• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作天使と悪魔の一週間

七塚史彦、大学生、20歳
篠真琴、大学生、20歳

その他の収録作品

  • 最悪の一日最良の一日
  • あとがき

あらすじ

自転車と接触事故を起こして意識不明の重体!! 朦朧とする七塚に囁いたのは、なんと天使と悪魔──!?「あなたが望むなら、彼と魂を交換してあげましょう」それって恋敵の体に俺が入るってこと!? 提案に強く心揺さぶられる七塚。なぜなら体の持ち主・高峰は、七塚が片想いしている級友の幼なじみで、同居中の相手だからだ。高峰をずっと羨んでいた七塚は、誘惑に負けてつい承諾してしまい…?

作品情報

作品名
天使と悪魔の一週間
著者
高遠琉加 
イラスト
麻々原絵里依 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199009365
3.6

(28)

(7)

萌々

(11)

(5)

中立

(3)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
6
得点
97
評価数
28
平均
3.6 / 5
神率
25%

レビュー投稿数6

コミカルとシリアスの案配が絶妙

もっと早く読めばよかった!めちゃくちゃ面白かったです!

嗚呼、素晴らしきファンタジーBL…いやマジで、コメディとファンタジーとシリアスの見事な融合が凄く良かった…!(笑えるところもあって面白く、でもそれだけじゃなくて甘酸っぱさやもどかしさや切なさや胸キュンもあるっていう…。)

すうっと入ってくるような感じで、物語を進めるテンポもよく、全体的にライトな雰囲気でした。

何ていうか、周りのみんなからちょっとずれていて普通にもなれない、ダサくてカッコ悪くてモテなくて曖昧で冴えないイマイチなダメダメ劣等人間のくせに「自分はみんなとは違う」とか「やろうと思えばいつでも何でも出来るんだ」みたいな、結局は何にも出来ずにただ妄想に耽るつまらない日々を何となく過ごしているだけの、虚無と夢が混在している、あの悶々とした感じが痛い程よく分かるっていうか…。でも逆にそれが生きる力ともなっているっていう気もしますけどね。

子供時代の、高峰のことを思ったが故の篠のとても真っ直ぐな行動に対する、七塚の純粋な返答がとても良かった…
篠は少しホワ~ンとしていますが、実は強さを内に秘めているのではないかと思わせるところで、篠と「甘い運命」の湯原が似ている気もしました。

わりかし主人公たちに対し厳しいことを書き連ねてきた高遠さんも、この「天使と悪魔の1週間」では少し違った一面を見せてくれた気がします。

気持ちが移ろう様を七塚と高峰の入れ替わりや天使と悪魔と結びつけたのは見事としか言えないですね。(悲しいかな、高遠さんとは違って私の言葉にはこの素晴らしい作品を上手く紹介できる力がありませんorz)

書き下ろしは、恋人同士になった七塚×篠と高峰の3人で温泉旅行に行くお話(今度は七塚が仕掛けられる側なのが良い!)で、いつの間にかジーンときてしまってとても幸せな読後感です(´∀`)
受けたんの変貌っぷりも大変可愛らしいのでゼビ♪

0

もうちょっと読みたい!

読み始めてしばらくは、
どうも主人公に肩入れできなくて
読むのが辛かった。

なんでかなと思ったら、
七塚くんが恋する篠くんの隣に
いつも高峰くんが居たというしっくりさ加減。
横恋慕感が強くて、
高峰くんの中の七塚くんに上手く共感できなかった。

それが後半になって、
篠くんが高峰くんの中の七塚くんに気づいた頃から
急に物語が動き出した感じになります!
急転直下な感じで!

ここからは素直に二人の物語として
するする読めるように!

そうすると、恋物語としては
やはりちょっと物足りない感じがするのですが、
その辺は続編で上手くカバーされている感じ。
ここで高峰視点が出てくるのがいい。
ずっと高峰くん気になっていたので!
やはりこうなると、
高峰くんのその後がとてもとても気になります!
高峰くんにもぜひ幸せになって欲しい!
スピンオフ熱望です!

読んでいて、
エンジンが掛かるまで時間がかかり過ぎて、
ちょっと物足りない感があるのですが、
上手くまとめてあるなと、
作者さんの腕を感じました。

評価は×2寄りの「萌×1」で!

1

隣の芝生は、青いのか、それとも……

不幸体質の主人公・七塚が事故にあってしまい、一週間という期間限定で、恋敵だと思い込んでる高峰を借りて高峰になりきって過ごしてみることになるというお話。
頭も顔も平凡で、いつも貧乏くじばかり引いてきたの七塚に対し、高峰はイケメンで成績優秀で金持ちで、おまけに片思いをしている篠と幼馴染で同居中。

リア充なイケメン様としてさぞや楽しく暮らしているかと思いきや、高峰の体を借りて過ごすうちに、実はかなりの苦労人であり恵まれない境遇で育った人だという事を知っていく七塚。
そして不運続きの人生だと思っていたけれど、心の底から心配してくる家族がいるという事だけで幸せなんだと気づいていきます。
「隣の芝生は青く見えるけどそうじゃないんだよ。」という事が、説教くさくなく書かれていて良かったです。

そして綺麗なものを一緒に見て、綺麗だねと言い合える相手がいるのは奇跡だと噛みしめるところが良かった。

主人公である七塚とその相手の篠との恋愛模様は、どちらも初々しくて可愛らしい感じ。
それよりも七塚の存在感が光りました。
幼なじみの篠が七塚という恋人を得た後ですら、篠が一番だと言い切り、篠の幸せを願う高峰にこそ、幸あれと心から願わずにはいられない。
スピンオフ熱望。


人間に究極の選択を突きつけ選ばせ、その動向を楽しむ天使と悪魔たち。
七塚や、高峰が出した結論が彼らの予想を覆すようなものであったことが、何だか誇らしくなりました。
人間って捨てたもんじゃないでしょ、と。

3

スピンオフ熱望

麻々原先生挿絵狙いで購入。3Pかと思ったら違いました。
コメディ路線かと思ったらそれも違いました。
いい意味でとっても裏切られ「ええ話や!!!!」と思ったお話、雑誌に掲載された本編220P弱+その続き90P弱+あとがき。本編の最後の一文と後編がすごくすごくすごく好きだったので神にしました。
先生曰く「当社比、ライトです!」とのことです(笑)

交差点でスピードを落とさず突っ込んでくる自転車とそれに乗っている高峰に気付いた七塚。
よけられずあっさりぽーんと飛んだら、なぜか白い世界で、そばにはアイドルばりの悪魔ちゃんと公務員か!というような天使さん。そして足元では路面に横たわる自分と高峰が救急車で運ばれて行く様子が。
悪魔ちゃんと天使さんが言うには、「お兄さん、当選です!」とのことで・・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
天使さんと悪魔ちゃん(表紙の二人)、高峰(受けの幼馴染、超イケメン)。この3人ともすごく気になるキャラで、高峰のスピンオフ、そしてできれば天使+悪魔でもスピンオフが欲しい・・・

**好きだった箇所

天使と悪魔のゲームに巻き込まれて、高峰の体を1週間借りることにしてしまった七塚。
高峰と篠の関係が今一つ分からないまま、好きな篠と一緒に暮らしてはじめ、好きだという思いと、でも負け組な自分がこんなことしていていいのかという思いとがぐるぐるしていて、私が思う「普通の人間の反応だわー」ととても安心してシンクロしました。

だから彼の最後の選択(自分でもっと生きたい!)にはとても嬉しくて。そして彼の「この世の中、そんな捨てたもんではない」という思いにとても賛同したいです。今どうということのない幸せな状況だからこそ言えるセリフではあるのですが、それを信じていれば、どん底にいても抜けてこられるかなと思うんです。
その辺りを映画「ベルリン・天使の詩」のシーンを部分部分登場させることで、盛り上げてくださってます。あの映画好きな方は、このお話での使われ方をチェックいただいても良いのでは。

そして巻き込まれた側だった高峰が、後編ではなんとゲームを仕掛ける側に。
彼の純粋な思いがいつか彼の人生に光となって降り注ぎ、彼自身を温めてくれるといいなと凄く思うので、スピンオフをめちゃくちゃ希望します。先生絶対書いてください、お願いします!

7

本の最後にまさかの号泣

「やっぱり高遠さんがだいすきだーっ」と叫びたくなる様なお話でした。

詳しい内容はポッチ様が大変綺麗に紹介されておりますので、私は遠慮します(このレビュー、伏せておくべき所は明かさないまま、過不足なく物語の運びを紹介していて素晴らしいと思うのです)。私はこのお話を読んだ『興奮』についてだけ書かせていただきますね。

今年出版された高遠さんの本を2冊読んで「あれ?ちょっと雰囲気、変わりました?」と思ったんです。
何がどう変わったのかが自分でもはっきり解らなくて書きづらいのですが……
強いて言えば、主人公が違う感じ。
以前は触れる事すら許さない様な、孤独の香りを纏わせていた人が主役を張るお話が多かった様に思うのですよ。その孤独が、他者と交わり反発したり受け入れられたりする中で、どんな風に解けていくのかが『読みどころ』だったとでも言うか。
ここ2冊は、主人公がもう少し『普通の人寄り』の様な気がするんですね。
特別じゃない、私と同じその辺にいる様な人が『自分が自分である意味を知る』このお話、読んでいるうちに激しく七塚に同化している自分に気づきました。

七塚が自分の平凡さに対して感じるのは『小さな悲しみ』だと思うのです。
平凡であることは、生きて行くことに決定的な影響を及ぼしません。
でもそれが理由で、自分が手に入れたいものが永遠に手に入らないと考えてしまえば「どうしてなんだろう?」と激しく沈んでしまう様な種類の悲しみ。
いや、私も七塚だったら入れ替わりを希望しちゃうと思うもの。

で、結果としてどうだったかは、是非お読みいただいてお確かめください。
この手のお話は、一歩間違うと説教臭くなってしまうものですけれど、決してそういう無粋には陥らないまま爽やかに表題作は収束します。
この辺は『美文の魔術師』たる高遠さんの本領発揮だと思うのですよ。
『美しい文章』というのは、きらきらしい文章を指す訳じゃないことを教えてくれます。スッキリとしていて解りやすく、そのくせ登場人物に共感しちゃう。
ああ……綺麗だ(うっとり)。
小説好き、特に文章フェチ気味の方は是非お手に取っていただきたいと!

で、後日談のコミカルな書き下ろし『最悪の一日最良の一日』。
楽しく読んで、終わり5ページに差し掛かってからの大展開。
……泣くよ。
こんなの、泣いちゃうよ。
高遠さんに「人間って結構善良なんですよ」と言われて、本当に泣けました。

11

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP