この1冊では終わらないので、購入する場合には「続」までまとめて購入してほしい作品です。
突然現れた青年を拾った高校生が、記憶を失った青年を家に置くことにすることから始まる穏やかな同居のお話は、奇妙でありながら間違いなく日常で、些細な事を積み重ねて友好を深めていく二人がとてもかわいらしかったです。
記憶喪失の青年の正体や、二人の間にある関係、知らない過去など、時間が進むごとに様々なことがわかっていき、それがとても悲しかったり切なかったりもどかしかったりするのですが、まっすぐに愛情をはぐくんでいく二人には幸せであってくれと願うばかりです。
だからこそ、このお話は絶対に最後まで読んでほしい。
最後の展開にどういう名前のエンドマークを付けていいのかはわかりませんが、きっと読んだ人の数だけ解釈が生まれる終わり方だと思います。
続きが読みたいような、この終わり方だから美しいような......
読み終わってからもしばらく頭から離れないお話でした。
上下まとめて読んだのでレビュー内容も混同しています。
モノノケというにはあまりにも現代になじむ見た目の青年に最初は逆に驚いたけど、そんなことがどうでもよくなるくらいに穏やかで優しい話でした。
迷子になってしまって山から下りられない高校生がモノノケを自称する青年に押しかけ同居をされたところから始まるお話ですが、「ケガレを払う」というちょっと非日常の言葉は毎日の生活を丁寧に暮らしていくということで、高校生と何百年と生きるモノノケがかつて生きていた人たちに教わったことを一つ一つ大切にして、季節を感じ、行事があれば風習に倣ってまんじゅうを作って食べて、なんてことはない優しい毎日を過ごす二人が少しずつ気持ちを寄せ合っていくのが素敵でした。
田舎の風習や「神様のいる暮らし」を、そういったものから縁遠くなってしまった現代に生きているからこそ、素敵だなあと焦がれてしまうんでしょうね。
人と人ならざるものが恋に落ちて共に生きていこうと誓う話はボーイズラブではよくある、一つのジャンルとして確立しているカップリングだと思いますが、この作品は、不老不死のモノノケが年の功で、未知の感情に触れた高校生を言葉や態度を尽くして順序だてて自覚させたり、教えたりするのが特によかったです。
人のそばで生きてきたモノノケだからこそできることだなと思いました。
モノノケらしく(?)姿を変えることはないので、人外ものが苦手な人でも読めると思います。
一コマ一コマじっくり味わいながら読みたい作品でした。
「25時、赤坂で」の大ファンで、今更ながら読みました。すごく好きなお話でした。
話のテーマとしては特別珍しいものではなく、同性を好きでそれが母親にばれて泣かれてしまった高校生が「親が泣かない相手と恋愛したい」と思って彼女も作るんだけど、やっぱり片想い相手のことが好きでそれが相手にもばれてしまう展開は、恐らくこれまでに何度となく読んできたと思います。
それでも言葉選びや話の展開、雰囲気がさすがという感じで、なんでもないような場面でも切なくて泣いてしまいました。
クーラーの調子が悪いのを理由に夜な夜なベッドに忍び込んでくる従兄弟のことが好きで部屋の鍵を締められない受けと、そんな受けからの好意に気付いてからクーラーがよく効いた部屋で「自分が来ない日はこんな寒い部屋で一人でどうしていたの」と思う攻めは思い出しただけで泣けます。
やっぱり、大きな声を出したり、感情を大きく荒げたり、そういう描写はなくたって、お互いに沸騰寸前みたいな気持ちを抱えて、それを深呼吸するみたいに優しく相手に届けようとする関係を描ける夏野先生の話全部の温度感が大好きだなと思いました。
好きって言ったらイっちゃいそうになる受けが可愛くて何度も好きって言ってすごく良い笑顔で笑う男の子が本当に本当に可愛い……
どうしようもなく暑い夏の夜にオススメのボーイズラブです。
切なげな表紙を裏切ることなく、受けの子の優しさに中盤からずっと泣いていました。
20歳で別れるという約束で付き合っていた二人が別れの瞬間を迎えてから、なぜそういう約束をすることになったのかを振り返る構成になっています。
『約束をする』ということがテーマになっている話ですが、とにかく受けの子がずーっと優しくて、その優しさが宙に浮きがちだった攻めを地上に繋ぎとめてくれたんだなと思いました。
ほとんど八つ当たりのようなことをされたり、時にはひどい言葉を投げられても、「自分が先にお前を傷付けていたんだ」なんて悲しんでくれる受けの心の美しさは思い出しただけでも泣いてしまいます。
攻めが大人びた子どもで、受けが子どもらしい子どもとして描かれていますが、結局攻めがずっと子どものまま身動きが取れなくなってしまっていたのに気付いて手を引いて、抱きしめてくれる受けの方がずっと大人に見えるのも良かったです。
二人の感情のバランスや距離感が徐々に変化していくのも、その変化に本人たちが気付く展開もなにもかもが良くて、好きなシーンを上げていくとキリがありませんが、最後、別れが近づいてきた時に、今までずっと受けが一方的に「一緒に行こう」と言うばかりだったのを初めて攻めがその言葉を受けに投げかけるところがもうたまらなくて、どこへでもついていくよと答えていた高校時代に別れを告げて、「行かない」と答える受けに涙が止まりませんでした。
物語も終わり方も本当にめちゃくちゃ良くて、良い以外の感情がないんですが、二人の名前にまつわるエピソードや「友達」の意味など、約束以外にもストーリーを通じて綺麗にまとめられていたと思います。
これから先何度でも大切に読み返したい1冊です。
たまたま目に入ったので読んでみましたが、もっと早くに読みたかった......!とつい唸ってしまうほど、大好きな雰囲気の作品でした。
序盤から最後まで、ずっと受けがかっこいい。
こんなことある?ってくらいかっこよくて、くらくらしました。
誤解されやすい性格と行動でうまく友達づきあいが出来なかった高校時代から脱却したかった受けに、偶然とは言えなんでもないように手を差し伸べて、連れだしてくれたのは攻めだったし、そんな攻めに感謝して大事にして守ってくれたのは受け……
このバランスがすごくよくて、出逢えてよかったね……としみじみと思います。
受けの髪が地毛に戻るところも見てみたいですね。
絶対可愛いもんね。
この作家さんの漫画は初めて読みましたが、噛みしめたい台詞や「ここが最高なの!」と抜き出したいシーンが随所にあって、一度読み終えてもまたその場面に戻って良さに浸りたくなるのも心地よかったので、別の作品も読んでみようと思いました。