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表題作いとこ同士

北澤修
河合道隆、修のいとこ

同時収録作品黒いレインコート

鍵本光雄、いなくなった母の弟(?)
坂口晃、学生

同時収録作品森に行った日

奥村亮
関谷朝輝(ともてる)、姉の夫の長男

同時収録作品人魚の破片

民俗学研究者
航一、漁村の足の悪い少年

その他の収録作品

  • けど…
  • 逢いびき
  • 週末
  • 各作品の作品解説(4点)

あらすじ

幼い頃、修は2歳年下のいとこの道隆と良く遊んでいた。 しかし大きくなるにつれ、次第に疎遠になる。 親戚の結婚式で再会した二人は、大学時代に、1度だけ肉体関係を持ってしまった思い出を蘇らせる。 酔った勢いと言い訳するように、再び体を繋げる二人。 この思いは何処から来ているのか…。 血がつながっているため、2重に禁忌の感情を覚えてしまう修と道隆だが…。

作品情報

作品名
いとこ同士
著者
今市子 
媒体
漫画(コミック)
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリアコミックス
発売日
ISBN
9784861340611
4

(38)

(18)

萌々

(6)

(11)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
10
得点
149
評価数
38
平均
4 / 5
神率
47.4%

レビュー投稿数10

時代の経過を感じる、刹那的である事の美徳

2004年の作品
4組にまつわる7編の短編と作品解説がまとまった1冊

先ず、スマホはおろか携帯電話すら出て来ない
実家住まい設定のキャラにとっての連絡手段は専ら「家電」(!)
しかも親機・子機も無いのか家族に呼び出され家族の前で話すカオス
これだけでも凄い現代との時代背景の違いを感じない訳にいかない

そんな時代背景の中で同性を好きになる事、更に相手が身内である事の禁忌
今の時代、この禁忌が背徳的行為になり、ある種のアブノーマル感を刺激する事も創作世界では理解を示す人も少なからずおり、声を潜めずに自身の癖である事を憚らずに言う事も多様性として存在できる(と思っている。なぜなら私は背徳感に刺激を感じるので♡)
しかし、この作品が刊行された時代はそれは憚るどころの話ではなく常に「先の無い関係」であり「普通ではない」事が至極当然の時代という事なのであろう

当然こんな時代背景の中の2人の関係は常に刹那的であり、現在私が楽しむ類の焦れモダ感などといった生易しいものではない
だからこそ、明確な関係性は作中で断言せずその行間を読み解き、解釈をこちらに委ねてくるようだ

たまにはこんなノスタルジックな作品に触れる事も悪くない、と思わせてくれる作品です

何と言っても絵柄が見やすい!
当然時代を感じない訳ではないが古臭さは一切なく非常に没入感を得られます
デッサンの基礎力のある先生の絵は時間の経過など些末な事であろう
それこそが絵の、芸術の持つ力という事だ、としみじみ思わせて下さいます

評価は限りなく萌2に近い萌

2

いとこならいいんじゃない?イヤイヤそんな事ないから!

今市子先生の静謐で美しい世界が好き。
とは言っても、もちろん登場人物達の抱える恋愛事情は静かでも美しくもなくて、傷つきもがく物語で、しかもBLなのかどうか?という話な訳だけど。

「いとこ同士」
「けど…」
「逢いびき」
いとこ同士の2人の禁忌の恋心。
時間軸や2人の顔つきなど分かりづらい作品だけれど。
BLでは兄弟ものなんかもあるから「いとこくらい…」って思うけど、現実親戚であることの重みが沁みる。
また、不倫してる女性社員が出てくるんだけど、彼女の存在がスパイスになってると思う。
ただ、「結婚できる関係」だけが善しとされているような空気があるなぁ、とかすかな違和感。

「黒いレインコート」
子供の時から好きだったおじさん、妙な雰囲気の親娘、彼らとの奇妙な交流…
ラストの再会には笑った…!

「森に行った日」
今度は「年上の甥」。
…つまり姉の、20才年上の結婚相手の、息子。との関係性。
血縁はないけれど、とても近しい関係で、曖昧でどう名付けていいのかわからない。ただ「好き」と言っていいの?

「人魚の破片」
人魚伝説を調べる研究者が海辺の町で出会った男。
足の悪い少年は、密漁者?殺人の容疑者?本物の人魚?ミステリアスに解答は無く終わる。

どぎつい描写は全く無く、静かな雰囲気の中で実は激情に駆られている登場人物たち。
特に近親ものは今市子的解釈と言えるのか?遠慮や秘匿、逆にバレなければいいという開き直りとある種の諦めが感じ取れて面白い。

2

近親関係を真っ当に悩んでて、かえって新鮮

【いとこ同士】【けど…】【逢いびき】【週末】
4親等のいとこ同士どころか、禁止されている3親等の叔父&甥ですら、本人達が好きならそれでいいんじゃない?とすっかり崩れてしまった私の倫理観。(地雷だったはずのガチ兄弟ですら大人同士ならお好きにどうぞと思うようになった)
なので、この主人公達がいとこ同士で付き合う事にものすごく罪悪感を感じて、葛藤していることがかえって新鮮でした。

「オレが不幸にしているであろう人達は オレが小さい頃 かわいがってくれた おじであり おばであるのだ」

そっかぁ、そうよね、そうよね。
男同士ということでさえ親が知ったらどう思うかと悩むのに、そこに相手の親・しかもそれは自分の事を可愛がってくれている叔母達も悲しませる事になるという当たり前の事をこの作品で思い出しました。

3つの短編通して、お互いの親の存在が濃いです。郷里が遠くて滅多に会わないといった影の薄さではなく、ご飯食べて行かない?だの、26歳にもなる一人暮らしの男の元へ泊まりにきて変な女と付き合っていないか偵察にきたりだの、何かと親や叔父叔母が登場する。だから読んでいる側もどうしてもその親達の存在を意識せざるえなくて上手いなぁと。

いとこ同士の付き合いに平行して、職場で不倫をしている同僚女性が登場するのですが、不倫が奥さんにバレたあとに言うセリフ「私達二人だけのことだと思ってたのね」が、いとこ同士の二人も指しているようで一層考えさせられました。

携帯電話もない時代。連絡を取るために相手の会社に私用電話をするというシーンが衝撃でした。そういえばサザエさんの世界も会社に私用電話していたなぁ…あれか!と。

着地点がはっきり描かれていないので「手放す日がくるなんて信じられない 絶対に信じられない」と思っていても、もしかしたら別れてしまう日がくるかもしれないと思わせてしまう何かが漂っていてそこがハッピーエンドファンタジーとは異なりリアルだなぁと思いました。でもこのまま薄暗い背徳感を常に抱えながら二人で生きていくのかもしれない。

3

日常に潜む悲劇

男同士でいとこ同士。
二つの条件が重なると、未来には他人同士のLGBTカップル以上の苦労が待っているかもしれない。
そんな未来を示唆しつつ現状の日々を淡々と描く、ほのぼのした雰囲気の中にペーソスが垣間見える味わい深い作品です。

東京のリーマン・修(攻め)と、2歳年下のいとこで地元で就職した道隆(受け)。
学生時代戯れに関係を持った二人が、5年の時を経て再会、恋人同士に。
相思相愛の二人ですが、互いの家族にバレるかもしれない危機感や、将来に対する不安は常に彼らを苛み…

いとこ同士であるということは、仮に別れても永遠に縁が切れないということ。
そのことが常に彼らの関係に影を落とし、この秘密の関係が永遠に続くものではないことを示唆しています。

駆け落ちするほど夢見がちでなく、かといって家族にカミングアウトする勇気もない二人。
自分の家族や親族を傷つけたくないという想いから、表向きは仲の良いいとこ同士として付き合い、お互いの家やホテルでの密会を繰り返しています。

道隆の職場の先輩(女性)の不倫のエピソードが二人の関係のメタファーとなっており、印象的。
不倫と同性愛を同列に語ることはできませんが、「周囲の人間を傷つける」という点で、おそらく二人にとっては自身の関係を連想させる問題。
二人が自分たちの関係を「良くないこと」と考えてしまう点に、社会における同性カップルの生き辛さが表れており、切なさを感じます。

それでも、
道隆が職場の親しい後輩にカミングアウトしたり、
女性の先輩が不倫をやめて新しい出会いに前向きになったり…と、
少しずつでも現状は良い方向に変わっており、暗いばかりの展開ではありません。

ただ、お互いの家族の問題は最後まで宙ぶらりんのまま。
カミングアウトする未来も考えられなくはないですが、二人の性格や家族のエピソードを見るに、難しいのではないかと思います。
道隆の母親のエピソードが特に象徴的。
26歳にもなる息子を心配して、一人暮らしの家に押しかけるような過保護な親に、同性愛のことなどとても受け止められないのではないかな……と感じました。

結局、二人の間に大きな事件は何も起こらず、現状維持のまま物語は終わりますが、近い将来彼らが別れてしまうことも十分考えられる、ちょっと不安感の残るラストです。

何気ない日常が淡々と綴られているだけなのに、彼らの将来について非常に不安が掻き立てられ、読み終わった後もしばらく彼らのその後について考え込んでしまう。
そんな不思議な引力を持つ作品です。

同時収録作やあとがきも含め、読み応えある一冊となっています。

7

世代です。

有名過ぎな作家さまなので恐縮ですが、一度読んだらしばらく作品世界から戻って来られなくなる作品。

どうも近親ものに弱いのは自覚しているのですが、その理由を考えたことがありませんでした。幼ければ幼い程、身近にいる人に恋心を抱いてしまう。(恋でもないのかも。)成長すると血が繋がっている人とそうなることはいけないことなんだと暗に自覚させられて、自然にその思いは解消されていくものなのでしょう。あまりにも当たり前すぎて、こうしてBLでも読まない限り改めて考えてみることもしないのだろうなぁと。

けれど、その思いが消えない場合がある。いとこ同士って、距離感が微妙。男女なら誰にでも身に覚えがある感覚かもしれません。それを男同士でやられちゃったら萌えないわけないですよね〜。(もちろん、フィクションだからこそ萌え萌えしているわけですよ。)

著者あとがきを読んでいただけたら、一読者が語ることは何もないのですけれど、大人のBL愛好者さまなら言わずもがな、懐かしい気持ちに浸れること間違いなし。当時作家さまが入れ込んでいた女優さんや俳優さんを知るにつけ、時代を感じてしまいます(ファッションやヘアスタイルにも。。)道隆が仕事の時だけ、あるいは朝輝が車を運転する時にだけ眼鏡を着用するところが良い。表題作の他「森に行った日」も好きなお話でした。

仄めかす程度なのですが、キスシーンや濡れ場がとても美しい。個人的な話、少女漫画作家の篠有紀子さんがとても好きだったのですが、リアルがファンタジーに飛び越えてしまいそうなギリギリのラインを幻想的な雰囲気で描かれているところに、双方の世界観に通ずる何かを感じます。読む度に不思議な作品世界に萌えていた過去へタイムスリップしてしまうのがなんとも心地よいのです。

他の作品よりかは物語に盛り込まれた情報量がコンパクトで、人物の表情や間で語ってくれる点も好みなため、作家さまの作品の中で一番読み返す作品です。

8

どうしてこんなに評価すくないのだろう

いとこ…昔は一人っ子が珍しく、いとこはたくさんいました。いとこ同士の婚姻を云々されたのも私たち世代でその親世代ではいとこ婚は珍しくないものでした。ですから、親戚同士の繋がりの中で、当事者二人が同性であることの問題の大きさに緊迫感を感じさせられます。
表題作のカップルである従弟同士の二人はともに思慮深く(いまどきの)年齢以上に大人らしい二人でありながら、すれ違いスレスレの心理劇を演じてくれます。なにもかも、レトロ。しっとりと大人っぽい名作です。
携帯電話どころかポケベルも一般的でない時代の恋愛を経験したものとして、路上での公衆電話を使用してのシーンには、ギュギュ~ッと胸を絞られる思いがしました。
子ども向けの絵本で「きつねのでんわボックス」というのがありますが、夜道でポウッと灯る電話ボックスのイメージは無くなりつつあります。その小道具が私たち昭和世代を捉えるのですよね。
この作者さんは幻想的な秀作も広く評価されていて、BLという括りである必要はないと思いますが、この作品は当時の状況の中でBLでなくてはならないおはなしです。

6

いとこ同士

いとこ同士の2人の話です。

兄弟程の禁忌感はないものの、親同士が身内で親戚も顔見知りな中でのいとこ同士。
全くの他人ではない。言うなれれば同じ血族での小さな括り。
それがいとこ同士。

きっかけは修にしかけた、少々悪戯めいても発作的行動でもあった道隆への行為。
それから彼等は暫く会わないのだけれど、再会してそれが恋愛感情だった事に気付きます。
お互いの親にやはり気を使いながら、それでもそれなりに幸せな関係。
北澤の同僚が、彼と道隆との関係に気付くのですがその対応が無理をしていないさらっと感で顔はイマイチだけどいい男だなーと。
引き合わせた女性と上手く行くといいなとかそんな事も考えつつ読んでました。
激しいエロ描写等はありませんが、むしろ今市子さんには無い方が好きっていうかエロ要素は今市子さん作品にはあまり必要ない気がします。

やはり一般誌で活躍しているだけあるなーという土台の大きさと安定のある実力を感じさせる一冊

3

BL?

いわゆるBLというよりは、もっと耽美に近い、でも淡々と進むラブストーリーで地に足がついた大人のロマンスという感じでしょうか。

同時収録が寄せ集め的で、まるでムードが違うし、絵も違うのが、ちょっと残念。

0

二重の禁忌

恋愛相手が同性で、しかも血が繋がっている。
そんな二重な禁忌に悩む「いとこ同士」。
愛があれば性別も血縁も軽く超えてしまうBLが多い昨今、
これぐらい葛藤してくれるお話を読むのはかえって新鮮です。

いとこ同士って結婚が出来る間柄で、兄弟よりは遠いですが。
やはり血は繋がっていて、微妙に顔が似ていたりするんですよね。
しかもお互いの親は、小さい頃から良く知っている「おじさん」「おばさん」だし。
こういう状況下で「同性のいとこが好きです」なんて、そりゃあ言えません。

いろいろと問題は沢山あり、二人の恋は前途多難な様子です。
「オレが道隆を手放す日がくるなんて信じられない」という修の気持ちがあれば、
困難な山も越えて行けそうな気がするのが救いです(楽観的でしょうか?)。

同時収録作品では『森に行った日』が好きでした。
血の繋がりのない兄弟の恋。血が繋がっていなくても、障害はいっぱい。
「少しずつ俺達の間にいろんな物がふり積っていた」というモノローグが切ない!
好きだから、それでいいじゃない!で終わらない二人に、胸が痛くなります。

2

古さが新鮮

全体的に古いなァと感じました。
絵も、話の中身も。
それが逆に新鮮でした。
表題作はいとこ同士の恋の話です。
親に知られることの不安や、関係を周囲にバラせないことの苛立ちや焦燥感などを、じっくり書いてます。
雰囲気は暗いし、主役二人が現実感ありすぎて萌えは感じられない。
けど、こういう話、好きだなーと思った。
最近の、ホモなんて当たり前、すぐにエッチになだれ込んでアンアンいってハッピー、みたいな漫画より、私は好き。きっと私はネクラなんだろう。
で、表題作より『森に行った日』という短編のほうが好きでした。こっちは義理のオジと甥のお話です。同じく暗い。家族に内緒の関係を長く続けてることに、悩んでます。

どの短編も、結論は出ない。
きっとこの先もずっと、結論なんて出ないまま、同じ悩みを反芻し、苦しみながらも付き合っていくんだろうなァと思った。
リアルだと思った。

4

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