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そつがない。しかしアクもない。

タイトルに寸分の狂いもありません。
幼馴染がカップルになるまでの超~モダモダを描いたお話。

① 蒼衣(攻)は諒太(受)に長年片想いをしている。
② 幼馴染で同じ大学に通う二人はひょんなことからルームシェアをすることに。しかし同居人となった諒太の無防備な姿に気持ちを抑えられず、ある夜、蒼衣はとうとう想いを告白してしまう。
③ 蒼衣の気持ちに全く気付いていなかった諒太は突然の出来事に気持ちの整理が付かず動揺しまくり、悩みまくり。そんな中、隣人男性カップルとの交流や蒼衣とのデートを通し、蒼衣に対する自分の気持ちを一つずつ再確認していく諒太。
④ 果たして諒太が出した告白の答えとは――?

よく見る幼馴染テンプレではありますが、こちらは①②の告白までに時間をかけるタイプではなく、③の告白後のモダモダ部分をメインに持ってきている作品でした。
1話目で告白まで済んじゃうので、ちょっと駆け足かなーとも思いましたが、この辺は好みによるのでしょう。
受の諒太くんのモダモダっぷりを引き出していくには、さっさと告白してもらわないと話が進みませんからね。

ただ、そのパートをメインにしたとしても、諒太くんの出す答えはわかりきっていますし、諒太くんの葛藤内容も、どれだけ彼にとっては衝撃的で初めてのことでも、残念ながらこちらはもう何度も読んできた展開ですから、全く新鮮味はありません。
舞台も現代の普通の大学で特殊設定なし。
はっきり言って、ストーリー自体はめちゃめちゃ薄い。
この点は今作の圧倒的な弱みでしょう。

だとしても、さすが百瀬先生。
ストーリーが薄かろうが、テンプレ展開だろうが、読ませちゃうマンガ技量が半端ない。
テンポがひたすら良い。
最後までテンションを落とさずに駆け抜けます。
セリフや独白の文字量や配置も自然でめちゃめちゃ読みやすいし、心情をデコレーションするトーン背景や書き込みのバリエーションも豊富。
表情も豊かで、キメゴマもばっちり。
メインもよき隣人カップルもそつのない愛されキャラの仕上がり。
エッチシーンは爽やかさとエロさと初々しさの超バランス設計。

ああ、これはぁ……売れてる同人誌でよく見るタイプかなぁ。
いわゆる正統派現代801というか。
ストーリーうんぬんではなく、キャラありきのキラキラ・モダモダというか。

商業だからもう一歩オリジナリティを楽しみたいというわがままな思いもありつつ、
まあテンプレだと百も承知で手に取っているのでそこは評価対象外かなとも思いつつ……。

いや、これだけで十分楽しめる作品には違いありません。これは本当。

でも、もうワンアクセント、百瀬先生らしいエッジを効かせたアクを盛り込んで欲しかったっていうのが、やっぱり本音ですかね。

今までになく切ない帯でした

追悼・花川戸菖蒲先生という文字と
「……幸せな夢を見た」という薄墨色の本文抜粋のセリフ。

先生の死を悼む現実と、甘いBLの世界で呟かれる夢という言葉の組み合わせは、対極なのにしっかりと調和していて、目にした瞬間にいつもの書店の空気がきゅっと厳かに感じられました。

裏帯にはこれまでのシャレード文庫での作品名がびっしり記載されていて、ますます想いを馳せざるを得ません。

今回に限ってはジャンルや設定、あらすじの好みからではなく、花川戸先生の最後の作品という理由から読ませてもらいました。

内容はタイトルからわかる通りのオメガバースもの+裏権力系プチサスペンス。

攻の直紀と受の薫は名門私立幼稚園からの同級生で幼馴染同士。
いつも一緒にいた二人だが、直紀は自らの希望で中等部へのエスカレーター進学をせず、薫とは別の全寮制中高一貫校「慧総学院」に入学した。
一方、薫は中学に上がると同時にオメガであることが発覚し、不運なヒート事件をきっかけに学校での居場所をなくしていた。
心配した直紀の声かけで薫は高校から慧総学院に編入することに。
密かに想いを寄せていた直紀との全寮制の学園生活に期待と不安が入り混じる薫。
3年ぶりに一緒に過ごす直紀は、片時も薫の元を離れようとせず過保護な一面を見せる一方、影では学院の帝王として生徒や学校を意のままのしている素振りがあった。
直紀の様子に違和感を持ちながら過ごしていた薫にある日ヒートが襲い掛かる。
やむを得ず直紀と一緒に避難した個室で、理性を失った薫は必死で耐えている直紀を誘惑してしまい……?

ラブストーリに関しては既存のオメガバース作品に近く、ヒートを鍵として関係性の展開が訪れるいつもの仕様ですので、一般的なオメガバース知識さえあればスラスラ読み進められると思います。

一方、もう一つの本筋でもある「直紀が学院の王である」という謎。
本来中高一貫校のただの4年生である直紀が、最高学年の6年生や学校長にまでも意見を通す権力を持っている違和感。
背景にチラつく「俺はお前らの将来を潰すことができる」という脅しのメッセージ。

こちらに関しては花川戸先生らしい力強く個性的な設定と展開で中々読み応えがありました。
医者、弁護士、ヤクザ、政治家、社長、芸能人と様々なBLジョブがある中、将来の職業:黒幕って多分初めて読んだな……。
その重い職業選択を中学時代から背負う闇の深さと、でもそれは結局薫のためというBL的一貫性が良かったですね。
しかし、どうでも良い他人には堂々と権力を利用して付き合えるのに、格好つけたいばかりに大好きな薫には裏事情の説明も、好きだという告白もきちんとできていなかったため2回目のヒートでは薫に拒絶されてしまった直紀くん。
強めの攻様が狼狽える姿は王道に盛り上がり、ツボでした。

そうして最後に全てを伝え合って、結ばれて。
朗らかな日常を過ごして――
しかし作品はラストシーン不在のまま終了します。

先生に代わって編集部が作成したあとがきに、その理由が記されています。
素敵な物語の世界から、これが遺稿だったという現実に戻されてもう一度切なくなりました。

全てを含め、胸がいっぱいになる1冊かもしれません。

最後までBLを書き続けてくれた花川戸先生、書籍化してくれた出版社様・関係者様、本当にありがとうございました。