電子限定おまけ付き
野原先生のクスっと笑わせる文体、トラブルと言えば嫉妬、カワイチハル先生のとにかくキュートな王子と、童貞だが異様にキスがうまい忍者。
精神的圧迫のない、楽しく読めるBLです
忍者×アラブというトンチキ設定だけどぶっ飛んでないんですね、不思議と。
攻め受けどちらも誠実でウブなキャラなので、ひたすら微笑ましいというか。
あ、でもそこはアラブの王子様。
日本の庶民の生活を体験したいと来日するんだけど、楽団を引き連れてきたり、一ヶ月の滞在のために分譲マンションを購入したり、学外にテント張って全員に菓子を振る舞おうとしたりと、スケールのデカさはやはりアラブ。
そして念願の日本で、目に入るもの全てが物珍しい!といった王子様の様子がとても微笑ましい。
アラブの王子様であるサラム(受け)がとってもチャーミングなんですよ!
母が北欧系ということで、抜けるような白い肌、金糸のように艶やかな髪、そして真っ青な瞳。
小説だけど、カワイチハルさんの挿絵との相乗効果で、その輝くばかりの美しさが容易に目に浮かぶんですね。
そして「育ちが良い」を地でいくというか、天真爛漫で、無邪気で、聡明で、とにかく素直。
性格も容姿も一点の曇りもないっていうんでしょうかね、とにかく存在そのものが、キラッキラとまばゆい。
あぁ、こんな子に好かれたら、どんなに硬派で朴念仁な隼人(攻め)でもクラっとしちゃうわ……と。
初めてサラムを抱くときに、男に恋情を抱いたことは一度もなかった隼人がこう思うんですね。(というよりも、修行に明け暮れていたので恋とは無縁だったというほうが近いかも)
「サラムが女だったらなどと考えたことは一度もない」
「サラムがサラムだからこそ、恋に落ちた」
実を申し上げると、私はノンケ男が男を好きになるときの「男とか女とか関係ない、お前が〜」というアレが好きじゃないんですね。
食傷ぎみというか、そんなわけないだろ……と思ってしまうというか。
ゼロじゃないとは思うけど、そんなに至るところで頻繁に発生するか?みたいな。
そういう天邪鬼な私なんだけど、この「サラムがサラムだからこそ」にはすんなり同意できちゃった。
そのくらいかわいい。
そして単にかわいいだけではなくて、意思を持った一人の人間としてしっかりと成長していくところも良かったです。
電子書籍で挿絵あり。
本物の忍者×本物の王子です。
挿絵のおかげで受のサラムがいかに可愛いかが如実に伝わってきます、ありがとうございます。
受のサラムが日本の忍者村で出会った攻の隼人を気に入って、3年後もう一度攻に会いに日本に短期留学に来るところから始まります。
ストーリーとしては基本サラムのラブアタックを、隼人が「相手は異国の王子様だから」と、額面通り受け止めずかわし続ける感じです。早く両思いになれよ〜〜ともどかしい気持ちになります。いざ両思いになると…この忍者、ムッツリですね(笑)。
攻の隼人は、忍者として修行しているので、肉体的な鍛錬はもちろんしていますが、それだけでなく語学も、ストーリーの終盤には大学に入るための勉強も、普通の人にはできないほどの努力を積み重ねる人。ただただすごい。そして修行のしすぎで恋愛をしたことがなく、受のサラムに心を乱される度に、「修行が足りない」とかいって自分を戒める始末。いやいや、修行どうこうの問題じゃないんだよ、君(笑)とツッコミを入れながら読めます。
受のサラムはアラブの王子様ですが、お母さんが北欧系でサラムの見た目も白人風。常に厳重な警備に守られているサラムが日本に留学するため、周囲を説得するのはものすごく大変だったはず。しかも日本語もめちゃくちゃ上手です(口語表現は苦手なようですが)。こちらも攻に負けないほどの努力家。それでいて、王子様然としていて一般人とは明らかに考え方や価値観が違うところも良く伝わってきました。
普通ではない設定は面白いのですが、全体的にはそこまで強く印象に残る点はなかったかも。サラムの従者・ファハドは良い味出してました。
アラブの王子と忍者、という普通なら一緒に並ばないであろう言葉が並ぶびっくりな組み合わせですが、主従ものみたいな感じでした。
ただ、本当の主従である王子とその護衛の攻防戦も楽しかったです。
<あらすじ>
忍者村で忍者のパフォーマンスをする隼人(攻め)は正真正銘忍者の末裔です。
3年ぶりに来日してきたアラブの小国ラファード国の第4王子・サラム(受け)の護衛兼世話係としてサラムと一緒に聴講生として大学に通うことになります。
期間は一か月。
なるべくたくさんの経験をしてもらおうとする隼人ですが、無邪気なサラムの行動に振り回されっぱなし。
珍しい攻め視点。
隼人はサラムが忍者村に遊びに来た際、とても気に入られ懐かれます。
日本に残りたいと駄々をこねるサラムを宥めたのは隼人の主人の雅典でした。
「周りの皆を説得して再来日した際には隼人を世話係に付けよう」と。
サラムは納得し帰国しますが、隼人は再来日することは難しいだろうと思っていました。そんな隼人の予想を裏切り、3年で日本語を習得し父王や兄たちを説得して来日してくるのです。
初めは、過保護すぎる護衛との攻防やラファード国の慣習を持ち込もうとするサラムへの教育的指導などで大わらわですが、慣れてくるとサークル活動に参加したり祭りに出かけたりと二人で日本の様々なものを体験する様子がとても楽しそうでした。
特に大きな事件が起きませんが(小さいものはありますが)、サラムと一緒にいるうちに隼人がサラムに惹かれていく様子がよくわかります。
サラムはマイ手裏剣を作り投げる練習をしていたくらい忍者に憧れていていました。最初の手裏剣体験の時の護衛たちの慌てっぷりやげんなりした様子が、如何にあちこちいろんな方向に飛ばしていろんなものを壊してきたのかがわかってが笑えます。(某忍者アニメの良い子たちのよう)
世間知らずで無邪気で鷹揚で、身体が弱かったこともあり過保護に育てられていますが、芯が強く行動力もありただ守られるだけの王子ではありません。
何があっても自分の目的を果たす強さは好感が持てます。
隼人の方は少しづつサラムに惹かれていく感じでしたが、サラムははじめからあからさまでした。
でも、始めサラムは抱きついたり、「私の忍者」「私のもの」と言ったりずっとアピールし続けていたのですが、最初の突飛な行動のせいでアラブの王族は従者にはこういう態度をとるのだろうと勝手に解釈してスルーしているのが、サラムにとってはとても気の毒でした。
隼人にしたら、自分は雇われている立場だと思ってるし、まさかそんな理由だとは思ってなくて、サラムのアピールに気づかず動揺するたびに「修行が足りない」と何度も何度も呪文のように呟いているのが笑えます。
サラムと過保護な従者たちの攻防も楽しいです。
何をするのも危険だといって、サラムの行動を制限しようとする従者たち。
普通の暮らしがしたいとマンションを買って住み始めたときは、心配しすぎて部屋の中に隠しカメラを設置したり、サラムが生まれたときから従者をしているファハドにいたってはバスルームの天井に潜んでいたり(忍者か!)と面倒くさいことこの上ない人達でした。
サラムのお願いをファハドが情でもって対抗すると、そのさらに上をいく情に訴える作戦で許可をもぎ取るサラムとファハドの攻防戦も楽しかった。
それでも、皆サラムが大好きで心配しているが故の行動なのでなんだか憎めません。
隼人の主は別にいて自分のものにはならないと悟ったサラムがとった行動でちょっとすれ違います。
これは自分の立場を考えていない軽率な行動でしたが、それでも恋するサラムにとって周りが見えなくなっていたんだと思うと切なくなりました。
結局、「雨降って地固まる」で、お互いがちゃんと向き合って本音をぶつけ合ったことで丸く収まって本当に良かったです。
その後も鉄の意思で、隼人と一緒にいるために周りを説き伏せサラムはきっと両国にとって良い架け橋になってくれることでしょう。
電子限定おまけ
「鍋と炬燵と洗濯ネット」
大学に進学し二人の同棲生活を始めるにあたって、買い出しに出てきた隼人とサラム(と、ファハド以下従者たち)。
サラムはなんでも100円で売っているお店に大興奮。
洗濯ネットを見つけては使い方を聞き、便利だと言ってファハドたち従者の分も買うサラム。
普段外商が自宅にやってきて買い物をするサラムは自分で商品を手に取り選べることが楽しくて仕方ありません。
続いて夕飯の買い物です。
夕飯メニューを考えたサラムは炬燵で鍋が食べたいといいだします。
早速、家電量販店で炬燵を買い、鍋を作ることにする二人。
この時、いち早く荷物持ち要因を用意するなどファハドがいい仕事をしています。
食べさせあいっこをして新婚さんのようだと喜ぶサラム。
熱熱の食材を「あーん」され悶絶しながらも、このかわいい恋人のためなら火でも飲み込む決意の隼人。
結局、大して食べないうちに隼人がいたずらを始め、のっぴきならない状況になりベッドに行く最後まで甘々な二人でした。
念願の大学生活の始まりに喜びいっぱいの二人の様子がすごく楽しそうでした。
最初のころは過保護すぎて困ったちゃんな感じだったファハドも、炬燵で鍋と言われても危ないとか言わずすかさず炬燵を運ぶ要員を用意するんなど丸くなったなぁと感心しました。
でも、ファハドが二人の関係に気づいたら一波乱あるかもしれませんね。
野原先生買い。最後の方で、攻めにもうひと踏ん張りしてほしかったなあと思ったので中立より萌です。本編230Pほど+後日談17Pほど+先生のあとがき。純粋頑張る天使ちゃんがお好きな方にはよいかも。
夏休みを迎えた「秦野忍者村」の忍者ショーで、軽々と動き回る隼人。観客の中に青い装束をまとった少年がいることに気付きます。その後手裏剣体験で教えたり、ホテルでのパーティで再会したりして、その少年=ラファード王国の王子にすっかり懐かれた隼人。サラムは必ず日本に戻ってくるといって一旦帰国したのですが・・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
攻めの主(スピンオフでてきそうな良さげな方なんだよな)、受けの従者(健気だわ・・・振り回されっぱなし)、大学での学友少々。従者のファハドが楽しいw
**攻めにもうひと踏ん張りしてほしかったところ
アラブの王子に、陥落するのはいいとしても、手を出しちゃいけないと思ったんです。溺愛されてそうな王子なんだから、うっかり手を出したら向こうの父親(=国王)が怒鳴り込んでくるんじゃないかと思ってw。それも楽しそうだなと思うのですが、とにかくもう少し踏ん張ってほしかった・・・
「言い寄られても「だめです」などと頑張る」→「不慣れな受けがひたすら誘惑するのに負けて敢え無く押し倒す」という展開だと、嬉しいなあと思ったのです、すいません。
天真爛漫な受けさんは可愛かったのですが、硬派っぽく思った攻めがさくっと手をだしたところがちょっと残念だったお話でした。