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表題作薔薇色じゃない

阿久津慧一、学生~大手食品会社勤務
水野光流、学生~フードスタイリスト

あらすじ

恋に落ち、小さなすれ違いで別れ、再会後はお互いを支えあう友人となったふたり。心の底に埋み火のような熱を隠したまま……。

作品情報

作品名
薔薇色じゃない
著者
凪良ゆう 
イラスト
奈良千春 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
発売日
ISBN
9784344837416
4.4

(170)

(108)

萌々

(41)

(10)

中立

(4)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
26
得点
738
評価数
170
平均
4.4 / 5
神率
63.5%

レビュー投稿数26

15年の道のりがリアルに描かれてます

ルチルレーベル二十周年の記念の本ということで四六判の本です。
破局からスタートし、二人のそれぞれの視点で、15年という年月を描いたお話。

阿久津はたった一人の肉親を安心させるために水野と別れ、結婚する。
対して水野はフードスタイリストの夢を叶えて、仕事で成功する。
別れた後も、なんだかんだでお友達づきあいをして長い時間を過ごす様子が、自然でもあり不自然でもある。でもこういう関係もあってよいし、友だち以上恋人未満の進化形というか、お互いを誰よりもよく知る二人という間柄は理想的なのかもしれない。
なんて思ってしまうほどに、別れて再会しても、縁と相性の良さを感じるだけで、二人の間には安易な色っぽい展開はなく、ただただお互いを思いやり、それぞれの人生が平行しているだけ。
とにかくリアルです。
どこかの街に二人が生きているようなリアリティがあります。
この先どうなるんだろうとページをめくる手は止められず、先へ先へと読み進み、貪るように二人の人生をなぞりましたが、読後、私は手放しで二人を祝福できませんでした。
きっと本当は、紆余曲折があったけど二人が一緒になれて本当に良かった、との感想を持つべき内容の作品だと思います。
あまりにリアル過ぎたのかもしれないです。
水野はもてる割に浮いた話も少ないですが、阿久津の方は結婚したあと離婚し、その後ひと回り若い男の子とくっつくという、サイテーと罵られても仕方ない歴を歩むのが個人的にダメだったのかな。

あ、そうだ。「真夜中クロニクル」の真下陽光くんがちらっと登場してて、嬉しかったです。

2

2人の15年間

凪良先生の既刊を片っ端から読もうと思って本作も手に取りました。

始まりから付き合ってる2人のお話で、片側ずつ交代する視点で展開するストーリーでした。
最初から付き合ってる関係だと、多分別れたり拗れたりするのだろうと予測はついてましたが案の定そうでした。
もうずーっと胸がチクチクする展開なんだけど、読むのを止められず一気読み。
ヨリを戻せるのか、戻せないのか最後まで分からなくてヤキモキさせられます。

付き合い始めや、同棲する中でわいてくる感情、別れの理由などがリアル。
どこかに居そうなカップルが運命なのかタイミングなのか別れてしまい、再会はしますが友人関係が続きます。

攻めが一方的に別れを決めるし、一度女性と結婚するので、そういう展開がダメな方にはオススメできないですがそうなるに至る展開もキャラの生い立ちや性格によるものなので、必然性を感じました。

亭主関白なキャラクターは創作物の中でも、実生活でも好きじゃないのですが、攻めが自分の価値観のせいで失敗し、受けじゃないとダメだ受けが居ないと生きていけないとなったとき、必死になる姿が良かったです。
攻めザマァ要素アリです。
10年近く経ってやっとかよ!って腹立たしい気持ちもありはしましたが、人間臭くもがく姿には同情もしましたし、共感もできました。

一度失敗した2人だし、お互いに学んだ事もたくさんあるでしょうから末永く幸せに居られるだろうなぁと思ってます。
お互いの事を思いやる、相手の立場に立ってみる、そういうシンプルだけど難しい事をテーマに、自分のことを振り返ってみるきっかけにもなるような作品でした。

4

ストーリーは面白いんだけど

一般作でも活躍中の凪良ゆう先生。イラストが奈良千春先生でお洒落な装丁の書き下ろし本です。2016年発行ということは一般作を書き始める直前かもう描き始めている頃か。このボリュームで書き下ろしって余程信頼されている実力者の証だと思います。

お久しぶりの凪良さんでしたが、やはり導入部分から一気に最後まで読みたくなるストーリー運びのうまさと読みやすい文章でした。しかし性格も体も相性最高の2人が出会い同棲するという最高潮から始まったので、「あー、ここからは下がる一方で不幸になっていくフラグだな」と不穏な感じで物語は進みます。

身も蓋もない言い方をすると別れたカップルがヨリを戻す話が丁寧にドラマチックに書かれているのですが、受けも攻めも主役のキャラクターがあまり好きになれないタイプでした。悪人ではないけどお互い好きな相手に対して誠意が感じられない。

特に攻めの阿久津が最初に水野に一切の弁解を許さずトラウマレベルの振り方をして女と結婚したのに、相手を嫌いになった訳でも女を好きになった訳でもない、というのが意味不明です。同い年のゲイカップルで亭主関白というのもよくわからない。恋人に母親を求めるって嫌なタイプだな、と思いました。この人母親に孫を見せて安心させるために結婚したから、子供ができてたらそれなりのハッピーライフを送ってたんでしょ?と思うとモヤモヤする。

受けの方も、5年同棲した相手と別れてからも何年も2人で飲みに行って友人関係を続けるって現在のパートナーを不快にさせるのは当然だと思う。攻めが親を亡くして弱ってる時に偶然会って家に押しかけて得意の料理を作ってあげた後に「あれ?奥さんは?」って…わざとらしくない?料理作る前に気づくだろ、と思ってしまいました。

2人の行きつけの飲み屋の大将もいい人だと思ってたら何だか2人と同じ恋愛観の人で幻滅。男女でも前に付き合っていた同士で友情とかあり得ない、と思うタイプなので私の心が狭いのかもしれません。体の関係のあった同士で陰で2人きりで会われたら「今はプラトニックだから」って言われても現在の恋人は嫌に決まってる。

最後は攻めもかなり昔のことを反省した様子で、ドラマチックにヨリを戻すまでは盛り上がるし、感動もするのですが、周りの人も相手も傷つけまくった上で手に入れた幸せだよね?と攻めには一生反省してほしい気持ちです。話は面白かったですがキャラクターが好きになれなかったのでいまいち乗り切れませんでした。

3

ぐるぐるする

幸せな日々だったのに、小さな積み重ねから別れ、偶然の再会から友人付き合い。
ぐるぐるぐるぐるすれ違って、肝心な気持ちは伝えられなくて苦しい苦しい。大きな事件はなくても、こういうことあるよねというのがジワジワくる。タイミングも大事、踏み出す気持ちも大事!本当にどうなるの?どうなるの??ってハラハラしました。
上海出向のあたりとか、阿久津はどうしたいんだ!と。阿久津がへこたれずに告白し、自分の悪かったとこに気づけて、さらに好きが増したのはもちろん、復縁して抱いたら、前はここ感じなかったのに!!!別れてる間に!!!ってとこも、なんか良かった。いろんなしがらみのある大人だからこその恋愛、最後には2人の仲が強まったのが良かったです。

1

長年の痴話げんか

こちら一番最初に読んだ凪良作品で、一番好きな凪良作品です。
楽しい嬉しいだけじゃない、しんどいこともある、味わい深い大人のラブストーリーです。薔薇色だったら素敵だけど、薔薇色じゃなくても恋するっていいなぁ~という温かい余韻の残る作品でした。

程よいリアリティが絶妙なんです。そういうことってあるよねぇ…ということが、ありすぎたら萎えるんですけど、いい匙加減なので程よく共感できるんです。
出会い、いろいろあって別れ、いろいろあって再会し…最後まで読んでしまうと、10年の痴話げんかみたいな話と思いました。それぞれの視点で、それぞれの社会生活を通して、離れてまた戻ってという気持ちの変化が淡々と描かれていて、その過程に地味に萌えます。本当に地味なんですけどね、しみじみいい。どうしてこの人なんだろう、という二人の相性のよさがじわじわとわかってくるんです。

印象的だった場面は、攻の母親が亡くなったときに、攻の実家で受が手料理をふるまうところ(美味しそうなんです!)。相手に今一番何が必要なのか、というところに自然に手が届く関係の二人が、恋人同士じゃない状況が切なくて泣けました。

あと一歩復縁に王手をかけない二人に、最後までど~なるんだろ~とハラハラしていたので、10年前の仲直りのやり直しの場面ではめちゃくちゃホッとしたのでした。(この方法が萌っ!)
というわけで、折々に読み返したくなる名作です。

2

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