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中立作品

エキスパートレビューアー2022

女性fandesuさん

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愛ってことを

今作は『難解』方面の西田さん作品です。
実はかなり前に読み終わっておりまして、私の心の本棚では『大切にして何度も読み返すお話』に分類しました。読み返し3度目で、本日レビューを書いています。

正直な話、ヒジョーにレビューが書きづらいお話です。
おまけに大層、人に薦めづらい(だから『中立』評価です)。

でも、ここには私の大好きな『西田さんテイスト』が満載なんだよな。
例えば、中年に入りかけた男性に恋について語る(恋を語るんじゃないのよ。概念としての恋について語るの)初老の女性が出ているのとかすごく好みだし、木田の片目が『若い頃、チンピラの女に手を出して潰された。でもそのかわり詫びとして組から建築系の仕事を斡旋してもらった』なんていうエピソードなんか、もう震える位好き。

そして何と言っても木田と藤井にしか見えない翼の存在です。
見えたり見えなかったり、時折移動したり。
恩返しの証の様にも見えますが、とんでもない呪いの刻印みたいな仄めかしもある。
何の比喩なのか解らない、って言うか、その存在が確定していないんですよ。
常に揺らいでいるの。

藤井の独白の中で「一番好きな人」という科白が何度がありました。
『好き』って何なんでしょうね?
彼は、事故で意識が戻らないで入院中の、幼い娘を愛しています。
でも、小学生の頃は、木田と「ずっと一緒にいたい」と思う位、彼のことが好きでした。
大人になった後はゲイとして遊んでもいたようなので、好きな人もいたでしょう。
愛という存在も、前述の翼の様に確定せず、常に揺らいでいます。
お話のラストを読むと、飄々としていて何ものにも固執していない様に見える木田ですら、実は藤井と同じ様な揺らぎを隠し持っている様に私には感じられました。

実際、愛ってこんな感じですよね。
私たちはいつもチラチラと移り変わる感情の揺らぎと共に生きています。
安定したものなど何もない。
ないけれど、でも確かに、そこに『愛』というものがあった。
あるいは、ある時がある。

難解なお話を読みながら、そんな事を考えました。

相変わらず色々考えさせてくださるなぁ

いやー、みなさんのレビューが大層面白いですね。
こんな風に感想が多様にばらけるのも木原さんのお話だからなんだろうな。

『痛くない』と思っていたんですよ、本当に最後の方まで。
で、書下ろしの『Birthday』のラストで途方もなく胸が痛んじゃってね。
種類としては、鈍器で殴られたような痛みでも、鋭利な刃物で切られた痛みでもないんだけど。強いて言えば慢性病みたいな痛さかな。大騒ぎするほどではないけどヤバそうな感じのする痛さ。

お話の中で、ガレもジャックも「愛とはなんだろう?」と考えます。
ガレは自分が考えていた『愛』が、ジャックと出会うことで「思っていたんとちゃう」ってなってしまったから考えちゃったと思うんです。
ジャックは『愛』についてなんて考えたこともないし、考える必要もないと思っていたんだけど、ガレがあんまり「愛してる愛してる」言うものだから考えちゃったと思うんです。

考えた結果を2人とも言及していないのですが。
でもたぶん、2人の結論は全然違うと思うのね。
そして互いに相手が出した結論を理解できないだろうとも思う。
最終的には一緒にいることが心地良いと思って、今後も一緒に暮らし続けるだろう未来が示唆されて、甘っぽい空気が漂う終わり方なんだけれど……でも、すっげえ不穏。
だって2人は全く別のことを考えているんだもの。
相手のことを全く理解していないんだもの。

私の大好きな歌に『自由とは何も持っていないこと』という歌詞があるんですが、これ、ジャックにピッタリだな、と。
ある種の拷問でヴァギナを作られちゃっても悲観したりせず、生きるためにすべきことをしているのが実にクール。執着をしないところがカッコいい。
でもでも、何故か萌えが訪れず。
たぶん木原さんが、すごい勢いで愛をぶっ壊した所為だと思う。
『理解があって愛がある』なんてお綺麗なことを考えている私は、かなりメンタルをやられました……でも「面白い」って思っちゃう。
木原さんって(絶句)!

嫌いではないのですが

『そっと、ずっと。』のスピンオフ。
こちらのお話には「ん?」とひっかかる部分はなかったのですが「いにしえの……」とつい口から言葉が飛び出ちゃいました。
ざっと調べてみると『小説花丸Vol15号』は2015年発売なのかしら?
7年前以上の「昔懐かし」感がします。

出版社あらすじに書いていない部分を付け足します。
〇穂積はずーっと海外在住です。
〇穂積は子どもの頃に父と母を、高校時代に祖母を病気で亡くしています。
〇穂積と上条は全寮制高校時代のルームメイトです。
〇上条は優秀な兄と比較され、両親から虐待を受けて育ちました。
寮で同室になった2人が、互いに家族の愛に縁が薄いことに気づいて支え合っていくうちに恋人関係になった、という感じです。BLでは『不憫受』って通常ですけれど、このお話は『不憫攻め&不憫受』でした。

スピンオフ作品ですが、元のお話を知らなくても読めます。
と言うか、続けて読まない方が良いかもしれないと個人的には思っちゃった。
と言うのは、あの超現実主義者の上条が受けさんなんですけど、元のお話の時と比べるとやたら乙女チックに感じちゃったんですよね。
目つきが悪い皮肉屋の受けって個人的には好みなんですけど『そっと、ずっと。』でのイメージとはかなり違っていたので、慣れるまでがちょっと大変。
同一人物と思えませんでした。

互いに相手を想う故に言葉足らずになって誤解が誤解を生む、といういわゆる王道のお話でしたが、登場人物の病気が絡んで来るんですよ。
これを「よし」とするのか、「うーん」と腕を組んじゃうのかで、好き嫌いが分かれるお話だと思います。

最近の刊行は昔書いたお話が多いみたいで。
雨月さんのコメディが読みたいです……

叔母より兄と父が怖い

可愛らしいお話なのですけれども、どうも乗り切れなかった部分がありまして。

受けさんの守屋九朗は生まれてすぐに父を亡くしました。会社を複数経営している斎賀家で暮らしているのは父と斎賀氏が親友だったため、母を住み込みの家政婦として雇ってくれたから。ところがその母も(6歳位の時だと思う)事故で亡くなってしまい、そのまま斎賀氏のところで暮らしています。
斎賀家の次男惟武(6歳上、攻めさん)は九朗が大のお気に入り。大学を卒業する九朗を半ば無理矢理、自分(彼は父の会社のひとつの経営を任されています)の秘書にしてしまいます。小さな頃から惟武が大好きで側にいたいと思っている九朗は惟武の役に立ちたいと頑張りますが、自分が何を求められているか解らず、惟武の叔母や兄が求めるまま彼に見合いを勧める役割になってしまって……

で、なにがひっかかったかと言いますと……
まず一つ目。
惟武の叔母が長きにわたって九朗をいびり倒した結果なのかもしれませんが、九朗が何故にこんなに『自信のない子』なのかが良く解らないのです。
また、違和感があるのは九朗が『自分は惟武に我儘ばかり言っている』と思っている事なんです……私にはどこの何が我儘なのか解らなかったんですよ。むしろ「我慢しすぎなんじゃないの?」と何度も思ったくらいで。
この辺のね、九朗の心情がどうも理解できなくて。

次にふたつ目。
惟武の溺愛ぶりは周りにもダダ洩れだったようで。だからこそ、惟武の秘書の働きで彼らは互いの気持ちを知ることができたわけなんですけれども。
父と兄がそれをどう考えていたのかが、よくよく考えてみると黒い!感じ。
惟武の気持ちを解っていて釣書を九朗から渡させる兄。
惟武の気持ちを薄々気づいているのに(本人談ではないですがね)惟武には何も言わないまま、九朗の就職先を決めようとした父。
これって「やっぱゲイはまずいよなー」なんですかね?と思っちゃったんですよ。ふたりとも九朗を可愛がっている様だったので、逆に怖かったんです、これ。

『恋愛小説は書けない』の頃から雨月さんが好きなんですけれど……うーん。