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表題作Season

松岡末治,金貸し,受の家の元使用人
猪瀬東,17歳~,病弱な母と二人暮らしの高校生

その他の収録作品

  • 咲く春
  • とける夏
  • 結ぶ秋
  • 巡る冬(描き下ろし)
  • あとがき

あらすじ

ある冬の寒い日、病弱の母と二人暮らしの猪瀬東の家に、一人の男が訪ねてくる。
昔の猪瀬家の使用人で今は金貸しをしているという松岡末治は、困窮する母と東に援助を申し出る。
最初は不信感を抱く東だったが、松岡はかつての恩を返したいだけだと告げる。
そんな松岡に徐々に惹かれるようになる東。
しかし、松岡はいつまで経っても一線を画す態度で…?
生まれも育ちも異なる二人が共に巡る春夏秋冬

作品情報

作品名
Season
著者
麻生ミツ晃 
媒体
漫画(コミック)
出版社
大洋図書
レーベル
H&C Comics ihr HertZシリーズ
発売日
ISBN
9784813031079
4.4

(199)

(122)

萌々

(56)

(17)

中立

(2)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
21
得点
887
評価数
199
平均
4.4 / 5
神率
61.3%

レビュー投稿数21

何度読み返しても良い味わい

麻生ミツ晃先生の古い作品ですが、私は好きで何度も読み返しています。攻めの松岡の硬派な感じと、いつまで「坊ちゃん」と東を呼んでいる所や、それに対して、身分なんか気にしないで、もっと打ち解けたい、近づきたいと、積極的に振る舞う受けの東の2人が好きです。
昔の恩を返したいという松岡と、松岡の恩人である東のお話。東は昔、何の恩があるのか思い出せないまま、献身的に交流してくれる松岡に惹かれていきます。
seasonという題名のとうり、四季を絡めて話が進んでいきます。どの季節の話も心に染みますが、雪の日に出逢って、雪の日に再会して、最後に雪の日で話が締めくくられているのは麻生先生の構成の素晴らしさを感じました。
昔、松岡とどんな関係があったのか、東が気づいた時のシチュエーションが本当に素敵で、感情が溢れました。
松岡も東も、お互いに相手の人間的価値を噛み締めながら、そこから恋愛感情に高まって行くのが最高によかったです。

0

ストーリーテラー

Kindle Unlimitedで拝読。お名前はよく見かける方ですが初読み作家さま。

絵柄が自分の好みではなく、少し古めな繊細な線で、身体がかなり抽象的に描かれているので、ちょっと読み辛かったです。表情もイマイチ読み取りにくい気がして残念でした。

しかし、お話はとても面白く、しっかりとドラマを感じさせてくれるものでした。センスあるモノローグや台詞にハッとさせられました。

こんなにも長く深く、お互いを想いあって求め合う関係は運命なのでしょう。素敵な作品でした。

0

人生のお話

麻生先生のお話は全部読んでいますが、1位、2位を争うくらい好きな作品です。
けれど、なんだか全体に漂うそこはかとない痛い空気感に、どうも簡単に再読できない心境にされてしまって普段はなかなか本を開けません。
そのくらい、私の中では一遍一遍が心にくるものがあって、重くて切ないのに、大好きな作品です。

初めの春のお話では、坊ちゃんの幼さが目立っていたんですよね。
麻生先生の受けちゃんは、幼さゆえの傲慢さがちょっと行き過ぎてる時と許せる時とで半々でして(笑)
読み始めは、坊ちゃんに対して、
この子、受け入れられるかなぁ、なんかやらかさないかなぁ…う〜ん…みたいな気持ちだったんですよ。
けれど、読んでいく過程での坊ちゃんの成長は目覚ましかった。
この子の純粋さや、傲慢にも見える綺麗さは、多分松岡を救ったんだと思うんです。
いつだって、心底救われると信じきっている(自分が坊ちゃんを信じきっていることにすら気づいていないんじゃないかな)のは松岡の方。
松岡は世間から坊ちゃんを守っているけれど、坊ちゃんが居なければそもそも松岡は誰にも救われていないわけで、守られていないわけで、人間にもなれなかった訳で。

だからこそ、坊ちゃんが初めて松岡と会ったシーンの、「だいじょうぶ?」は涙無しでは読めませんでした。

もうそこからの坊ちゃんは健気健気健気の健気三昧…一途に一途に松岡が大事だって全身で叫んでいるようでした。

また、お母さんの主治医だった先生が再婚相手になるんですが、その方もとても良い方だった。
言葉のチョイスが、本当に素晴らしい。
雰囲気、空気感が素晴らしい。
そもそもそんなキャラクターを創り出せる麻生先生が素晴らしいんですけれども(笑)

そして救われ続けている松岡。
松岡の苦しみも理解出来るんですよね。
夏のお話で坊ちゃんが刺されて寝込むシーン。
松岡は病床に伏せる坊ちゃんに、人を殴るところを、坊ちゃんに見られたくなかったなァって言うんですけれども。

もう、泣くよ…
なんなんだこの人たちは…

時代や、生まれや、自分では先に選ぶことが出来なかったもの、そして、そこから、後悔しながらも選んだ人生、生きかた、自分よりもずっと大事なお互いの存在。

そういうものが全部綺麗に折り重なって、切なさが止まりませんでした。

もう、本当に本当に、好きだ、としか表現出来ないくらい、大好きな作品です。

ぜひ、未読の方は手に取っていただきたいなぁと思いました。

0

一途な恋は美しい

いいお話でした。

先生がテーマとされていた"かかる手間を惜しまない恋"がよかったです。
年月がかかる分、季節も巡るわけで。

坊ちゃんが素直でかわいらしく。
松岡がいい男で。

松岡の坊ちゃんや奥様への話し方がとても丁寧で、思わずいいお声で脳内再生されるほどでした。
セリフもよかった。

が、裏というか本物というか、ヤバい仕事をしてきた松岡は決してお上品な男ではなく。
学校にも行っていなかったとは。
そんな風に思えない坊ちゃんたちへのあの物腰はやるわねぇ〜と思いました。

2人とも危険な目に遭うけれど、その後、松岡は足抜けできて、田舎で一緒に過ごせるようになってよかったです。

2人とも一途にずっと思い続けるさまがとても好きです。

ただ、萌えとか、我慢して我慢してのクライマックス〜というのは私はあまり感じられず。
紆余曲折ありながら、いいお話を読ませて頂いたなぁという感想です。

0

長い年月と季節をかける物語

たった一度の恩が生まれて初めて触れた人間の善意できれいなところ、それだけが生きる支えになるほどの。

苦しい時代の厳しい生活の中の再会。
生き抜いてお金を集めて、恩人に会いたいために。

流れる時間が長くて、環境も変わって、子供だった二人が大人になって再会して。

季節が流れてどの季節も一緒に思い出がありこれからはずっと一緒にいられる終わり方でしたね。

やっと安全な地で平穏な暮らしを手に入れたのでしょうか。

松岡の表と裏の顔。それでも東だけがきれいな心の支えで生きてこられて。
東が松岡に反発しながらも恋慕し勝手に嫉妬してまた距離ができて。

松岡が東を見つけ出し見守り二人が愛しあえて良かったです。

この不自由な時代ではものすごく大変なことだったでしょうに。

田舎でよそ者で男同士で厳しいでしょうがこれからは平和に暮らして欲しいですね。

0

大河か朝ドラのようなスケール

淡いパステルカラーの表紙の印象とは裏腹に、濃い内容でした。
BLというよりも、超大作の人間ドラマを見ているような感覚を覚えた作品です。

経営が傾いても呉服問屋であり続けようとした父を亡くし、借金と病身の母を背負った東のもとに、昔、奉公人だったという松岡という男が訪ねてきます。
金貸しになった松岡は昔の恩返しと言って援助を申し出るものの、松岡に覚えのない東はその申し出を拒否して…。

という始まり。
着物を着ているひとと洋装のひとが入り混じっている時代のことで、電話もメールもない中、松岡が送ってくれる手紙と生活用品、それに2ヶ月に一遍の来訪を心待ちにするようになる東の心の変化が、四季と被せて美しく描かれていました。

どこまでも清い東と、裏稼業で薄汚れた松岡、それぞれの葛藤も読み応えがあって、タイトルにも書きましたが、本当に朝の連ドラか大河ドラマを観ているようでした。

金を貸す者、借りた者。
借りた方の逆恨みすら受け止めようとする東の心根を目の当たりにした後に、松岡が取り立ての追い込み中に自らの手を汚すシーンはやるせなさと切なさで胸が締め付けられました。

誤解やすれ違いがあっても、どうしてもお互いを手放せない2人の熱量が、ラストの穏やかな日常へと変わったのを読んで、本を閉じる瞬間は本当に清々しい気持ちになれました。

簡単にレビューが書けないくらい濃かったです。
こころに余裕があるときに、じっくりと読んでほしい作品です。

0

「菜の花」咲く春

名作とレビュー評価が高い作品なので、読みました。良作でした。

「信頼と障害を越えた愛」が、麻生先生の作品に一貫しているテーマのようで、この作品もそう。
恩を返したいと貧乏な母子家庭に支援を申し出てきた人は、昔助けられたと言う人。

▽ここが、この作品の軸:
東の父に算盤の角で額を打たれて怪我をした松岡少年。
雪が降る庭の井戸で傷を洗おうとする松岡を見かけた幼児の東が「手当をしよう、痛いだろう、そこで待ってて」と雪降る庭に裸足で駆け寄る。薬箱を持って東が戻る前に、「お兄さん」は消えていた。

ありふれたこのときの親切をまるで宝物のように話す松岡。
松岡が探していた恩人は、父ではなく、少年の東のことだった。
 「優しく、人として接してくれたのは、あなただけだった」
松岡に特別なものをあげられるようになりたいと思う東。

何度も思いやる気持ちがすれ違って衝突したり、怪我したりを繰り返して、
主人公、東が寺田の口に出せない気持ちに気づくことを繰り返しで展開していきます。
ラストは、東が開業医になって、二人は東の故郷に居ました。

あとがきに・・・
「咲く春」メンドクサイ話が書きたい。
・・この作品の完結まで、7年もかけているんですね。ビックリ。

BLでなくても良かったとのでは?と思いましたが、障害を超越した愛を語るなら、やっぱり男女の愛より、課題が多いBLの方が良いのですね。(純愛は素敵、いいな~)
四季と菜の花、冬を耐えて春に咲く花、何時か実る日を待つこの物語を象徴するものでした。
傷の舐めあいではなく、補い合って高めあう愛は至高です。
神評価。

麻生先生は、「黄色と青」が特徴、と何処かで読みましたが、この作品の扉絵も黄色と青。
松岡の好きな花は、菜の花。これも黄色。

------調べたもの。

「菜の花」
アブラナ属の花の総称 花言葉は「快活」「前向き」
寒く花の少ない冬を乗り越えて、暖かく彩り豊かな春を喜ぶイメージから来ている

青の「色彩象徴」
青にポジティブに惹かれていれば、「落着き」「心の平和」などの意味になりますが、ネガティブに惹かれていれば「内向」「抑圧」に

黄色:
暗闇(深層意識)を照らす光の色であり、「理解」することや「知る」意味を持ち、「明晰」「眼識」「分析」などの意味に結びつく

黄色の反対色は青色:
ゴッホの絵の青と黄色は目の覚めるような強い色彩に見える
  「ゴッホの絵はなぜ青と黄色が多いのか?」から引用。

0

完結まで7年!!

これはたまらなかったです。
映画のようなストーリー。主従もののような関係。
攻めのすごくまれな乱暴な言葉遣い・・・

琴線にふれまくりでした。
この内容に絵がぴったりで、とても7年間かかっているように感じられないくらいです。
ほんと素敵です。

夏の花火のもとでの旅館での初エチ。に至る直前の
受けが逆恨みのおっさんから受けた傷に
遠慮しない力で抱きしめるシーンの美しさったらないです。
何度でも読みたい・・・。読みます・・・。

攻めが幼いころにうけた受けからのやさしさを思い出すシーン、
受けが攻めとの邂逅を思い出したシーン。。。
何十年の愛 みたいなドラマをみている気分になりました。

あとがきで完結まで7年かかっていることがわかると
このお話を書き続けてくれた先生とそれを出版してくれた出版社に
感謝しまくりたい気分になります。

素敵な作品をありがとうございます。

1

じっくり読み込める作品

 少し古い時代ならではの情景がとてもよく描写されていたと思います。最後まで粛々とした雰囲気でした。先生自身あとがきで仰っていますが、面倒臭い話を描きたかったということで、主人公2人の恋愛は本当にゆっくりじっくり展開していきます。でもこの時代、そして2人を取り巻く環境や背景を鑑みれば、妥当な速さなのではないでしょうか。2人とも健気で相手を思いやり過ぎるあまり、読者としては少しもだもだしてしまうところもありますが、時間をかけて丁寧に描かれた作品を読みたい方にはオススメです。個人的には攻めの松岡が受けの東に対して、もうちょっと感情を露わにするシーンがあってもいいかなと思いました。

0

四季にモチーフをとった連作形式

連作といっても1冊まるまる同じカップルの物語。
しかし、四季に分けた中編が連なるようにしてカップルの成長が描かれていきます。

没落した旧家の坊っちゃんと、昔の奉公人松岡との恋。坊っちゃんが高校生の頃から物語は始まります。
今は金貸しをしているという松岡は、今は豊かになり、恩を返すと言って金銭的な援助を続けます。そして、ぼっちゃんとその母の前ではひどく礼儀正しい。

しかし松岡の金貸しとしての生き様は裏社会のそれで。。

坊っちゃんへの気持ちは本物で、坊っちゃんも松岡に想いを寄せますが、それゆえに拒もうとします。
しかし、大学生になって松岡の表の顔を知ったぼっちゃんはー

自分の母との関係を疑って、松岡のためと長い間大事に育ててきた菜の花をむしり、東京へ行く列車に乗ろうとする松岡に、駅で苗を投げつけます。
しかし、最後に線路脇に根付いて花を咲かせた花が、二人の関係を暗示していて美しいですね。

味わいのある作品でした。
しかし、松岡の二面性を理解するのが少し難しいかも。

0

季節を巡る、日々を重ねる。

元使用人・松岡と、お坊ちゃん・東が、季節を巡りながら、関係を育てていくお話です。
あとがきによると「咲く春」が読切で、そこから7年かけて「とける夏」「結ぶ秋」「巡る冬」と続いたそうです。

「咲く春」
西洋文化の影響で呉服屋が傾き、父の死で生活が苦しくなった母と息子・東に、元使用人だった松岡が恩を返したいと援助を申し出る。松岡を覚えていない東は最初は怪しむけれど、松岡の訪れを楽しみにするようになり、松岡の気づかいへの感謝を慕情へと変えていく。

「とける夏」
松岡が受けた恩とは、怪我した松岡をまだ幼い東が心配してくれた、それだけでした。そんな小さな出来事を、ときに重荷に感じながら生きる意味としてすがってきた松岡の人生は暗い。
恋の芽生えだった「咲く春」から一転、松岡は金貸しだったことがわかり、恨みの矛先が東にも向かうきな臭い話に変わります。
松岡は汚い自分を東に見せたくなかった。東は本当の松岡が知りたいと思っていたけれど、そこにいる松岡が全てだと受け入れる。
東は感情で動いて騙されやすいところもあるけれど、松岡の恩は松岡から聞くか自分が思い出さないと意味がないと本質がわかっている。
自分を傷つけた人間を許し、守り、その人自身を見て受け入れようとする東はなんて強いんだろう。
ここで恋人としての二人の関係が始まります。

「結ぶ秋」
東は松岡の家から医大に通います。
松岡を恨んでる者が石を投げ入れる家で愛し合う二人。
怪我した人を心配する、そんな誰でもできる小さなことじゃなくて、松岡に特別なものをあげたいと願う東が、今度は松岡の言葉で自信を持つ。
未来の実りが予感できます。

「巡る冬」
それから数年後、劇的なことは起こらない二人の日常です。
タイトルの通り、季節を巡りながら日常を重ねて二人は一緒に生きていくと思わせてくれる、締めにピッタリな短編でした。

花、天気、温度、背景の季節を意識して描かれたのがわかる作品です。
自分にはなんでもない言葉や行動が、相手の中で大きな意味を持って人生も変えていく、麻生先生の作品は一つ一つが伏線となって物語が進んでいくので、部分を切り取ってレビューを書くのは難しいし、無意味に感じます。
ぜひ全編、麻生先生の絵と言葉で感じ取ってください。

9

良い作品だなぁ…としみじみ

健気攻×健気受――作者さんご自身が「かかる手間を惜しまない恋」がテーマだと書かれているとおり、二人が過ごす季節が丁寧に紡がれた作品です。春と夏のお話がそれぞれ前後編で4話、秋のお話が1話、そして後日談とも言える冬のお話が1話収録されています。

舞台は大正時代の東北地方。豪商だった父親が死に、今や病弱な母親と二人で倹しく暮らす高校生・東(あずま)のもとに、むかし父親に世話になったという青年・松岡が現れ、二人の生活を援助したいと申し出ます。彼を警戒していた東ですが、定期的に訪れる松岡の誠実さに触れ、やがて彼への恋心を自覚するようになります。その一方で、松岡が優しいのは自分が恩人の子だからではないかと不安に揺れる東。松岡の暮らす東京へ赴き、彼のもう一つの顔――冷酷な高利貸しとしての松岡の日常を目の当たりにして驚きつつも、東は彼のすべてを受け入れようと決意するのですが…。

読み終えて、映画かドラマを見たような気持ちになりました。地に足の着いた静かな物語ですが、感情の起伏がちゃんとあって感動的でした。最初こそ、東に執着している松岡のお話ですが、やがて東が松岡に執着し、松岡よりも先に覚悟を決める様子が潔くてとても良かったです。表紙イラスト、裏表紙イラストとも作品の雰囲気にぴったりで、良い作品だなぁ…としみじみ思いました。

ベッドシーンはページ数こそ少ないですが時代背景も相まってなんともエロティックでした。

4

​ 息をのむ美しいベッドシーン

​ 電子書籍でリリースされた際に試し読みして、冒頭の15ページですっかり魅了され、どうしても紙で欲しいとそのまま別の通販サイトで購入してしまいました。元はと言えば敬語攻めにチェックを入れて検索したときに気になっていた作品で、松岡の丁寧な口調と「私」という一人称、坊ちゃんという呼び方、そして時代背景とストーリーが絡み合った、とても丁寧に描かれた作品でした。
 絵柄、ストーリー、キャラ、全てが好ましく、どうしてもっと早く読まなかったんだろうと後悔してしまうほど、大好きな作品になりました。特にコマ運びや場面の切り取り方が素晴らしくて、昔の上質な日本映画を見ているようです。先に書いた冒頭部分でも、暑い夏の日に坊っちゃんが強烈に松岡を意識するシーンは、ひとコマひとコマがとても印象的で、読んでいる私も坊ちゃんの目線で、松岡の太い腕、大きな体、そして間近で見る唇に魅せられて、ドキドキという自分の鼓動と坊ちゃんの恋する気持ちが重なって、『SEASON』の世界にそのまま取り込まれてしまいました。こういう素敵なシーンや印象的なコマが物語のあちこちにあって、その度にわぁ~っと気持ちが高ぶって、坊ちゃんと一緒に切なくなったり、松岡の気持ちに同調して苦しくなったり、今月初めには手にしていた本なのですが、何度も何度も読んであまりに素敵で、未だに残るこの気持ちを表す適切な言葉が見つかりません。
 最初読んだ時に一つだけとても気になった所がありました。松岡が坊ちゃんを傷つけた男の耳を切り落とすシーンです。ここは踏みとどまるところではないの?と感じたのです。それは一番坊ちゃんに見せたくない醜い姿なのではないかと…。だけど坊ちゃんと決別する(身を引く)ための覚悟として、そこまで自分を堕とすしかなかったのだなと、何度も読んでからそう理解しました。同じ頃坊ちゃんは、本当の松岡なんていない、目の前の松岡がすべてだと気づくのです。そして松岡は再び(一度目は幼少の坊ちゃんから)価値を与えられ、強く坊ちゃんを抱きしめます。そこから二人が結ばれるまでのくだりは、美しいベッドシーンBESTがあったら、上位ランクイン間違いなしの息をのむような感動的なシーンでした。人目も憚らずに坊ちゃんを抱きしめる松岡、そのまま坊ちゃんの手を引いて旅館へ急ぎ、狂おしいほどに求めあう二人。後ろで響く祭囃子の太鼓と花火の音。この美しさはとても言葉では表現出来ません!!是非読んで欲しいです。
 菜の花、雪、など視覚的な効果と共に、聴覚にも訴えてくる、切ない映画を見てるような作品でした。

17

年上の攻めがずっと敬語なのがたまらないです。

あらすじをぼんやりしながら読んでいたようで、何故か現代ものだと思って購入しました。
時代物だったのですね。時代物は大好きなので、むしろ無問題!
主従関係で、従者の年上の攻めがずっと敬語なのがたまらないです。
東が大人に成長していく過程が丁寧に描かれていて、映画を一本観ているような一冊でした。
東が、お金持ちのおぼっちゃんだったのに真直ぐでいい子なのがいいですね。
Only you Onlyもそうですが、読み応えのあるお話を書く作家さんだなあと思います。

お話は文句ないのですが、松岡が借金の相手の耳を切るシーン、あれはちょっと違和感。
雇われてる側が雇っている相手に「お前も手を汚せ」とかいうでしょうか。寧ろ、自分の手を汚さず残酷な事も平気でやる面を出せばよかったんじゃないですかね。
Only you Onlyの大企業に噂メールが流れるとか、時々「あれ?」っていう箇所が気になってしまいます。他がしっかりしているだけに余計にそう思えるのかもしれませんが、それだけに惜しい!

0

2時間ドラマみたい

Only you Onlyよりもこっちの方が断然好みです。
松岡は東の父親か母親に惚れてたのかなぁーと最初は思いましたが、最初から東しか見てなかったんですね。
敬語で従順な態度なのに、実は金貸し屋。しかも、取立ての仕方がまるでヤクザ。
何より大切な東を守る為に汚れ仕事をしていたというから、相当な地獄を見てきたんだと思います。
それなのに東に忘れられてたうえ、「大嫌い、二度と顔も見たくない」て言われてるし…。切ねえ…。

麻生さんの絵はとても綺麗で、Hシーンもまるで映画のワンシーンみたいでした。その後の二人が気になるので、もう一巡りくらい春夏秋冬を堪能させてくれないかなぁ。

5

巡る季節の中で育まれる純愛

時代物で主従物で再会物で…と、大変美味しい設定が詰め込まれた素敵な一冊。
年下受けが青年から大人へ成長していく様に多大なる萌と感動があります。

貧しい百姓家に生まれ、呉服屋に奉公に出された松岡(攻め)。
店の主人に殴られ雪の中に倒れていたところを助けてくれたのが、店の主人の息子・東(受け)でした。
数年後、金貸しとなった松岡は、父を亡くし困窮する東と母親の前に現れ、母子に恩返しする…そんな物語です。

松岡のことを覚えていない東ですが、松岡を慕い、彼に追いつきたくて必死に頑張る様がとても健気。 
金貸しとしての松岡の暴力的な一面を目の当たりにしても怯まず、彼と真正面から向き合い、愛を与えようとする姿にグッときます。
数年後医者となった東は、松岡のことを下の名前で呼ぶようになり、色っぽい誘い方も出来るようになり……
すっかり大人になった姿に萌えるのと同時にジーンときました。

松岡は、自らの意志で金貸しという職業を選んだという点では、善人とは言い難い人物。
幼き日の東に一瞬救われた彼ですが、それは彼の苦痛にまみれた人生の軌道を変えるには至らなかったのでしょう。
そんな松岡が数年後、今度は人生丸ごと東に救われ、真の意味での人の優しさと強さを知っていく展開が感動的。
東を「坊っちゃん」と呼ぶ松岡ですが子ども扱いしている印象がないのは、彼が東を心から愛し尊敬しているためかと思います。
松岡の「坊っちゃん」呼びと敬語は東が大人になっても一貫しており、その律儀さにも萌がありました。

惜しむらくは、東の成長は分かりやすいのに松岡の(外見上の)変化が分かりづらい点。
前髪を下ろしているせいもあり、下手したらラストの大人東より若く見えてしまうかも。
東に合わせて松岡が多少なりとも老けていれば、萌も倍増したのではないかと思います。

また、松岡が人を殴ったり恫喝したりするシーンには、もう少しだけ普段の姿とのギャップが欲しかったです。
表情も言葉遣いもどうしても小綺麗な印象の方が勝ってしまいました。
透明感ある絵柄・世界観はとても素敵ですが、血生臭く俗っぽい現実世界があるからこそ松岡と東の純愛がより引き立つと思うので、もう少し視覚的に変化をつけてほしかったです。

ストーリー的には、生きる世界の違いやお互いの身の安全といったことを悩む前に、まず男同士で付き合うということに葛藤してほしかったかも。
東は一人息子だし、母親に対して何も思うところはないのかな?と少し疑問に感じました。

色々書きましたが、萌度では文句なしの神。
後半にかけて増えてくる色っぽいシーンはどれも眼福です。二人とも上背があるため、男同士ならではの色気を感じることができました。

麻生さんの次回作(来月発売!)も大変楽しみです。

8

めぐる季節の中で

父親の事業の失敗により、母親とふたり貧しい生活をしている東(受け)のもとに、昔受けた恩を返したいという、金貸しの松岡(攻め)が現れる。
きっと自分たちを騙そうとしている悪人に違いない、と疑う東はなかなか素直になれないが、長く誠実に援助してくれる松岡にだんだん疑いは解け、ほのかな想いを寄せるようになっていく。しかし松岡は母と結婚したいのだと誤解した東は、松岡にひどい言葉を投げつけ…。


元は金持ちだった坊ちゃん受けと、昔のある出来事により受けに心を奪われた金貸しの攻めの話です。
『Season』というタイトルの通り、移ろう季節とともに2人の関係の変化を描いた、長い作品です。

親に売られ、奉公先できつく当たられていた攻めに、一度だけ与えられた優しい手と言葉。それだけのために自分の人生をすべて捧げて尽くしてもいいくらい、攻めにとってはうれしくて衝撃的なことでした。
受けはそれを忘れていて、父親が何か恩義を感じるようなことを攻めにしたのかなどと抜けたことを思っています。受け自身が忘れていても、攻めの気持ちに変わりはないですが、作中で受けが思い出してくれたときには、攻めに「よかったねえ」と声をかけたい気持ちになりました。
受けの視点の話なのに、攻めの気持ちを思いながら読んでしまうような、そんな作品でした。

くっつくまでは、受けが攻めを追いかける話でしたが、攻めも受けのことを思って距離を置いたりしていただけで、実際にはそばにいたくて仕方ないようなのが可愛かったです。情け容赦のない冷酷な金貸しで、長身でイケメンで顔に傷があったりしてすごくかっこいいのに、なんかひたすら可愛い。
間違いなく、これからどちらかの命が尽きるまで一緒にいるだろうな、と思える2人でした。

11

一途!!執着愛たまらんっっ

麻生ワールド全開♪
やはりエロいです(*^_^*)汗が。目が。
後半に少し絡みのシーンがあるだけなのですが、ぐっときます。
攻めの松岡の欲しくて欲しくてたまらなかったという気持ちが表れていますね(/_;)

さらに萌えのポイントは年の差なのに、年下受けへの年上攻めの敬語が!!萌えます!!
ちょっと乱暴な松岡が見れたりもして、人間らしくて、切なくて・・・ぜひ一読を・・・!!!
贅沢言うとシリーズで三冊ぐらいで徐々に成長とラブラブを濃厚に堪能しとうございましたwww
でも好き!!!!

4

読み応え抜群!

たいへんに素晴らしい主従ものでした。
春夏秋冬とお話が分かれており、読み切りで終わるはずが一冊まるまる表題作になるほどの長編になったとのこと。
麻生先生は長編でじっくりなお話のほうが好きだな。

元使用人の金貸し屋×呉服屋の息子
ちょっと古い時代の、年齢差カプです。

なんといっても攻の松岡がものすごく好き!
父の死後、病弱な母親と暮らす受の東(あずま)の前に現れた松岡。
彼は出世して、昔の恩返しがしたいと頭を下げてまでふたりの援助を願い出ます。
恩といってもそれは東個人だけに感じているもの。
幼少期に親に売られ、呉服屋の主にも手酷い扱いを受けていた松岡。
家畜同然の扱いを受けていた松岡に唯一人間として優しく接してくれたのが呉服屋の息子である幼い東だったのです。
それも東にしてみれば、ただ怪我を手当てしようとしただけの記憶にも残らない何気ない行為。
たったそれだけの出来事を一生の宝物のように思い、東のためなら何でもすると、東に恩返しするためだけに生きて来たのです。

東のために早く稼げるようになるため、いろいろな事をしてきたのでしょう。選んだ道も真っ当だとは言えません。
東には誠実に接していても、反面では金や暴力、人の生き死にと隣り合わせで生きる人間なのです。

自分の汚い部分を見せたくない。
東がくれたような温かい気持ちだけを返したい。
そう思うと同時に溢れる恩人への愛しさと欲望。
東への恩義と欲望との葛藤、そしてなんともいえないいじらしさと、厳しさや冷酷さを兼ね揃えた魅力的な攻様です!!

極めつけは『坊ちゃん』呼び!
最初から最後まで一貫して坊ちゃん呼びと敬語。もちろんエチのときも!
普段仕事のときとか東以外の人間には乱暴な言葉なのに対してのこのギャップ、これにはすさまじく萌えた!


受の東も好印象。
最初はただのワガママ坊ちゃんかと思ったのです。
昔の松岡とのエピソードも覚えてないので、最初は松岡に敵意を剥き出しにしていたのですが、だんだん慕うようになってそれが恋心に変わる。
両想いになってからも大人な松岡に対して早く追いつけるようにと必死で、松岡のことが知りたくて、ピュアで一生懸命なところはとても好感が持てます。

最初は松岡への恋心だけが目立っていた東ですが、後半は医者になるという自分の将来を見つめ、松岡から与えられるだけでなく何か特別なものを返したいと思えるようになります。子供っぽかった坊ちゃんの成長が見て取れてとても良かった。
松岡を想いながらも自分の意思をはっきり持とうとする、そんな東の強さに松岡もさらに惹かれるんだなぁと思いました。


このふたりの萌えどころを語るとキリがないのですが、麻生先生の描くふたりの絡みの安定のエロさは今回も格別。
お互いを想う気持ちは純粋なものだけど、それと同量の欲望もあるわけで。エロは計3回ありますが、どれも性急感がありたいへん萌えます。
特に花火大会を抜け出して旅館での初エッチ。
東を大切にしたいという気持ちと、全てを自分のものにしたいという欲望が伝わってくる松岡の愛撫がたまらんです。太腿裏舐めと顎舐めは最高です。麻生先生の描く舌使いは絶妙!ベロチューとか!
描き下ろしのおコタでエッチも◎
何気に坊ちゃんがかなりの誘い受なのが萌え!


7年という長い年月をかけて、季節を一またぎしてふたりの愛と成長を丁寧に美しく描かれた今回の作品。
残酷なシーンや悲しい展開もありますが、確実にふたりが幸せになっていってるのが分かるので、切ないながらも温かい気持ちで読めるお話です。

たった一冊でこの読み応えはスゴイと思います。麻生先生の魅せ方がうまいので、物足りなさとかが無いのですよね。
例えばたった1コマで文字がなくても松岡がどんな人生を送ってきたかが一目で分かる。そういう絵だけによる表現の仕方が麻生先生はすごくお上手。
また開始から完結までの7年間を感じさせない、一切乱れや変化のない作画も素晴らしい。

主従萌えとかしない場合でも、ひとつのヒューマンラブストーリーとして多くの方にオススメしたい作品です。

あと、松岡の仕事仲間の情報屋の穂純。ロン毛できっとワケありな彼のことも詳しく知りたいので、密かにスピンオフ期待してます。

9

健気!!

NHKの朝ドラを観ているような気分になりました!
しっとりとした時代の、地に足がついた世界観。
ひとつ間違えば難解になったり、小難しくなったりする題材に思うのですが、東の健気で可憐な良い子っぷりで、どんどん引き込まれていきます。対する松岡もいろんな思いを抱えながらも、健気に東だけを思い続ける。

中盤でいつの間にか涙が流れていて、それ以降は読みながらずっと涙涙でした。

7年もかけて描いたとは知らずに手に取りましたが、この大作を一気に読み終えられる幸せ! また何度でも読み返したい作品です。

5

感無量

何か裏があるようには見えなかった。
表紙が素敵すぎたので。
この見つめあってる二人に恨みでどうのこうのの鬼畜な設定はないだろうと勝手な思い込み。
でも、本当に恩返しの為に東を探しだした松岡だったので一安心。

コマ小さいのに細かいところまで描かれているし、1ページ1ページが丁寧で綺麗だし、映像で頭の中に流れてくる感じで引き込まれた。

松岡の為に大切に育てた菜の花。
東が母とのことを勘違いし、怒って庭から菜の花をぶち抜き駅まで走って松岡に投げつける。

その菜の花が春になって松岡と再会したあと、駅のホームに咲いていたのは感動だったな。
東が松岡に告白して、菜の花からの斜め下から見上げるアングルが素敵でした。
たぶん、あの菜の花だと思う。

東の松岡はあの時の怪我をしていたお兄さんだと思い出した時の表情がめちゃめちゃ可愛かった。

結ぶ秋の扉絵が好きすぎます。
風に煽られていて、松岡が東のおでこにキスをしている。
これも、斜め上からのアングルで素敵です。

東の目から涙が落ちるシーンも他にはない感じで良かった。
3コマで描かれていて、東が見ているところは自分の足。最初はクリアな視界で歪んだと思ったら涙の雫がポタッと落ちる。
二人の運命は最初に出会った時に決まっていたよね。

このコミック出るまでに7年かかってるんですね。
壮大なストーリーだったな。感無量です。
流血シーンも(顔も見えなく名前もない人達の首吊りシーンもあり)多々あるけど読んで良かった。
やっぱり、麻生ミツ晃先生の作品好きだなと再実感。

松岡の仕事仲間である情報屋の穂純のストーリーも読みたいし、大学で唯一の友達だった弓削がそのあとどうしたかも知りたいです。
穂純なんて長髪の着物姿でまだまだ謎の多い人物だし、弓削も東と仲直りしてくれてたらと思う。

どっちもイケメンです。
穂純は美しいので情報を得る為に身体を…?なんて想像したりもした。

本当に映画のようなストーリーです。

19

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