イラスト付き
栗城先生のオメガバース+yoco先生の美しい表紙、ときたら手を出さずにいられなかったのですが。
受け様はレース編みを王家に献上している領主の息子であるオメガの泪。
病床にある父が再婚したアルファの養父と義兄2人に辛辣な扱いを受けていてまさにシンデレラ状態なのですが、オメガだから、と諦めて享受する日々を送っている。
そんな中、義兄達から逃げた先の湖で泪が出会ったのが、アルファであるパン屋の手伝いをしている攻め様の理人。
ここではオメガとか身分とか関係ない、と2人は友達になり、理人の存在は泪にとって唯一の癒しなる。
他にも王都で働く同年代の幼馴染もでき、実父が亡くなった後ますます辛い境遇であっても、つつましく頑張ってるるい。
健気でこんだけ頑張ってるんだから、幸せにならなきゃ。
受け様の幸せが私の幸せ、な私なので、泪の幸せがかかっている攻め様である理人が好きになれるかどうかがとっても大事な訳で。
最初は泪がいじわるをされたらいたわってくれたり、危ない時には助けに来てくれたり、と好印象だったのですよ。
でも、大事な隠し事をしてる段階で、「好き」って告白するのはダメだわー。
先に言わなきゃいけないことあったでしょうに。
舞踏会で、オメガのヒートにあてられて泪だって分かる前にセックスしちゃって、ないわー、ない。
もし泪と結婚したい、と本当に願っていたのなら、オメガは王室に入れない、という慣習があるのはわかってたんだから、もっと早くから根回しや準備をしとくべきじゃかなったのー。
だから、執事があんな事したんでしょう。
と、申し訳ないけど、理人には、後半、私的にダメだしの嵐でした。
こんなやつには泪はやれん、と言いたいところだけど、迎えに来た理人の姿を見て嬉しそうな泪を見たらよかったね、と言うしかない。
泪が姿を消した数ヶ月間、必死な思いで泪を探し回っていたであろう理人の姿を想像することで収める事にしました。
まだ二十歳の若造だしね、これからスパダリになって、泪をずーっと幸せにしてくれることを期待してるよ。
イラストはyoco先生。
レースの繊細さとか、ステキ過ぎる。
子供時代の2人とか、かわいらしくて悶絶でした。
作者買いです。
高評価の中、申し訳ないですが私はあまり楽しめませんでした。
本当に本当に最後のほうまで受けが不憫なんです。
私は受けにはできるだけ幸せであってほしいのです。凄く感情移入して読んでしまうので、健気だったり不憫だったりする受けが幸せになるのは好きなのですが、あまり長期間の不遇を詳細に書かれてしまうと心が痛くて疲れてしまうのです。
幼い時に母を亡くしたオメガである泪(受け)は公爵家次期当主であるにもかかわらず、後添え親子(アルファ男性同士の結婚のため、継父と兄二人)により長い長い不遇の生活を強いられます。
この不遇な生活が本当に酷くて読んでて辛かった。それにずっと耐えて耐えて耐えて、いつになったら幸せになるんだよ!と途中からはちょっと腹が立ってきました、何度挫折しそうになったか。
泪の心の慰めになったパン屋の職人・理人(攻め)の正体についても予想がついたので、次のシーンではなんとかしてくれるんじゃないかと思いながら読み続けましたが、読んでも読んでも不遇なまま。
やっとお城の舞踏会に到達し幸せになるのかと思ったら、発情期に襲われ我を失った理人に襲われ、泪が理人への恋心に気づいたと思ったら、絶望の淵に落とされるし、そのうえ理人はおぼろげにしか覚えていないしもうがっかり。
アルファはオメガの発情に理性を失うとはいっても、せめて泪だとわかった上での(途中で気づいたけど)行為だったんなら良かったのに。一応フェロモンに抗ってはいたけど結局行為に至っていたし、泪じゃなかったら大事故じゃん。
お話としてはとてもよくできていたと思うのですが、とにかく本当に最後まで泪が不憫なのがしんどかったです。
泪が唯一本音でいられた幼馴染4人組(理人やパン屋の息子の斗真、仕立て屋の礼央)のエピソードはとても和やかでこの話の中で癒しでした。
特に、舞踏会までは普通の友人として理人と泪は友人関係を築いており、理人は泪の心の支えとなっていたのに、舞踏会以降は他の幼馴染のほうがよっぽど活躍していて理人の活躍が全く足りない。
泪のことはみんな知ってたのに、王族だっていたのに、どうしてここ迄ならないと助けられなかったのか、なにか手段があったんじゃないかと思ってしまって、もやもやしまくりで、理人にスパダリ感が全然感じられなかった。
後添え親子に関しては、最後は泪を亡き者にまでしようとした継父に泪を虐め続けた長兄、最後は泪を庇おうとした次兄。
長兄は完全に自業自得なのでどうでもいいですが、次兄に関しては泪のことを好きだったのは本当だったので、上手く立ち回っていれば地位も名誉も愛する人も総取りできる1番近いところにいたのにもう少し活躍できれば良かったと思うと残念です。
そして、すべての元凶の継父に関しては、泪が最愛の人(泪の父)の愛した人に似ている憎しみもわからなくはないけど、泪の後見人として親友を信頼した泪の父親の気持ちを踏みにじる行為だとは本当に思わなかったのだろうか。
泪の父が亡くなった時点で彼の心も死んだのでしょうか。彼には心の底から反省してほしい。
(泪の父と継父の学生時代の話は小冊子にかかれています)
そして、番になった相手に勝手に身を引くように言った理人の執事も嫌味を言われるだけだなんて納得いかないです。もっと明確な制裁をしてほしかった。ベータの夫婦とは違うとわかっていながらのこの暴挙、アルファの傲慢さが現れていて本当に気分が悪い。
受けがどん底まで落ちたうえで最後の最後で幸せを読むのが好きという方にはぴったりな話だと思います。
最後には幸せになったとはいえ、どんなに長くても話の1/3くらいで不遇な時は終わってほしいと思う私にはかなりキツイ話でした。
絡みは1回。それも発情期の強姦まがいの1回だけ。ちゃんと両想いになってからのが1回見たかったです。
再読すると新たな面がみつかったり自分の解釈不足を見つけたりするため、いつもは再読した上でレビューをするのですが、今回はもう一度読みたいと思えないので浅い解釈しかできてないかもしれません。
yoco先生の挿絵が絵本のようで、このお話にぴったりです。電子購入(honto)ですが、挿絵付きでした。
お話も、表紙からイメージできるとおり、おとぎ話のようなキラキラと優しく紡がれるお話です。なんとなく、布製の表紙がついた絵本をイメージしました。電子ですか、紙版を買おうかなーと思うくらいお気に入りです。
オメガバースものの、ファンタジーです。オメガは侯爵の当主にはなれない世界。領民も領主も、レースをつくり、模様は家ごとに異なっています。とくに領主である侯爵家の模様は豪華で、王家へ献上するのが習わしなのです。受であるオメガの泪は侯爵家の息子ですが、父が継父と結婚したことで、その継父継兄から不当な扱いを受けています。嫌がらせを受けたり、追いかけられて逃げた先に、攻であるパン屋の息子でアルファの理人と出会います。嫌がらせのためにお腹をすかせた泪に理人が試作品として作ったパンをあげ、その感想を伝える。そんな日々が、大人になっても続きます。
王家へ納品する必要もあるレースを作れるのは、泪だけ。泪は不当な扱いをうけても前向きで、レースづくりには誇りを持っていて、健気で好感が持てます。友人であるベータの礼央や斗真もいい子で、嫌な人はでてきますが、ハラハラしながらも友人たちとの場面などホッとできる場面があるので安心して読めました。
アルファである理人は、優しく、兄のような存在。優しくて人望がありますが、思ったよりも強い存在ではなさそうな印象でした。でも、泪に寄り添う姿は、泪にぴったりの相手だなーという印象。
キラキラしたお話、優しいお話が好きな人にオススメしたい本です。
麗しい表紙買い。後半まですっごく好きだったんですが、最後、勝手に期待していたのと違って、はずしたーという気がしたので申し訳ないです、お話は萌。だけど挿絵があまりに麗しかったので萌2です。めっちゃオメガが蔑まれている世界ですが、受けさんが凛としていたように感じられたので、救われました。「本編210P超+後日談16Pほど+先生のあとがき」です。
お話は泪(るい)8歳の時から始まります。6歳の時にオメガであった母を亡くし、床に臥せるようになってしまったアルファの父(侯爵)。学友だったという男が現れ、見舞ううちに父はその男と再婚し、連れ子の二人(♂、アルファ)とともに侯爵家に入ってきます。病弱な父がいない時は泪のことを邪険に扱うようになり、いじめに耐えかねる時は家を飛び出して屋敷の近くの雑木林に逃げ込む泪。そこで出会ったのがパン屋で働くという理人(りひと)で・・とお話は続きます。中盤ぐらいまではシンデレラっぽく感じました。
攻め受け以外の登場人物は
継父、継父の連れ子二人、礼央(仕立て屋)、斗真(パン屋)、執事、王家の使用人等。
礼央と斗真がとても良い仲間です。
**はずしたーと思った点
理人があまりアルファアルファしていないように感じました。スパダリ感が少し弱かった、特に最後のあたり!!!!!ちがうっそこでゴリ押せよっなぜ引き下がるーーーーーーーとめちゃ怒り。
それと、なぜか櫂(継兄)が気になってしまって。泪を守るのは櫂であってほしかったなあ、ストイックな関係でよいから一生守らせてくれ等と言ってほしかったなあ、と思ってしまったのです。そして最後はちゃんと理人に引き渡すという役どころが良かった(´;ω;`)
泪は、諦観しつつも、あまり後ろ向きにはならなかったので、とても好きでした。働き者だし。勤勉大事。ひかえめで清らかなレースのような印象の子でした。(そのレースのような雰囲気が、yoco先生の挿絵にとても現れていて、うっとりです。素敵だわ、yoco先生の挿絵。)
途中とてもハラハラ心配して、きゅううとせつなくて萌え萌えだったのですが、最後の方の攻めがちょっと好きではなく、うー残念!でした。
最近読んだ栗城さんの「玉の輿」シリーズがとても面白かったので、オメガバースをどのように描かれるのか気になって、読んでみました。
私自身は運命を意識したことはありません。それだけ自由に生きてきたのかもしれません。
本作品で描かれている世界は違います。身分に加えて、第二の性(アルファ、ベータ、オメガ)による差別があり、小柄で能力に劣ることの多いオメガは、発情期に強力な催淫フェロモンを出すため、容姿と頭脳に優れるアルファを惑わすとして、世間から蔑まれています。そのため、オメガは様々なことを諦めて生きなくてはなりません。自分ではままならないことが多い世界だからこそ、オメガの主人公・泪とアルファの王子・理人が出会い、波乱の末に結ばれる物語に、『運命』という言葉はピッタリだと感じます。
運命の残酷さを感じたのが、泪がお城の中で発情期を迎えてしまい、気持ちを確かめ合わないまま、理人に抱かれてしまう場面。自分の恋心に気付いた途端、理人の身分も知ってしまい、二重に傷ついた泪のやるせなさが痛いほど伝わってきました。
継兄が意地悪をしてレースを燃やさなければ、抑制剤を飲み忘れることもなかったし、お城で発情しなければそんな悲しいことにもならなかったでしょう。でも、お城の外で発情してしまったら、もっとひどいことになっていたかもしれないし。なぜ、このタイミングで…と思わされます。
自分は理人にふさわしくないと思い込み、嘘をついて理人を遠ざける泪が不憫でした。理不尽に慣らされると、人は幸せを求めることができなくなってしまうのかもしれません。
しかし、離れてしまいそうな二人を繋ぎ留めたのも、やっぱり運命だったような気がします。理人の執事が泪に飲ませた避妊薬は効かず、泪は理人の子どもを授かります。子どもがいなかったら、泪は生きる意欲を失ってしまったでしょうし、理人と生きる幸せを受け入れることはできなかったでしょう。運命が二人に味方してくれたのだろうな、と考えたくなります。
途中までは、理人が自分の地位を捨てて泪と一緒になればいいのに、とじれったく感じたのですが、最後まで読み、そうしなくてよかったと思いました。みんなが幸せになる国を作りたい。理人のその願いがかなったなら、泪はもっと幸せになるでしょう。彼等の世界が優しく変わっていく希望に、温かな気持ちになりました。
泪の作るレースと理人が泪のために作るパンが、物語の繊細で優しい雰囲気を作っているように感じました。yocoさんのイラストがその雰囲気にとても合っていました。