渋茶さんのマイページ

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女性渋茶さん

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アダルト度増し増し

『晴れ男の憂鬱 雨男の悦楽』に登場していた藤近のスピンオフ。
こちらも元は2004年にリンクスロマンスより刊行されたものだが、2018年刊のガッシュ文庫版を購入。
志水から見てクセ者な元同級生、泉から見て同類故ちょっぴり心配な藤近が受けキャラとは嬉しい限りだ。(個人的な好みだが)
そして、前作では僅かな登場なものの、もしかしたらこの男も…?とピンときた志水の上司・右城がその相手と知り、これまた好みのタイプの攻めキャラだった。
しかもキャリアを積み、無事に一人娘も育て上げた貫禄のオヤジ攻めじゃあないですか!!

実は右城、藤近と出逢った当時は別居とはいえ妻帯者だった…と言うともやっとするかも知れないが、恐らくは夫婦関係の解消も視野に入れた人生設計だったらしく、家族揃ってサバサバしている。
父親として、社長としての役割をきちんとこなし、新たな恋愛も謳歌している感じだね。
あゆみのほうは、フラれた事実を受け入れていて本当の事は分かっていてもやっぱり藤近に未練があるのかな?

藤近が本命の相手にはしおらしくて新鮮だったが、いつも通りの小気味良い一面も健在で、それでこそ!!と安心できた。
引っ掻き回し役となった脇キャラ・将人が実にいい味を出している。
彼も格好良いし、いずれは大成しそうな予感がするね。
そして飄々として懐が深いようでいて、しっかりと藤近への独占欲も主張する、期待した以上のいいオヤジ攻めだった。

しかし、右城曰く、友達思いの藤近に感化されて高校生みたいな恋愛だと思っているらしいが、エッチはガッツリで絶○とも言える様子はアダルト度増し増しでやっている事が真逆なんだが(笑)
スピンオフながらも、本編に負けじの充実度、満足度だった。

有紀彦ってば愛されてるなぁ

2009年刊。
ふと"催眠術"というキーワードのものが読みたくてちるちる内の作品検索で探してみたところ、ヒットしたのがこの一冊。

主人公・有紀彦が催眠術をかけてもらう目的は、本気の愛情を信じてもらえない"彼"に対して、また同じ"彼"を好きになると証明する為だった。
25歳から20歳の記憶に、本気の愛を知らなかった頃に戻してもらう事に意味がある。
…と、そこまで本人が用意周到に計画を練ったうえに、過去に有紀彦を口説いていた同性の協力者を交えての1ケ月間の負けられない賭けに挑んだ結果は如何に!?

この話、『攻めが一体誰なのか探っていきながら読んでいく』といった内容が正に自分の好みにぴったりだった。
元々、『正体不明とか謎の男的な掴めない攻め』ってのが大好きなのだ。
リンクスロマンスの電子書籍版で挿絵が付くようになったのは約2年前からなので、この話には挿絵が付いていない。
攻め候補が3人も居るとなると余計に挿絵の力も借りて誰が本命なのかと読み進めたかったところだ。



…(゚д゚)!!


…つーか、これって分かる人なら速攻でピンとくるじゃーないか(-_-;)…


ま、それでも充分面白かったけれどね。
有紀彦が1ケ月後に無事同じ"彼"の元に辿り着けたかどうかは読んだ人のみぞ知るという事で。

賭けに乗った他の男性陣も紳士的で、隙あらば出し抜こうといったガツガツしたものがなかった。
有紀彦自身、資産家の御曹司なので育ちの良さは天性のもので、人を惹きつける魅力も持ち併せている。
当然、心身共に愛情を注ぐ権利のある本命の恋人は一人だけだ。
だが、執事にしろ過去に口説いても一線を越えられなかった他の男達にしろ、有紀彦に好意以上の様々な感情を寄せている。
周りの人達に色々な意味で愛されている主人公だった。

正統派路線のケモ耳受け作品

2014年刊。
マイページ内の『読みたい本』から引っ張てきて電子書籍にて購入した一冊。
個人的に攻め受けどちらかが獣医という設定が好きなのだが、今回も外れる事なく作中の動物達の可愛さに和んだ。

病に伏した姫巫女、こと母親を助けたい一心で月の世界から人間界に降り立った梔子(くちなし)。
怪我をして力尽きたところを目指していた動物病院の獣医・橘に助けられ手当てをしてもらったが、梔子の正体を明かしても月への往診をすげなく断られてしまう。
動物病院で橘の助手として働きながら、何とか彼を説得しようとするのだが…

動物病院内の日常を中心に、橘の獣医としての情熱が熱い。
橘は始終ぶっきらぼうで人使いが荒く口も悪いが根は悪くない、どころか常に動物思いの優しい男だった。
そんな姿を目の当たりにして、最初は彼に対して印象の悪かった梔子も次第に絆されていく。
また、梔子のほうも耳が少しだけ折れているせいか月の世界で一人前に扱ってもらえていないコンプレックスを抱えているが、頑張り屋でいい子だとはっきりと分かる。

受けがウサギ耳キャラという非凡な設定ながらも、話のほうは羽目を外す事なく至って正統派路線だった。
身体の関係も、きちんとお互いの意思疎通があってからといった流れで、"初夜"を祝福されるってのも何だか久々に読んだ気がする(笑)
実は梔子は助けられた当初、橘に"真珠"と名付けられてしまったのだが、この事が月の世界では大きな意味を持つというのが終盤になって分かってくる。
それが結果オーライだったし、自分はこちらの名前のほうが好きだな。

ところで、橘の友人で動物病院に日頃出入りしているMSの藤田は梔子の正体に気が付いているのかな?
飄々としているようで上手く梔子をサポートしているし、彼ならば月の世界の事を知っていても信用できそうだ。

父も子もキラキラ

2019年刊。
表紙が綺麗だしあらすじを読んで興味が湧いて購入。
桃季さんの名前は知っていたものの、コミックを読んだのは今回が初めてだ。
主人公・聖也のホストとしての手際良さと、亡き姉の子供(天稀)を引き取っての子育て生活の両立ぶりが見事だ。
内容としては、自分がメインで読みたかった聖也のホストの一面のほうが割合多めだったので良かったが、子育てのほうもきちんと描かれていてバランスが取れている。

うん、確かに天稀くんは可愛かった。
何せ父も子も始終キラキラしている。
この二人の容姿からすると、多分亡くなった聖也のお姉さんも相当美人なのだろうね。
そんな二人の日常に偶然親密になった隣人の人気作家・桐生が絡んでくる。
桐生は酔っぱらっていなければなかなかのいい男で、小さい子供の接し方にも慣れている。 
おかげで天稀が彼に懐くのも早かった。
聖也との距離感も絶妙で、二人に好意を示してくれる桐生に聖也も次第に打ち解けていく。
仕事も育児も完璧にこなせている聖也に引けを取らないし、こうして見ると桐生って興味深い男、なのかもね…

ちなみにこの巻では、他のホスト達が立て続けに事故に遭う不自然さから、聖也に執着しているストーカーらしき男とのひと悶着もある。
ここぞの時の黒スーツ聖也も美人だったが、残念ながら桐生との『その後』はあと一歩のところだった。

惜しい状態でこのまま一冊きりで終わってしまうのかと残念に思っていたが、最近続編も刊行されたと知ってホッとした。
二人がどんな恋人同士になるのか気になるし、脇役達も手を抜かずに描かれていた点も好印象だったので、彼らがもう少しキャラ立ちすると更に面白くなりそうだな…と思っていたのだ。
それに、何となく桐生自身も引きだしが多そうで、他のエピソードも出し惜しみしていそうだなとも感じたので、彼らの新たな一面に期待したい。

渋澤センセイの教訓が刺さる

2014年刊、ヘブンノウズ最終巻。
最終巻にして宇喜田の後継者として平久保を新たに登場させて収拾が着くのかと心配したが、たちまちに屋敷の住人達に溶け込んでいてほっこりできた。
永一と渋澤の関係に驚いたり、薫も無事に帰国してひと安心、シリーズとして上手くまとまった感がある。

さて、3巻・"赦罪"にて、とらわれていた過去の想いから解き放たれた渋澤はまさに絶好調で、恋人の旭との間でも渋澤独自の視点を織り込んだ会話が弾んでいた。
人生の先輩として常に旭を諭す姿にも大いに納得できるが、他にも
"お互い影響を与えあった量子の影響から家族・恋人・友人といった関係を築くと離れていても心が繋がる"、
"沢山愛されて育った子は強い"、
"皆別々の物語を生きている"、
など、彼自身が生きてきたうえでの教訓には多々刺さるものがある。
『渋澤録』なるものが作れそうだな。

実際の愛情表現も豊かで、ベッド上のいちゃつきぶりもさることながら、どのキスシーンも情熱的な様子が伝わってくる。

旭・ミツル兄弟の母親が亡くなった事件の真相も明らかになるが、これは女性にとっては複雑な心境だね。
京香にとっては赦しても赦せなくても荊の道だろうに。
旭の複雑な胸中通り、母親・花枝も実に難しい宿題を残して逝ってしまったものだね…
『個々が持ち織り成していくものこそが物語だ』とはいえ、全員が幸せな道を歩んでいくってのも難しいものだ。

シリーズ全体、ホームドラマとして楽しませてもらった。
幽霊が見える、オーラが見えるといった不思議要素は要らないんじゃないかとも思ったが、渋澤や薫の人格形成に必要なものだとすると受け入れるのに抵抗はなくなった。
登場人物達の今後はまさに"神のみぞ知る"といったところにあるが、恐らくは心配する事はないだろう。

らしくなくても渋澤

2013年刊。
ヘブンノウズ3巻目は、物語の後半に入って一気に動きが出たかのような展開だ。

今回は『恋人は作らない主義』を主張する渋澤の過去がクローズアップされている。
渋澤は周囲の友人知人とは上手く交流も深めているのに、何故だか義弟・広也との接し方だけは、生前も死後もことごこく失敗しているようだ。
渋澤の両親に関しての回想を通して、彼自身が接し方を誤った原因を淡々と語っている。
執事の宇喜田や薫が言葉僅かながらに語る部分からも、広也はかなり難しい子だったのが伺える。

しかし相当執着心が強そうで誰の説得にも耳を貸そうとしなさそうだった割りには、あっさりとこの世を去っていったな…
渋澤はガツンとやられたけれどさ。
広也の無念をどう昇華するかってよりも、渋澤が引きずっている過去をどうやって振り切るかってのに注目がいくような流れだった。
その点については、旭が渋澤に"彼の為にいつまでもここに縛ってはいけない"というふうにはっきりと言い切れたのが良かった。

そんなゴタゴタを通して渋澤自身が大変だったのは読んでの通りなのだが、彼自身の我が強いせいか"らしくない状態"であっても独特さってのを見せつけられた感はある。
ペンギンのドキュメントを観ながらぼんやりとピーナッツを数えていたりとか、セフレだった速水と呆気なく別れた執着の無さとか、旭が薫に靡いていっているのを黙認しながらもしっかりと気にしている様子とかさ…
そして吹っ切れた渋澤はこんなにも変わるものかといった旭へのアプローチ、やっとこさ年上溺愛攻めの本領発揮かい!!といった終盤にはニヤケまくった(笑)

恐らく次巻は旭・ミツル兄弟の母親が亡くなった事件の真相が明らかになっていくのだろうね。
この長編を読んでいって一番気になる部分とはいえ、せっかく旭もミツルも同居人達に打ち解けて以前の明るさを取り戻しつつあるというのに、まだ大きな試練があるのか…

不思議なホームドラマ

2012年刊。
まだ物語の1巻目だが、幽霊が見えるかどうか、登場人物達の明かされていない過去の匂わせ?を感じる中で、自分なりに捉えた感覚ではこれから"不思議なホームドラマ"になっていくのかな?だった。

最初に目を惹くのはベストセラー作家・渋澤の結構な変わり者キャラぶりだ。
理屈を捏ねて人を煙にまくのに長けていて押しが強く、多分他者の意見には安易に流されないタイプっぽい。
偏屈かと思えば困っている人には優しく、ワケ有りな友人親戚に手を差し伸べて彼の住む屋敷に同居を許している。
そんな渋澤は、自身の児童書のイラストレーターに見つけた旭と、母親を亡くした事件のショックで話せなくなり引きこもりになってしまった幼い弟・ミツル兄弟にも優しい。
そして渋澤に一目置く一面は、初対面から心を閉ざしていたミツルが即座に懐いて子供らしい感情を見せているところだ。

登場人物中、唯一の現実主義者で幽霊を否定している旭だが、そこを柔軟に考えていかないと幽霊が見えるミツルとは距離が縮まらないし、心を開いてくれないといったジレンマに陥る。
旭が度々自己嫌悪に落ち込んだり、あの時母親に素直に謝れば…と後悔を抱えている様子は切ない。
彼だって母親を急に亡くし幼い弟の面倒を見る一方で、大学を辞めてバイトしながら生活を支えていて心身共に休む暇がないのだもの。
確かにね、渋澤が言う通りミツルと共に旭も救われないとね…

そんな旭がこれから渋澤とどうやって恋愛関係を育んでいくかを追っていく訳だが、渋澤曰く「恋人は作らない主義だ」と明言しているだけにどうなる事やら…
おまけに旭は、同居人となった占い師・薫に「必ずしも幸せとは言い難く辛い想いをする」なんて言われちゃって…
これから渋澤の恋愛観や感情にどう振り回されるかが、"神のみぞ知る"なのだろうかね。

読了後に萌えを噛み締められる不思議さ

2006年刊。
子供の頃に香港から流れ着き、成人後は横浜中華街のチャイナタウンでキリトリ(借金取り)として生きている潔は、類稀な美貌を持つ少年・春来(ツァンライ)に一目惚れしてかっさらって来てしまった。
衝動に駆られてさらってきた割りには春来に手を出さず、日々痴話喧嘩しながらの共存生活が5年余り経つ中で、年頃の春来は己の美貌を活かし女装姿で夜の街で働くようになる。
しかし、そんな二人の生活がこのまま何事もなくやり過ごせるはずはなく、チャイナタウンのボス・正木に二人の身の上が怪しいと勘づかれてしまい…

今回は日本のヤクザ物とは趣の違った裏社会、アンダーグラウンド調な話だった。
事情があってひっそりと身を寄せ合っていた二人故に、くっつくのも無理はないとは思える展開ではあるのに、潔は愛しいのに手を出せないもどかしさに悶々としていたが。
読んでいる最中はそんなもどかしさとしたたかさが混沌としているような感覚だったが、結末は妙にすっきりする。
三人の関係が落ち着くのを見届けてから各キャラの可愛げが滲み出てくるというか、読了後に萌えを噛み締められる不思議さってのがあった。

愛しいのに手を出せない…と言えば当て馬の正木もだな。
ヤクザなのに、その権力を利用して強引に潔を手中する事も儘ならずに、これからも長年の片想いを引きずっていくのと思うといじましいねぇ(笑)

ところでこの話、日本の裏社会で訳有りな外国人同士の人間関係がもつれるって辺りから、五條瑛さんの小説を彷彿とさせるところがあった。
(あくまでも個人的な感覚だが)
実はこの人の小説もまだ一部しか読めておらず、分厚い文庫本を数多く積読している状態で…ああ…頑張って読まねば…
積読の山を消化していく道は果てしなく険しいぜ。

まるで宇宙人のような攻め、だった

2013年刊。
目の前で急逝した攻めがいきなり蘇生し、今まで何の接点もなかった受けにつきまとう…
序盤からして突拍子ない展開で戸惑ったものの、蓋を開けてみれば嬉しい事に『トンデモ展開で攻めの正体がなかなか掴めない』といった自分の大好きな類の話だった。
英田さんの小説を読むのはこれでやっと2冊目ってのもあり、作家に対しての先入観がなかったのも逆に良かった気がする。

作中では攻めキャラ達の人種は歴史によって神、悪魔、天使などと概念が変わってきたらしいが、自分の頭の中では"宇宙人"がしっくりきた。
根本自体が理解不能な攻めならば、単なる病院の清掃員に過ぎない珠樹にとって、訳の分からないまま傲慢な御曹司・ユージンに俺を愛してほしいと一方的に迫られ家に押し掛けられ、遂にはバハマまで連れ去られてしまうから混乱してしまうのも無理はない、と納得できるってのもある。

一体攻めはどうなる事かと思っていたが、探し求めていた人物が常識人で良心のある珠樹だったからこそ救われたね。
おまけに、いくら拒絶していても本来の攻めを理解しようと歩み寄っていくのだから優しい子だ。

この話は輪廻転生も絡んでくるが、珠樹の過去の魂よりも今の自身の気持ちを重視できた流れも良かったと思う。
もしかして珠樹だったら元のユージンにとっても良き理解者になれた可能性もあるけれどね。

ただ、見かけユージンでも中身は違っているので、残された彼側の家族を騙していく形になる訳だ。
いくらユージン自身の希望を汲んだとはいえ、彼の改心を心から喜んでいる気持ちを裏切っているのに変わりないのは複雑なものだ。
まぁ、ユージン自身をどうすれば良かったのだろうねってのが一番難しかったところだろうなとは思うのだが。
あと、一度きりとはいえ攻めが他の男を抱くってのも本来は有り得ない。
その辺りも、攻め自身が人の恋愛感情を理解できていない宇宙人だから…と、思わざるを得ないのだ。

何はともあれ、スルーせずに読んで良かったと思えた一冊だった。
脇キャラのスピンオフもあるとは嬉しい。
勿論こちらも読む予定だ。

芸術を愛でる水原作品、入門編

2006年刊。
電子書籍にて購入、挿絵あり。
水原さんの作品を読んでいると、絵画の心得でも有るのだろうか?と思う位、よく画家とかアート関係者が登場する。
ちょうどこの辺りから芸術を愛でる水原作品を楽しめる、といったところかな。

但し、水原さん初期作品で避けて通れないのが攻めキャラのDV気質で、今回の画廊オーナー・澤にもその傾向が引き継がれてしまっている。
最初のベッドシーンでサディスティックな一面が有ると自身が告白している通り、愛人契約に同意したとはいえ嫌がる亮を無理矢理抱く描写がある。
この時期は、他の作家、作品でも攻めが受けを無理矢理に陵辱するって流れの展開が王道の一つだったからね。

両親は既におらず、日本画を教えてもらった祖父も亡くなった為に生活に困り、美大も中退せざるを得なくなった亮。
澤はそんな亮を見い出して有名絵画の模写の仕事を与えるが、それは彼の画家としての才能を高める為に仕掛けた布石のようだった。

やがて亮にアトリエを提供して創作活動と生活費を支援する交換条件に、愛人契約も結んで云々…となっていくが、亮が単なる不憫受けに沈まずに健気受けらしい頑張りもあったのでほっとできた。
読むうちに彼の芯の強さも出てくる。
話の本筋とは外れるが、自分は亮みたいなじーちゃんばーちゃん孝行な子に弱いので、ホロリとくる場面もあった。

あらすじから連想させられるパトロンと芸術家のドロドロした生憎劇としては物足りなかったけれど、受けキャラの精神が病んでしまわずに済んだのは幸いかもね。
個人的な印象では、澤の助言も有るとはいえ、亮自身が己の才能に磨きをかけていく感じだ。

作中で複製画、日本画作成の工程も伺えて痛さに特化した内容ではなかった。
ただ、パトロンとしての澤のドライな性格は悪くないと思ったけれど、彼が絵画を憎む過去と亮に絆されていく過程に関しての折り合いがあっさりしていたかな、とは感じた。

余談だが、作中に名前だけ出てくる花鳥画の画家・水口藤水は『窓』に収録されている『黄色い花』に出てくる人物だね。
他作品で既読の登場人物の名前を発見した時にはおっ!となったのだった。