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表題作富士見二丁目交響楽団シリーズ第5部 ミューズの寵児

天才指揮者・桐ノ院圭
天才努力型バイオリニスト・守村悠季

その他の収録作品

  • ノヴェンバー・ステップス1996
  • それぞれのノヴェンバー・ステップス

あらすじ

大人気シリーズ、待望の第5部スタート!国際指揮者コンクールに出場する圭の応援にやってきた悠季がきいた話の内容!それは…業界最大手のエージェンシーの副社長が圭を抱きたいとねらっているという衝撃的なものだった!

作品情報

作品名
富士見二丁目交響楽団シリーズ第5部 ミューズの寵児
著者
秋月こお 
イラスト
後藤星 
媒体
小説
出版社
角川書店
レーベル
角川ルビー文庫
シリーズ
寒冷前線コンダクター 富士見二丁目交響楽団シリーズ
発売日
ISBN
9784044346409
3.5

(4)

(1)

萌々

(0)

(3)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
14
評価数
4
平均
3.5 / 5
神率
25%

レビュー投稿数2

高嶺へのリベンジを誓う圭

シリーズ第5部の1冊目。通しで23冊目になります。萌×2の面白さでしたが、ナイジェル氏にまつわる話が好みではなかったので萌です。

「誰にも、きみはやらない。抱かれたいのなら僕が抱く!」クラシック界最大手エージェント、サムソン。その副社長ディビットが圭に契約を申し込んできた。しかもそれは、セクシャルな興味とともに……。圭を押し倒したいと思っている!?サムソンの副社長が!?初めてわき上がる不安を抑えきれない悠季だったが……!!

収録作
・「ミューズの寵児」
・「ノヴェンバー・ステップス1996」
・「それぞれのノヴェンバー・ステップス」(証言編)

「ミューズの寵児」は、圭のエルサレム国際指揮者コンクールの話です。
 冒頭で悠季はトリオ・リサイタルに向けての練習を、トリオ・ダ・ガンバのメンバーのチェーザレ氏宅でしています。その後、圭の応援のためイスラエルへ飛びます。
 圭と悠季はエルサレムを見学しながら、会話や触れ合いがなくても同じ空間を共有しているだけで充足感に包まれることを実感します。また悠季は圭から、サムソン・ミュージック・エージェンシー副社長のディビット・セレンバーグから色と欲との二頭立てで狙われていることを聞き、いざとなれば自分もカミングアウトすると圭に告げます。
 そんな注目株の圭は、ブザンソン以降パパラッチに追われたりスポンサーがついたり。おまけに一次審査後にはサムソンからの押しかけマネージャーと揉めて事態収拾のためセレンバーグ氏までやってきます。この時、圭は氏にベストパートナーとして悠季を紹介します。
 そして圭はコンクールで優勝し、インタビューやマスコミ出演の過密スケジュールをこなし、ガラコンサート記念CDはサムソンレコーズからの発売が決まり、テルアビブからローマに戻って1週間目にM響からの矢の催促を受けて日本に帰りますが、高嶺とソラくんのカーネギー・リサイタルのために悠季とニューヨークで落ち合う約束をします。

「ノヴェンバー・ステップス1996」は、11月16日の高嶺のカーネギー・リサイタルにソラくんと共に悠季も参加する話です。
 11月14日にJFK空港に降り立った悠季は、再会した生島さんからいきなりリサイタルの前座に出るよう言われて青ざめます。その後、到着した圭と共に生島さんとソラくんに連れられてマムの家(高嶺がマムのために丸ごと購入したテナント付きアパート)を訪れ、高嶺のマネージャーをしている妹のアガサとマム・マリアを紹介してもらい、皆と一緒に心地よい時間を過ごします。そしてソラくんから高嶺がサムソン・ミュージック・レコーズと契約したことを聞きます。SMRは高嶺が提示した条件を全て呑んだのだとか。
 カーネギー・リサイタルは大成功に終わり、悠季は生島さんと《ツィガーヌ》で堂々と遣り合い、ソラくんとは生島さんがゴミ箱に捨てたモーツアルト《K331》を楽しく演奏します。ちなみに、生島さんは《ツィガーヌ》で伴奏を降ろされたリベンジのため福山先生夫妻を招待しています。また、ソラくんは悠季が練習でバッハを奏でている時に「かみさま」を見ます。
 その後、ローマに戻った圭と悠季は、カーネギーの一夜のライブ盤CDを見つけ、そのCDジャケットに悠季の写真が使われていることで、悠季のCDデビューまでも掻っ攫っていった高嶺に怒り心頭となる圭でした。なお、圭は4月1日にM響の常任指揮者就任が決まり、それまではローマで過ごす予定です。

「それぞれのノヴェンバー・ステップス」(証言編)は、ナイジェル・ネルソン視点です。このナイジェル氏は高嶺にクラシックピアノ曲を教えてくれた人で全盲で、その付き合いは高嶺の姉アニタを通じて知り合って以来10年になります。
 リサイタル前の楽屋にいた彼は、ソラくんの引き合わせで圭と悠季に出会い、感じの良い柔らかなテノールで話す悠季を20歳未満の堅苦しい秀才タイプ、素晴らしく深みと艶がある心地良いバリトンで話す圭を悠季よりかなり年上の30歳↑だと思います。また、高嶺を池の蛙の音楽からオーシャンミュージックに目覚めさせた男が圭だったと知り、圭もまた高嶺が2歳年上だと知りムッとします。
 そしてリサイタルが始まり、悠季の奏でるバッハにシャイさと心に響くものを感じ、高嶺との《ツィガーヌ》でその印象はヒツジの皮を被ったライオンへと変化し、ソラくんとのジョイントでは「まさしくモーツァルト」だと思います。モーツァルトに無邪気さでシンクロするソラくんと音楽的教養で理解する悠季。
 リサイタルは大成功に終わりますが、高嶺はふて腐れて姿を消し、打ち上げPartyにはマサオ氏(福山先生)と共に出来上がった状態で現れて、最後にはナイジェルに楽譜の読み方を教えてくれと頼みます。モーツァルトと繋がるためには楽譜を読む必要があると認識したのです。なお、圭は高嶺が悠季の国際舞台の初ステージを攫ったことに激怒して秘かにリベンジを誓っています。
 おまけの『ノヴェンバー・ステップス寸描』が面白いです!酔って沈没中の悠季に代わり圭が福山先生をもてなすのですが、眠気による失言から悠季との仲がばれてしまいます。先生は愛弟子には何も言わず態度も変えず、非難の矛先は圭に向けています。

2

連作です

フジミシリーズでいくつかの作品が収録されている本は、時系列がばらばらだったり、前後していたりするものもあるのですが、この作品は時系列にそってきっちりと配列されていて読みやすかったです。

「ミューズの寵児」は、セレンバーグ氏が桐ノ院圭のマネージャーになるまでの紆余曲折を描いたもの。時期は「ブザンソンにて」とかぶります。圭はまだ予選の最中です。
クラシック界の大手エージェント・サムソンの社長(男です)から横恋慕された圭が、プライベートでも付き合いを、といわれた言葉を一刀両断にしたことから、嫌がらせで押しかけマネージャーのセレンバーグ氏がやってきたことで起こる騒動と、圭の精神的な戦いを描いています。
結構したたかです、セレンバーグ。嫌なやつです。

「ノヴェンバー・ステップス1996」は、「ミューズの寵児」の続きです。
カーネギーホールを借り切ってコンサートをすることになった生島高嶺とソラ。
その「前座」として3日前に出ることが決まった守村悠季の奮闘を描きます。

「それぞれのノヴェンバー・ステップス」はまたまたその後日談。
悠季の演奏を聞いて本格的に楽譜を読む練習を始めようと思う、高嶺の周辺、そして悠季を見守る圭の周辺を中心に描いています。
世界の武満の曲を題名にするあたり、なかなかに凝っているつくりだと思いました。

2

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