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マッチングアプリ開発担当者×マッチングアプリの広報

IAの判断は間違ってないけれど、そうじゃない時もある。一長一短だと分かりつつある今の世界にマッチしているテーマでまず惹き付けられます。
マッチングサービスだけでなく、VRでイベントに参加という話題もありメタバースを感じさせて2018年発売の本作ですが、2023年の今読んでも違和感がありません。
主人公たちの会社が多様性を重んじる近年の感覚にフィットしたサービス仕様になっていて好感です。

初めに受けが攻めに上手く断わる言葉が出ない流れも、事前に恋愛経験がないと言っていること、攻め以外の受けと近しい人物との絡みからある程度の性格がわかります。かつ受けの好きな恋愛漫画を絡めて描写されていて受けの嗜好と思考がダイレクトに分かって感情移入していきました。
受けと妹と幼馴染みを三者三様の表現で人となりと3人の関係性がなんとなくわかる描写もサラッと読み飛ばしてしまえるのにスパイスのように後からソコが効いてくる構成も本当に好きです。
受けが自分の好きな恋愛漫画の妄想入れてくる思考も読んでいて楽しくて口角が上がっちゃいます!

作者様の一つ一つの文章、例え、表現の仕方が、グッと胸に来て自分の好みだと痛感しながら読み進めました。ピックアップしたい文や台詞が沢山あります。
その1つが、幼馴染みしか言えない「愛ならいいけど、同情すんな。愛より情の方がたち悪い時があるんだから」という台詞は真理だな、と思います。最近同情でとんでもない事になったエッセイを何作か読んでいたのでそれを思い出して身につまされるような気持ちでした。
『自分が“見せている”以上のものが探られてしまっているシステムが不気味』
「ゲイとヘテロの間はグラデーション」
「自分たちだって好きな女と結婚したはずなのに、年月が経ったらそれを平気で否定するやつは最低だと思う。だけど空気を読んでネタでも嫁の愚痴とか言わなきゃならなくて、俺もいつか人前で悪く言うようになるのかって思ったら、怖くなった」
「運命なんて〜傷つけていいほど大層なもんじゃない」など自分にビビッとくるフレーズが沢山あって考えさせられました。
丁寧で、例えなどが的確で読み手に取りこぼしなく伝えたいことが伝わってきて完璧な追体験が出来る気がします。
読みながら、あ!ここ好きなポイントだ!という所があって、攻めはマッチングIA開発に携わっているのでマッチング情報を見て受けにアプローチするけど、受けはIAが相性が本当に運命レベルって算出しているならそもそもIAに頼る必要がないから情報見ないという2人の対比に掴まれました。

社長とのご飯で、受けが恋愛漫画好きで恋愛経験無い故にどう『懐疑的』なのかを鋭く切り込まれる流れがスムーズで圧巻でした。腑に落ちました。この、なぜ懐疑的かのカードが切られるタイミングが完璧でした。確かに、初対面の人に運命の相手だから信じろ!と言われて信じきれないというごく普通の思考より一段深く掘り下げる鮮やかさ…凄いです。
社長のマッチングサービスに対する理念が良いです。でも宣伝として使えないというのが本当に現実でもそうなのかもと、ありそうに感じて色々考えが巡りました。もっと時代が追いつけば『結婚』に重きを置かない国になるのかなって。『自分以外の誰かと生きていく道が結婚以外にある』社会をこの先見てみたいです。それを1つ提示してくれるBLジャンルと、本作、だから好きです。

『雨は降らず、だから消えもしない』の一文で今まで攻めを雲男と表現していたことになぞらえて未練や複雑な気持ちを表現するのにピッタリで痺れました。

妹と幼馴染、本当に全ての登場人物に意味があって無駄がありません。受けに関わる人物なので当然受けの関係性と対比できる2人なのですが、家族共々こういう風に関係性を物語に絡ませてくるのかと唸りました。
さらに、意外な関係性も判明して、ある場所で家族集合で話がまとまって…これぞ『話がまとまる』だなと感じてその纏まりの良さ、手腕に脱帽します。
感想・レビューを読むのが好きで基本ネタバレは気にならない私は、知った情報を自分の目で確かめようという気持ちで作品に向き合うのですが。
こうして点と点が繋がるワクワク感を得ると、先を知らずに読む良さを再度教えてもらったような気がします。
だんだんとタイトルを回収していくのもすごく面白かったです。
運命マッチングに懐疑的な受けと、そのマッチングIAに自信のある開発担当の攻め、というだけじゃない一捻りされた中でタイトル通りの展開を繰り広げて、その捻りの余波を物語に浸透させる『運命から遠ざかる』流れが、後半加速度的に面白くて夢中で駆け抜けました。

運命ではないタイトル通りの本編と、運命だった?縁が繋がっていた続編。こういう伏線回収好きです。
本編後は温度の低そうな攻め視点でのお話が読みたいと思っていたのですが、受け視点で見るからこその見え方があり、そのフィルターで見る攻めの変化を楽しむのも乙でした。

マッチングやAIが絡むのでその是非を問う流れがあるのかな?と予想したのですが違いました。それはそれとして、2人はどうするのかというお話で、でもそれでこそタイトル通りの作品で楽しく読めました。

人が良い元恋人×時をかける弁護士

安定の作者買いで、さらに私の好きなタイムリープものです。
攻めは優しいけれど意外とそれ故の問題があり、読んでいくうちに少し薄ら寒く感じました。理由は人が良い性格なのでいいように利用されてるようなのに、本人はそれに関して何も感じていない、とあってそれはある意味怖いことかなって。麻痺しているのか、利用されていることへの悲しみや怒りが抜け落ちたようで、受けがそれに対して言及しても感覚が違うと言って徳を積む修行僧のような利他的な性格の根深さを知ります。

お互い花に例えられるのがリンクしていて好きな描写でした。受けは攻めに水仙だと。攻めは泥濘に咲く蓮のようだと。

相手の顔をきちんと見ていないから反応を確かめない受け、利他的なので相手のアクションを待つ攻め…これは噛み合わず大変そうで、この2人凄くややこしい!
過去は受けが面倒くさくてタイムリープしてからは攻めが厄介で(笑)
でもこの拗れ方を解していく過程が読み応えありました!
リアルに主人公たち2人のようなタイプの人はいるはずなのに、この2人の心の有り様は私の環境と経験からすると共通点はあるので共感してもいいはずが何故か最初できなくて。割と私と違う考え方で動き、少し釈然としませんでした。今考えると初期の受けの人付き合いの仕方も拙さからきていたので、自分と重ならなかったんだなとわかります。一歩踏み込めない自戒の理由が初期は見えていなかったのもあります。
感情移入して読むタイプの私はそれがある程度出来ないとテンポが乗ってこず、作品への好き度と楽しい度が下がってしまいます。でもその上をいく説明が有り、自分とマッチする部分があれば一気に気持ちが変わりますが…
共感や感情移入すれば理解しやすいはずの所が、どちらもできていないのにも関わらず圧倒的にわからされるのがある意味気持ち良くて笑(好きな作者様なのでなおさら)
それが自分にとってはすごく感慨深かったです。
2人の生い立ちや人格形成の部分、流れを安定に丁寧に描写してくださるので納得して進めたこと、展開するにつれて受けがトラウマを乗り越え成長するのでそこから自分の共感がついてきて中盤からテンポが加速するのを感じて心地よかったです。
作者様の過去作品、現代バンパイアものの【ご先祖様は吸血鬼】でも思いましたが、読者が経験したことなさそうな、思ったこともなさそうなことを理解させる文章が凄く作者様は上手いです。(勿論共感する人も居るかも)
どういう経緯でそこに至ったのか、どうしてその行動起こしたのかという心境や流れがとても自然です。
共感して読んでいると当たり前に感じる展開も、共感していないのにその経緯に不自然さを感じさせない説明が理解しやすくて、だから読みやすいんだと感じます。

『寄り添うことはあっても反撃するタイプではなかった』この攻めが如何に受けの働きかけにより変化するかも見所でした。攻めの奇特さ故にこの変化も少しずつなので、爆発する様をもっと主人公の目の前で見せて欲しかったとも思いました。でもここでもまた意外と分からされたのが第三者から伝え聞く方が一番効果的だったのかもな、ということです。
ウィンザー効果でしょうか?1番身近な親が第三者として与える影響が、受けが驚き、攻めの変化の受け止めに関しての裏付けとなっている気がします。
結果として爆発の衝撃波が攻めの家族をも変化させるのも完璧な流れだったのかと。
その爆発が表じゃなくて、裏で行われ、受けの目の前じゃなかったというのを引っ張ったことで、漸くの解決と2人のラブシーンの衝撃度が大きくなって印象的になり、唸りました。

余計な奴の退場も意外な程あっさりしていて良かったです。場を引っ掻き回される方が煩わしいので、迷惑かけた事を謝れとか、感謝の一言でもあって良くない?とも思わないでもなかったんですが、面倒な奴ほどあっさり縁切れてホッとする部分が実際ある気がしました。あの人の役割はあれで終わったとばかりに切れて2人の未来の幸せ的に存在除外ができてやっぱり良かったんだなと思い直せました。

終わり方も少し不思議が日常との狭間にあるというのを感じさせて好きです。
作者様の【良き隣人のための怪異指南】が大好きなのでその作品を少し彷彿とさせられました。(続編楽しみにずっと信じて心待ちにしていたら6月続編掲載との情報があり嬉しい2023年の春)
ラストのイラストも見たかったシーンを丁度切り取ってくれていて凄く素敵♡

年下の画家×歳上のディーラー

友人が落ち込んでいる時に掛けた受けの言葉が染みる。「やったことがない人間にはその難しさって本当には分からないし、適当にやってるだけでも駄目で、本気で、全力でやって、それでもできないから難しいって思うわけだから。だからできたときには嬉しいもんだし、難しいからこそやる価値もあるんだと俺は思うけど」これは誠実に生きてきた人だから言える言葉で友人の意思(諦めても諦めなくてもどちらにも言えるエール)を尊重しているのも分かって受けの人となりも垣間見えて一気に好きになった。
攻めは、出会いから優しげな対応と意外とスムーズなテクニックに驚かされた!
と思ったら意外性の塊…ホテルに入ったら攻めががっついて掻き口説いてきて…また良い意味で驚いた!
しかしベッドインは丁寧で激しい!ギャップ良き…❤調子狂わされるし、もっと狂わされたい(笑)
ちゃんと言葉を尽くしてくれる所にも好感度爆上がり。
しかも付き合ったら攻めがSNSで喜びを表現していたり…かわいいな??
攻めの振れ幅が激しいギャップじゃなくてこの優しい人ってだけじゃない緩やかなギャップ?みたいなのが魅力に感じた。
すれ違い、言い争う原因は本当に打ち明けるのが難しい。受けの心情を丁寧に辿ってくれているから受けの肩を持ちたくなるし、私は基本的にこのような場面でどちらかを断罪しがちなのだけど、恋人間の不和はどちらも悪いと久々に思えた。確かに言わない受けも悪いし、でもそれだけの理由がある。攻めも余裕な風だけど、待てずに、あと少しの心のゆとりと許す度量があったら良かったのかも。

2人の恋とトラウマもきちんと描かれているけれど、家族の亀裂と修復、肯定が2人ともきちんと描写されていて、一過性の恋じゃなくて地に足のついた、今後を見据えた付き合いとして人生の墓場に足を踏み入れるところも良かった。そのお互いの家族の話が嫌でも出てくることによって彼らの人生、キャラの深みが増して感情を揺さぶられたし、1人の生身の人間に対するようなリアルさも生まれた。

受け視点で話が進んで一旦終わって、その後攻め視点になる構成が大好きなので嬉しかった✨
挿絵も見たい場面が描かれていて痒いところに手が届く!
受け視点で最初書かれているのに秘密に関しては匂わせだけで、最後にならないと明かされないのももどかしいけれど読み手としては「なんだろう?」と追っている間も攻めと一緒にそのもどかしさを体験出来ておもしろいかも。
何となく受けの隠していることは、以前別の作者様で似た受けの作品を読んだことがあって察しがついたが、ネタバレなしで本作を読む方が物語に入り込めて楽しめる気がする。
(⚠️読む人によってはセンシティブかもしれない⚠️)

後の攻め視点でのえっちは色々乗り越えたあとの話なのですごく感慨深かった。両思いなだけの性行為ではなく、攻めが受けにどうやったらこの気持ちをわかってもらえるか?というのを工夫して伝えて、伝わるえっちになっているので愛おしさもひとしおだった。
付き合うまで、名前を呼ぶまで、打ち明けるまでを丁寧に書いてくれていたと思ったら最後のセリフに心がさらに温かくなった。「欲しい」と言うまで色々あったので受け視点を経て攻め視点でもって愛の受け渡し、キャッチボールが返り、完全にトラウマを払拭して、愛によって昔の悲しい記憶に打ち勝ったんだなと思った。

今後も読んでみたいと思わされたので先生の作品で初めて読むのが本作で良かった。

小説家×校正者 ③

第③巻の今回は終始攻め視点で話しが進むのだけど…
前作までは受けの心の動きが書かれていて、相手視点を知りたいと思っていたので、無頼で付き合いの難しそうな攻めの心の動き、受けに対する思いを細かく知れたのが本当に嬉しい〜

①巻、②巻と受け視点で、初めての恋、愛によって揺れ動く受けの心情に寄り添ってきたので、その時はうんうんと思いながら読んでいたけれど…攻めから見ると受けってこんなにも心が幼くて、難儀な人なんだ?!とビックリ
確かにずっと他者と関わってこなかったから物理的な情緒教育不全の未熟さを言われてきていたけれど…今まで物語の中で生きてき過ぎて(この時点でも結構な衝撃)恋と愛の喜びに振り回され、人を人として認識できない程だとは…唖然とした…
そんな衝撃があったのに、この性格なのもおじいちゃん子なのも、読者が自然に納得できる文章なのもすごい。人格形成において大切な時期であるその過去から形作られた無垢な心が、外見と口調だけ大人になったような受けの外殻に見合うような成長過程が、羽化する様を観察しているみたいな不思議な気持ちになる。
それなのに無理がなくて本当に自然なんだよな…

それぞれ造詣の深い2人の会話は本当に…お互い会話するのが楽しいだろうなと思う。考察を聞いたり本の談義を2人でするのは知識欲も満たされて、相手の考えにも触れられるからより相手を理解する過程にもなっていて、この2人のやりとりは他の誰よりも何倍も濃厚に感じる。

基本的にその言動から場を支配するタイプの攻めが、翻弄されたり、その上手のタイプであるライバルと対峙した時こんな反応するんだ〜と攻めの新たな一面が見れて興味深かった!
それだけじゃなく、全キャラ集合!な場面も皆の色々な面が見れて楽しかった✨
今回も篠田さんが大活躍!抜群の安定感で大好き!
①巻の弟視点で見る2人のお話みたいに、篠田さん視点で見た2人を読んでみたいな〜♡

受けと攻めの2人は作中にもあるように正しく運命の人なんだろうな…3つのingにある…feeling、timing、happeningの全てを満たしている。
宙人や白州さんは受けの相手になりえたのかもしれないと思うけれどtimingとhappeningは足りなかっただろうなと思う。
攻めのライバルこそ、受けとかなり合う気がしていたけれど惜しいことに運命の歯車が噛み合わなかったのだな、としみじみ思った。
基本的にメインCPしか興味がない私だけれど受けに似ているようで攻めより上手な白州さんの話も気になってきてしまったので…初めは読もうと思っていなかったスピンオフ【ドリアン・グレイの激しすぎる憂鬱】が絶対読みたい気持ちに変わってきた‼️

ライバルとの決着の付け方も…その性格の人物達が本当に生き生きと行動していて。このキャラならこう動く、というのがすごくスムーズ表現されているように感じた。
事の収まり方がもう…夫婦やん…と思った(笑)

最後「おまえ!そのインターネットと戯れに交流してはなかったことにするのはやめろ!」には笑ったw
①巻からだけど今回も…浮世離れしたような受けが不意に現代に着地するかのように一瞬のコミカルさを入れてくるのが本当におかしくて(笑)

また、本編を経た後の『色悪作家と校正者の明暗と吾輩は猫である』の「今は俺の方が領土争いに負けている。」〜『それでも自分は仕えているのだと大吾は口惜しく思った』の文には脱帽した。
文章、説明が素晴らしい事はずっと感じていたけれど特に、この回はすごいと思った。
この2人にしか分かり合えないこと、更にこの2人でさえ分かり合えてない思考を言葉巧みに読者に解らせている文章が圧巻過ぎる。
最後まで攻めがモヤモヤしている理由が解らないのに、読者は最初からそのモヤモヤが何だか解る、というのが本当に絶妙。
今回の書き下ろしの最高な点は3つ!
複雑な内心を巧みな心理描写で表現されていてること。
攻めが初恋である受けの重く一途な愛が分かった本編から更にパワーアップする受け。
一人で生きてきて、一人で生きている攻めの人生にくい込むことがいかに凄いかが、これまでの攻めの性格の描写を知っているだけに震えるほど興奮してしまう点。
1冊丸々攻めの視点で読めて本当に大満足だった!!
漱石議論についても、作家、校正者が集まっている中で中華料理屋のお姉さんが終止符を打つオチも子気味好い。

総じて、本③巻は①〜から読んで1番満足度が高い!と思った。④巻を読んでまた満足度を更新してくる‼️

小説家×校正者 ②

荒々しく強引に、けれど同意を持って流れを作るような攻めに受けの身体と心が絆された1巻から…
2巻は受けが恋とはどんなものなのか身も心もようやく本当に知る話。

1巻から関係が落ち着いたように見えていたけれど、受けの心の幼さを同僚も攻めも危惧していたように…その幼さを突く嵐が訪れる。
自分でも気付いていなかった受けのそんな幼さを少し成長させてくれる展開も、アップダウンする心理描写も読んでいる中で恋の醍醐味を味わえて良かった!

攻めは受けを相応に大人として扱っているのに時々幼子にするように窘めたり、見守ったり、導いたりしていて文字通り先生のような在り方なのもおもしろかった。
(作家“先生”ではなく指導者としての…)
相変わらず2人の情事はその言葉の応酬も全て詩的というか、他者を割り込ませず2人だけに通じているのにそれが読者には伝わって、作中で表現されているように艶めいていて大変良かった。

本編もすごく好きだったけれど、実は書下ろしの【色悪作家と校正者の弟】がページ数も結構あって、読んでいて凄く楽しかった!
タイトル通り受けの弟が登場するのだけれど、アイドル業をしている弟が受けの家に来る話で、攻めも含めた3人で話す内容も興味深い。
まず、受けが敬語ではない事、柔らかい言葉を使うのが新鮮で好ましい。職場で歳上の人と接していたり、作家先生と接していて敬語の受けしかほぼ見たこと無かったから、弟にお兄ちゃんしてる姿を長く見られたのは嬉しかった。(1巻でも弟と話すシーンはあるけれど…)
私は第三者目線でそのCPを語る話を読むのが大好きなので、弟を通して2人を見るのがくすぐったいし楽しかった。
兄と弟はちゃんと兄弟愛で結ばれてるのに、すれ違っているし、なんなら攻めの方が弟の気持ち分かってくれているズレ方がおもしろかった!
1巻から今もだけど弟が兄を凄く大事に思ってくれているのがより伝わる話で、兄と兄の恋人を通して弟自身も成長に繋がるその連鎖も人との繋がりを大事に思わせてくれて素敵だなと思った。

最後に…1巻から今回も作者様のあとがきを読むのが楽しみだった〜
作中に出てくる文豪たちの作品や絵本は登場人物が作者様の考察を代弁しているのかなと思ってきたけれど。
改めてその作品たちについて触れてくれていて、このあとがきを読むことによって、より作品が味わい深くなった。
あと販促ペーパーについての話も出ていて…どこか遠いいつかでもいいので纏まってくれたら嬉しい…それか我慢できずに買い集めるかも…凄く読みたい気持ちになった。
作中にもある『山椒魚』についてのお話も作者様のご意見が大変印象的。昔は否定的に思っていたのに年を経て肯定的になるという変化も『山椒魚』のディスカッションについてだけでなく他の物事にも通ずるところがあるな、としみじみしてしまった。
「歳を取ったということなのだろうけど、あまり悪いことだとは思っていません。知っていくってこういうことなのかもしれないと、また新しい本を捲りたいです」と作者様が仰るように思考の変化も楽しみつつ私も新しい物語を吸収したいなと思ったし、まだまだ難しいけれど作中に登場した作品の制覇も頑張りたいなと思った。

義兄の友人×義兄から逃げる義弟

作者様の作品はお見かけしたことはあるけれど、初めてちゃんと読む。
タイトルの「悪党」の響きにどーしようもなく惹き付けられてしまい購入。

受けが訳アリ幸薄故の気弱タイプ思いきや猫かぶりで、攻めに食ってかかるところは少し意外だった。
攻めもかなり理不尽なことをしているので受けに文句を言われて当然なのだけど(笑)
私の好みは幸薄の受けだけど、啖呵を切ったりするぐらい強い部分がないと展開を切り開いていけないのかな、とも思うのでこれはこれでOK。
でもそのくせ、しおらしい態度になったりと感情の振れ幅が結構あるのだが、そこが訳アリ要素でその部分を荒療治として攻めが隙を突いて責めて来るのがBLの醍醐味。
しかもこの荒療治も蕩けるように優しく抱いてくれる攻め。彼は執着攻めではなく一途攻め。(ココ大事)
指輪をしていて一途に過去の人を大切に思っている。
その過去を受けは少しずつ知っていき、攻めの人となりも知っていき徐々に打ち解けて…
逃げ続けていた義兄との対面までの流れが本当に凄く良かった!!
受けにストーキング不審人物がいる疑惑で一緒に住むんだけど、そのカラクリと義兄と対面した時の攻めの容赦い罵倒とアツイ台詞が本当に良くて。ココが最高潮!
タイトルを回収してくれているようで本当に熱いシーンに受けと共に涙した。

ストーキングのカラクリ付近からは受けも恋愛に興味を持ったり、恋人のフリをするシーンもあるので、その間のモダモダも意図せずとも恋愛の駆け引きぽくなっていて楽しめた。

その後の危機的シーンはこうだったらいいな、と思った展開ではなかったので肩透かしだったかな。
それは義兄が糞で屑なので受けが乗り越えて攻めが罵倒するだけじゃとても贖いになりはしない、と思っていたので『危機』を義兄が発端にしてくれれば事が明るみに出た時に義兄を社会的に抹殺することが出来るよな!って。
攻めは社会的地位もあるので確実にニュースになったはずだし!
読んでいる最中感情的になっていたのでより、諸悪の根源のざまァ展開を経て欲しかったし、善と悪の対比を見たかったので惜しい気がしたけれど、2人の明るい未来のために禍根を残さないこの展開はそれはそれで良かったのかもしれない。

もう最高潮のシーンで分かってはいたけれど答え合わせのラストも甘くて…攻めの一途さを感じられた。

受けと攻めの過去、人生に暗い影を落としてきた件が片付いた2人は本当の自分を取り戻して光に向かって進んでいくのがわかって良かった。
最後甘〜い攻め視点も入れてくださって本当にありがとうございます♡

小説家×校正者

意外とデートとかしてくれる攻めは、荒々しく野性味があるように見えて職業的にも知的なところがギャップで受けよりも先に絆されてしまう私(笑)

良寛という人物名が出てきたのには驚いた。BLでこの人の名前出てくるの見たのは初めて。良寛は幼少期に深く馴染んだものだったので懐かしくなった。

まず最初のセックスにまで持っていく過程と会話のキャッチボールが今までにないやり方で新鮮さを覚えた!
理屈を捏ねくり回したような理路整然としたような受けの喋り方がちょっと私の琴線に引っかかった。
「涅槃寂静ほども望んでいません」
「使用単位にはせめてナノを用いろ、普通はわからんぞそれ。」とかこれからヤルってのにこの会話…なかなかシビレるw
そして事後の攻め作家の作品が好きな受けへ
「〜俺を愛してるんだろう?」
「主語が抜けています」
「おまえが抜いたのは目的語であり、所有格のついた名詞だ」
弁舌…たまらん…。本を愛して、言葉を武器に巧みに操る登場人物じゃなきゃこんな会話成立しない…
この二人は阿吽の呼吸かのようにポンポンと会話のキャッチボールが出来ていてなおかつ相性が良いというのがポイント!

趣のある庭と家を褒めるのに「私は次にあなたと二人きりになったら、草を食んで生きる牛に殺生をさせるような惨い真似はせずとも、自分でしなくては行けないことだと考えていました。…この家と庭の緑が私からその考えを奪います」という受け。に攻めもわからん、説明しろと言いう。こーゆー持って回った言い回し(この表現が適切でないかもしれないが今他にそれ以外の言い方が思いつかなかった)が割と常に出て来て、それが苦じゃなく感じられるのが貴重だなと思った。むしろそれがこの作品らしさ、を出しているようで他の作品にはない個性みたいなものを好ましく思った時点でより本編にのめり込んで行った。
また光源氏の引用を心情にあてはめるのも面白い。
一見、その引用や例えが遠回しで意味を飲み込みずらいところを倦厭しそうなところをテンポがいい会話とわざとらしくない説明で補ってくれているので気持ちよく読める。

森鴎外、春琴抄、羅生門など例えが秀逸。
その内容を知らなくても本好きなら無視できない言葉や作家たちが散りばめられていてこの本編も、それを引用する作品も読みたい気持ちを上手く擽ってくれた
私は…そう思うのだけれど、その登場人物たちの会話の独特な例えや引用がハマれば面白さに拍車が掛かるんだけど、ハマらないと…評価が分かれそうだなとは思った。

受けと攻め御用達の居酒屋店主は、2人の祖父のようにこう揶揄って嗜めてる。
「嫌いは好きの裏返しだよ。好きと嫌いは、どっちも相手に興味がなけりゃ始まらない気持ちだろう?」本当にこれに尽きる。

本編の後の小話?『八郎』でも二人の意見が食い違い、生き方と考え方が違うのにそれでも傍にいるというのがこの物語の真髄なのかなと思った。
意見の違うものを批判したり排他するのではなく、あるがままに受け止めて擦り合わせる?共存というのかな…それが出来る二人になってくるのが良かった。片方だけが受けいれてるのではダメで、2人がお互いに違うとわかりながら歩み寄っているのが素敵で、私の人生においても理想だなぁと思った。
最近作品の意見が合わない友人と会話していたのでより、感情が入ってしまった。
さらにその後、居酒屋店主の老翁が〆に入ってくれるのには物語の構成がさすがだな〜と感じた。

あとがきにもあるように作者様が楽しんで書いておられるのがよくわかる話だった。
作者様が今まで読んでこられた本について思ったことを登場人物たちが代弁してくれたりするのかなと思うと私自身も読んでいて楽しかった。
この物語ができたきっかけも知れてクスッとできたり、アンケートに『このシリーズで知った本を読んでみようと思います』って言葉が多くて嬉しいという話も私も同じように思ってもっと本を読んで知識増やそうと誓った!
作者様の言う『本が入口になって他の本を知る』というのが好きなので今回色々勉強になった!

本編からあとがき、最後の1ページまで楽しめる本で、本好きさんにオススメしたいBL❤
シリーズ4冊もう買ってあるので一気に読みたい〜❤


受けの弟もとても良いキャラで出番少ないはずなのにその魅力に持っていかれそうになった!
主役の攻めを喰ってしまいそうな存在感放ってた…
今後もちょっと受けとか物語に絡んで欲しいな〜

貴公子然としたスパダリ図書館長×司書になりたいシンデレラボーイ

最初は「こんなんじゃ駄目だ」って分かっているのにウジウジ考えているだけで行動に移さない受けにイラっとしてしまったけれど。この自己評価の低さとかが家庭環境が劣悪で…なにかトラウマで…とか人生人格に影響を及ぼすくらい大きくて納得できる理由があれば私の感情が波立たなかった気がする…
でもこの苛立ちは現状に満足していないけれど生温いところに浸かって、たいして行動に移さない自分の同族嫌悪な気がするので、共感は割とできてしまう。
しかしこうは言いつつもだからこそ受けの成長と、努力が身を結ぶ瞬間は読んでいて一緒に嬉しくなれた。

まぁ欲を言えばもっと健気であって欲しかったかな〜と少し思ってしまう。例えば、受けがお店でなんの実績もないうちから攻めはそのダイヤの原石であることを見込んで早くひとり立ち出来るように優しく丁寧に仕込んでくれていて。攻めは仕事が本当に忙しいのにその見込まれている大事な仕事を私的な感情優先で遅らせようしてしまうところを…
攻めの仕事を手助けできるように手を煩わせないように早くひとり立ちして、1番できる人材になって引き抜いてもらえるように頑張る…とかだったらもっと健気に思えて切ない感情も際立ったように感じた。後々成長はするのだけど

黒髪美人のスタッフが私のいいたいことをズバッと受けに言ってくれててモヤモヤしてた溜飲がちょっと下がったりした(笑)

攻めは本当にスパダリが具現化した存在。受けのウジウジを包み込んで尚且つ1歩ずつ踏み出すのをゆっくり待てる余裕もあって、さらに会話のスキルも高い。相手の言葉を待って引き出すのも上手い。さらに相手をその気にさせていい気持ちにさせるのも上手くてその巧みな話術真似したい〜

「あのお客様たちは、もしかしたら今日会社で何か嫌なことがあったのかもしれない。だから帰りにここに寄って、リラックスしたいと思ったのかもしれない。美味しいお茶と1冊の本が、ああしてお客様の心を癒せるんだ。」という攻めの言葉にすごいジーンときた。実際会社帰りに1人になって癒されたいって思うことはかなりあるから本当にこのような図書館カフェみたいな所に癒されに行きたいなと思った。

誰かに「君しかいないな。君は僕の想いを完全に共有できる、この世でたった一人の人だ」というスパダリな攻めのこの素敵な台詞を心から言ってもらいたいと思った!

あとアドバイザー司書の仲間のクール眼鏡さん、ワイルド美形さんと、黒髪美人のちょっとツンなお人形さん…たちが気になって!とってもいいキャラしていたので彼らの恋模様が気になったな〜✨

貴方のために魅力的な自分でいたい…と頑張る受けは向上心もあってとても好ましいのでこのまま2人はもっと成熟して公私共に良いパートナーになれるなと感じた。

作者様の作品は『嫌われ魔物〜』のほうがどちらかというと好みだが…これは完全に個人の好みによるものなので甘いシンデレラストーリーがお好きであれば本作はオススメ^^

料亭の板前さん×ご先祖様が吸血鬼な大学生

軽口のやり取りで「プロポーズなら、渋谷でしてくれ」が、近代的な返しすぎて衝撃を受けた(笑)
食べ物が美味しくないように表現するのが東京●種を彷彿とさせられた…が、他作品を例えの様に出してしまってとても野暮だけれど、お話の設定がとても面白かった!
ただの吸血鬼という設定ではなく…吸血鬼という名の(作中の)科学的に説明がつく(?)、ちょっと不思議な生き物の生態が色々明かされていく過程での弊害の設定も新鮮で面白かった。
その弊害というのが縮むと言うものなのだけれど…成人済みな受けが幼児になるという!
でも精神は大人の頃と一緒なのに幼児期に気持ちが引っ張られて寂しさや嫉妬や感情の制御がまだしにくかったり、味覚なども変わってしまう描写が細かくてこの本1冊の中に面白い設定が色々詰まってて驚いたのと感心したのと興奮したの…で私の感情が渋滞を起こして大変だった!
だってこの後の展開も挿絵にもある、うるうるした眼で泣く受けが感情を爆発させちゃっててめちゃくちゃかわいいのなんのって。
食べ物の美味しい、不味いの表現、大人な精神でありながらの幼児としての周りの見え方など、多彩で巧みな描き方に惚れて作者様の作品はこれが初めてだったけど今後作者買いしよう!と決意した。

攻めは普段前髪を後ろに撫で付けて調理帽をかぶっているんだけれど、それもストイックで素敵だが帽子を脱いで前髪を崩してもカッコイイとか…受け目線で読んでいるからその雰囲気が変わる破壊力をモロにくらってしまってもうメロメロ(死語)♥
仕事姿と普段の姿がちょっと違うのがギャップで最高だし、最初からプロポーズとか言って好意仄めかしてるのに受けから迫られたら照れたり、えっちのときも行動、態度で凄く好意を表してくれてまたさらに最高なんだけど。その上をいく最高さが、「万が一お前に先立たれたら、墓を暴いちまいそうだな」ってさらっと執着を見え隠れさせる所にキュンキュン通り越してギュンギュンした♡︎笑
別に執着攻めって括りに入る攻めではないと思うんだけどふとした時の受けへの表現が揺りかごから墓場まで!みたいな生涯の愛を感じて萌え滾った。
胃袋も恋心もしっかり掴まれてしまってる受けは幸せ者だよ〜

Ciel先生の表紙というだけで当たり前に手が伸びてしまうのだけれど、そんな先生の描く攻めの首筋にある紅いアトの色っぽさたるや!
ただ右にいるショタがいることで子育て、子連れBLなのかな?って思った初見だったのだけれど全然違かった(笑)

一風変わった吸血鬼作品、ほのぼの、ちょっとラブコメ要素がお好きな方なら楽しんで読めると思うのでオススメ♪

大学講師×若手デザイナー

絶妙な距離の縮め方が本当に好み。身体から始まる関係、とか今は珍しくないけれど…こうして接点のなかった2人があるきっかけで徐々に距離を縮めていくのを丁寧に描写してくれて恋をしていくところを読むのが好きなので買って良かったと心から思った瞬間。
雨男というのを情緒的に盛り込んであったのと大好きな大学の先生が、攻めなのも私の中で萌えポイントだった。

気紛れによるひょんな出会いから会うようになり、個人的にもっと話してみたい欲からお昼を一緒に食べる仲に。それから休日で会って一緒に過ごしてご飯をするようになり自宅にも行く関係に…
このもどかしいくらいの2人の逢瀬が、恋じゃなかった心がソレに気付くまでゆっくり過程が進められていて読んでいる私の心が弾むのが分かった。

『いつだって人の注目が集まっていないところで自分の琴線に触れるものを見つけるのが好きなのだ。〜恋をするときも同じだ。〜自分から好きになる時はいつだって他の人が気がついていないその人の魅力を見つけて溺れていく。』という文に心をわしづかまれた!!
そう!そうなのだ!誰も気付いていない良いところを見つけて自分しかそれを知らないってたまらない気持ちになるし、自分だけの宝物を見つけた気になるの!!
それをこの物語では受けが攻めに感じる魅力として細かに書いてくれていて擽ったい気持ちになると共に共感してしまった。
そして某アメリカの俳優に似ているという受けの手練手管というか、魔性なまでの誘い方に脱帽してしまう…
私もそのテクニック使いたい(笑)
攻めもベッドでは情熱的に愛してくれるし、男性体に触れる躊躇いもないのが嬉しい。

一見受けに押されて付き合っているのか?と思う攻めが受けの元彼に会った時に理路整然と言い返す姿がかっこいい。受けを守るという強い気持ちと愛情も伝わり受けとともに惚れ直してしまった。
彼らが夏休みを利用して東欧に旅行に行く幸せな姿をどこかで見れたらいいのに…これからの幸せを想像することができる恋人たちに大満足。

不遇を全てさらっていくようなラストの一文も良かった。

大好きな小山田あみ先生の絵も作品に華を添えていて素敵。私が本作を手に取った理由の大部分を占めいる表紙はタイトルに相応しくしっとりしていて綺麗。