家族エピソードの回。
個人的に、家族の不和に外部の人間が(たとえ恋人でも)首を突っ込む話って苦手なので、最初から警戒気味で読み始めました。棗の性格的に、首を突っ込まないわけがないし。
一応、簡単に踏み込めないものだということはわかっているらしい。「家族の在り方に正解なんてない」ってことも。いきなり自分の正義を押し付けないで、立ち止まって相手のことを考えるようになったのは、棗も少し進歩しているのかな。
ああ……でも結局NYに行けとか言ってしまうのね。
それで険悪になって、春川くんまで盛大に巻き込んだ挙句、ほぼ現状維持で決着。ちょっとすっきりしない感じでした。
ただ、お節介で空回りではあったけど、棗がほんとうに真剣に斗真のことを考えているのには共感できました。
棗さえいればそれでいい、っていう斗真の考え方は、私も危ういなと思う。一歩踏み外したら、地獄の道行きまっしぐら。それでも二人一緒なら幸せっていうのも嫌いじゃないけどさ……地獄まで添い遂げる覚悟はありながら、でも出来る限りは日の当たる場所に留まりたい、留めてやりたいって思う棗の健全さが私は好きです。
斗真もそんな棗の気持ちを汲んで天真に会いに行ったし。
理想を求める棗と我が道を行く斗真、本来なら相容れない二人が、お互いを受け入れ合って歩み寄ったのは良かったです。
春川くんの片想い設定はなんだか残念。ただでさえスピンオフカップルが2組もいるので、あっちもこっちも同性愛なのは食傷気味です。仕事中にカウンター内でそんな話ばっかりしてるのも感じ良くないし。何より、春川くんは田之内さんと同じく中立的な癒し系キャラでいてほしかったな。
それと、実家で家族に隠れて…とか、神社で…みたいなのも、シリアスな雰囲気がぶち壊れてしまうので今ひとつでした。
棗のお姉さんたちは楽しかった。タイプはバラバラなんだけど全員コミュ強、かつ賑やか。あの3人に可愛がられて育つと、棗みたいな性格に育つよな……と妙に納得しました。
天真のコミュ障ブラコンキャラも結構好きでした。
ほんとうに大好きな作品なので、かなり迷ったけれど……考えに考えた末、評価をひとつ下げました。
面倒くさい性格の二人がどうしようもない割り切れなさを抱えながらお互いを求めていく4巻までのストーリーが、私にはとにかく強く深く心に突き刺さっていて。
5巻以降は、二人の関係が安定していき、それぞれの人格も落ち着いていきつつ……若い頃の記憶が描かれたり、環境の違いからちょっとギクシャクしたり、柿沼さんの人生に触れたりで、ほろ苦さが心に沁みて。
そしてこの8巻。朔の伯父さんのことや静の迷いはありつつ、二人ともすごく穏やかでお互いわかり合っていて……それは当然の流れだし嬉しいことではあるけれど、半面あまりに穏やかすぎて、以前のように心の奥底をぎゅっと掴まれるような感覚がなくなってしまったなと。
かといって、すれ違いや変な波乱を見たいわけでもないし……複雑です。
前巻での、柿沼さんエピソードから朔太郎の共訳決定という流れがすごく熱かったので、今回仕事関係の話が少なかったのもちょっと残念。
とはいえ、DIYは楽しそうだし、サンルームにソファもいいな。4巻で朔が「報告」をしたあとに、静が「次ソファを買う時は」と言ったのが回収されそう。頑丈なソファをお願いします!
こだわりすぎて悩んでしまう頑固な静と、どこでもいいという大らかな朔太郎、どちらも最後に行き着く答えは“二人で一緒なのがいちばん大事”ってところがもう阿吽の呼吸ですね。
絵本のエピソードに出てきた「ヘンリー・エヴァレット」という名前は前にも見たなと探してみたら、4巻と5巻で朔が好きな作家だという会話をしてました。その辺りの伏線はしっかりしてて流石です。
出版の夢が消えてしまったのを朔はすんなり受け入れてたけど、私は残念だなあ。
そして冒頭のかかとクリームのシーンが素敵でした。
前からちょこちょこお互いに加齢ネタでじゃれあってたのを、こんなにも色っぽく美しい場面に昇華してしまうとは。こういう二人ホントに好きです。
最初の送別会のエピソードからもう千歳の気持ちがわかりすぎて、心がキュッとなる。
別に嫌われたり虐められたりしてるわけじゃないんだけど、うまく溶け込めてもいないあの感じ。しかもそれが誕生日。
誕生日って、そうなんだよね。ちょっとした嫌な出来事が、なんかやけに響いてしまう。
現在の誕生日から始まって、回想を挟み、何回かの誕生日の思い出を辿っていく構成がすごく良かったです。
高校生時代は2人とも丸刈りだけど、それほど気にはならず。むしろ短髪だからこそ、高鷹の顔の良さが際立ってました。ものすごく好きな顔。
ただ、2人の恋愛にそこまで萌えられなかったのは、千歳の性格がちょっと苦手だったからかな。
お調子者で目先のことしか考えられないところが……可愛いよりも居たたまれないがまさってしまう。特に、高校から浪人を経ていろんな思いをしたのに、結局ほとんど成長してないのが残念です。金髪ピアスになっちゃってるし……不満を呑み込んで優しくしてくれるお姉ちゃんが浮かばれないだろ、とツッコミたくなっちゃう。
せっかく高鷹と再会したのに、茶化しすぎるのもね。高鷹は気にしてないみたいだからいいんだけど。
ともあれ、最後はハッピーな誕生日でまとまって、表紙絵の回収もお見事で、良かったです。
起承転結でいうと1巻が起、2巻が承のような感じで、恋愛も治水も本格的になってきた!まだまだ山場はこれから!というところ。河だけに大河ドラマとなる予感がします。
じりじりと1冊をかけて、ようやく通じ合った龍楊さまと王佳の恋。
龍楊さま、良かったねぇ……。
今まで河のことしか考えてこなかった、THE天然鈍感受けの王佳もそうだけど、それ以上に龍楊さまってば難儀なお人。
はじめは、王佳にちゃんと気持ちを伝えればいいのに……ともどかしく思ったけど、皇帝ともなるとそうはいかないのね。迂闊なことを言うと、相手は従う以外の選択肢がない。権力濫用しまくって側に置くところまではできても、心は強制したくはない。母上のように「選ばれたのではなく自分が選んだ」と言ってくれる相手と、愛し愛されたいんだよね。
直接言葉では表さず、旅まで許してやって、ただひたすらに想いだけを送り続ける健気さが沁みました。
恋文の言葉も素敵すぎる。河を伝って温もりを届けるなんて、その感性に惚れてしまいます。
1つ欲を言うと、龍楊さまと王佳の直接の関わりが閨の中でしかないのが残念。設定上しかたがないのはわかっているけど……私は1巻から王悟推しなものだから、ずっと行動を共にして頼りがいのある王悟にも心惹かれてしまうんですよね。龍楊さまの恋を応援したいのに、悩ましい……。
描き下ろしは楽しかったです。宿の部屋の話のところ、そうだろうなと思ってた。
陛下の側近・真単と王佳付きの宦官・端正は、そういう関係に今後なるのかどうかはさておき、いいコンビ。真単はシンプルに真面目そうだけど、端正は何やら複雑そう。真単の方が身分が高いみたいだけど、絶対尻に敷かれるパターン。
脇役たちもこれからもっと活躍してほしいです。
前巻で描かれたヴァンの過去も辛いものだったけど、この巻で語られたイェンスの過去は想像以上に重いものでした。辛いとか哀しいとか……まさに言葉にならないような。
自分で望んだわけじゃないし、村人たちの自業自得ではあるけど、自分を思ってやってくれたのも事実だし、村人全員の運命を変えさせてしまったのも確かだし、でもいちばん重い運命を背負わされたのは自分だし。
一人ぼっちになってしまっただけじゃなく、こんな思いを抱えて生きていかなくちゃならないなんて。
イェンスって落ち着いていて淡々としていて、「黄泉還り」だとか「呪い」だとかとイメージが今ひとつ結びつかなかったけど、むしろあれは一種の諦念みたいなものだったのかと納得しました。全てを割り切って受け止めるようにしなくては到底生きていけない。
アイノ婆だけに漏らした「おしまいでもいいかなぁ」という言葉が泣けました。
知恵と慈愛に満ちたアイノ婆の言葉も心に沁みます。
イェンスを助けたいと決意したヴァンのとった方法はすごく意外だったけど、「今どんなに幸せか伝えたい」「ヴァンが意味になった」と迷いなく言い切れる強さに痺れました。ヴァンを伴侶に選んでほんとに良かったね、イェンス。
“救う”ではなく“掬う”という漢字を当てているのも素敵です。
この巻までのところで愛と絆はしっかり育まれたけど、欲を言えば恋心も芽生えるのが見たい……その点では、あともう一押しが欲しいところです。
1巻と比べたら少しは兆しがあるかな?という程度。添い寝したり、さらーっとキスもしちゃったけど、恋愛というより親愛のキスのような。
けど、ツバメちゃんがまだまだ波乱がありそうな予言をしてくれているので、いい意味で二人の関係がさらに変化していくことを期待してます。
そういえば、1巻から仄めかされている“ヴァンの体が普通ではない”という件が明かされていないし。変にBL展開にはしてほしくないけど、ちょっと萌えも欲しいという、贅沢な希望を抱いて次巻を楽しみにしています。
『人魚姫』の一節が引用された印象的な始まり。お伽話のようなモノローグに、ノスタルジックな世界観。美味しいご飯とスローライフ。若く美しい二人の青年に絆が芽生えていく過程を、丁寧に綴った物語。
これだけでもう心を満たしてくれる素敵な作品でした。
が、早々に二人が伴侶となって、これから愛が生まれるという予告もしてくれてるけど、1巻の時点ではドキドキするような恋心は見られません。
BLレーベルではない作品なので当たり前ではあるけれど、BLで定評のある作家さんだし、可愛い恋のお話が見たいな〜という下心をどうしても抱いてしまうので……これからの二人に期待したいという意味を込めての、萌2評価としました。
舞台である「平らな国」のモデルはおそらくデンマーク。言わずと知れたアンデルセンの祖国だし、実際デンマークの国土って平坦なんだそうな。
原初の巨人ユミルの体から大地や海が作られたというのも、おおむね北欧神話のまま。
ただ、「ドロメ」というのは何が元ネタなのかわからず……いろいろ調べてみて、デンマーク語で“夢”とか“願う”という意味の“drømme”かなと勝手に推測しました。
神話とか伝説をもとにした作品って、元ネタを調べてみるのも楽しみのひとつです。
「人魚」はもちろんアンデルセンの『人魚姫』がモチーフ。
人魚姫も悲恋だけど、ヴァンの過去はさらに生々しく悲惨でした。
美しい田園風景とか美味しい食べものとか癒し要素たっぷりの中に、人の世の不条理をそっとくるんで描いているところも、この作品の好きなところです。
イェンスがヴァンに初めてチーズのせパンを振る舞うシーンがすごく良かった。
「泣きながらご飯を食べたことがある人は生きていけます」という某ドラマの名言を何となく思い出しました。
どんなに絶望していても、それでもまだ生きる力がどこかに残っているから食べられるし、食べたらまた生きていく力が生まれる。
そして孤独に生きていたイェンスもまた、誰かに料理を振る舞う幸せを思い出したり。
“生きる”という重いテーマを、やんわりと感じさせてくれるところが好きです。
【合冊版4巻まで、まとめての評価&レビューです】
Pixivとかから始まった作品でしょうか?
絵柄やテンポが商業っぽくない独特な感じなんですが……めちゃくちゃ良かったです!(神寄りの萌2)
ほんの数ページ試し読みして雰囲気だけで敬遠しちゃってる人がいるなら、もっと長く読んでみてーーーと言いたい(ピッコマで3巻まで読めました)。
まず、とにかく、キヨがいい子でいい男だった。
困っている人がいたらナチュラルに助けられるところが男前。
でも模範生や聖人君子な感じではなくて、年相応にアホなところや軽いところもあるのがいい。律に対しても、すごく真摯に尊重しつつ、下心もアリアリで悶々としているのが可愛いです。
律が母親のことを打ち明けたときも、即座に理解できるわけではないのがリアル。キヨみたいに明るくて遠慮のない家庭で育った子なら、「かーちゃんなんか泣かせとけ」と思ってしまうのはむしろ自然なこと。
まして律も母親も、はたから見ればまともだし。家庭内の問題って、他人が簡単に介入できるものじゃないのが生々しくて、しんどい。
けど、100%理解できてはいなくても、律の言動や表情や態度をちゃんと見て聞いて「律の立場だったら」をちゃんと考えられるのが、キヨの本当に本当に良いところ。人に寄り添うって、こういうことなんだよな。
はじめ見たときは変わった作品タイトルだと思ったけど、作中に出てくる ”Put yourself in someone’s shoes” という言葉がとても大きなテーマになっています。
キヨがいつも側にいてくれて、どこまでも寄り添ってくれて、律はどれだけ支えられたか……駅でキヨが佇んでいるシーンは、目の奥が熱くなってしまいました。
律は、ちょっと照れた顔や笑顔がすごく可愛い。キヨがいちいちドキッとしちゃうの、わかる。クセの強い絵柄だけど、表情の描き方がとても好みです。
付き合い出してからの二人も、とにかく可愛いが溢れてました。
ガツガツ行きたい、けど律の気持ちも考えてちゃんと抑えて……でもやっぱりできる限りは押したい!というキヨ。
純粋そうに見えて意外と強気にグイグイきちゃう、でもやっぱりキヨより少々おぼこい律。
平和にイチャイチャする二人も、一緒に試練を乗り越えようとする二人も、同じくらい尊くて良かったです。
キヨの親友・カンちゃんもいい子で大好きだし、元彼・あらたのあざとさも案外好きだったりします。
的場はサイコっぽくて何とも気持ち悪かった。家族思いの母と自己中すぎる父を目の当たりにして、思うことがあったのか? 最後はちょっと消化不良な描かれ方でした。2巻で的場に吠えかかった犬が、4巻で再び吠えたあと、顔を背けて走り去ったのは……あの子は的場から何を感じ取ったんだろう。変化の兆しが見えた……のだと思いたい。
今巻もまたしんどい展開。
ただ前巻では、ここまで詳細な描写が必要なのか、そもそもここまで重い設定が必要なのか、という疑念がチラついてしかたなかったのと比べると、まともに読めました。
辛く苦しい流れの中に、ミカの想い、エルヴァの想いがしっかり感じ取れました。
兄貴分なのに、エルヴァより幼い姿のミカが哀しい。
8年間、アルトと過ごしてきたエルヴァと、孤独だったミカの差。
けど最後は、エルヴァの心を受け止めてミカが笑ってくれた。そしてミカの尊厳を守るために、いちばん辛いことを遂げたエルヴァの強さに、心打たれました。
けどその後さらに追い討ちをかける残虐行為があったのは、どうにも……前巻と同様、そこまで描く必要あるの?と思わずにいられない。
後半、二人の絆とエルヴァの強さに感動する場面にも、うっすらとモヤモヤが付き纏ってしまう。
100日とか時間の長さの問題じゃなくてね、ただ私の心がついていけなくて。
あー、ここでそういうことになるかー、と何ともいえない気持ちで眺めていました。
良かった部分はほんとうにすごく良かったので萌2をつけたけど、ちょっと割り切れない評価です。
島の外のことが明かされた3巻からだいぶ焦らされて、ようやく外へ! 出口が全く見えずに辛いことばかり続く展開はもうここが底で、少しは未来が開けることを期待しています。
羊でもふってるエルヴァと、最後の手紙は可愛かったな〜
前巻の終わりでもう完全に決別、かと思ったら、そうかダンスのレッスンはちゃんとするのね。以前ちょっと気まずくて駄々こねてたときよりも、むしろ粛々と。
そして以前のような歓びはなくとも、二人で踊ることだけはやめられない。一筋の細い糸……切ない。
マックスが現れて、ダンス界の事情を知り尽くした強かさを発揮する帝王がカッコいい。それを目の当たりにして、遠慮なく享受すると決める鈴木も。
恋愛面では行き詰まっていても、こういうところで骨太な信頼関係を見せてくれるのがアツいです。
マーサと踊りたい帝王が少年のようで可愛かった。
佐市さんを牽制しまくるのも、いつもの杉木節全開で好き。
そうして、ほぼ丸1冊をかけてジリジリと近づいてくる別れの時。
最後のダンスは圧巻の美しさでした。背景の描き込みも素晴らしい。
杉木教室は銀座であの公園は数寄屋橋あたりらしいけど、そこから丸の内を抜けて東京駅へ。始発前の人がいない時間に東京駅前のあの場所で踊るの、最高に気持ちよさそう。
二人の心の内とのコントラストがなんとも切ない、名場面でした。
鈴木の大躍進からの、すれ違いで会えず……からの、あの公園で!という幸福度マックスのところから、急降下。落差がすごくてかなりショッキングでした。
この二人はつまり男同士云々というよりも、自分が主導権握らなきゃ恋愛なんてできないってことですか……? 話し合うとか歩み寄るとかの余地も一切なしに? それで大切な人を手離してでも?
そこまで強烈な自我なんてものを持ち合わせない私にはイマイチ解せない。帝王はまあ納得かも。鈴木はキューバの男性優位主義育ちだから?
二人とも、ダンスで世界の頂点に立ちたい、観る者すべてを支配したいという闘争心と支配欲の持ち主だからこそ……ってことならば、なんという皮肉なのか。とにかく悲しい。
恋愛面ではそんな辛い展開の中、鈴木のダンスは本格始動。
お父さんを「裏切る」という決意は切ないけど、腹を括って自分を解放していく姿はカッコいいし気持ちいい。
でも、停電のあたりから何だか……鈴木がやたらと人間離れした存在になりすぎている気が。
鈴木が帝王をインスパイアした「神様」っていうところはすごく好きなんだけど、それは杉木個人の心の問題かと思っていた。ここまで超人的なものすごいダンサーなの??? ちょっと付いていききれない自分がいます……