父親候補二人のちょっぴりビターなほのぼの同居生活!

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表題作ダブルダディ

三宅暁彦,29歳,恭介の元彼女の現夫,有名企業研究者
早瀬恭介,26歳,施設育ちで現在失業中の青年

その他の収録作品

  • キス・ブランチ
  • あとがき

あらすじ

家族の縁が薄く施設で育った恭介の前に、五年前に自分を振った彼女が現れた。「あなたの子よ」と小さな男の子を置いてそのまま彼女は姿を消す。身に覚えがほとんどない恭介は、彼女の現在の夫・暁彦を訪ねるが当然間男扱い。DNA鑑定の結果が出るまでの二週間、子どもと暁彦と過ごすことになった恭介は、やがて、不器用で誠実な暁彦に惹かれてゆき……。

作品情報

作品名
ダブルダディ
著者
野原滋 
イラスト
街子マドカ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344842342
3.5

(48)

(9)

萌々

(18)

(15)

中立

(3)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
8
得点
165
評価数
48
平均
3.5 / 5
神率
18.8%

レビュー投稿数8

誰の子なのか、DNA鑑定。

再読。
子育てものは好きなので良く読むけれど、必須アイテムである子供をどうやって用意するか?というのがネックだと改めて思いました。
というのも、ちびっこである琢巳の母親・翔子の倫理観が破綻してて胸糞レベルなので。

ただし翔子の登場する率は低いです。
冒頭で、恭介(受け)の元に五年ぶりに元カノづらしてやってきたかと思ったら、「あなたの子です」という置き手紙とともに琢巳を置いて失踪。
そして後半に登場するだけ。(どのツラ下げて?)
全編通して胸糞女成分が沁み渡っているわけではないので、冒頭と後半の箇所さえ通り過ぎてしまえば、赤の他人が出会って子供を挟んでやがて家族となるという良き子育てモノとして読めます。

降りかかった托卵疑惑とともに妻に失踪されてしまった現在の夫である暁彦(攻め)と、恭介と、琢巳との奇妙な共同生活。
たった四歳なのに、言いたいことも呑み込んでしまうような琢巳の妙な聞き分けの良さが不憫でしたが、恭介にめちゃくちゃ懐いて次第に子供らしくなっていく様子がとても可愛らしい。

一緒に過ごすうちに、恭介の中ではいつまでも三人で仲良く暮らす未来予想図みたいなものをちょいちょいイメージしてしまうんですね。
あぁ、〜になったら暁彦さんと琢巳くんと一緒に○○したいなぁ、そしたら暁彦さんはめちゃ張り切って、その様子を琢巳くんと一緒に楽しむんだろうなぁ……みたいなやつ。

恭介は施設育ちゆえに、家族への憧れや思い入れが人一倍強い。
だからこそ、いつまでも今のように暁彦と琢巳との家族同然の暮らしをしたいと思いつつも、それはDNA鑑定がでるまでの期間限定だと思っている様子が切なかった。

暁彦は器用ではないけれど、堅物真面目で裏表がなくこのまま一生恭介を誠実に愛し続けるんだろうなぁと思える男で、良き。


0

正反対の2人


元カノが突然やってきて「あなたの子よ」というところからはじまる話。
展開としては大体こういう時の女性は嫌な人であることが多いけど、今作も酷いというか考えなしの母親失格の女性でした。

失業中の恭介(受け)は昔少しの間付き合っていた元カノ・翔子が子ども連れで訪ねてきます。どういった用事か分からず狼狽える恭介に、すぐ戻るからと出ていったきり帰ってきません。置いていったカバンの中を探ると「あなたの子です、しばらく預かってください」と書いた紙きれが‥
一晩たって戻ってこないので、家を覚えているという翔子の息子・琢巳に案内してもらい彼らの家を訪ねるとそこには翔子の夫・暁彦(攻め)が待っていました。
事情を説明し、初めは険悪な雰囲気になるのですが、冷静にこれからのことを話し合った結果、仕事の忙しい暁彦のフォローに入る形で恭介と3人で同居生活をすることになるのです。

恭介は早くに両親を亡くし、施設で育ちました。施設ではすべてがみんなのもので、個人的に貰ったものでさえ自分のものにでき
ない生活でした。そのため、物に対する執着が強く、自分でもそれを自覚しているため、他人と共有するということができません。自分の部屋に私物を置かれたり、自分のものを我が物顔で使われたりすることを許さないし自分でもしないのです。物以上に扱いが難しい人へは執着しないように極力深い付き合いをしないようにしてきました。
それなのに、何故か琢巳と暁彦が困っているのをみてすぐに協力を申し出たり、泊まり込みになることが決まると私物を持ち込もうとうきうきしている自分に驚くのです。

人より目立つ容姿なため、寄ってきては思っていたのと違うといって振られるという生活をしており、翔子にも「来るもの拒まず去るもの追わず」と思われています。
本当は唯一の望みが自分の家族をもつことだという恭介なのに、そのことを半ばあきらめているのが切ないです。


暁彦は医者や研究者といった親戚に囲まれ、大手の会社の研究員として忙しくしており琢巳のことは妻に任せきりにしていました。実際は翔子にも暁彦にも思惑があったことがわかり、そのためお互い干渉しない生活をしていました。
急に妻がいなくなり、体調が悪くなった息子の病歴も幼稚園のこともなにもか
も翔子がいないとできないことに愕然とするのです。

二人の性格が正反対だったのが面白かったと思います。
暁彦は物事を理論的に考える傾向にあり、琢巳が自分の子ではないかもしれないという話を聞き、DNA鑑定・弁護士・離婚と怒涛のように考えます。
対して、、恭介はこのような話を子供の前で話すのはどうかと思う余裕があり、琢巳の心に寄り添った対応をしようとするのです。
でも、ぱっと見た感じ、柔軟なのが恭介で真面目で四角四面なのかと思うのが暁彦ですが、実際は周辺を柔らかく囲っているだけで芯の部分は硬い殻にこもっている恭介と固そうに見えてじつは柔軟な暁彦でした。
ただ、二人がそんな風だから奇妙な同居生活がうまくいったんだろうと思います。
両方が感情的であれば絶対無理ですが、会社勤めの暁彦が急に一人で幼稚園児の面倒をみるなど不可能であるということを冷静に受け止め、手伝いを申し出た恭介の厚意を受け入れることができるのです。
正反対なだけにお互いの足りなところを補い合うことができ、3人でいることを心地よく思い、恭介は暁彦と琢巳のこれからの生活の中に自分をいれた妄想をしていることにたびたび気が付くのです。
2週間ででるDNA鑑定が終わればこの奇妙な生活は終わるとこの生活や2人に執着しないようにと自戒する姿が切ないです。


DNA鑑定がくるのを恐れながらも待っている恭介の前に元凶である翔子が帰ってき、事態は大きく動くのです。
最終的に3人にとって一番いい感じで事態を収拾できたのではないかと思います。

この元カノが人の話を全く聞かない、自分のことしか考えていないクズでした。
最終的に制裁をくらったというよりは本人の望み通りに近い形になったような気もしないでもないですが、小学生並みの想像力しかない頭の足りない女だったと思います。
ただ、言葉を飲み込んでしまう癖のあった琢巳が自分の思ってことを素直に言えるように、劇的に変化していく様子を見るに、この馬鹿な母親がとっとと育児放棄してよかったと思います。このまま誰にも気が付かれずに育てられたら琢巳はそれこそ欠陥品になっていたんじゃないかと思います。
それでも、この馬鹿な母親には後に自分がしたことを後悔する日がくることを願います。

ちょっと気になったのは拓己が4歳・年少さんにしてはしっかりしすぎだったと思いました。
まだ、幼稚園に行き初めて2か月たってない状態で幼稚園の持ち物なについてある程度認識していることや、習い事について、最寄り駅の名前やそこからの帰り道を覚えていたり、ちょっと険悪な雰囲気になった父親候補二人の空気を読んだりとちょっと出来過ぎな感じがしました。


<電子限定おまけ>暁彦視点
3人で一緒に暮らし始めて1年とちょっと、琢巳にとって初めてのお泊り保育の日です。少しも寂しがらずに園に行ってしまいちょっと寂しい思いをしながら帰路につく暁彦です。
夜になって琢巳はどうしているかと考えながらも、毎日川の字で寝ている3人なので甘い雰囲気になることのない二人が久しぶりの二人の時間を楽しむ話でした。

0

ギュッキュのギュー

子育てものになるのかなぁ~。
4歳児、琢巳くんが超可愛いです!

だんだんのびのび子供らしくなっていくさまや、「お母さんがいなくて、お父さんが二人になるの?」という無邪気な問いかけや「毎日お泊りしてもいいよ?」とか可愛すぎます!
琢巳くんがを中心として三人が自然に家族となっていく様を堪能できます。

お母さんに捨てられるという琢巳くんの境遇や、恭介の寂しい過去設定などかわいそうな部分はありますが、基本ほのぼので、暁彦さんのど真面目な空気読めない天然ぶりもおかしかったです。

育児に非協力的な旦那さんに不満が募り、息抜きをしたくなるという点はわかります。
現実でもある事だし、実際暁彦さんも反省してましたし。
なので、BLとしての展開上しょうがないのかもですが、どうしても女性が必要以上に悪者設定になってしまうのは少し気になりました。

2

この子は誰の子?

今回は特殊素材の開発をする研究開発室長と
リストラで求職中の青年の話になります。

受視点で降ってわいた父親疑惑が解決し
攻様親子と新たな関係を築くまでと
攻視点での後日談を収録。

受様は早くに両親を亡くしたために
施設で育ちます。

高卒で地元のホームセンターに就職、
売り場のチーフをしていましたが
大手会社との吸収合併により
リストラされてしまいます。

そんな今後を憂いていていた受様の元に
突然、元カノが子供連れでやってきます。

受様は彼女の突撃訪問に唖然としますが
別れた5年前と変わらない傍若無人さで
この近くに用事があった寄ってみたと
勝手に上がり込んでしまうのです。

平日の午後に駅近でもないマンションに
子供連れでやってくるのは不自然過ぎ
受様が訝しんでいると

案の定、彼女は連絡してくると
携帯を手に部屋の外に出たまま
なかなか帰ってきません。

受様は残された荷物から
「あなたの子です」というメモを見つけ
途方に暮れてしまいます。

翌日になっても戻らない彼女を
待つことを止めた受様は残された子供を
自宅に送っていくことにします。

子供の案内で向かった高層マンションで
受様を出迎えてくれた男性こそ
今回の攻様になります♪

攻様は昨夜遅くに帰宅したため
2人の不在を友人宅にでも行ったのかと
思っていたらしいのですが
今日になっても妻と連絡がつかずに
心配していたと言います。

そんな攻様に彼女の手紙を手渡すと
攻様も憮然としてしまいます。

とりあえずは
過去の経緯と現状を話し合ううちに
親子鑑定を行う事と
攻様との離婚、受様との再婚と
どんどん話を進められてしまうのですが
受様は話についていけません。

そんな中、
放って置かれた子供の具合が悪くなり
オロオロする攻様に代わって
施設で子供の扱いに慣れていた
受様が対処することで事なきをえます。

子供にせがまれるまま
攻様宅にお泊りした受様ですが

攻様は仕事が山場で忙しい上、
やったこともない幼稚園児のお世話が
できる様には見えません。

そこで求職中の受様が
しばらくシッターをする事となります。

残された4歳児の父親は攻様? 受様!?

再会した元カノに
「あなたの子だ」と言われた受様と
突然妻に子供を置いていかれた攻様の
子育て奮闘記(笑)になります。

施設育ちで人と縁の薄かった受様ですが
攻様親子に頼られての日々は
思った以上に心地よくなっていきます。

しかし、親子鑑定の結果が出れば
父親として1人で子育てするか
攻様親子との関りが無くなるかの
二択しか出口はないのです。

一方、子供の父親の真偽が判らないまま
子育ての主力にされた攻様は
家事全般を妻に丸投げにしていた事を
深く反省して、

受様に助けられて家事をするうちに
子供と受様との時間に
癒しを感じるようになります。

3人での外出や子供同士のトラブルで
2人は親密度を増していきますが

親子鑑定の結果が出た日に
攻様の妻が戻ってきて
彼女が過去に謀った事柄が
詳らかになります。

その後にも更にもう一騒動あって
3人が家族となるまで
ハラハラ&ドキドキな展開で
とても楽しく読めました♪

野原先生のお話は
終盤に向かうにつれて
次々と思いがけない展開になるので
ホントに油断ができません o(>_<)o

施設で育ったがために
自分のモノが持てなかった受様が
自分だけのモノに執着している描写は
大切なモノを持つことのできない
受様の切なさと寂しさと悲しさが
とても胸に響きました。

最低な母親として描かれている
受様の元カノにして攻様の元妻は
かなり自分勝手な人種です。

しかし、
デキ婚した攻様もかなり彼女の性格を
利用していた部分もあるので
互いに都合の良い相手だったと思うと
騙さた攻様もかなり適当だった感じが
否めません(苦笑)

物語という限られた頁の中では
登場人物の良い面や悪い面だけが
クローズアップされることもありますが
誰かから見た好悪の一面だけを
唯一の評価として断じることはできません。

野原先生はそんな多面性を
時に厳しく追及し、時に優しく表現する
とても素敵な作家さんだと思います。

今後はお父さん2人に頑張ってもらって
素敵な3人家族になって欲しいですね。

今回は本作同様思いがけない展開の
野原滋さんの既刊『犬、拾うオレ、噛まれる』を
ご紹介作とさせて頂きます。
あらすじで予想される最後じゃないのが
見事過ぎるお話です♪

4

欠けている部分のある2人の物語

作家買いです。きちんとした内容ではありますが、するっと読みやすいです。

恭介が暁彦と出会うきっかけとなった、元カノが「あなたの子よ」と4歳の男の子の琢巳を家に置いていきます。恭介は琢巳とも早い段階で打ち解けます。
しかしこのままではいかないと判断し、元カノの夫である暁彦の元へ行きます。
どちらの子か分からない状況というので、DNA鑑定の結果が出るまで一緒に暮らす事になります。

恭介は施設育ちで執着心の強いと自分で言っていて、更に綺麗な顔をしていながらもハッキリと物事を言ってしまう性格の様です。そのせいか「思っていたのと違う」とフラれてしまいます。
暁彦は研究熱心ではあるものの、周りの煩わしさから打算で結婚していて家庭よりも仕事を優先させています。

皆さんのおっしゃる通り、暁彦の妻で琢巳の母である女がまあ嫌な奴です。お嬢様だからか我儘という言葉で片付けてはいけない程嫌な奴です。逆にここまで嫌な奴の方が琢巳と一緒に暮らさないと分かる展開で良いのかもしれないです。

この生活において琢巳の存在がとても良いです。恭介に作ってもらった布のぬいぐるみのタクロウをとても大切にしている姿はもう可愛すぎです。2人の間を邪魔する訳でもなく、でも琢巳がいるからこそ繋がっていられる関係というのを上手く表現しています。

琢巳が大切にしているタクロウを他の子との取り合いでトラブルが起きます。この時にいつもだったら穏便に事を済ませる恭介が、相手の母たちと揉めてしまいます。
施設育ちだからこそ、どんなに大切なモノであっても「みんなの物」として自分のものなど何一つない環境で育ったからか、琢巳が「渡したくない」というのなら「渡さない」という選択肢でできないのかと思った結果の出来事です。
他の人達からすれば「何だこいつ」となっても当然の出来事ではありますが、執着心の強い恭介というのがよく表れていました。

暁彦も何もできないという訳では無いようで、一生懸命お弁当を作ったりと努力しています。母親があんなでも琢巳が懐いていたし、仕事へ逃げたと暁彦は言いますがもう1つの事件からしてきちんと琢巳を愛していたというのが分かります。

お互いがお互いを褒め合い、自分に欠けている所を言い合うシーンが数回あります。2人の距離が近付いていくと、その欠けた部分を補うのにいい2人だなとじみじみ思います。

子どもが出ている作品を毛嫌いする方もいるとは思いますが、そんな方にも読んで欲しいなと思います。
全体的には満足なのですが、元カノを含めて少しキャラの癖が強いかなという印象でもあるので好みが分かれるかもしれないです。

2

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