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萌作品

エキスパートレビューアー2022

女性窓月さん

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同人作品発なので濃いけど早い

今年二月、本作のスピンオフ(2013年同人にて初出)がkindleで配信されたのをきっかけに誘導されてこちらにやってきました。元ネタのメインカプに興味津々だったし、設定も好物だったのでサラッと楽しめたけれど、いかんせんわたしには展開が早く感じられて、萌え炸裂〜ッ!とまでは至らなかったです…。

表紙の雰囲気とはちょっと違って、中のイラストが大変好みでした。大西叢雲さん、今どこで何をされているのでしょうか、あなたのイラスト好きです!!

さて、本編となる前半では、子供の頃のある一時期から不仲になって疎遠状態だった兄弟の不条理な接触から始まります。結婚後まもなく妻とギクシャクしていた兄・清巳の住まいに弟の赫(かく)が突然訪れ、嫌がらせのように体の関係を強要する。赫が反発するエリート官僚の清巳には女装癖が…。

後半は赫視点で、兄から疎まれている弟側の心情を追いながらその真意が明かされます。兄弟の捩れた絆には母親の存在が大きく影響していたことも。二人の思いは純粋な恋情とは多少ズレているかもしれないし、名状し難い曖昧なものなのかもしれないけれど、互いを引きつけ合う動機づけとして母親の介入がしっかりと提示されているところがポイントでした。性癖萌えを表面的になぞっているだけの作品じゃなくて歓喜いたしました。

本編は受け視点、後半は攻め視点、さらに最後にSS収録という構成は、同人作品をまとめて同時収録した体裁に近いので、各々の展開の早さについては仕方がないところがあります。

ですが、ガチもんのどこに萌えるかっていったら、個人的にはなんたって両片思いの部分だったりするので…三人称でリバイズされた、外側から見た二人のもどかしい関係性をじっくり読んでみたかったです。母親とのくだりについても、シーンとして読んで一目撃者になりたかったような気がします。その方が臨場感があって、お話にどっぷり浸れそうな気がして。

語りの視点とかお話の構成って、読み手の直感的な好悪を左右する結構重要な要素なのかもしれないですね…。そこら辺がちょっともどかしかったかもしれません。

性癖モノ

久しく作者の作品はご無沙汰だったので、新作が読んでみたくなりました。イラストも意外な作家様だったので、好奇心から購入したのですが…、萌と中立の間くらいの印象です。

蓋を開けてみれば、大学生同士のソフトなSM関係でちょっとびっくり。学生寮暮らしの主人公がルームメイトにM性癖を知られて自慰を手伝ってもらうようになるという、一見不穏な展開です。しかしそこは月村作品ですので、終始優しいトーンに包まれていてホッとするような、物足りないないような読後感でした。

ほんと、序盤に渡良瀬が見せる、杉山の性癖を知ってからのそこはかとない支配的な自慰のお手伝いのくだりは、ちょい放置が入ってて素晴らしかった…。その後にすれ違いを経て二人がどういう関係になるのか期待感が高まっていったのに、普通に甘々の展開は安心感しかなかったです。

雑誌のお道具特集に寄稿された企画作品なので本編は短く、他甘々後日譚と渡良瀬視点のSSが収録されていましたが、どちらも個人的には微妙でした。渡良瀬があまり感情を出さないタイプだったので捉えどころがなく、杉山への思いがあんまりよく伝わってこなかったのがもどかしい〜。

どうやらわたしは月村作品にエロは求めてないみたいです…。

久しぶりに常連のお店に行って定番メニューにするつもりだったのに、季節限定メニューにそそられてそっちを頼んだら、映えるかもだけど味的にそこまで好みじゃなかった、みたいな悲しい冒険に終わりました…。

うーん、年末年始は時間がありそうなので、近年刊行された作者の作品を遡って復習しようかなと思った次第です。

微キュン

作者のまるっと現代もの、昨今では貴重なのですごく楽しみにしていました。

今作は、カメラマン×元アイドルだったモデル。気鋭の天才カメラマンが、造形は整っているが凡庸なタレントのポテンシャルを見出して開花させていくという、いわばマイフェアレディ型のラブストーリーでした。

カメラマンと被写体の関係って、とってもヤラシイ関係なのでBL的に好物の設定です笑

攻めに恋する受け視点で進むので、あらかじめ受け側の気持ちは読み手に暴露されています。なのに攻めは受けに対して愛情があるのかないのか焦らしながらチラ見せしてくるところに、キュンッキュン。

個人的に萌えポイントをしっかりと鷲掴みされている作者の筆致には、毎回ふるふるさせられます。すれ違い、両片思いの名手ですよねぇ…。

永利は紹惟の興味がいつか自分から他の「ミューズ」に移る日を恐れながら、ただ一人の男の関心を引くために、必死に芸能活動を続けてきました。

子供の頃からステージママに全てを管理され、自分の意志を押し込めてきた永利にとって、紹惟との出会いは生き方そのものを変えるきっかけとなります。

紹惟は永利が他の人間と比較されることで嫉妬心を燃やし発奮するタイプだと早い段階で気づきます。酷評や煽りでは効果がないと踏んで、それまでのツンな接し方を180度変えるところからキュンキュンが始まるのですが…

今回はドッカーンとくるような爆発的な萌えは控えめでした。スタートが大人の二人なので、ひたひたと制御不能な恋情に蝕まれていくような、ほろ苦い切なさに浸りたかったなぁ…。先が気になるように読者を仕向けて、さら〜っと流れるように読ませてくれるところはもはやベテランの域ですが、あまりにこなれすぎていて巧みだと、萌えを貪るのが憚れちゃいますね笑

もしかして作家様はあまり現代ものはお好きじゃないのでしょうか…。そうだとしたらめちゃくちゃ悲しいんですけど(涙)

ボヤキはさておき。十年愛の果てがどうなるのか、結末までドキドキしながら読んで欲しいです!

優しいまなざしは変わらず

毎回バラエティに富んだ設定で楽しませていただいています♡

『Brave』の舞台はアメリカ西海岸。日本人の父親と日系二世の母親との間に生まれたイサムが主人公です。小山田先生の挿絵効果も相まって、思いのほかアメリカ〜ンでした。小説だけれど本場のドラマや映画を観ているかのように違和感がなく、あやうくBLを読んでいるのを忘れそうになりました。ストーリやテーマはBLみに溢れていますが、少しだけファンタジー要素があります。

作品から滲み出る作者の愛情深さが大好きで、新作を拝読するたびに癒されています。今作はとみに楠田ママ感が強かった…笑。うまく表現できないのですが、キャラに向ける作者の視点に母性バシバシなビームを感じてしまいました。

これはイサムとジェイクのラブストーリーでもあり、イサムが幼少期に経験したトラウマを、ジェイクや周囲の人々が時間をかけて見守っていくお話でもあります。

特殊能力を持つイサム。子供の頃、自分の身を守るために不思議な力を行使した結果、大切な人を失ってしまいます。それゆえ贖罪の念から、ハイスクール卒業後に自分の持つ能力を全否定するかのような職業(消防士)に就くのが夢となりました。ところがやっと念願の職に就いたイサムは、勤務中の態度によって上司から二度の出動停止を命じられてしまいます。二度目の命に背いた彼の行動は結果的に吉とでますが、このクライマックスの収め方(ファンタジー要素)が出来すぎていて、ちょっと萎えを覚えてしまいました。

イサムの上司・ダグラスはそそられるキャラでしたね。個人的にダグラス推しです。プライベートでイサムがノコノコと彼の後をついて行っちゃうシーンに、もしや?やっと?きたか?と思わず大興奮。上司としてのスタンスがブレず潔かったし、キャラの中で唯一芯の通った父性を漂わてくれていました。そのせいか平穏にコトが進んで物足りなかったですけど笑

欲をいわせていただくと、メイン二人のすれ違いや、ヤキモキするような嫉妬シーンをもっとガッツリ見てみたかったです。ハイスクール時代のプロムと卒業式のシーンでそれが見られたらよかったのにな…と思いました。なぜカットされたんだろう(泣)

メインカプをあたたかく見守りたい派には、シリアスめでも安心して楽しめるお話だと思います。

ある意味期待どおり

作家様のイメージを覆すカップリング臭+小山田あみ先生のイラストに惹かれました。萌と中立の間くらいの印象です。

展開に勢いがあって、主人公・仁のキャラもオスオスしくて序盤は期待感でいっぱいだったのですが、意外性や新鮮味は思ったほど得られなかったかな…。というのも、タチなはずの仁はイラストのヴィジュアルがいかにも…なので、自分より体格の良いランツェフィードを抱いてやるといくら意気込んでも、抱かれちゃうんじゃないか?とハラハラしてしまって。

仁は不遇な生い立ちで、由緒ある一族から爪弾きにされています。20年ほど仁に仕えていた執事を療養に専念させるために辞めさせて、寂しさ半分、さぁ自由を満喫しようかという時に死神と出会ってしまう…。

死神・ランツェフィードのキャラが好きなやつなんですよね。冥界では地位が高くハイスペで尊大なくせに、任務には忠実で手は抜かずプロ意識炸裂。人間に傅く執事役すらしれっとこなしてしまうのです。

カップリングは好みだったんですけど、仁の家(親)族が嫌な奴ばかり。すぐ上の兄貴・伶は本人が病んでて余計なお世話だけど気の毒になってしまいました。

死神と人間っていうだけじゃないプラスアルファの設定が加わっていることで、ちょっと混乱してしまったところもあります。ランツェフィードが仁に目を開かれた(惚れた)部分がボヤけてしまったような気がして、その設定が必要だったのか悩ましい。ファンタジー的には楽しめるのかもしれませんが…。

エロの寸止め感や、濃厚なキスシーンにはめちゃくちゃ萌えました。ですが、伶のエピソードにしろジョエルの登場にしろ、この二人がお話に水を差してくれたために、終盤は急にテンプレじみてきてテンションが下がってしまいました。ジョエルのあざとさがなァ…。彼ら以外の脇キャラで素敵だったのは、前執事の守永とランツェフィードの小間使いをしているリュー。仁の心理的な救いとなってくれた癒しの存在です。

レーベルとの相性もあるかもしれませんが、語り口に勢いがあってキャラが立っていてもなんとなくバキッとハマれずで…。挿絵では2枚目の仁がコミカルで好きでした。

もう少し長さがあれば

イラストレーターさんきっかけで購入しました。警察官の先輩後輩ラブ。正直、萌と中立の間くらいです。

刑事ドラマばりの導入部から始まって、ノンキャリ先輩の神懸った洞察力により事件は鮮やかに解決。人間的にも男としても魅力を備えた先輩に惹かれていく後輩…

年の差はあれど階級は同じ二人が、ペアを組んだことで互いの知らない部分を見せ合っていきます。その過程が恋愛に発展していくわけですが、ちょっとテンプレに感じ、た、かな?

気になったのは事件発生のきっかけでしょうか。BLに無理なくつながりそうなネタではあるけれど、一番作者自身のBL観を晒してしまう可能性があるので諸刃のような気がしてヒヤヒヤしました。近年はBL作品での性指向の扱いにおいてフィクションとリアルの線引きに戸惑うことが増えたような気がしているので、難しいですね…。

ラブの部分は好みでした。メインカプのキャラも嫌味がなく、スーツ姿と私服のギャップを楽しませてくれましたし、おおらかで器用に家事をこなす中崎はもっと挿絵でも拝んでみたかったなー。(料理ができて味覚のセンスがいいと、なんかイイ男っぽい気がする。)先のレビュアー様がご指摘されているように、イラストがないので…。あと、二人の恋模様ももっと焦れてくれてよかったんじゃないかなと思います。このお話のメインディッシュはそこですから!

色っぽいシーンについても思うところがありますし、ページ数が少ないのもあるのかもしれませんが、物足りなさは否めません。もう少し膨らませたら絶対萌えも膨らんだと思います。

文章については冒頭、若干疲れていたせいか自分の頭の調子がよくなかったため、なかなか内容が入ってこなくて読解するのに時間がかかりました。「起」にあたる部分なので、気合が入っている感じ。中崎のキャラもまだ定まっていない印象ですし、情況説明に徹するあまりに一文が詰まっているというか…。

後半につれ気にならなくなりましたが、文章をほぐしたらもっと読みやすく感じられたと思います。単純に相性の問題かもしれませんが。

恋愛には臆病でも仕事はしっかり

火崎勇先生×麻々原絵里依先生×キャラ文庫さんということで、個人的にスーパーにてノールックで卵のパックをカゴに入れちゃう感覚です。

麻々原先生のイラストですとフラフラと吸い寄せられるのはいつものことなのですが、これは先生のコミカライズが読んでみたい。先生のリーマンスーツは垂涎ものなので…それとネックストラップのIDカードね…♡

卯月の感性は恋愛においてとても女性的です。なので恋愛感情の部分をしっとりと読ませてくれるタイプのお話だと、女性読者としてはおなじみの女性臭さは遠ざけたいのです。現実逃避したいの…。コミックの方がその部分を伏せることができて、卯月の心情と読み手に距離が出て読みやすいかもしれないなぁと勝手に思いました。

ガッツリな男同士!というより、作家様の受けって、いかついタイプよりかは受けっぽい受け(どんな受けだ笑)のイメージなので、攻めの男らしさ、特に対面で上手く気持ちを伝えられない不器用さが引き立つ印象です。このお話の四方さんも仕事ができて、頼もしくて優しい男って感じで好みでした。有能な人は自己処理能力が高く情緒が安定してるので、常に機嫌が良いもの。職場では落ち着いていて話しやすく、メールではしっかり恋人として甘い言葉もくれる…卯月の気持ちを的確に察してくれているんですよね。そりゃ、営業としても優秀なわけです。

表題の本編後に「メールのこちらには愛」が収録されていますが、後半編では坂井くんの教育に奮闘する卯月の気持ちにかなりシンクロして読んじゃいました。

仕事に関しては信念があって、周りの先輩方(特に四方)を参考にしながらしっかりと下積みをした上で、自分の判断でできる限りのことをやり切った卯月は偉かった。あんなふうに感情的にならずに後輩を諭して育てられるだろうか…。彼みたいに自力で解決しようとしていく人が伸びていくのかもしれないなぁ。翻って坂井くんは自分で起業した方が性に合ってると思うよ…。明文化されてようがいまいが学生の身分に甘えて会社のルールを受け入れて守れない人は、組織の中でやっていくのは息苦しいだけだし、会社側からしても教育コストに値しなさそうな人物だったし…。

BL小説でこんな感想が出るの、予想外でした。最近リーマンもののコミックに飢えているので、麻々原先生のビール会社のお話みたいな、本作のコミカライズが読みたいっていう希望を叫びたかっただけのレビューになってしまいそう…。四方や卯月たちみたいな、誠実に働く人たちのお話が読みたいです。オフィスで盛らないタイプの笑

これを読んでいて、メールをモチーフにした海外の映画作品を思い出しました。文面だけで見ず知らずの人に妄想を膨らませて、思いを馳せるのがロマンチックに思えた時代がありましたね。いつの時代でも、文章の奥に隠されている発信者の思いをきちんと汲み取れる人になりたいなと、いくつになっても思っていたいです。

しかし、あとがきに書かれている、二人のその後がいつも面白そうなんだよなぁ。

独特な文体

正直に申しまして、推しレーターさん買いです。kindle unlimitedで読めます。

真面目系クズ…というか、主人公の晴斗は一卵性双生児の兄で、人当たりが良くて優秀な弟の雨月と二人だけの世界に生きてきた、弟大好きお兄ちゃん気質なだけなんじゃないかな。ローテンションなキャラのせいで読んでいるうちに背景がすっかりかすんでしまったけど、めちゃめちゃ不憫受けなのかもしれない。双子萌えなので、晴斗と雨月の関係性はガシッと刺さりました。

兄弟萌えにも通ずる、見た目はそっくりでも性格が正反対で、兄弟間で同じ人を取り合っちゃったりする流れ、あるあるだけど好きです。でも本作は西塔の気持ちが雨月のセリフにほのめかされていて、受け同士の攻めの取り合いではなく、攻めの真意が伏せられている切なさに萌えました。晴斗と雨月がとても仲が良かったのが救い。


晴斗はボロアパートで一人暮らし。向かいのマンションには小学校からの幼馴染みで大嫌いな西塔が住んでいる。フリーターの自分とは違ってエリート警察官の西塔は弟の雨月と仲が良いのだけれど、それもすっかり過去の話となってしまった…。


萌えるシチュエーションな上に重い展開もあって、令和の初めにこの手のお話が読めるとは、何周か回ったのかな?とちょっと嬉しくなっちゃいました。最近の流行からすると避けられがちっぽい設定だから…。

内容やキャラは好みだったんですが、問題は文章が読みにくいというか、わたしには個性的すぎたこと。読んでいくうちに慣れるかな〜?と頑張ってみたんですけど、最後まで馴染めなくて残念でした。

たとえば一文を「、」で切りすぎだったり、接続詞の「なお」がよく出てきたり。「であるから」、「本日」など、論文や業務連絡を読んでいるかのような表現や言葉の選択が気になってしまって。人物のセリフ自体が堅いので、最後の方は時代小説としか思えなくなってきて辛かった…。濡れ場も文章の好みにかかってきますし、シーンそのものが短いので、エロいとかエロくないとか感じる以前と申しますか…

小説を書くのって難しいんだなぁとつくづく思いました。自分の文章力を棚に上げて、好き勝手申してすみません…。あんまり文体が気にならなかったら他の作品も読んでみたい作家様です。

最後の方に扉絵のようなイラストが2ページありました。

フィクションからリアルへ

近年の作風は終始穏やかなラブストーリーに落ち着いてしまった感がありますが、過去の水原作品比とはいえ今回もそんなにハラハラすることなく読了しました。主人公のセリフ回し(心の声)も軽妙で新鮮です。でもお話としては往年の作者らしさを端々に感じて少し懐かしく、じんわりと嬉しくなりました。

タイトルからコメディや異世界ファンタジーものかな?なんて思って読むとドキドキできるかもしれません笑


小柴一彬は製薬会社の研究員として働きながら、ブログで毎週オリジナル小説をアップするのが趣味。「イチノアキラ(一の彬)」のペンネームで現在連載中の『ミズチ奇譚録』はちょっとした人気を博している。主人公のミヅチは探偵業。代々水使いの家系で、水の神から授かった特殊能力を活かし、優雅に事件を解決していくシリーズものだった。

会社帰りに常連のカフェで執筆するのが習慣の一彬。いつもの店が満席だったので場所を変えて小説を書いていると、なんと目の前に自分が生み出した「ミズチ」にそっくりな男がいる!

店を出ようとする彼の後を思わず追いかけた一彬。入れ違いになった女性のためにドアを開けて譲ったミズチ似の男と目が合った時、一彬にはビビビッとくるものが…。以来、一彬は男の正体が知りたくてミズチ探しを始める。


ある日、彼を見かけたカフェで、一彬が「イチノアキラ」ではないかとしつこく声を掛けてくる青年に詰め寄られて困っていると、再びミズチそっくりさんが現れてその場を助けてくれます。それから二人は知り合い、たびたび会うようになっていくのですが…。

冒頭からしばらくは、これはファンタジー?と現実味をあえてぼやかした「ミズチ」と一彬のやりとりが続きます。実生活の一彬も30才にしては妖精さんばりの内向的な人物として描かれ、職場の後輩女性との絡みもいかにも理系同士で色気のかけらもなく。ただ、この愛崎エリカという後輩ちゃん、ほとんど存在感を消しているんですけど、地味にかわいい奴だったりして。水原作品で女性キャラがフィーチャーされるのは珍しいかも。

後半、カフェで一彬が「イチノアキラ」だと見破り、ファンだと言って一彬を困らせた青年と本屋で再会してから、事態は怪しい展開を見せます。いよいよ「ミズチ」が現実味を帯びてきて、一彬の身辺にも不穏さが漂い始めるのですが…。

痛くない水原作品に慣れつつあるけれど、今作に感じたフィクションとリアルが常に隣り合わせの微ホラー感は、作者らしくて少しだけ安心しました。

しっくりくる文体とサマミヤアカザ先生の繊細で色っぽいイラストに身悶えることしきりでしたが、爆発しそうでしないストーリー展開や作品のトーンにもどかしさを感じたのも事実…。

でもやっぱり次作も楽しみにしています。

軽く読める

気持ち中立にしたいところもあるけれど、ところどころ萌えたり楽しめたので萌に。

好きなイラストレーターさんが挿絵をご担当されているとのことで発売を楽しみにしていましたが、正直、イラストの雰囲気と内容のノリが合ってなかったような気がします…。

特殊能力を持つセンチネルと彼らを癒す能力を持つガイド。バディものとして妄想していた自分のイメージとはかけ離れていたのですが、ストーリーとしては面白かったです。センチネルバースと銘打っているとはいえ、ほぼオメガバースと変わりませんでした。ブロマンスとBLの間のギリギリラインが一番萌える性癖持ちとしては物足りなかったかも。


ミュート(β)として地元の区役所に勤務していた枝島侑李。突然、上司から「センチネル・ガイド調査保護庁(通称SGIPA)」への転属を命じられる。侑李は後天性のガイド(Ω)だった。

そこでセンチネル(α)の上條に引き合わされ、侑李が彼のガイドで番だと告げられる。SGIPAの業務は、不当に能力を利用されているセンチネルや、差別やDVを受けているミュートの保護。侑李が上條と組んで初の仕事は、連続する大学生の誘拐事件だった…。


お話は面白いんです。でもどうしてもテンションが軽く感じてしまって。個人的に作者の文章と相性がよくないためか、思いっきり楽しめませんでした…。

センチネル×ガイドにも運命の番というものがあって、上條と侑李が運命的に引き合わされた時、はたして二人は恋に落ちるのか否か…?だったらまだしも。

最初っから上條は侑李に対して将来のカミさん扱いだし、気が強い侑李は「運命」の相手と出会ってもすぐには認めません。侑李が上條に落ちるまでをジリジリ詰めていくのかと思いきや、エッチしたとたんすぐに好きになっちゃってるのがまるわかり笑

男同士のバディじゃなくて、夫婦ものでした。

個人的な印象にすぎませんが、じっくりと文章で読ませるタイプの作家様じゃないのかも。とにかくテンポのいいエンタメタイプで読みやすいし展開も飽きさせない。でもなんていうか、筆が早いのか、パターンが見えます。「なぜなら」の多用とか。受けのタイプがほぼ似ているとか。エロシーンしかり。受けの喘ぎ方がわたしには派手すぎました…。

他の作品にも見られましたけど、今作も同性婚が認められている世界観です。法的に認められてはいても受けつけない人たちは必ずいる。その現実を踏まえたうえで、街中でも恋人らしくラブラブする二人を描いてしまう作者のポジティブさはすごく好きです。

素直で単純で優しい子がハイスペックな攻めに溺愛されるのは王道好きにはたまらないけれど、センチネルバースでは変化球を見せて欲しかったかな。お仕事ものを期待するとラブの分量が多すぎたかと。

本作も脇キャラたちが光ってました。しかしながら榊の喋り方は小説ではキツい。シナリオの方が向いてるんじゃないかな?

しかも、あれだけの情報量をよくこのページ数内で収めたなと感心します。残りページ数の厚みでオチまでたどり着くのかハラハラしました。

ストーリーは間違いなく面白いのですが、小説の味わいとしては薄めです。

そこが今後、小説読みを満足させるかどうかの大きな分かれ目になるのではないかと思います。