受けのナランは、「わたしは歴史ある大国アスタイダルガの第四皇子」と己に言い聞かせ鼓舞することで矜持を保っているお方。
自己評価が低く小心者なのにプライドは高く意地っ張りなナランの姿に、好印象を抱けぬままのスタートです。
でも読み進めていくと印象が変わっていきます。
アランは多言語の古文書も読み解けるくらいの読み書きの才能を持っているのに、筋肉主義な王宮のなかではそれが評価されていないだけなんです。
武力第一主義な王宮の中でアランの影は薄く、唯一の居場所は長兄に与えられた城内の書庫。
そんな彼が勇気を出して挨拶から始め、少しずつ歩みよっていく姿には思わず応援したくなりました。
嬉しかったのはお手紙やり取りシーン。
もしかしてこれは手紙のやり取りが続くのか?!と狂喜しましたが、一回のやり取りで終わってしまったわ……。
(文通とかお手紙やり取りする受け攻めが大好きなんだけど、現代日本ものでいまさら文通とかまず無理なんで…。)
攻めのダムディも、アランに悪印象は抱いていないようだし…という感じではありましたが、スルスルと恋に発展したところがちょい腑に落ちませんでした。
でも、そこは後半の攻め視点でちゃんと補ってくれているので無問題。
すんごく嬉しかったのは、あとがきの後に収録されていた短編「草原の星」
こういう後世に伝わっている二人みたいなのが大好きなので、特大ご褒美をいただいたような気持ちになりました。
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メモがわりに似たような締めくくりの作品。
・安西リカさん「王様に捧げる千夜一夜」
・貫井ひつじさん「狼殿下と身代わりの黒猫恋妻」
・月東湊さん「呪われた黒獅子王の小さな花嫁」
綺月陣さんの作品は、「沼の竜宮城で、海皇様がお待ちかね」と「ランチボックスに恋を詰めよう ~ツンデレ俳優、唐揚げ最強伝説~」しか読んだことがないのですが、あちらが楽しく読めた方ならこちらも楽しく読めると思います。
(綺月陣さん作品はシリアス&痛いのが多めというイメージがあり、ビビってなかなか読めず、上記のような超〜〜偏ったセレクトになっています。)
竹取物語になぞらえた作品となっているけれど、違うのは受けの輝夜(かぐや)が子を宿せる希少種というところですね。
もはや子を宿せる能力を持っているのは輝夜ただ一人なので、月族は絶滅の危機にさらされているんです。
種族の存続という超重大任務を背負って稚球人のもとへ嫁ぐはずが、なぜか地球、そして現代日本へやってきて……というお話なんです。
平安時代みたいなところから、突然、現代日本にやってきてしまったもんだから、色んな感覚ズレまくり。
そこが面白いし、一生懸命現代日本に馴染もうとしている輝夜もかわいい。
攻めの竹垣は、プラネタリウム勤務で星や宇宙を愛する男というところが、個人的なツボにはまりました。
穏やかでいい男。
向こうの世界で、輝夜に求婚という名の脅しをしていた婿候補の三人がいたんですね。
その三人を彷彿とさせる奴らが、現代日本にも登場するのですが思っていたよりも皆、いい人たちだったんでホッとしました。
もっと勘違い暴走ストーカーみたいになってしまうのかとビビっていましたが、杞憂でした。
えっ??となったのは、輝夜の出産能力&繁殖能力。(電子限定版書き下ろし)
1ヶ月に一人産めるのよ!
種族の存続は輝夜の出産能力にかかっているわけなんで、なんとまぁ、ぽこぽこと連続で毎月のように出産し、計6人産むんです。
現実的な問題として現代日本で6人を育てるのは大変ということもあり、4人目以降は月族の長老たちが里親(月1里帰りあり)となることを申し出……というお話。
えっ?自分の子供手放すのやだなー……同じ兄弟なのに実親の元で暮らせる子と、親と離れて暮らす子が存在するとかなんかいやなんだけど……でも月族の滅亡を防ぐためには輝夜にかかっているわけで……とちょいモヤ。
おまけして萌萌で。
読み始めたときの感想は、「あぁ〜海野幸さんの書く受けって感じ!」でした。
一癖あるというか、妙な拘りのせいで生きづらそうというか。
この作品の受け、千秋の拘りは食事なんですね。
味とかではなく「正しい食事」かどうかにめちゃくちゃ拘ってる。
彼の食事は、好きとか嫌いとか気分とか一切関係なく、栄養バランスが正しいかどうかを突き詰め、嫌いな食材でも栄養に必要とあれば機械的に口に運ぶ。
食事というよりも、補給とか摂取って感じ。
最初こそ厄介そうな人物だなぁと思ったけれど、読み進むにつれて、食に正しさを求めるようになってしまった背景がわかってくると、千秋への印象が変わっていきました。
9年ぶりに会った千秋に対して、「偏食家のためのレストランをいずれ開きたいからまずはお前が客になってくれ」なんて言い出した友光に対して、気持ちが揺れ動いていくんですね。
ここまで丁寧に対応してくれるなんてもしかしたら??と期待してしまったり、いやいや、そんなはずない……とか一喜一憂するんですよ。
友光の真意が私自身も読んでいてなかなか見えてこないので(まぁBL世界の攻めなので、読み終わってみりゃ、そりゃそーだ!なのですが)揺れ動く千秋の気持ちに寄り添って読み進めることができました。
個人的には、千秋の母が好きではなかった……。
祖母の気持ちはまぁわかる。
(でもさー、病床の孫にフライドチキンって、自分も病気のときにフライドチキン食べられるの?!)
もし私が、千秋母の立場だったら……と考えるとめちゃモヤるんですよ。
小学生の頃から肥満だと成人病のリスクが高くなるってのに、子供の健康そっちのけで、自分の立場とかお気持ちを優先する母親ってなんなの?と。
お料理はありがたく頂戴するとしたって「もうちょい量を減らしていただけませんか?」とか交渉するのがお前の役目だろーが!
自分が憎まれ役になったとしても子供を守れよ!!
なんで一緒になってデブまっしぐらの道に加担してるんだよ!!と。
サバサバぶってるところも鼻につくというか。
千秋はそのせいでめっっっちゃくちゃ苦労したってのに……!!!!
それはさておき。
攻めは包容力のあるお方でしたね。
「お前のオーダーは全部叶えたいんだ。」というセリフ、私も言われてみたいです。
夜光花さんの作品は全作品、読んでいるわけではありませんが、
お気に入りの攻めは、不浄の回廊の西条、愛されたくないの三神、眷愛隷属の有生です。
ちなみに間違っても彼らは彼氏にはしたくないし、私の人生とは関わってほしくない。
だけど読んでる分には、ぶっ飛んでてイカれてて面白いやつらではあります。
眷愛隷属の有生もサイコパスみあるなーと思ってましたが、いやいやいやいや‥‥有生が甘ちゃんに思えるほど、今作品の攻め、三輪は完全なサイコパスでした。
あらすじに「誰より美しく、危険な男に捕まってしまった守に、
とうとう貞操の危機が訪れた!?」とありますが、貞操の危機どころじゃない!
攻めの匙加減ひとつで、命の危機に陥るし、学園の、なんなら世界の危機に陥るんですよ。
こんな振り切ったサイコパス攻め、初めて読みましたが面白かったです。
めっちゃ萌えた!とかではないけど、ディアプラスの安西さんらしい作品だなぁと思いました。
攻めの綾瀬は「恋人はいればなにかと便利だけど、いなくても別段困らない」と思ってる男なんですね。
外見派手で男女問わずモテるから去るもの追わずで、「自分勝手でいつもうまくいかなくなるけど、それで無理ってなったらそれまで」なんてことを、平気で恋人の淳史(受け)にのたまっちゃう。
淳史が玉砕覚悟の言い逃げのつもりで告白したら「先週、彼女と別れちゃったからつきあう」とOKし、初デートは「とりあえずホテル行く?」と。で、やることやったらさっさと解散。
こう書くと、ノンデリカシーの最低クソ野郎そのものなんだけど、なんか読んでると不思議とさほどクソ野郎感はないんですよね。
恋愛に重きをおかないゆるーい脱力系というんでしょうか、飄々としてるやつなんだなーと。
それに浮気はしないし(「浮気はめんどい」からという理由なのが、これまたなんとも……だけど)淳史を粗末に扱ってるわけでもなく優しいし、二人で一緒にいるときは淳史のことを「くー」なんて呼んでて普通の恋人そのものって感じなので。
そう、側から見れば「普通の恋人同士」に見えるけど、淳史は「綾瀬に恋人がたまたまいない時期だったから付き合ってもらえただけで、こんな平凡な自分はいつ綾瀬に捨てられるか」という不安を抱えつつのお付き合いなわけです。
ギブアンドテイクじゃなくて、淳史はひたすらギブのみだけだけ。(こんなに尽くしてあげてるのに!みたいな押し付けがましさは皆無)
いつ自分が飽きられるのか、彼の前に新しい人が現れたらこのポジはおしまいだ…と思いながらの日々。
綾瀬のことがよくわからないし、近くにいるのに遠い……といった感じ。
だもんで途中で登場する「湯沢」はマメだし、こういう人のほうがいいわ!と私は思ってしまった(ちょろい)んですけど、罠だったわ!
ぎゃふん。
(だってさー、初デートで「とりあえずホテルでやることやったらさっさと解散男」はやだよねー。)
後半は、攻め視点!ありがたやー!
前半のノンデリカシー言動の答え合わせもできますし、恋愛に無頓着だった綾瀬が、何かを自覚し、目覚め……という過程が丁寧に描かれています。
この作品の受けは脚本家なんだけどスランプ中で自己肯定感もダダ下がりで、月村作品でお馴染みのグルグル受けではあるけれど、それは自己肯定感が低いからというよりも、脚本家として想像力が豊かだからついあれこれ想像しちゃってといった印象を抱きました。
怜久の1人ツッコミも多く、文章も従来よりポップ?というか軽めというか、深刻ではない。
めっちゃ萌えるー!とか、このセリフ刺さる〜!とか、攻め好きぃ!!とか、そういうテンションがあがるところはなく、ほんわか優しい穏やかなお話なので、夏の暑さに疲れたときに読むといいのではないのでしょうか。
リアルな夏は暑くて汗ダラダラでうんざりするけれど、でも涼しい部屋で「夏の描写」を読むと、夏っていいもんだなーと思ってしまうというか。
それと「りっくんタイム」はずるいですね。
おまけして萌萌で。
二巻も引き続き、安定のお仕事BLで面白かったです。
「社長、取材を受けてください!」というタイトルから、一巻のように取材の必要性を説くも、本人は乗り気ではなく……みたいなのを想像していたのですが、あらすじを見たら「当人はまさかの快諾で!? 」とありましたね。(あらすじは読まないので……)
この作品は攻め受けの恋愛模様に萌えるというよりも、リバースエッジで働く人たち、そして会社の行末がついつい気になって手に取ってしまうという感じでしょうか。
お仕事BL読みたいという人には、おすすめの一冊だと思います。
久瀬は恋愛面になるとふとした隙に年下らしい素直な一面を垣間見せるときがあり、そこがかわいいなと思います。
鳴沢が思っている以上に、久瀬は鳴沢ラブなんだなとわかるんだけど、できればSSでもいいから久瀬視点を読んでみたいですねー。
どういう風に脳内で鳴沢を愛でているのか……知りたい!
続刊が発行されたので、再読。
恋愛模様に萌え〜!とか、きゃー!!となる部分はぶっちゃけ少ないのですがいいんです。
お仕事描写が読んでて楽しいから。
黙っていると威圧感があるほどの美貌の持ち主である攻め(ベンチャー企業の社長)と、萎縮しまくりの社員たち。
そんな会社へ「場の空気を攪拌する力」を期待されて採用された鳴沢。
「他人のために爆心地に突っ込む」とまで言われる鳴沢の働きのおかげで、少しずつ社長と社員たちとの距離が近くなり、歯車が回り始める様子がいいですね。
鳴沢は、仕事ぶりだけではなく、プライベートですら「求めれば与えてしまう_自分が擦り切れるのも厭わず我慢する」男であるんですが、それには理由があり……
めちゃ人当たりがいい男でありながら根が深いものを抱えているという一筋縄ではいかないキャラ設定が、海野幸さんらしいなぁと思いました。
さて、積んでた二巻も読むぞ〜!
表情筋死んでて寡黙な熊沢と、くるくると表情が変わって思ったことツルッと言っちゃう晃一という対極にいるようなデコボコな二人の行く末を見られて良かったです。
でも正直いうと、一巻のほうが好きだった。
寡黙で表情死んでる熊沢だけど、実は晃一に巻き込まれて感情大忙しなところが一巻はめちゃツボだったんだけど、二巻の熊沢に対しては、少しは表情変化させんのかい!とか思ってしまったというか……。
だってさー、晃一かわいいじゃないですか。
こんな可愛い晃一と一緒にいて、うっかり口がゆるんでしまう瞬間があったっていいんでは?とか思ってしまって。
私にとって晃一は、難しい理屈抜きにしてつい顔が緩んでしまうような、例えばかわいいペットとかかわいいよちよち赤ちゃんとかそういう類いなので、そういう尊い生き物と日々接しながら表情筋が変化しない熊沢ってなんなの?とか思ってしまって。
普段は鉄面皮でいいけど、恋人だけには見せる特別な表情みたいのがないんかい?と。
晃一って思ったことツルッと言っちゃうアホの子要素はありながら、「隠すようなことじゃない」と言えてしまう自分とそうではない熊沢という対比に気づくことができるんですよね。
こーいち、えらいえらい!とつい頭を撫で撫でしたくなる感情が湧き上がる自分。
(本当のアホは、「なんでー?隠すようなことじゃないでしょー?!」で終わっちゃうよね)
中哉に対してと、ベランダで晃一に対して微笑む熊沢の顔!
ついに笑顔きたー!と思ったけど、でもキュン!とするような笑顔ではなかった。(熊沢ごめんよ。)
結論:熊沢は笑わないほうがかっこいい。
上下巻まとめての感想です。
上巻どころか下巻の最後の最後まで予想がつかず、読む手が止められませんでした。
ただ上巻はBLの萌え的な楽しみは正直皆無だったんです。
だって、攻めの蓮は長年の幼馴染(超美形)に片想いをしてるし、受けの海路にはそっけないどころか近寄るな!!くらいに威嚇してるし……。
恋愛的には無理ゲーすぎる、この二人がどうやってくっつくのか正直、想像できない……と思っていましたが
いやいやいやいや、めちゃいい感じになりましたね!!!!
ホワイト連とブラック連が合体したハイブリット連、いいじゃないですか!
萌えたのは、蓮がまさかのDTだったこと!
まじかー!!!
このこなれたハーフアップ姿で、まさかのDT!!!まじか。
うれしーーー!歓喜っ!!!
小中さんの作品、多分8割くらいは読んでると思うんですが、いつも手慣れた年上攻めが多くエッチも圧倒的に攻めが主導権握っていることが多いと思うんですね。
(二人ばかしDT攻めはいるけど)
だから同学年の、しかも、DK同士で、おまけDTな攻めというのがめっちゃくちゃ新鮮で。
フェラで即発しちゃう攻めとか、めーっちゃくちゃ新鮮で。
あーー小中さんがDKのDT書くとこんな感じなのかぁ!!と
最後にとっておきのご褒美がどかんと来た感じで嬉しかったです。