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表題作毎日カノン、日日カノン

朱鷺川澄一,23歳,旧華族の御曹司
鹿野可音,19歳,朱鷺川家に代々仕える使用人

その他の収録作品

  • 今日もカノン、二人でカノン
  • あとがき

あらすじ

「君が好きだ。一緒に来てくれないか?」
住み込み先の御曹司・澄一に請われ、二人で暮らし始めた可音。
けれど二人の認識にはズレがあって!?


作品情報

作品名
毎日カノン、日日カノン
著者
砂原糖子 
イラスト
小椋ムク 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
シリーズ
毎日カノン、日日カノン
発売日
ISBN
9784403524202
3.7

(114)

(22)

萌々

(54)

(29)

中立

(4)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
21
得点
417
評価数
114
平均
3.7 / 5
神率
19.3%

レビュー投稿数21

萌は低いけど、安心して読めるハピエン

ちょっとしたすれ違いは有るけれど、優しい人同士の相愛。

鹿野可音:19才。
優しくて、思いやり深い、庭師の家庭に養子に入った美少年。額に傷跡がある。
憧れの御屋敷のお坊ちゃんに、一途に想われていることに、自覚がない。身分差に悩んでいる。

朱鷺川澄一:23才。
お屋敷の坊ちゃん。カノンが大好き。
カノンと一緒になるために、相続権を放棄。独り暮らし。
嫁として連れてきたカノンが20才になるまで、我慢している。

カノンは子供の頃、坊ちゃんに怪我をさせて、祖父から厳命されたことを、
何かある都度に、思いだして壁を乗り越えられない。

坊ちゃんに懸想する女子が登場して・・
色々有るけど、ハピエン。

0

想いは日日相乗していく

 作家買いです。砂原糖子先生は作品がたくさんあるのでどれを買おうか迷いましたが、主従は個人的に萌えポイントなのでこちらにしました。
 素敵な表紙を見た瞬間に、タイトルの「日日」を「ひび」と読み間違えていたことが発覚。「にちにち」が正解でした。

 タイトルがかわいらしいのでほのぼの系と予想して読み始め、冒頭から澄一が可音に微笑ましいプロポーズをして可音の秘めた恋が即時成就したと思われる展開でしたが、 実は可音は澄一の「お味噌汁を作ってください」を言葉通りにしか受け取っておらず、主人と使用人として同居しているつもりの可音と、夫婦として同棲しているつもりの澄一との温度差が凄まじくて笑ってしまいました。
 予想通りほのぼの系だな、と序盤は笑えていたんです。でも、すれ違いの原因がなかなか根深そうなことを察してからは切なくなってきて、同時に何も気付かずに新婚の甘い雰囲気を纏わせて幸せそうな澄一のことがだんだん気の毒になりました。
 といっても、澄一は良くも悪くも可音以外のことには関心がないので、周囲から自分に向けられている恋愛感情なんて気付こうが気付くまいがどこ吹く風なんですよね。だから、依香に対しても脈がないことは言動ではっきり分かるんだけど、いかんせん依香の恋心には気付けていないので遠ざけはしない。それによって可音は依香の邪な感情に振り回され、回り回って「可音に振られる」という形で自分に返ってしまいます。
 ……という意地悪な書き方では語弊があるので訂正します。
 正確には、可音が振ったのは可音自身の過去や気持ちが問題なので、澄一に非があったわけではないんです。ただ、依香の存在で二人の間にさらなるすれ違いが生じていた中での出来事だったので、タイミング悪く攻めザマァのような展開になってしまうという不運に見舞われただけなんです。懺悔すると、澄一のそういうところがかわいそうでもあり、愛おしくもあります。
 可音は朱鷺川家に代々仕える鹿野家の人間であり、キャンプの一件で厳格な祖父に詰られ怪我をさせられたのを最後に、澄一とは必要以上に親しくせず主人と使用人としての距離感を保つよう自戒してきたので、澄一からのプロポーズも、自分の恋が成就してはいけないと無意識に使用人への言葉として受け取り、二回目のプロポーズでは自分の気持ちを押し殺してはっきりと断りました。
 祖父が突き飛ばしたせいで孫の可音が額から血を流しているのに(澄一じゃなく)お前が怪我をすれば良かったのにとさらに責め立てられたこと、可音が遠縁の鹿野家に引き取られた人間だったこと、それらが額の傷とともに可音の心の奥深くを抉っていたので、自分は価値のない人間だから引き取ってくれた鹿野家や恋慕う澄一に必要とされるために使用人としての立場を守り続けたのだと思います。
 澄一も不憫だけど、可音も不憫で健気でした。
 しかし、二人は両想いなので、物理的に距離を置いたところで恋心はどうしようもなく、澄一のちょっとした事故と大内の機転によって可音は自分に正直になることができました。澄一に告白したところは小椋ムク先生の挿絵と相まってとても良かったです。
 すれ違いの内容が深刻だったために切ない部分が強調されたものの、その後もクリスマスプレゼントの解釈違いの発覚だったり、初めて同士で結ばれたり、後日談では保育園の子供とのやり取りでドキッとしたり微笑ましかったりで、総合的にはやっぱりほのぼの系だったと思います。

 ひとつだけ気になったところは、大豪邸(しかも東京二十三区内)に住めるほどの財力がある朱鷺川家の問題が軽んじられていたことです。
 長男である澄一は弟が跡継ぎになるからとさらりと言っていたけど、これは朱鷺川家は了承済のことなのか非常に気になりました。
 就職先が家業とは無関係の外資系企業の時点で家族にはいろんな事情を話したと思われるのですが、そこら辺の描写がなかったので、朱鷺川家と鹿野家の今後の関係に影響はないのかと、祝福の気持ちとは裏腹に妙に現実的な心配ばかりしてしまう自分に嫌気が差しました。
 なので、澄一の一回目のプロポーズ前までの奮闘物語を少しでも描写してくれていたら神評価にしていたと思います。

 本作で分かったことは、澄一のような攻めも好きだということです。
 育ちは良いけど初恋相手の可音のことになると周りが見えなくなって多少残念な思考やかっこ悪い振る舞いをしてしまう、そんなスパダリになりきれないところがとても愛らしく感じました。
 上手く言葉にできないのがもどかしいけど、読んだ人ならきっと分かってくれると思います。

 読後、「毎日カノン、日日カノン」というタイトルに性的な意味を感じてしまったのは澄一のせいにしたいところですが、パッヘルベルのカノンを久々に聴いて無事に邪念を払うことに成功しました。
 何度も何度もくり返し聴いていくうちに、可音と澄一の関係は神聖というか聖域のようなものに感じられ、どうか二人には初恋の美しさを他の誰にも汚されることのないまま、いつまでも愛を育んで幸せに生きてほしいと願うほどに心が洗われました。
 今後は、本作を読んだらカノンを聴きたくなり、カノンを聴いたら本作を読みたくなるでしょう。
 そう思えるほど、どちらも好きになりました。

2

なんて甘い主従関係!

小椋ムク先生の優しい表紙絵から、きっと甘い主従関係が読めるものと思い購入。
まさに予想どおり、甘くて幸せな気持ちを味わい、お互いを大好きな2人から癒やしをもらいました。読んで本当に良かった。

立場上、主人に尽くす受けキャラと、そんな従者を愛してメロメロな主人の攻めキャラの関係性が本当に萌えでした。
しかも、主人は従者を心から愛していて、お屋敷を出て一緒に暮らしたいなんて…!
気持ちを伝えるって難しいけど、2人が幸せで本当に良かった。

0

究極のすれ違い

コミカライズされたということでこちらも同時に購入してみました。
背景描写がとても丁寧で、物語に飛び込むことができます。

コミカライズよりも甘さを感じて、幸せな気分になりました。

ーーーーーーー感想とネタバレーーーーーーー

読んでいるこちらは登場人物の脳内が読めるので、それぞれの想いがすれ違いまくっているところは面白いと感じました。
でもすれ違いが発覚してそれぞれに距離を置いたときが、とても切なかったです。

とくに好きなのは、すれ違いに気づく前。可音が澄一からの触れ合いを受け入れてしまっているところ。
可音の純粋な可愛さと、澄一の幸せそうなところが堪りませんでした。

書き下ろしがまた甘くて...可音に対して変態性を見せる澄一のギャップに驚きます。
いつも使っているエプロンをまさか持ち出してくるなんて。
甘いな...と思いつつも変態だな...とくすっとできるエピソードでした。

1

勘違いがコミカルというよりも切ない

コミカライズが出たということで、こちらの本を読み返してみました。

のっけから攻めは「僕と一緒に来てくれないか?君が好きだ。そして僕のためにお味噌汁をつくってほしい。」とプロポーズし、それを感極まって涙ながらに承諾した受け。

ここから新婚生活が始まるかと思いきや、受けは攻めの言葉をプロポーズではなく「僕のお手伝いさんとしてやってきてほしい」と捉えてしまっていて……という天然ゆえのズレにズレたズレっぷりが最初は面白かったのだけど、途中からどんどん切なくなってしまった記憶があります。


もう一度読み返してみたんだけど、自分の好みとしてはやっぱりもっとコミカルだったらなぁ……というのがある。
攻めが「たった一人しか好きになったことがない」と答えるのを聞いて、まさかそれが自分のことだとは思ってない受けがひっそりと傷ついたりするんです。

早く勘違いに気づけばいいのに〜♪とすれ違いっぷりをニヤニヤしながら読む感じではなく、勘違いがどんどん受けの心を暗く追い詰めていく様子になんだか受けが哀れに感じてしまって…お互い早く気づかないのかしら……と読んでるこっちもちょっとテンションがダウンしていく。
そして、ようやくお互いに勘違いしていたことに気づいたと思ったら、解決♡ハッピー!ではなく、さらに切ない展開に……。

受けは代々攻めに仕えてきた一家に養子としてやってきたので、幼い頃から使用人気質を徹底して叩き込まれてきた子なんです。
「自分は使用人だ」と己に言い聞かせてそれ以上のものは望まず育ってきた子なので、攻めの言葉を勘違いするのも仕方ないというか、その勘違いすらが私には痛々しくてならなかった。

というわけで、この作品は読み返してみても甘々ほのぼのよりも切ない印象が優っていましたが、デロ甘に麻痺ぎみな私なので余りそこらへんは参考にならないかもしれません……。
(ただし「今日もカノン、二人でカノン」は甘い)

「今日もカノン、二人でカノン」はようやく思い通じあったあとの甘い新婚生活を描いてるんだけど、どうもおままごと感が否めない……。

というのも、この結婚は両家族から認められているものなのかという点に全く触れていないので旧華族の長男がいくら弟が継ぐ気満々だからといって、周囲がすんなり祝福してくれるようには思えないし、「ずっとルームメイトだと言い続ける事になるかもしれない」と攻めは覚悟してるけど家族にそれは通用しないだろ……と。
それとも、脳内お花畑化しちゃってる長男はとっくに一族から見放されているのかしら……??

1

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