Sakura0904さんのマイページ

萌作品

エキスパートレビューアー2023

女性Sakura0904さん

レビュー数20

ポイント数162

今年度21位

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全体的に苦いからこそ甘みも引き立つ

 先生自身海外生活の経験があるか、洋画をたくさん嗜まれているのかなと思わずにはいられないほど、相変わらずリアリティとロマンティックさが上手に両立しているなぁと感じました。ルームメイトかつバンド仲間であるビリーとニックのくっついては離れを繰り返す不毛さ、どうしようもなさが海外映画に描かれるゲイっぽいなと。結局最後までニックを捨てられないビリー。振り回されてばかりでも、彼にはニックという存在がどうしても必要なんでしょう。

 前作で好きだった作品に登場する画廊オーナーのリュシアンの過去が読めたのも嬉しかったです。大人の男に必然的に惹かれていく若いリュシアン。でも、ミシェルも完全に遊びだったわけではなくて、彼もちゃんとリュシアンに惹かれていて。ただ、結果的にはそれは言い訳に過ぎず、双方にほろ苦い記憶が残る。ハピエンに終わらない分、途中の顔料を全身に被ってキャンバスの上で絡み合った2人の濡れ場が引き立って、刹那の交歓に酔い痴れました。

人間ドラマを美しく

 どの物語も良質な映画やドラマを観ているような気分になれ、描き込みもモノローグも最低限に抑えたシンプルな画面がとても心地良く感じられました。こういうタッチやストーリーのBL作家さん、本当に減ってきていますよね。個人的にはもっと増えて欲しいし、えすとえむ先生にはこれからも長く活躍して欲しいなぁと思います。

 表題作も十分素敵でしたが、私のお気に入りは『cafe et cigaratte.』、『nero』、『ひぐらし、油照りの路地』です。スランプ気味の若い画家が画廊オーナーと少し苦みもあるような駆け引きに陥るのが可愛かったり、京都を舞台に年配の男性が懐古に浸る様子が少し切なかったり。飼い主だった男性の死を悼み、2匹で生き抜こうとする擬人化された黒猫達の物語はとても短いけれど、一番印象に残ったかもしれません。良い作品を読んだな、という余韻は間違いなく得られる作品です。

初々しく穏やかな2人が見ていて心地良い

 このお互いに探り探りな感じ。一歩進んで立ち止まってぐるぐる考えて、やっともう一歩踏み出してみる、そして後悔したりもする。付き合うとは何なのかもよく分からない、タイプの異なる男子高校生2人の等身大なやりとりが、とてもリアルに、繊細な心情描写と共に描かれていました。

 糸島が元野球部なので雄々しい野球部の面々も登場しますが、2人のことを悪く言う人もいなくて、最初は戸惑うメンバーもいるけれど最終的には皆自然と接してくれたのも2人の人柄のお陰かなぁと思いました。個人的には西戸崎が受けているところも見たかったですが、可愛い可愛いと言われてばかりだった彼も男であり、先輩である糸島を可愛いと思っているのだということがよく分かる、雁先生らしい攻め受けだったなとも思います。

好きという感情に拘らないところも好き

 萌2に近い萌評価です。 辻堂組というヤクザ組織を舞台に繰り広げられる壮大な痴話という感じで、裏社会ものらしく抗争などで殺伐としていない雰囲気が新鮮でした。縄張り争い、跡目争いは抜きにして、純粋に色事を楽しんでいるヤクザ達を拝みたい、という気分の方にはぴったりだと思います。

 メインの攻めである財津と菊池以外にも、側近の櫛田や街で下心から助けた少年・レンに至るまで、悉く辻という男に惹かれてしまうのですが、その説得力に関しては少し描写が足りなかったかなと。組や辻に深く或いは長く関わってきた財津や櫛田は分かるのですが、菊池やレンの崇拝ぶりには少しBLファンタジー感があったように思います。ただ、濡れ場の描写はさすがで、口調は最後までヤクザのトップとしての傲岸さを保ちながらも、被虐的な行為に酔い痴れる辻のギャップに魅了されました。

攻めより体格の良い受けを堪能

◆若様隠密帖(表題作)
 下巻は忍びの里での一悶着が描かれ、上巻よりもかなり騒がしい印象でした。何度も攫われてしまう太助だけど、毎回悲愴感を漂わせないところはさすが。太助にめろめろな若様も可愛いですが、下巻ではどんな状況でも若様を一途に慕い続け一番に考えてくれる、そして、どんな相手に対しても穏やかな接し方ができる太助の魅力が溢れていたなぁと思います。若様は人を見る目がありますね。上巻より濡れ場は少ないですが、太助と若様の強固な結び付きを見せつけられる、上巻に負けない熱々なストーリーでした。

◆隣はなにをするひとぞ。
 鳶職で日焼けしてがたいも良い灰塚が、主人公・神成の作るミニチュアな世界に目がなく、人懐っこいところがとても可愛かったです。そして、この流れで灰塚を受けにしてくれるところが、さすが内田先生分かってるなぁという感じ。短くても表題作に負けない萌えを提供してくれました。

テンポの良い現代風忍者の恋

 序盤から何の説明もなく、現代の世界に里から降りてきた忍者と普通の男の子(彼も忍者でしたが)の話が突然始まったので、もしかして下巻と間違えた?と思いましたが上巻でした(笑)。最後まで忍者の里というものがどういうものなのか具体的に描かれることはなく、その分スピード感があって、ラブコメに徹しているところは最高でした。若干若様のテンションについていけない部分もあり、雰囲気にハマるハマらないは人によって分かれそう。一方で確かに可愛いと思ったところもあったし、若様のむっちりした体はエロくて萌えたのでこの評価にしました。

読むとほっこりする

 童話のような雰囲気も交えながら、ミナヅキ先生の美麗な絵で獣人達の世界が楽しめ、普段読むBLとはまた一味違う魅力を味わえました。狐の九重は食に貪欲でありながら、態度が終始落ち着いているところが好みですし、彼に拾われた雛鳥のよすがはとても純真で可愛らしく、心を癒してくれます。肉食動物が情を見せるのに弱いですよね、私達は。ただ、途中まで本当の親子、家族のような関係性だったので、よすがが成長したとはいえ性的な関係に移行していく様には、読めないほどではないけれど少し抵抗を感じました。それでも最後によすがが九重を迎えに行くシーンは、映画のようで素敵でした。

自分を理解するのが一番難しいかもね

 このけっして糖度の高くない、熱量もどちらかといえば低い、どこにも気持ちのやりようがないような、けれど誰にでも経験があり共感しやすいストーリーは、小野塚先生の年代の漫画家さんにしか描けなくなってきているのかなぁと感じます。タイトルにもある「虚しい」という言葉が一番しっくりきますね。片や自分勝手な人がいて、片や我慢をしてしまう人がいて、倫理道徳と欲求の狭間で葛藤している人がいて。BLも絡めつつ、各キャラクターが自分のいるべき場所や役割に対して答えを見つけていくような作品でもあったように思います。今溢れている作風とは一味違ったものを求めている方にはオススメしたいですね。

白い朝に 下 コミック

森世 

毒で凝り固まった関係性にメスを

 ストーリーは星4つ、萌えたかどうかを忠実に評価して萌評価という感じです。大好きな森世先生の新作ということでとても期待して読んだ作品でしたが、さすがの展開で読み応えがありました。上巻ではまちを振り回し続けていた正和が、この下巻で実は彼自身も兄である譲に振り回され続けた人生だったのだと分かり、今の彼へと繋がる歪められた子供時代に胸が痛みました。

 もう少し掘り下げて欲しかったのは、譲について。なぜ正和だったのか。義兄弟という支配しやすい関係にあり、初期のまちのように御しやすい性格だったからでしょうけれど、そんな風に他人を支配したがるようになったのはなぜか。親のせいだったんでしょうか。孤独を埋めるために他人の心をコントロールしたがる感情と、相手の体に無機物を刻み込むような虚しい行為を好む感情もいまいち繋がっているように思えず、個人的には少し描き方がぶれているように感じました。まちにきっかけを与えられながらも最終的には自力で譲から己を解放した正和と、自分のしたいように行動できるようになったまちが、健全な関係性を築いていけそうな結末だったのはとても嬉しいです。

白い朝に 上 コミック

森世 

簡単にブレない狂気はさすが

 森世先生の可愛らしい絵に反して病んだ世界観の作品がまた読めて嬉しいです。コミュ障でも気弱でもないけれど、器用なタイプではなくなかなか馴染める職場を見つけられないまちに、共感する方も多いのではないでしょうか。そんなまちに楽して生きる方法を教えながら、自分に依存させようとする正和。まちに自信のないままでいて欲しいという彼の狂気は、どこか虚ろで。

 歪んでいるなら歪んでいるで、それだけまちという存在に正和が惹きつけられたのかと思いきや、後半では正和兄・譲も登場し話はややこしくなっていきます。今の正和が出来上がったのは育ちや譲の影響もあるのか?と思わせるような終わり方。この譲もただの弟想いな善人というわけではなさそうですね。どういう方向に展開していくのか、下巻が楽しみです。