おラウさんのマイページ

神作品

女性おラウさん

レビュー数0

ポイント数2

今年度322位

通算--位

  • 神0
  • 萌×20
  • 萌0
  • 中立0
  • しゅみじゃない0
  • 絞り込み
条件

指定なし

  • レビューした作品
  • 神作品
  • 萌×2作品
  • 萌作品
  • 中立作品
  • しゅみじゃない作品
  • 出版社別
  • レーベル別
  • 作品詳細
  • レビューした著者別
  • レビューした作画別
  • レビューしたイラスト別
  • レビューした原作別
  • レビューした声優別
媒体

指定なし

  • 指定なし
  • コミック
  • 小説
  • CD
  • DVD
  • ゲーム
  • 特典
発売年月
月 ~
レビュー月
表示モード

ぷんすか!系独占欲が楽しい一冊

初読み作家様でしたが、なにこれ好みど真ん中の作品すぎて衝撃。
コミカルでハッピーでベタにBLしてるのにちゃんと個性が際立っている!
即行で過去作をポチり、一通り拝読。
どれも結構好みでしたが、やっぱりコレが一段飛び抜けて面白いと思ったのでレビューを。

本作はタイプで言うと、ストーリーや展開で魅了する系ではなく、二人の関係性を愛でて萌え禿げる系ですね。
既に恋人としての信頼関係が築けている状態で起こるアレコレが時におバカで時に過激で時にキュンと来ちゃいます。
このタイプのお話って、通常だと第2巻から繰り広げられることが多いんですよ。
ストーリーや展開メインの第1巻で紆余曲折を経てくっついた二人、その続編として描かれるイチャイチャ編みたいな感じで。
続編には続編の良さもあるのですが、個人的には正直飽きたり、ダレて脱落することも結構あって……。

その点今作は出来上がっているカップルの関係性を最初からプッシュしてくれて、大変ありがたい。
始めからくっついている二人を観察するスタイルということは、順行のストーリー展開からではなく、二人の日常的なセリフ、プレイ、表情などから読者が能動的に属性やパワーバランス、くっつくまでの経緯を推測しながら読み進められるという余白的な面白さもあるんですよね。楽しい。

多分その推測の肝となるのが、二人のオフィス・オンモードでのド派手な喧嘩っぷりですかね。
甘々描写ももちろん良いのですが、この二人の喧嘩って「相手が自分のことを絶対に嫌いにならない」っていう前提の上で思いっきりぶつかっているのが透けているから本当ニヤニヤするし安心して楽しめる。これは良い対等感と茶番感。
しかも、結局なんやかんや仕事うまく行って喧嘩が無駄にならないところも読んでいて気持ち良い。緩急バッチリ。
関係性メインの作品なのでストーリー自体は激うすなのですが、その分、こんな感じでキャラ、シチュエーション、テンポ、視点切り替えの掛け合わせはめちゃめちゃイキイキしていて好バランスです。
これでストーリーを欲張ると多分胸焼けしたと思う。
良い意味で隙がある感じ。
ベタはとことんベタですしね(エレベーターでイチャイチャするし、付箋でラブメッセージ送るし、もちろん会社のデスクで最後まで致すし、社員旅行の温泉では酒入ってパニックになります。お約束すぎる)。

そして何より好みだったのは、この作品、独占欲ドバドバで喜怒哀楽もハッキリしているのに全然、陰の執着とか病み系に振れないところ。
独占欲はあるし愛情もズッシリなんだけど、嫉妬しても拗らせず、ぷんすか!の領域で終わっているんですよ。
このさじ加減に留めてくれるの、個人的にめちゃめちゃ心地よい。
ポップなのに人間力も感じられる読感で終始ハッピーでした。

あと巻末の書下ろしパートもとても良いですね。
ちょろっとだけ、二人がくっつくまでの経緯が描かれています。
でもそのメッセージ性が高くて、案外深みがあるというか。
え?そこからこうなってこの関係性なの?!というプチ感動がありました。
おかげで二週目も楽しい。

うん。ベタなオフィスラブシチュエーションが苦手じゃない人でコメディ好きな人には刺さりそうな一冊。ひょっとしたら2022年前期のイチオシかも。

エロは言わずもがな。フィクション感あるキャラ・ストーリーも技ありで満足

よくある量産型のエロコメかと思いきや、小技盛り盛りでかなり楽しめました!
読後の印象抜群でしたので久々にレビューを。

ベース要素は古典的BL満載なんですよ。
表紙はオシャレ横文字ではなく、いかにもエロBL自信ありますみたいなビビッド配色と表情。
タイトルは一行で内容を理解できる考察要素の全くない親切設計。
ストーリーもベタベタに惚れ薬だったり、ちょっと強引に始まるセックスとすぐにグズグズにとろける受だったり。
片想いの相手には他に好きな人がいて……、この恋は期間限定で……みたいな定番切ない要素もあって。
エロは真正面からドストレートなお医者さんごっこを取り入れる潔さ。
ああ!どこかで読んだことあるやつ~~!の連発なのです。

なのですが!
これが良いのです!

BLの基本の基本を押さえているからこそ読みやすく、ここぞというアクセントが丁度よい塩梅で溶け込み印象に残るんです。
で、その作品の肝に当たるアクセントがこれまた大小さまざまな角度から織り込まれていて、飽きさせない。

最もインパクトが大きいのは、受の真岡くんの「バブりたい」発言。
お綺麗なイラストの堅物天然美人キャラから突然発せられる「バブみ」というワードの意外性。こういう唐突なギャップ演出は、あまりに連発されると読み手として引いてしまうのですが、作品の世界観やキャラクター性を壊さないギリギリのラインでまとめておりお見事。

真岡くんが惚れ薬を自分で飲ませておいて、自分で解毒方法を探すという自己回収型のストーリーも好き。
「惚れ薬」と言えば「事故的に」な演出も多い中、人のせいにしないのが良いですね。一生懸命な真岡くんのキャラも引き立ちます。

一方の攻の牡丹さんも、一瞬テンプレイケメンかと思いきや、結構クセのあるキャラでして、読めば読むほど味がありました。
まず小芝居がね、楽しい。
媚薬が栄養ドリンクだってわかっていて、それを隠しながら好き放題やっちゃってる姿が良いですね。色事の経験値も真岡くんとは段違いで、もうグイグイ行っちゃって。
「薬が効いたフリしてキスくらいしてもいいよな」って。めちゃめちゃフィクション的な解釈でおもしろーい。
散々小芝居続けていて、バレたら逆ギレするのも予想外すぎました!
全然スパダリじゃなーい。
でも、こういう完璧すぎない器の小さいとこもある攻って実は人間味があって結構好き。

かと思えば「関わろうとしてくれたから迷惑をかけることができたんです」「あなたに出会えて変われた」みたいな心にジンと響くシーンなんかもあって。
でも押しつけがましいわけでもなくて。

全体を通して、王道と外し感が絶妙なグラデーションでみっちり重なっているので、サクサク読めて、エロエロで、頭も全然使わないのに読後は満足という良コスパ本。

こういう作品本当に好き。
奇をてらった感じじゃなくて。
文学性とか芸術性とかでもなくて。
エロコメと王道を押さえつつどこまで面白くできるかっていう商業感がめちゃめちゃ好き。

バリバリのフィクションBLを読みたいお疲れの夜におススメの1冊です。

「幸せ」の概念をマンガ化したらこうなった

「幸せ」ってまるごとマンガ化できるんですね!

「幸せ」って、言葉で定義したり説明するのは実は難しいじゃないですか。
でも、この作品を読んでると「あっ!今ここに確実に幸せというものが存在してる!!」ってめちゃめちゃ実感するんですよ。
もちろんこのページのこれが「幸せ」だよとか、この条件が揃ったからこの登場人物は「幸せ」なんだよとか、視覚化や論理化できるようなものでは無いんです。

でも、読んだらわかるんです。
「幸せ」ってこういうことかと。

言葉と理屈をとっくに超えちゃってるんですよ。
このアホエロというマンガが。
重い実先生が。
ちょっと普通じゃないんです。

正直、作品を読んで実感してもらうこと以外、この場で何を言うのも無粋なのかもしれません。
きっとどれだけ言葉を尽くしても、この特殊な本の感想にはピタッとはまらない気がして。
なんだか次元が違う気がして。

だから、よろしければ以下のレビューは読まずに、まずは至急今作を読んでみてください。
それからアホエロをシリーズで読み返してください。
それからまた今作を読んでみてください。
それも終わって時間が余ってどうしようもなくなった方、そんな方が万が一いらっしゃいましたら広い心で下スクロールに進んで頂ければと思います——






まずですね、序盤から「三重県にある築50年の日本家屋の防音工事、敢えて言うなら声楽」のギャグセンスに脱帽。
えっ!あの酒造のあのカプ!とニヤニヤが止まりません。
そしてもちろんメインカプの高東くんと坂口くんの甘さと眩しさは最初から最高潮。
ペアリング選びの話でウキウキかつ同じ会社で仕事ができてドキドキ。

からの、坂口くんの貴重品入れのエピソードで泣かされます。
坂口くんにとって一番価値のある貴重品が1巻の旅行時にもらっていたというバスの整理券だったことが判明。
直後に挿入される僅か一コマの回想シーン。
瞬間、アホエロ1巻の二人が脳内に蘇り、ああ、この2人があの日あの旅行に行って結ばれ今もラブラブに暮らしていて本当に良かった……祝福できて嬉しい……と心がフワフワしてきます。もうその整理券は坂口くんだけじゃなく読者にとっても貴重品だわって感じで。
そんな坂口くんの貴重品エピソードから、指輪の種類じゃなくて、「俺があげることに意味があるんだろうな」と高東くんが気づくんですけど、このモノローグの切れ味も良くて。
この高東くんのセリフって言葉にしちゃえば何をそんな当たり前のことをって内容なんですよ。全くもって使い古された言葉なんですよ。なんですけど、不思議なくらい重くズドンと胸に落ちてくるんです。余韻がすごい……。

実は、同じような現象が、このアホエロ婚約編にはたくさん起きていて。

大好きだよ。
全部好きだ。
どんな姿をしていても。
24時間365日かわいい。
俺がいればいいだろ。
っていうセリフとか。

ひざまずいて指輪を差し出したり。
自分と同じ指輪を恋人が嵌めているのを見てホッとしたり。
エプロン姿の恋人にときめいたり。
病気の恋人を介抱したり。
名前で呼び合うのにとんでもなく照れ合ったり。
っていうシチュエーションとか。

言葉で抜き出すと、どこかで聞いたことがあるような言い回しや内容。
普通なら擦られ過ぎて薄っぺらくなる危険すらある愛情表現。
それが、アホエロの世界観では全く違う深い響きで、心に突き刺さってくるんです。

これが重い実先生のすごいところなんだよなあ。
ハッと気づかされるんですよ。
大好きって気持ち、かわいいって想い、ずっと一緒にいたいっていう願い、
これって全部、真理なんだよなって。
基本中の基本の感情なんだよなって。
それ以上分解できない最強の存在なんだよなって。

多分、ただ説明するには抽象的過ぎるし、セリフだけでは薄っぺら過ぎるんですよ。
そんな「幸せ」や「愛」の概念を、この作品では高東と坂口二人ならではのエピソードとセックスを重ねること、深めることで、見事に表現してくれているんです。
それも普遍的なのに、唯一無二な圧巻スタイリッシュなマンガ演出で。
独特のリズム感、温度感で。
ちなみに、もう甘くて、甘くて、添加物のない愛の塊みたいな内容かと思った矢先に挿入される中西兄弟のエピソードも、ほろ苦く、極上のアクセントになっていました。

毎日一緒に時を過ごし、無条件に相手を愛おしいと想い続ける。
そんな生活を並べただけ。
確執も裏切りもヒーローズジャーニーも無い。
けれど、これまでのどのエンタメ作品よりも「幸せ」ってこういうことか……と実感してしまう。
言葉の次元を超えた豊かさを発見してしまう。
大げさに聞こえるかもしれませんが、こんな作品が読める時代に生きていることは、ちょっとした奇跡ですね。

読んで幸せを知り、読んで幸せになる。
アホエロはそんな貴重な体験をくれる作品でした。