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温もりを知り、孤独を知る

 積読していたので本作の情報はきれいさっぱり忘れていましたが、読後に作品ページを確認してみて購入動機は教師×生徒とヤンデレだったことを思い出しました。
 ネタバレを見ずに読むことをおすすめしたいので、未読の方は読まない方がいいです。

 上記のようなことを書いておいてなんですが、情報ゼロの状態で一章を読み進めるのはなかなか辛かったです。なぜ陽斗が悪魔を呼び出したのかも分からなくて、物語に入り込むまでに時間がかかりました。
 時折回想を挟むので陽斗が松宮を好きになっていった過程は理解できましたが、天使や悪魔といった特殊設定や子供なのにかわいげがない沙帆の登場、そして何より松宮があまりにも陽斗に対して突き放すような態度だったので、いつまでも松宮にこだわる陽斗にまでモヤモヤしてしまいました。
 とはいえ一章の終わりで陽斗と松宮の関係性が分かって感激したので、話の構成としては間違っていなかったと思います。
 ただ、一章はページ数の三分の一以上を占めており、その一章の終わりまで(今思えば途中で松宮が陽斗にただならぬ想いを抱いているような描写はありました)核心にふれられないので、私のような察しが悪い読者にとってはそこに辿り着くまでが少々長すぎたかもしれません。
 でも松宮が恋をした相手が陽斗であることが分かった時は本当に感激しました。

 二章は陽斗の空白の過去編で、松宮と取引きを結んだ恋人関係だったことが明らかになります。
 やきもきしながら一章を読んだご褒美と思いながら二人の恋人としてのひと時を楽しんでいましたが、松宮は悪魔としての役目を果たすために陽斗に甘い言葉を囁いていたのが少し残念だし、松宮が陽斗に恋しているのを自覚してからは陽斗に本当の名前を呼ぶなと言ったり遠ざけ始めるので、結局切なかったです。
 寒いと感じることは寂しいことだと、そして寒くなくなるまでずっと一緒にいると言った陽斗に松宮は無自覚に恋をしますが、陽斗に近づく者全てに嫉妬する一面に萌えました。
 せっかく本格的に甘い関係になろうとしていたのに、陽斗を大事に想う松宮は悪魔としてあるまじき行動をとり、天使である沙帆の協力のもと陽斗の恋人期間の記憶を消すことで悪魔との取引きを強制解除し、陽斗の死後の魂が孤独にならないようにするのです。
 確か三章で、悪魔は前世の記憶がないと言っていたので、松宮にとっての記憶は松宮怜(人間)としての生活が全てと解釈して良さそうですよね。だから孤独だった松宮は、初めて温もり(愛)を与えてくれた陽斗に惹かれたのでしょう。温もりを知ったことで孤独の寒さが辛いことだと身をもって知ったからこそ、愛する陽斗に孤独になってほしくないと願うのは共感できます。
 陽斗との強制的な取引き解除は、悪魔である松宮にとって、これ以上ない愛ある行動だったと思います。しかし切ない。

 以下、本格的なネタバレ注意です。

 本作の疑問は、なぜ同僚の小原の告白には職場恋愛はしないという理由で断り、教え子である陽斗の告白(好きとは言ってないけど)は断らなかったのか。
 自分を好きだと言ってくれる相手なら魂を予約できる好機だと思いそうですが、祖父の一件を踏まえると「悪魔」とじゃないと成立しないんですかね。個人的には松宮が陽斗との時間を人生で一番心地よく感じていたからという説を希望します。
 もうひとつの疑問は、陽斗が記憶をなくした間は本当に取引き解除になっていたのか。
 陽斗は前々から松宮を好きだったので、記憶を消しても松宮への想いは消えてなかったし、松宮も陽斗との思い出の場所へ出向いて感傷に浸るほど陽斗を好きなままでした。
 甘い匂いは魂の腐敗臭だと言われていたけど、記憶を消したら陽斗の腐敗臭は消えていたのでしょうか。
 どんなに想い合っていたとしても、陽斗が松宮の悪魔の名前を忘れてさえいれば取引きは解除されていたと解釈しておきます。
 あと、猫(アザミ)は何者だったのか。私は最初猫が天使(北斗)だと思っていましたが、それは沙帆でした。
 悪魔には縄張りがあると言っていましたが、沙帆が陽斗の友達の妹という関係性を思うと天使にも縄張りが存在する可能性があります。なので猫は別の天使でもなさそうですが、かといってただの猫という風にも見えず、意味を含ませた存在に見えました。
 本作の神様と天使と悪魔は、神様>天使⇔悪魔のような位置付けでしょうか。神様と悪魔ではなく天使と悪魔が対極っぽかったですよね。
 タイトルは「神様の庭で廻る」なので、身も蓋もない言い方をすれば、陽斗も松宮も沙帆もしょせんは神様の手のひらの上で転がされているのでしょう。その神様とは一体。とても安易な考えですが、私は猫だと思っておきます。陽斗は神のご加護を受けているから死後も何とかなる……はさすがにご都合主義にも程がありますかね。
 余談というか願望ですが、北斗が最期に頼った悪魔が松宮の前世で、無意識に記憶を継承した松宮が無意識に陽斗へ近づいていたらおもしろいなと思いました。

 賛否ある終わり方でしたが、最善策がないまま終わったのが現実的で私は良かったと思います。
 むしろ死とは無縁の今が一番幸せなはずなので、現実逃避的な意味でも二人の甘々をもっと見せてほしかったです。
 松宮は陽斗が死ぬ前に自殺して取引き解除することが最善と思っているようですが、さすがに陽斗に気付かれるでしょう。
 沙帆は前世(北斗)の記憶の影響で陽斗を案じているので、沙帆が天使特有の短命でも来世でその記憶が引き継がれ、また陽斗の元へやって来て味方になってくれるような気がします。
 とにかく長生きしてほしい。ただそれだけです。

 おそらく二周目ありきの物語だと思うので、再読したら今よりも評価が高くなるのは間違いないです。
 しかし、あえて初見の感想として「萌」にさせてもらいました。
 少し期間をあけてから、陽斗と松宮の気持ちに寄り添いながら再読したいと思います。