Sakura0904さんのマイページ

萌×2作品

エキスパートレビューアー2023

女性Sakura0904さん

レビュー数20

ポイント数161

今年度22位

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ハルミと司 コミック

北野仁 

結構エロエロ

◆Boys On The Love(表題作)
 何この受け可愛い!と思わず悶えてしまうくらい、受けの司が愛おしかったです。表紙の右の人物で、細い目と刈り上げた髪が特徴的な司。ヤンキー受けってツン多めの意地っ張りな子が多いと思うのですが、司は喧嘩は強いけれど性格は繊細で自分の弱みをよく分かっているんですね。そして、同じくヤンキーで昔から自分を守ってくれたハルミをとても大切に想っていて。初めてハルミに迫られた時は咄嗟に拒んでしまいますが、自分もハルミに欲情できると知って素直に受け入れるところが本当に可愛かったです。司を可愛い可愛いと思うハルミもまた、恋に真っ直ぐで好感が持てました。

◆ラブラブ☆ジャイアニズム
 攻めの圧倒的大型犬感に、きゃんきゃん吠える小型犬受けが敵わないのが面白い作品でした。鈴木のように何でも自然と前向きに捉えられる大らかな性格には、どんな人間も勝てないですよね。相手を振り回しているようで、実は1人で空回りしているような吉沢が高校生らしかったです。

垣根と境内 コミック

おまる 

続きが読みたいくらい好き

 可愛らしくてちょっと淫らな青春BLかと思いきや、中盤に進むにつれて結構シリアス? ダーク?と思わされ、でも結末はやっぱり純愛、みたいな作品でした。おまる先生の読ませるストーリーとしっかり両立しているエロが元々好みだったのですが、この作品でそういうジャンルのBL作家さんとして私の中でさらに地位が上がりました。生々しい濡れ場の描写と、メイン2人の高校生らしいやりとりとにギャップもあって、そういう点でも楽しめました。

 肝心のキャラクターの性格も好みでした。一見明るくて人当たりも良く見えるけれど、実は人に合わせて生きている自分を嫌っている境内。彼みたいな人、とても多いと思います。最初は単に彼の潜在的な性的嗜好が開花していく話なのかなと思うのですが、それはあくまで彼が持つ本来の姿を解放するということの上に乗っかったものなんですよね。垣根の催眠は確かに完全に肯定はできませんが、そのお陰で2人の距離が早く縮まったり、境内に飾らない本音を零す居場所を与えたり、やはり治療にも用いられるくらいですからプラスに働いた面もあると思います。そのことは境内も分かっていたんじゃないかな。勉強に裏打ちされた催眠療法ができるお陰か案外Sっぽさもある垣根とは、パズルのようにぴったりハマる恋人関係になれるだろうなと思います。

今度からは男性ダンサーにも注目してみよう

 男子高校生とバレエの組み合わせ、とても素敵でした。バレエ公演を実際に観に行ったことはないけれど、ドキュメンタリー映画や公式が動画サイトに上げている公演や演技は観たりします。元バレリーナ芸人さんの動画で解説を聞くのも好きです。でも、バレエ科のある高校の存在は初めて知りましたし、コンテンポラリーについてはまだまだ知らないことも多い。さらに、公演を観る時は女性ダンサーにばかり目がいきがち。そんな私にとっては、男性バレエの魅力や面白さにも触れながら、BLとしても楽しめる、一石二鳥な作品でした。

 そして、なんといっても、高い画力で描かれる2人のビジュアルの良さ、綺麗な体のラインも素晴らしいですよね。生まれながらの体型や顔など、自分ではどうしようもない見た目に優劣なんかつけられたくないけれど、バレエの世界ではそういう面にもとてもシビアなのが現実。厳しい状況にも向き合いながらも、皆腐らず努力している姿、好きなことをして生き生きと輝いている姿にも青春を感じて胸が熱くなりました。何事にも真っ直ぐな見延、斜に構えていそうに見えて、案外真面目で素直な一宮。自信がついてダイナミックな演技をする見延も、研ぎ澄まされた妖艶な美を見せつける一宮も、それぞれ魅せてくれました。まだ続くということなので、2人のこれからが楽しみです。

まだまだこの2人を見ていたい

 noji先生のタッチ、キャラ作り、小物や小ネタ、脇役の挟み方がとても好きだなぁと感じられた作品でした。綺麗な線なんだけど、どこか柔らかくって味がありますよね。探偵事務所が舞台なのでシリアスな場面とかもあるのかな?と思いましたが、時々怖い事件に巻き込まれることはあっても、基本的には穏やかで面白い日常が続く流れなので、癒されつつ笑わせてもらいました。

 序盤からフミに迫る姿を見せる年下の狼。この貫禄でなんと未成年です。淡々とした態度を崩さず、肝が据わっているのでなんだかんだこの職に向いているのかもしれませんね。結構ハードモードな人生を送ってきたみたいだけれど、過去は過去、生まれはどうしようもないと割り切っているのか、今の彼にはそこまで響いてないみたいで。真逆の金持ち家庭で育ったフミに対しての接し方も気持ちいい。あくまで探偵業の面白さ、2人の恋愛面での攻防をメインに描いていて、是非シリーズ化して欲しいと思わずにはいられない作品でした。

丹下先生節は変わらず

 丹下先生の恋インシリーズ以外での初単行本化ということで、とても楽しみにしていました。セレブの世界観のためどうしても恋インがちらつくのも分かるのですが、丹下先生に関してはこういう世界観、受けを溺愛しているor溺愛する予定の攻め、すれ違いも当人達にとっては深刻だけど読者からすると見え透いていて安心できる程度、というのがもはや様式美として確立されているのだと思っています。丹下先生の限界を感じたという読者の声も分かるし、一方で先生自身がこういう世界観や設定が好きなのであればそれは限界というよりも、先生の色なのだとも思います。

 私は結局、丹下先生にはなんだかんだで溺愛攻めを期待してしまっているので、今作もそれなりに楽しめました。最初は嫌みな態度だった摩宗が、だんだん幼少期と変わらない初心っぽさ、朱允の態度に狼狽える感じを見せるようになっていく様も、今の見た目とのギャップがあって可愛かったです。ストーリーに波乱はあまりなく先は読めてしまいますが、丹下先生のタッチで新しい世界の作品が読むことができて嬉しいです。

女性の描き方も素敵

 メイン2人が編み物を通して繋がることもあって、終始柔らかな雰囲気の漂う温かい作品でした。編み物の本を出版したり、教室で教えたりしている糸瀬がとても優しくていい歳の取り方をしていて、柊真でなくてもこれは惚れてしまうよなぁと共感。妻を病気で亡くしており、その傷はまだまだ癒えてなくて時折心底辛そうな表情も見せる彼に、ああこの人は本当に奥さんを愛していたんだなぁ、彼女と過ごした時間が幸せだったんだなぁと思わされます。

 ゲイである柊真はそんな糸瀬に付け込むような迫り方はけっしてしませんでしたね。もちろん、彼女の話を100%心穏やかに聞くことができたわけではない。まだ糸瀬の心を占めている彼女に傷ついたこともありました。けれど、そうして一途に人を想えるような誠実で素敵な人なのだと、同時に糸瀬への好意が高まってもいくんです。糸瀬が大切にしているものを壊さずに、彼の余裕がない時は一緒に過去に寄り添い、元気な時は今の2人の関係や未来の想像を楽しむ。そんな風に糸瀬の隣にいた柊真もまた、思いやりと愛に溢れた人間だなぁと。思わず自分も編み物に挑戦したくなる、寒い時期にぴったりの作品でした。

4人の幸せを心底願う

 攻めの印象が、序盤からめくるめくように変わっていくのがとても爽快な作品でした。非の打ち所がないように描かれる則雅に比べ、あまりにも爛れた登場の仕方で、その後則雅から己裕を引き離すやり口も横暴。なんて嫌な奴なんだ、と己裕も読者も感じたところから、徐々に本来の彼の姿が見えてくる。ドSな男が実は案外優しい、というのはベタ中のベタですが、サイの場合は感情的にも社会的にも横暴にならざるを得なかった理由があって、むしろ最初に確実に嫌われるであろう方法で己裕の隣を勝ち取った彼の覚悟に好感を覚えるほどでした。

 サイと己裕の出会いは必然であり、読み終えればサイが己裕を見つけてくれて良かったと誰しもが心から思えるようになるでしょう。逆に少し引っかかったのは、則雅について。途中からサイと己裕から拒絶される存在となりますが、心臓が弱くいつ死ぬか分からないという彼の孤独にも誰かが別の形で寄り添ってあげられれば、と思ってしまいました。明日も分からない状態で、誰とも深い関係を築けずに孤独に死ぬのは誰だって怖い。己裕を1人の人間として扱うふりをしておきながら、実は水面下で彼に恐ろしい末路を用意していたのは確かに非道だったけれど、長年彼も1人で孤独や恐怖に耐えてきたのでしょうから、彼にも何か救いがあって欲しかったなとも思いました。タイトルの「4人」は3人の処女執事と、則雅を指しています。

優しい者同士の壊れた愛のやりとり

 序盤から狂った展開が続き、とても攻めた物語だなぁと嬉しく思う一方で、読後はさほど重苦しい余韻はなく、案外穏やかな物語だったなという印象でした。佐々谷の元カノ兼豊口の妻である杏子を挟んだえげつない性行為シーンが最初に読者に大きな打撃を与えてくれますが、それ以降は1人の男に愛されることを切望する健気な豊口と、彼の気持ちに応えたい、自分も好きだと伝えたいと望むひたむきな佐々谷とのもどかしいやりとりが続き、どちらにも同情、共感するような話になっていたからかと思います。

 過去に同性との恋愛で相手に異性に走られた経験があるのって受けに多い気がしますが、この作品では攻めである豊口にその経験があり、彼の繊細で脆い心には一度受けた傷が根深く残ったままなんですね。同性と恋人になっても、いつかは必ず終わりが来る。この決めつけを、彼の頭は消し去ることができない。受けの佐々谷は豊口と出会った当初から彼に好印象を抱き、身も心も委ねてもいいと心底感じていて、豊口を嫌悪したことは一度もないのに、豊口がそれを信用してくれたことは一度もない。

 佐々谷が嫉妬に狂った凶行に及んでさえ、それは自分が佐々谷を壊したからなのだと結論付ける豊口。佐々谷の気持ちは最後まで通じないままで、それがとても虚しい。でも、人間そう簡単には今までの経験から得た価値観や考え方を変えられないよなとも思います。自分を捨てた母と繁田、簡単に心変わりした杏子。3人から受けたダメージは、佐々谷との短い蜜月だけではまだまだ埋められないのでしょう。相手を壊したと思い込んでいる豊口と、壊れたように演じている佐々谷はこれからも永遠に平行線のままかもしれません。それでも、偽りだと感じていても、閉鎖的な空間で2人だけで過ごす時間から少しは心からの幸せを感じられることもあるだろうと信じたいですね。

自ら語ることができなくなった人の想い

 千夜一夜物語になぞらえている部分もあり、殺伐とした話になっていくのかと少し構えましたが、表紙で手を繋いでいる2人の様子からも見て取れる通り、全体的にはとても穏やかな甘さの作品でした。過去に妻子もセフレもいた男に惚れ込んで、悲惨な結末を迎えたことがトラウマになっている葵。翔太がシェヘラザードの如く、時間をかけて忍耐強く彼の硬くなった心を溶かしていく様子に、胸が温かくなりました。

 この手の話は過去の男が軽薄な人間であることが多いですが、葵が好きだった男は実は葵と人生を歩む覚悟を決めていたかもしれなかった、というところがいいなぁと。今となっては推測することしかできないけれど、彼には彼の葛藤や決断があったはず。翔太がただ嫉妬したり悪者に決めつけたりせずに、そういうところを思いやれる人であったことが、また素敵だなと。恋人になった翔太と葵は笑いあり思いやりありの日々で、和気藹々とした2人の日常がまた素敵でした。

この時代の女の不自由さ

 メインが毛人と王子の関係性なのは分かっているのだけど、どうしても毛人と布都姫の悲恋の方に気持ちが向いてしまいます。彼女が自ら志願して斎宮になったのならもう少し客観的に見れると思うのですが、彼女の意志で斎宮になったわけではないでしょうから、還俗する不名誉と恋心の間で揺れ、毛人以外に大した味方もおらず、泊瀬部と王子の勝手な思惑に振り回される彼女に感情移入してしまいました。

 かといって、王子を完全に悪者として見ているわけでもなく、今までの孤独の裏返しのように毛人に執着する彼の姿は痛々しく健気で、こちらにも同情したくなってしまいます。こんな状況の朝廷ではまさか男色に走ろうなどとは夢にも思わないでしょうから、王子への親愛と布都姫への恋心を併せ抱く毛人にも共感しますし、いよいよ誰が悪いのか分からなくなってきました。この物語がどこへ向かうのか、結末が楽しみです。