みを
浮かべる辰吾にぞわりとした。

そして、そこから始まる辰吾の暴力。

辰吾の元から逃げ出してきた巽を弟の智巳は優しく抱く。
傷ついた巽を癒し、強さも、愛も、求めていたもの全て与えてくれる。
そんな智巳の無償の愛こそが自分の求めていたものかもしれない、と惑う巽。

けれど、そんなとき、父の愛人の右介に人それぞれの愛の在り方を
諭されて自分の心が向いているのが誰なのか、気がついてしまう。

巽が衝動的に向かった先は辰吾の元だった。
純粋に心が、体が、辰吾を求め、ただ辰吾に会いたかった。

そんな巽を試すかのように暴力をふるい、
残酷な笑みを浮かべながら乱暴に巽を抱く辰吾。

辰吾のそれは暴力と痛みを伴う不器用な愛で
そういう風にしか誰かを愛せない、孤独を抱えていた。

結局、巽はそんな辰吾を受け容れてしまいます。
求めるではなく、愛を与えることで満たされようとして。

正直、本編を読み終えた時点ではこの結末が
ハッピーエンドなのかはわかりませんでした。

だけど、描き下ろしの最後に嬉しそうに微笑む巽を見て
ようやく巽にとってはこの結末が幸せなものだと思えました。
すごく歪な愛情だとは思うけれど。

巽も辰吾も智巳も、その心情を理解しようとしても一筋縄ではいきません。
読み込んで、考えて考えて、そういう愛もあるのか、
と強引に飲み込むことにしました。

みんな愛に飢えていて、しんどかったな。
辰吾は巽から愛されることが出来たけれど、智巳はどうなるんだろう…

はじめは智巳の兄への執着は嫉妬だと思っていたけれど、
兄を恨みながらもそこには家族愛や性愛の情も込められていて、
母親から与えられなかった愛を兄に求めていたのかな。
そう考えると、巽の選択ってすごく残酷です。
どうか、今度こそ周囲に認められ、自分の居場所を見つけられますように。

前作『バラ色の時代』を未読のまま本書を読んでしまったので、
突然の右介の登場に誰?となりはしたものの、読んでいなくても
特に本作を読む上では支障は感じませんでした。
読んでいた方が楽しめるとは思います。

0

名前からも。

うーん、業を感じますね…
ヤクザの組長を約束されているのに、違うものを求めている巽。
一心に、兄の巽を好きな智己。
半グレの辰吾。

これ、読んでいて気づいたのが名前。
巳と辰の間の方角が、巽なんですね。この名前からも3人の関係性がわかる。

読み終えた感情は、複雑です。闇の中だとすがるものは、光だけじゃないのだなぁと。酷くされても、巽が辰吾に引寄せられて行くのは何でなんだろう?
もちろん、一心に愛してくれる智己も弟ですから明るい光に何か薄がかった感じですしね。
何を持って人は満たされるのか、わからなくなりますね。
巽と智己の父、情人の右介が登場していてちょっと安心しました。こちらは、穏やかに過ごして居るのでしょうかね?

読み終えたけど、決してすっきりしません。でも、白黒つけなくていーんですよね。きっと。

0

複雑な愛の形

一気に読んでしまいました。
『バラ色の時代』の大和の子・巽と智巳が登場します。
ガチ兄弟だけど色々してます。

しかし、巽が選んだのは、半グレの辰吾。
この辰吾が人を信じられない男で、
巽にひどいことをするのだけど、
巽は辰吾を愛しています。
全身全霊かけるような巽の愛で、少しは辰吾も変わることができたのかな?と思う描き下ろしに救われました。

智巳は可哀想でしたが、下の者に慕われているのは次男の智巳です。
きっと、大和の跡を継ぐのでしょうね。

しかし、菊池も右介も老けましたね……
大和が出てこなかったのは残念でしたが、
別宅で右介と幸せに暮らしているのかな?
海外にはいけなかったのかと思うと、少し寂しいです。

1

自ら与えたいと思う愛の尊さ

 『バラ色の時代』のスピンオフだったんですね。まさにあの父親にしてこの息子あり。妻がいながら男の愛人をつくり、その愛人に対して傍若無人に振る舞う父親がずっと反面教師のような存在だったのか、自己主張が控えめですべてに受け身な巽。一見父親とは正反対のように見えるけれども、最終的に愛に生きることを決断したのは父親譲りであるとも言えるんじゃないでしょうか。父親は家族を捨てまではしなかったけれども、人生の本当の伴侶には愛人を選んだ。私にはこの2人が、どうしようもなく愛なしには生きられなかった似た者親子に見えました。

 巽が愛した辰吾は最後まで巽を痛め続けます。モブ姦は萌え要素になるけど暴力にはあまり萌えないので、萌えたとは言いにくいのですが、ストーリーには引き込まれました。弟はこんなに優しく愛してくれる、でも、巽が求めるのはそれではないのです。被虐嗜好があるから物足りないとかいう話でもなく、巽が自らその孤独を埋めてあげたい、愛したいと思うのは辰吾ただ1人なんですよね。相手が優しいかどうかで好意が変わるわけじゃない。穏やかに愛してくれる人を自分も好きになれたらいいけど、そんな簡単な話じゃないから恋は苦しい、でもだからこそ愛の尊さが増すんだとも思います。辰吾が巽を愛していることはちゃんと理解できました。お互い納得するまで、とことん相手の愛を確かめればいいと思います。

2

拒否反応も致し方ない

こちらを先に読んでしまったので、「どういうこと?」という点がいくつかあったものの、特に支障なく読めました。
むしろこちらを先に読んでから「バラ色の時代」を読んだ方が心がそこまで乱されずに済みます。地雷多めの方にはその順番がおすすめです。

ヤクザの後継兄弟とその母、それにチンピラ崩れの男の話です。
父に似ている長男の巽を溺愛する母。
自分を愛してくれる「誰か」を探し求める巽。
兄に執着する母に認められたい弟の智巳。
自分を受け入れてくれる「誰か」を手に入れたい辰吾。

まあ、とにかくすごいです。だいぶネタバレしてしまいますが、
殴る。友人たちに輪姦させる。実兄弟。
この3つのうちどれかひとつでも地雷の方にはおすすめしません。
それだけ激しく相手を傷つけなければ実感できないものって何なんでしょうね。そこまでに至る事情は描かれていないので、なぜ辰吾はそんなにひとを試すのかは不明です。
ただ巽の方は巽に執着しているかのように見える母が、巽ではなく巽の向こうに見える父の面影を追っているだけだからというのは分かります。だからこそ父が継いで引き渡していった組を継ぎたくない、父の人生のトレースはしない、ということなのでしょうね。

本編同様、誰もが不幸です。そして本編同様、欲しいものを手に入れたひと、手に入れつつあるひとの姿が最後に描かれています。

だけど本編を読んでみると本編ほどすっきりはしません。おそらく辰吾の試し行為の過激さや、弟の不憫さに目がいってしまうからでしょうか。

恋煩シビトさんの作品を集中的に読んでいるところですが、「萌え」はない作品が結構ありますね。人間の業の深さや狂気をテーマにされているので、読んだ後に顎をさすりながら「なるほど…」となるような作品。
こちらもそういう作品でした。なるほど…。

3

難しい…。

この作品は感想をまとめるのが難しいです。
いつもまとめようと思っては挫折…なので思ったことそのまま書きます。

もう納得いくとか納得いかないとかはさておいて、受けが弟ではなくそういう攻めを選んだのだから仕方ないね…としか言いようがない気分になります。ちょっと無力感に襲われるというか、外野があれこれもはや言えない…みたいな。
いくら忠告してもいくら警告しても耳を貸さず、あの人には私しかいないの…あの人を愛せるのは私しかいないの…とDV男に舞い戻ってしまうようなDV共依存カプを見ているような気分になるのです。

ただし攻めがDV男というよりも、サイコパスに思えるんですよね。DVだけではなく受けを他の男と共有して輪姦も楽しんじゃったり、半グレ集団のトップとしての制裁を楽しんでいるのとかを見ると。

自分でも何故暴力を振るうのか、何故酷い仕打ちをするのか自分自身も判らないがこれは性(さが)であり 持ってうまれたもの、自分では選べない、自分から逃れられないという絶望感を抱いている攻め。
それをこいつはこういうふうにしか愛せないと理解して全てを受け止める受け。

相手のどんな性があってもすべてを受け入れて丸ごと愛するという究極愛を描いているのだと思いますが、いつか殺されないようにね…としか言えません。あ、殺されてもいいくらい愛してるっていうやつなのかな。
ガチ兄弟をあまり好まない私なのに、ガチ兄弟同士でくっついたほうがまだいいのではと思えるような歪みが読む人を選ぶと思います。

表題作に関しては中立ですが、「バラ色の時代」の受けが登場する歪んだ普通じゃない薔薇について語るシーンが好きなので萌で。

4

ちょっと変な薔薇でも可愛い

地雷源を突っ走って行く感覚
暴力、モブレイプ、近親相姦…
アウトローな道の先に純愛が見える
愛の伝え方、考え方は人それぞれだなって
地雷を踏みすぎて感覚が麻痺した人は読んでみては。

2

共感しづらい

「溺れる」が大好きなので、恋煩先生の今作も読んでみたが、ストーリーに入ることがでなかった。受けと弟ともう一人の攻めの3Pの話。受けと弟とももう一人の攻めとも、情があるより体の関係に流されているだけのように見える。

1

父性を求めて

『バラ色の時代』スピンオフ。大和の息子、巽が主人公です。この作品を読み、作家さまの本懐が遂げられたかのように感じました。『バラ』のサイドストーリーというより、『バラ』を描くことでその下に眠っているテーマの根幹が浮き彫りになったというか…。そのテーマを描ききるためには、ヤクザという特殊な世界でなくてはならなかったということも。

先のレビューでみみみ。さまがご指摘されているように、わたしもこの作品には『シュガーダーク』に近いものを感じていて、主人公たちが求めている愛の形とは一体どういうものなのかと読み返す度に考えていました。

ヤクザの長男である巽は、跡を継ぐことにためらいを感じている。家庭では父親不在。彼は半グレで暴力的な辰吾と、彼から巽を守ろうとする実弟、智巳の間で揺れます。

『シュガーダーク』の亜希生がふるう暴力の背景には、実兄への思いがあった経緯が描かれていますが、辰吾については何も示唆されていません。彼はただ「愛する」ことができれば自分を受けいれられるはずだと巽に語り彼を試します。他方、智巳はそんな辰吾から巽を守るといい、兄の愛を乞います。それは近親相姦の様相を呈していますが、家業を存続させるため、一族のために奔走している自分を巽にだけは認めて欲しいという、智巳なりの歪んだ家族愛の発露のように感じました。

巽は辰吾の温かくて大きな手に、ずっと彼が求めていたものを見出すのですが、わたしはそれを父性の象徴として受け取りました。巽が智巳の甘やかしに近いような包容力に満たされず、むしろ理由なく暴力をふるう辰吾に惹かれるのは、父親の望みに応えられない自分を罰してもらいたいという隠れた欲求を満たしてくれるから。今作で辰吾が振るう暴力は「性(さが)」だと表現されていますが、暴力で相手を服従させることが、一番欲していた頃に得られなかった親の愛情を求める哀しい代償行為のように思われてなりませんでした。辰吾が暴力をふるう行為と、巽の自罰行為はどちらも根っこが同じだからお互いに惹かれたのではないのか、と。共依存のような辰吾と巽の関係は、(父)親に存在を認められたいという欲求の表裏を二人のキャラクターに分けて描き出された、愛を求めて彷徨う渇いた者同士。しかしただお互いから搾取し合うだけでは不毛な関係で終わってしまいます。

巽も辰吾も智巳も、愛を求める相手からは自分の望む形で与えられることはありません。一方的に愛を欲しがるだけでは、行き着く先は出口の見えない闇(黒←タイトルの象徴)にしかならないけれど、もし相手の望む形で自ら愛を与え続けることができたら、何かが変わっていくかもしれない…。物語の最後、愛とは与えることだと巽は気付き、その姿を見せつけられた智巳は兄以外にも自分を支えてくれている人たちがいることに初めて目を向けます。エンディングで二人が何かを乗り越える希望を感じさせてくれているんですよね。また、辰吾についても描き下ろしで少し変化が見られ、作家さまによってしっかりとフォローされているのが窺えます。

初めて読んだ時は作家さまの作風ゆえに、筋だけを追っただけでは奥に秘められているテーマやタイトルの示すところを汲み取ることが難しかったのですが、改めて三人のセリフとモノローグをきちんと辿ると、「愛」の答えはちゃんと出ていました。

シビト先生が描くダークな世界観に惹きつけられてやみませんが、ここ最近は先生のシュールなコミカルテイストのお話に飢えつつあります。次はどんなお話を読ませてくれるのか、とても楽しみです。

9

流されすぎ…

『バラ色の時代』は登場人物たちの心情が丹念にトレースされていて、見開き・大コマを使ったシーンは映画みたいで余韻が残りました。

今作は『バラ色の時代』ヤクザ組長・大和から組を譲られた子供たちの話。
長男の巽は組を背負わなきゃならないのに、覚悟が決められず逃げている時に辰吾と出会い、優しく愛してくれる辰吾に溺れる。
でも辰吾は愛する相手に酷くしたい性癖があり、巽はDV・輪姦されまた逃げるように組(家)に戻ると、今度は弟・智巳に流されるように抱かれる。
最後は、流されるように生きてきた巽が自分の本心に気付いて行動を起こすけれど…

逃げ場が欲しい巽が辰吾に溺れてしまうのはわかるけど、いくら傷ついていたからって父母が同じで一緒に育ってきた弟にそんな抵抗も無く抱かれてしまえるもの?
姐さん(母親)が組を背負う覚悟を決めてる智巳を差し置いて、兄の巽に執着してる理由もいまいちわからず。大和に面差しが似てるから?
智巳も実の兄ってハードルを越えたうえでの行動なんだからもっと執着を見せても良いんじゃないの?アッサリ身を引きすぎなんじゃ?
智巳が身を引く決心をするシーンも、さほど盛り上がってるようには見えず…

切れ長の瞳・目線ひとつで感情を表す絵はすごく好きだけど、今作は登場人物達の行動理由に説得力がなくて、はてなマークばかりが残りました。

父親・大和はまったく登場しないけれど、愛人・右介が自分たちのことを巽に語ります。前作では綺麗で中世的だった右介が、年相応なおじさんになってます。
前作のラストシーンで大和と右介の未来は見えていたけれど、年を重ねても一緒にいるんだっていうのが実際にわかったのは嬉しかった。

3

ひたすらに、愛の物語

「バラ色の時代」のスピンオフということで、前作の次世代の話になるのかな?
ずっと積み本にしてたから、そんなことすっかり忘れて読んでいて、前作の右介が唐突に登場したので関連作だったと気付いた。

お話は、「愛することの覚悟とは」っていう、その事だけに対して極めて突き詰めたラブストーリーで、まあ、ぶっちゃけ、徹頭徹尾やりまくっているけど、エロのためのエロとは趣が違う。
お話の舞台も、「愛するということ」だけに焦点を当てるために、ヤクザの家だの半グレのたまり場だのって言う、ある意味極端な舞台を選んでいるのかなと思う。
逆に言えば、愛することのためだけに、これだけ腹をくくるのには、産まれながらのヤクザの血位ないと、説得力がないってことなのかな。

2

愛って難しい

「バラ色の時代」のスピンオフで、なおかつ、シビトさんお得意の三角関係モノということで、単行本化を楽しみにしておりました。

主人公は大和の長男〔巽〕
そしてお相手2人のうちの1人が実弟の〔智巳〕
タブーを孕む三角関係です。
オマケに残るもう1人はサディストですので、描かれる愛の形はまー歪んでいます。
普通ではない。
シビトさんは過去に「シュガーダーク」という作品を発表されていますが、率直な印象はあの作品を更に掘り下げた感じ。
ただ単にシビトさんが好きなものを描くとこうなるのか、それともあちらで描き切れなかったことがあっての今作なのかは分かりませんが、テーマや主人公の問い掛け、結末など、どこをとってもシュガーダークがちらつきました。

「愛ってなんだろう?」
「普通ってなんだろう?」
この二つの問い掛けはシュガーダークにも出て来ているし、これまでのシビト作品にも何度も出てきているから、シビトさんにとって答えの出ない永遠のテーマなんだろうと思う。(もちろん私にも分からない)
そして今作は今までで一番ストレートな表現で描かれていることもあり、読者の解釈に任すような空白は減り、シビト流の黒さがより一層不気味に渦巻いています。

正直、読み返しても読み返しても評価が定まりません。
あぁシビト作品だなと思う、本質を突いてくるダークさは好き。
そこを気に入って読んでいる作家様ですし。
ただ読後にもやっとしたものも残る。

サディストって私には解らないんですよ…
暴力との違いが解らない。
たぶんそう思われることをシビトさんも理解していて、だから作中しつこいほどに「これは性(さが)だ」と繰り返される。
普通の人には理解されない性癖を持って生まれてしまった人の孤独について描いたものですよと。
普通の人から見たら普通じゃなく見えるかもしれないけど、自分を理解してくれる人を求める気持ちは誰だって同じだし、仕方がないとは解っていても理解されないことは孤独なんですよと。
辰吾は自分を受け入れ寄り添ってくれる巽という存在を手に入れることが出来て良かったと思う。
描き下ろしに登場する辰吾は穏やかな表情をしているし。
けれどマゾではなさそうな巽はこれで満たされるんだろうか?
そんな問い掛け自体がナンセンスなことも頭では解ってるんですけど、そう問い掛けずにはいられない私はやっぱり「普通」なんだろうな。

好きとも嫌いとも決めかねての、消去法での「萌」です。

7

ダークな世界観は健在ですが…

『バラ色の時代』のスピンオフで、前作攻めの息子が主人公。
攻め二人に接点はほぼなく、主人公が二人の男の間で揺れ動くよろめきドラマといった印象の作品です。

あらすじ:
ヤクザ組長(前作攻め)の息子で跡取りの巽(受け・表紙中央)。
組を継ぐ立場を受け入れられない巽は、チンピラの辰吾(攻め・表紙左)と身体を重ねる。
弟・智巳(攻め・表紙右)の心配も省みず、辰吾にのめり込んでいくが…。

巽は孤独な幼少期を過ごしたためか、常に愛に植えているような繊細な人物。
偶々一緒に寝てくれた辰吾に恋をし身体を重ねますが、ある日、辰吾は巽を仲間に輪姦させこれを撮影&殴打。

ボロボロになり帰宅した巽は、自分を労ってくれる弟の智巳に求められるまま、今度は彼と関係を持つように。
優しい智巳に癒やされながらも辰吾のことが忘れられず…という三角関係。

右介(前作受け)の助言により愛されるより愛することの大切さに気付く巽ですが、この展開に正直あまり説得力を感じず。
殴られようが弟の前で犯されようが耐えることを真の愛とするような作品世界に視点の偏りを感じてしまいました。
ダークさが魅力のシビト作品とは言え、今回は登場人物のバックグラウンドがほぼ全く描かれないため、ただのDV共依存症カップルのように見えてしまうのが残念。

似たような関係でも長年連れ添った情のようなものが感じられた前作と異なり、本書はダイジェスト感が強くストーリーに入り込めませんでした。

父親の代わりとは言え母親に大事にされ、弟にも慕われていた巽がそこまで愛情に飢えていたのはなぜか?
わざと酷いことをして恋人の愛情を測る辰吾はどのような人生を歩んできたのか?
このあたりを掘り下げてくれればもっと引き込まれる作品になったんではないかと思います。

ラストと描き下ろしの穏やかな二人は良かったですが、それまでの過程にハマれなかったため、物足りなさの残る読後感でした。
絵や雰囲気は好みなので萌寄りなのですが、モヤモヤは拭えなかったので中立評価で。

ちなみに本書に大和は登場せず、右介は相変わらず愛人で、大和の妻は寂しげ。
前作から数年後の作品という意味でもちょっと物足りなさを感じてしまいました。

11

この作品が収納されている本棚

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