2年の遠距離恋愛を乗り越えた二人と、ここまで見守ってきた読者への、ご褒美のような巻。斗真の帰国日からはじまり、一緒にいられる幸せを噛みしめる毎日と、成長した二人の仕事姿がひとつひとつ丁寧に描かれて、幸せな気持ちにさせてもらいました。
特に、仕事場面をたくさん見せてくれたのが嬉しい。やっぱりお仕事あってのコスラバですから!
斗真の方は、2年間の成果を感じさせる完璧な仕事ぶり。技術やセンスだけじゃなく、お客との対話力も上がってるってところが、ホントに1巻の頃からは想像もつかないぐらい成長したなと実感。
棗の方は、そういう隙のない感じじゃない。難しいお客相手にスマートに立ち回れたりはしなくて、でも精一杯に向き合うのが彼らしい。着々と仕事の幅を広げて人望も集めてるけど、まだまだBAとして伸び代があると感じさせてくれるのが良かったです。
二人それぞれの誕生日デートも充実でした。
これぐらいガッツリ遊んでるデート描写って貴重。BLあるあるの水族館で手を繋いでドキドキとか、映画館で横顔を見つめてキュンとかもいいんだけど、普通に仲良く楽しく遊んでる二人を眺めるのが好きなんです。
特に棗って旅行とかレジャーとかも思いっきり満喫するから、隣で見ていて斗真も幸せだよね。
1巻では24歳と23歳だった二人、今は何歳だろう?と思って、1巻からパラパラと振り返ってみたけど、数え間違いでなければもしかして、棗はもう30歳?
ほんとに長い長い軌跡にふさわしく、二人とも成長して、絆を深めてきたなと感慨深いです。
1・2巻あたりでは抵抗感ある部分もいろいろあったけど、だんだん進化していく二人を見守るのが楽しく、大好きなシリーズになりました。
10巻を読み終わったあとは、ぜひ裏表紙の絵もよーく見てみてください。最終話に出てきた大事なアイテムがカラーで描かれてるので、中面と照らし合わせてご確認を。
表紙も仕事の制服なのが嬉しい。本編の最終ページも素敵でした!
パリ編。憧れの本店で目をキラキラさせたり、ド王道の観光名所でウッキウキなところが、棗らしくて可愛い。そんなに楽しみにしてた旅行計画が潰れちゃったのに、せっかくの機会だから頑張ろうって前向きになれるところも。
斗真が「もっかい言って」「もっかいやって」とねだる流れも好きです。
そして斗真の決断。
ここは、いろんな意味ですごく心を掴まれました。
今まで二人の価値観はちょっとズレがあった。
斗真はいつも棗が最優先で、棗さえ居ればいい。執着溺愛と言えばBL的には美味しいけど、危ういし閉鎖的な考え方。
一方の棗は、自分だけ甘やかされるのはイヤだし、斗真に自分自身を大事にして欲しいし、恋愛にかまけてダメ人間になりたくない……っていう、ド健全で上昇志向の考え方。
それで散々ぶつかり合って、お互い歩み寄りつつも何だかんだ斗真が優位で来ていたけど、この巻で初めて流れが変わった。
棗との未来のために、プラス、斗真自身の仕事への情熱のために、遠距離になってでも上を目指そうという、棗寄りの考え方に斗真が動いた。
いつも口では「仕事バカ」とからかいながら、斗真は棗のその健全さや上昇志向を何よりも愛して尊敬してきた。つまり斗真だって本来はそっち側の人なんだよね。エマの現場で「レベル高くて俺がいちばんヘタクソ」なのを「楽しい」と感じた、というのと似たようなことを、初期の頃からチラホラと口に出してたし。
棗と出逢って変化してきた斗真が、ここまできて最後の殻を破った……それで二人のベクトルが完璧に揃った。感無量です。
棗もすごく成長したな。いつもの早とちり空まわりは自制して、斗真の言葉に耳を傾ける姿が頼もしい。
もちろん、遠距離の切なさもあり。
棗が「寂しい」と「応援したい」の間を揺れ動くのに共感したし、斗真がいつになく弱さを曝け出すところがめちゃくちゃに好き。表向きはハイスペな男が、好きな人のことでヘタレてる姿って萌える。
攻めの方が優位に見えて実は受けの方が芯が強いの、すごく好みです。
遠距離って定番中の定番だけど、離れがたい気持ちを抑えて二人の未来のために自ら別離を選ぶというのも、いちばんハマるパターン。
何より、いろんな積み重ねを経て成長していく二人が素敵。
個人的に刺さる要素が詰まっていて、シリーズ中でいちばん好きな巻です。
ポスターのエピソードもお気に入り。
最初のぎこちなさから斗真がうまいこと誘導して、棗のお仕事モードの表情を引き出したのかな〜とか妄想してしまいます。
描き下ろしの「甘々しいから応戦!」も可愛かった。やっぱり棗はちょっとぐらいは空まわってくれないとね。
火事の件は伏せられたままだけど、二人の出逢い編が読めて嬉しいです。
病院で再会したときの明……今より髪が長くてどこか陰をまとった色気に、いきなり吹っ飛ばされました。
1巻で友也が登場したあたりでも思ったけど、明って最初が無愛想な分、そのあとで見せる笑顔や優しさの破壊力が高い。あの静かで柔らかい優しさがほんとうに大好きです。
またその優しさと、酔っ払って可愛いトオルとの相性がめちゃくちゃいい。抱え上げて布団に寝かせるとか、その他諸々……ありがとうございます。眼福です。
1巻の第1話からトオルが着ていたダッフル。似合いすぎて可愛いから気づかなかったけど、確かにトオルの趣味ではなさそう。なのにあれから毎年着てて、健気すぎる。
そしてナチュラルに距離を詰めてくる、明のあの天然人たらしは何なんでしょう……「呼んでくれないんだ」からの「俺は呼ぶね」の畳み掛けに窒息。明が「トオル」と発音するたびに、心臓をキュッと掴まれる。
明の「おやすみ」の優しさと、トオルの瞳の透明さ。自分史上いちばん美しくて心に沁みる、“恋に落ちた瞬間”の情景でした。
明が友也の過去を聴いて「消そうか?」と言う場面も、とても綺麗で印象的でした。
「俺の」と呼ぶような存在だったのに……切ない。
そんな話ができるぐらい、明と友也の信頼関係も強くなってるんだな。
友也って、トオルのこともすごく好きだけど、明のことも大好きですよね。3人のバランスが心地良いです。
トオルと友也の酒癖悪いコンビでわちゃわちゃ暴れてるのに、明が全く動じないのがもどかしすぎるけど。
ちょっとだけ登場の宝生さん。意外とラフな私服姿もお美しい。あの麗しいお顔と淑やかな物腰でありながら、時々ほんのり武闘派な気配を滲ませてくるところが非常に善きです。「守る」っていうのは神職の特殊能力でってことだろうけれど、腕力もお強そう……。
もう一人、強く美しい男・氷川。
ひめかわ以前にも、明にそんな辛い過去があったなんて。
そして明があんな風に弱いところを晒す相棒がいたなんて。
明の知られざる側面が少しずつ見えてきました。
氷川の今の相棒は、可愛い姿だけど、厳しくて、せっかちで、頼もしい。
氷川が彼と一緒にいることを知れて良かったね、明。
「背負い込もうとする癖を直せ」と毅然と言ってくれたのが、男前すぎて痺れました。この人にしか伝えられない言葉。
明の心の柔らかい部分と、想像以上に過酷な庭師の世界。
それを知った上で明とトオルの出逢いエピソードを読み返すと、最初にトオル視点で読んだときとは違うものが見えてきた気がします。
氷川のことがあって、さらにひめかわでも犠牲が出て。再会したときの明の心はどん底だったはず。
そんなとき、トオルの「庭師さん」という呼びかけは、明の心にどんなふうに響いたんだろう。
トオルがまた板前として元気に働いてる姿は、そしてあの可愛さと健気さは、明にとって救いだったんじゃないかな。
……でも、その背中には消えない傷跡があって。
背中と言えば、「トオルの名推理」には膝から崩れるほど笑ってしまった。
笑ってしまったけど、それだけ明のこと考えて、明のこと知りたいと思ってるんだよね。
だから、少しだけどちゃんと教えてくれたって、嬉しかったのに。やっぱり消してしまうのかーーー、明。
何も知らずに目を覚ますトオルが、何ともいえず切なかった。
光の差し込む美しい朝と、前向きで真っ直ぐなトオルの心。なのにどこか、もの悲しく感じてしまうのは何でだろう。
最後のページは……どういうことなの?!
早く続きが読みたいのに、次の巻が出たら完結してしまうなんて寂しすぎる。
幸せな結末を信じています。
今回もまたマサの「強いDom」っぷりが堪能できて至福でした!
イカツいカッコ良さと可愛さのバランスが本当に絶妙〜〜で大好き。
オトが腕を組まれている写真を見て「距離が近い奴が居た」って拗ねてみせるの、何であの見た目で可愛く見えるんでしょう……天才的すぎる。
オトが酔わされて誘われてるところに割って入ったときは、完全に攻め受けのムーブが逆転しちゃってる男前さ。コマンドもカッコ良すぎました。
でもこの二人、ただ“逆”っぽいだけじゃなくて、瞬発的にはオトの方がしっかり強いところが更にいいのです。
マサは安定感のある鋼鉄のような強さで、オトは希少なダイヤモンドのような強さ。
暴走しかけたマサをオトが一瞬で鎮めたシーンは、見惚れてしまいました。
グレアといえば1巻を思い起こして……こんなにも強いオトの力を、あの時はマサが体を張って受け止めたんだよなという過去と重なって、二重に感動。どちらも強くて、どちらも良い、この二人。
1巻との対比といえば、あの頃はマサがぐったりしちゃうと「やりすぎた?」って不安になってたオトが、今は何も言われなくても「マサは強いDomだから」と信じられるようになってる。二人の信頼関係が、ほんとに完璧なものになったんだなって、感慨深いです。オトも、マサも、よかったねえ。
オトの年下らしい可愛さも好き。
助けてもらっておきながら「ハヤタにコマンド言ったよね」とお仕置きモード?……と思いきや、ヤキモチ妬きながら好き好き言ってるのとか。そのまま健やかに寝ちゃうとか。
冒頭の、お互いボンに妬きながらイチャイチャしてるところも、幸せで楽しいです。
そう、この巻の第三の主役はハヤタじゃなくてボンですね。
強いポメ!!
ただひたすらに可愛いだけなんだけど、なんだかイイ仕事してくれてる。
ハヤタは、当て馬というよりただの厄介者でした。
マサが怒ってコマンドやグレアを出すというストーリー上、イヤなキャラなのは仕方ないけど、それならそれで最後はきっちり二人から遠ざけてほしかったかな。厄介だけど根は憎めないヤツ、みたいなポジションに収まるにはあまりにも話が通じなすぎて怖かった。
続刊ではあまり出てきませんように……
なんかもう、恒例行事と化してきた棗の“空回り”。
まずは「脱バカップル」っていうのが……めちゃくちゃ好き。初めて、棗の空回りを100%手放しで可愛いと思えたかも。
愛されすぎて幸せすぎて他に悩むところがないっていう証だし。
でもまあ色ボケしすぎないよう気を引き締めるのも、実際のところ大事ではあるし。
そこを大真面目にぐるぐる考えて、勝手に張り切っちゃうのが、いかにも棗らしい。
代役で急遽ショーに出てくれ!なんて話はいかにも少女マンガ的な非現実展開だったけど、これも好きなエピソード。
斗真への恋人としての想いと、メイク(仕事)への情熱、両方のドキドキ感が伝わりました。
やっぱりコスメ関連で二人が輝いてこその、コスラバ。
モデル復帰疑惑……これは棗の悪いところがまた出てしまって、本人に確認もしないで一方的に疑うとかありえないんだけど、意外とあまりイラつかずに見守れました。最初の「バカップル」というパワーワードが効いていたのかな? 勝負だとかイチャイチャ禁止だとか、ハイハイ平和デスネーという感じで。
そしてイチャイチャ禁止でそれぞれ悶々としている二人が可愛かった。最後はお互い耐えられなくなってなし崩しになるという、清々しいまでのバカップルぶりで大変によろしい。
この巻では、斗真も余裕のないところが結構出ていたのも良かったです。
イチャイチャ禁止を宣告された後の「ミスった…」「苦行…?」「死ぬ…」とか、普通にこういうこと考えるんだなって。
クリスマスツリーの前での「泣きそう」も可愛かった。
斗真が棗を手のひらで転がしていたようでいて、棗の言葉が、斗真の想像を遥かに超えたところから、圧倒的に心を満たしてしまうの。
1巻の頃からは予想もできないほどの素敵なカップルになったなあと思います。
電子限定描き下ろしが「キスの日」の棗視点で、さらにシーモア限定描き下ろしで斗真視点を読めるのも有り難すぎました。斗真のこういうところを見せてくれるの、ホントいい……
1巻、2巻と、どうも苦手な部分が目についてしまっていたこのシリーズ。この3巻で唐突にハマってしまいました。
今までの棗も好きな部分はあるキャラだったけど、それよりも意固地で独り善がりな部分が前面に出すぎていて何だかなあ……だったのが、今巻では生来の素直さがいい具合に出てきたような。
前半、新任チーフとして肩に力が入っちゃってるあたりも、微笑ましく見守れました。
二人でくっつきながらコーヒー淹れてるシーンとか、初めて合鍵を使うエピソードがすごく好き。普段は意地っ張りなのに、こっそり手を繋いでみるとかさ……そういう可愛さが棗のいいところ。
後半はまた良くない空回りが出てきちゃうんだけど……ここは個人的に、しっかり向き合ってほしいところだったので、描いてくれて良かったです。
斗真みたいに出来が良すぎる後輩がいるのって、普通に誰でもやりにくい。
棗は、そんな斗真を真っ直ぐに受け止められる稀有な人。
けど、ただの先輩だった頃はともかく、恋人となるとまた、棗には違うしんどさがあると思うんです。恋人だからこそ、頼りっぱなしじゃなくて対等に隣に並べる存在でありたいよね。まして同性だから、なおさら。
そういう棗のコンプレックスが痛いほどわかって、切ない。体調悪いときって心も弱ってネガティブになるのも、傷つける言葉を言ってしまってから我に返って後悔するのも、わかりすぎて身につまされる……。
斗真の秀でた部分には棗は敵わないけど、棗には棗の、唯一無二のいいところがあって、それを斗真は何よりも愛しているってことを、二人がちゃんと確かめ合えてよかった。
才能コンプレックスを乗り越えて自分の輝ける道を見出していくって、すごく好きなテーマなので、めちゃくちゃ刺さりました。
これまで斗真の方が常に優位だったのが、今回のケンカではちゃんと年下っぽい未熟さが見えたのも、バランス良く感じます。
弱ってる相手を正論で詰めるとか……いくら優秀でもこういうところがまだまだコドモだよねと。
お互いにダメなところがありつつ、補い合える関係性というのも、私の好みド真ん中でした。
この先もほんとに大好きなカップルに育ってくれる二人。この3巻で、恋人としての原点に立ったような気がします。
【上下巻から続・3巻まで計5巻分まとめてのレビュー&評価です】
Pixivで『渇望』として連載されていたころから、ずっと大好きな作品。
単行本化が決まったときはホント嬉しくて、もう覚えるぐらい何度も読み込んでいたけれど、絶対買う!すぐに買う!とわくわくして待ち構えていた記憶があります。
続・3巻の前半までは、単行本化前にPixivで掲載された分です。
2025年8月現在まだ掲載されているので、単行本を試読して何だか読みづらい?と敬遠している方がいたら、ぜひPixivの方から入ってみて欲しいです。
もともと単行本になる前提ではなく描いたものを、しかも中途半端なところで切り上げて上下巻に収録してしまっているので、単行本のほうはいろいろと読みづらく感じる部分があります。
Pixivだと話ごとに「○日目」というサブタイトルが付いていて、葉月と真が出会ってからの毎日……大きな動きがあった日も、大したことがない日も、1日1日をとりとめもなく覗き見してるような、元々はそういう作品なんです。
商業コミックスとは違って、テンポとかメリハリとかは度外視して、作者様が描きたいものを自由に楽しんで描けるPixivだからこそ生まれたオンリーワンの作品だと思います。
なんといっても、新藤葉月という男が強烈に魅力的!
クズ男ではある……酒浸りでだらしなくて自分勝手で節操なくて、むしろ筋金入りといっていいクズ男なんだけど、人間として大事なところはちゃんと真っ直ぐなのが、ずるい。くまママやテツオが文句言いながらも構ってやっちゃうのもわかる。何だかんだいって好きになっちゃうよね。ついでに、顔が良すぎるのもずるい……
そして自分を否定しがちな真にとって、どこまでも自分本位に全てをなぎ倒してくる葉月みたいな男が、ものすごく救いになるのもよくわかる。
辛い境遇で育った真は、自分に価値がないと思い込みがちな病んだところがある半面、自分だって言いたいこと言いたい、自分らしく生きたいと思う健全な部分がちゃんとあって、必死にもがいてるのが切なくて愛しい。
で、そんな真にときどき葉月の方が振り回されちゃうバランス感も良いです。大胆不敵に見えて、けっこう小物感があるのがまた葉月の可愛さ。
葉月だけじゃなく、テツオ夫婦もママも円ちゃんもおじいさんも社長(課長)も、真に何も聞かずに当たり前に接してくれる、優しい世界が大好きです。
忘れちゃいけない、ザリガニ(犬)も。真が自分はいらない存在なんだ……と病みモードになったとき、ザリガニがそっと背中に寄り添うひとコマが印象的でホロっときました。
まこっちゃんが心の底から幸せになれるよう、ずっと応援しています!
pixivで『渇望』として連載されてた頃から大好きで読み続けてきた作品。
1つ前の〈続・3巻〉の前半(〜act.30)までが単行本化前にpixivで掲載されていた分で、後半(act.31〜)からが商業作品として描かれたものだと記憶しています。つまりこの〈続・4巻〉からは完全に商業モード。そのせいもあってか、作品の雰囲気が微妙に変わったというか……安定感?奥行き?のようなものが増した気がします。
でも、いつもの葉月節や愉快な仲間たちが健在なのも嬉しい。
葉月の「好き」と伝えたい事案。
プレッシャーとかタイミングとかでグダグダする葉月……この人のこういうヘンな律儀さとかヘンなヘタレさが好き。普段はあんなに傍若無人に生きてるくせにね。
で、いったいどんな照れ隠しをかましながら言うのかねえ……とニヤニヤしながら見守っていたら。
ああーそう来たーーー!!
そうだった。いろんな意味で「ずるい」この男の、いちばんずるいところってこれだった。
だらしなくて自分勝手でヘタレなくせに、ここぞって時はちゃんと真っ直ぐなところ。
こんなの……カッコいいとしか言いようがないじゃん……ずるい……
「お前の決心は鈍らねーだろ」とか「お互い様ですからね」とかの会話も、今までの二人を思い返すと、まこっちゃん強くなったなあ、絆が深くなったなあ、と感慨深く。
とどめに「勘弁しろよ」なんて、葉月のこんな表情を見る日が来るとは。
そして、葉月と真が駅で最後に交わした言葉も……出会ってからここまで2か月ぐらい(?)の積み重ねがあるからこその、万感の想いが感じられてグッときました。
真の家庭問題は、今までちょこっと出てきた話では姉たちに虐められて……というシンデレラ的なフワッとした印象しかなかったけど、想像以上に生々しくてしんどかった。父親が最低だし気持ち悪すぎる。真が高校卒業を待てずに飛び出しちゃったのも納得いってしまった。胸が痛い……
虐め続けてきた姉たちや、それを放置してきた義母も悪いことは悪いけれど、複雑な気持ちは理解できる。義母は「意地」だと言っていたけれど、真がちゃんと独り立ちできるように最低限のことはしてやりたいという、責任感というかどこか母性に似たようなものが感じ取れて、やっぱり胸が痛かった。
そして、真のほんとうのお母さんらしき人の話……意外すぎてびっくり。
早く続きが読みたいです!
前巻、静の失言…からの椅子に座りにいくくだりのside:朔太郎からスタート。静視点から見ていると大らかで明るい朔ばかりに目を奪われてうっかり忘れそうになるけれど、そうだ、朔太郎という人は静よりもナイーブで、脆いところがある人なんだった。
この作品を読んでいると、自分の偏った見方や安直な考え方に気づかされて、ハッとすることが多いです。
環の話も、まさにそれ。
環ってあんなにいい子で二人のことも慕っているんだから、カムアウトするのに何の問題もないんでは……と単純に思ってましたが。
“いい子”な環にも“いい子”なりのしんどさがあるし、朔はそれにちゃんと気づいてるし、お互い気遣い合うからこそセンシティブな話を切り出すのには勇気がいる。
これを踏まえた上で、環の口から出た「そうだといいな」という掛け値なしの言葉は何倍も深く心に響きました。
ただいい子なだけじゃないけど、やっぱりいい子だよ、環。
静の友達の真鍋くんも、前にサラッと「彼氏」と口にしてる場面があって、古い友達だから当然知ってるのね、いい関係だね、ぐらいに思ってたら、こんな歴史が。
真鍋という人がまた、いかにも悪気なくああいう発言しそうでもあり、だけど本当に静との友情を大事にしてて心から反省してるのもちゃんとわかる。ほんの少ししか登場しないキャラでもブレがなくて説得力あります。
少ししか登場しないといえば、多治見さんのたった1コマの回想「センスいいね」を見た瞬間、何だか目の奥が熱くなってしまった……すごく印象深いお人で、大好きでした。
武市くん、可愛い印象だったけど、朔と同じぐらいに身長が伸びてる! 笑顔で巣立っていく姿が感慨深かったです。
柿沼さんのエピソード。
仕事と、家族と、自分自身……身に染みるテーマでした。
自分を犠牲にしなくちゃいけないことはどうしてもあるし、犠牲が必ずしも不幸なばかりではないし、でも犠牲にしすぎるのも違うし。どの選択が最善なのか正解なんてわからないのに、ある日突然、決断を迫られることって実際にある。
こういうリアルで苦しい話、私はあまりBLで読みたいとは思わないほうなんだけど、スモブルはすっと心に沁みてくれます。綺麗事すぎず、非道すぎでもなく、地に足ついていて、光もちゃんとあって、バランスがいいからかな。
翻訳への情熱よりも家族を取った柿沼さんが久慈父に心酔しているというのも、静にしてみれば皮肉な話。学者としての謹厳さを讃えられたことも、柿沼さんを静と見間違えたことも……ほんと、言葉では説明しがたい複雑な心境だよね。何とも奥深いエピソードでした。
この1冊を通して、いろんな人の人生や想いと触れ合うことで心の中に積もっていったものが、ひとつの力になって臆病な朔太郎の背中を押す。
静に気持ちを「報告」した4巻でも思ったけど、こういう構成が神がかって素晴らしいです。
多治見さんが亡くなったときMRの仕事に虚しさを覚えて泣いたのが、今は「何ひとつ無駄じゃなかった」と涙するのも、胸熱……!
夜桜のシーンも素敵でした。
BLを読んでると、桜が舞う夜の印象的なシーンによく出会うんですが(私のユーザーネームの由来)、またひとつ名場面がリスト入りしました。
このあたりから、不穏さが兆し始める二人の関係。
今まで散々(しかもかなり濃厚に)キスしまくってしておいて、それでもまだ男同士は無理って拒絶する?と思わないでもないけど、まああまりにイージーなのよりはいいのか。
そこへ登場するベーメル夫妻。この二人、好きです。
「アルベルト・ベーメル!!」叫びたくなるの、わかるな。小さいオッサン、カッコいい。ドリー姐さんの尻に敷かれてるところも可愛い。見た目はノーマルな男女カップルなのに、実は二人とも本来の性志向と違う相手と結婚したという、不思議な巡り合わせ。
アルに宣戦布告する鈴木のビッグマウスもカッコよくて、世界進出がここで一気に楽しみになりました。
鈴木がこれまで国内に留まっていた理由であるキューバの家族のこと、もう一人の「妹」アキのこと、いろいろ描かれたのも楽しめました。アキちゃん幸せになって欲しい。
ついでに悪い顔の房ちゃんも可愛い。
ちなみにこの巻から【特装版】が出始めて多くの読者から絶賛されてますが、私は【特装版】ではなく【通常版】を選びました。
レビューを読んで特典ストーリーの内容をだいたい把握した上で、一部のレビュアーが違和感を唱えているのを見て、自分はたぶんそっち側の人間だろうと判断したので。
読み比べたわけじゃないけど、この選択で正解だったと思います。
これだけ強烈に惹かれあって、でも男同士だからという葛藤があって……というもどかしい展開なのに、この時点でそういうのはまだ見たくないな、私は。