宝井先生のイラストにも惹かれて一気に読了。何もかもが上手いなぁと、ノーストレスで作品世界に入り込めました。さすがベテラン作家様です。
この時代を背景にしたBL、大好きです。出自が伯爵家でヨーロッパ系の混血、かたや遊女の子。舞台は学生寮、先輩後輩の関係性とか硬派の文化とか萌え要素に尽きません。
でもって休暇期間のお誘いやら野合やら、大震災、大戦と、心身ともに危険な障害に晒されて二人の結びつきがより深まっていくとともに、男同士ゆえに将来を試される…
なのにドラマティック過ぎないのは、受け攻めの描き方にもの凄く抑制を効かせているからだと感じました。それぞれの生い立ちに由来するキャラ付けがしっかりとなされているので、二人の悩みも葛藤も真に迫っていて、その不安から今を刻みつける大切さを選ぼうとする若い衝動が切なくも尊かった…。
惣一郎も文弥も好きなキャラクターでした。プラトニックな関係もドキドキさせてくれたけど、一線を越えてからも程よく色っぽくて。最後まで一途な二人だったのがたまりませんでした。
文弥と生みの母親の関係もしっかりと描かれていて、手紙のシーンではグッときて印象に残っています。とっても気丈で男前な人で、母性は元より一人の女性としての存在感も強かったです。彼女がストーリーの展開に結構重要な役割を果たしているわけですが…。
全てがいい感じでお話が進んでいて、ハラハラしながらエンディングを迎えそうになったところ。最後、惣一郎の船出のシーンで、文弥の母ちゃんの一撃にエ゛ッ!ってなりました…。なんか、違和感…。あのシーンに動揺して読み終えるハメになったのは残念です。一貫してシリアスだったのにいきなりコントみたいなオチで(わたしにはそう感じた)なぜ〜?といまだに腑に落ちません。
ハッピーエンドだったのはメチャクチャよかったんですけど…。
リンが可愛いくて癒されました。あ、記憶がない時の、ね笑
『兄と弟〜荊の愛執〜』のスピンオフ作品です。137ページとそんなに長くないので、サクッと萌えを補給できるかと思いますが、わたしには内容がまとまり過ぎていて(つまり展開が早い)もっとじっくり読みたかったかな。同人作品なのでそういうものだと承知してはいますけど…。
お正月が明けて二週目の日曜日。仕事から車での帰宅途中、道端に倒れていた年齢性別不詳の人を保護したミネが、その子に好意を抱いてしまうお話です。
年が明けてまだ動き出しはじめたばかりの街の冷たい空気。寒い路上で意識を失った人を見つけた時の不穏さ…。町のお医者さんや警察官との掛け合いなどから主人公のキャラクターがしっかりと伝わってきます。リアリティを帯びた描写とともに、セリフによってキャラクターを鮮やかに浮かびあがらせてくる描写が、読んでいてとても心地よかったです。
ミネの性的指向は謎でしたが、素直で純粋で健気なリンに惹かれてもおかしくないと思えました。そう、リンは仔猫ちゃんになぞらえて描かれているので、リン可愛いのひとことに尽きるのです。ミネの親友・赫がまるで大型犬で、怯える仔猫みたいなリンとの「はじめまして」シーンが目に浮かぶようでした。そんな拾われてきた仔猫のようなリンを構ってくれるミネの家族達は、姦しくも温かくて…。
リンが記憶を取り戻した後の辛い別れは切ないけれど、リンはやっぱりリンでした。健気な子が安心して過ごせる居場所は、その子のことを心から思ってくれている人達のところが絶対にいいよね?最後は二人とも本当によかったなぁと、(特にリンを重点的に)見守っていたわたしも幸福感に包まれました。幸せのお裾分けをありがとう…
本編に加えて個人的に推したいポイントが他にもありまして、それはhatoさんのイラストなのです。淡路先生の『きみの庭 追憶の青』の表紙絵もご担当されていて、当時レビューに言及するのを忘れてしまったけれど、その幻想的な香りがする独特な美しさに目を奪われて以来チェックするようになりました。
動いている被写体の一瞬を切りとったかのような躍動感のある構図、透明感があるのに質感まで感じる印影の濃い色彩、人物の透けるように白い肌や瞳の輝き……ほぅぅぅ…(うっとりため息)
『きみのなかにすべてある』の表紙イラストも、リンのマフラーが印象的。作中の大事なアイテムです。BL作品でたくさんhatoさんのイラストを見てみたいですね。淡路先生の作品でご担当されているイラストレーターさんの作品はどれも素敵だなぁと思います。
画力・萌え・エロが揃ってます〜!
まだ連載中ですが、期待感が高まりすぎてちょこっと応援レビューを書きたくなってしまいした。ちなみにKindle電子版で拝読、現在3巻まで配信されており、それ以降の内容は未読なんですけど…。
吸血鬼×神父BLです。背徳感バリバリかと思いきや、カトリック教会がわりと吸血鬼に理解のある?ライトな世界観で、ラブに没入できるありがたい仕様となっております♡
主人公の要は、子供の頃に両親を亡くし教会で育ちました。成人して神父となり、幼いアルを吸血鬼と知りながら保護して育てた要。人間よりも成長が早く、思春期に入ったアルに「体液」を分け与えるハメになっちゃって…。吸血鬼にとって血液以外の食事がエッチなアレになるあるあるなやつですが、ちょっぴり天然で真面目な要はアルの育て方を間違えてしまったと思い悩んでいる真っ最中。
なんといっても絵柄が素晴らしいですね!それだけでもハードルが上がりがちですが、萌えポイントを挙げますと、アルは要が大好きっぽいのに要はいつまでもアルを子供扱い。要としては吸血鬼に必要な栄養は自分だけでは足りないはずだとアルの夜遊びに理解を示しつつ、実際はぐぬぅーっとジェラシーを見せたり(←無自覚)。しっかりとキュンを味わえます。
今のところ二人のすれ違いが描かれているのですが、アルにモーションを仕掛けてくる新たな吸血鬼キャラやらが登場したり、アルが要を吸血したことで要に変化が起こってきたりと、一筋縄ではいかなそう…。
登場人物の相関関係以外の描写も何気に興味深いです。教会生活のほのかなヤボったさや、シスターたちの懐の深さなんかが妙にリアルで、イイ味を出しています。
まだ完結はしていないので決定的な評価は難しいですが、個人的に期待感がハンパない作品です。三拍子にプラスしてストーリー性が加わったら、「神」間違いなしですね!
異世界転生系ってあんまりそそられないんだよなぁ(ホジホジ)とか思いながら、お給料が入ったのでやっと購入して拝読することができました。
7割読み進めてようやくBLみを感じ始め、キタぁー!ってなって、あれ?ってなって終わってしまった…。本作の売り上げ次第で続編出しますだなんて、作者にも読者にも酷すぎます。そういう企画なのでしょうか?物語の続きが作家様の脳内にしか存在しなくなるなんて絶対やめてぇ〜‼︎と叫びたくなります…。
男前受けというふれこみどおり、主人公の雄一郎は現実世界で傭兵だった男です。彼は戦闘中に異世界へ飛び「女神」になりますが、そこでもずっと37才のおじさんである自分を貫いています。仕方なく女神の役目を受け入れても、お尻を掘られまくっても、です。とにかく異世界の王の子供を産んで、さっさと現実世界に戻りたいんですね。
リアリストに過ぎる雄一郎に、当初わたしは色気もへったくれも感じませんでした。BLとはいえ受け攻めの概念すら吹っ飛ぶ、妻と子供がいるおじさん。テメレアとノアに突っ込まれてもおじさん。そもそも男の「女神」とは一体なんなのか?雄一郎と読者はその謎を背負わされながら物語を突き進まなければならないのです。正直、7割読み進めるまでは苦痛でした。
ノアが支配するジュエルドの世界ではかろうじてBLが成立しているのだけれど、雄一郎だけがリアルおじさんを貫き続けます(ノアとテメレアの関係性に激萌え。)この落差がなぁ…。「まるっきり頭の弱い痴女のような台詞」「女教師もののAVみてぇ」「童貞に手ほどきしてやる熟女」など、エロシーンで雄一郎が担う女の役割を自嘲的に強調されるたびに、男性向けのエロみたいでモヤモヤと嫌〜な気分になりました。
ここで真面目な話になりますが、BLを読む時って、読み手が女らしさとか男らしさの囚われから解放させてもらえる自由な時間だと思うのです。雄一郎は男なのに女の役目を負わされますが、それを受け入れてくれるキャラなんですよね。彼が男前なのはそこだと思います。でもセックスの時、女ってこんな感じなのかと雄一郎に言わせつつ、女性視点を交えてのエロは個人的に萎えてしまうというか、今まで読んできたBLで萌えるエロとはなんか違うというか…。
男同士で子供を作れることに加えて終盤には女性だけの部族の存在も描かれ、生殖において男女が平等に役割を振り分けられている世界観がにおわされています。その意図と「女神」が表すものについて、果たして読者に解が与えられるのか…、めちゃくちゃ気になります。
現時点ではなんともいえません。もしかしたらBLとして斬新なのかもしれないし、結末に至っていないのに何も決めつけることなんてできないですよね…。内容とは別に前から気になっていたところでは、やっぱり口元の描写を使ってキャラの心情を表現するのが作者の特徴だな〜というのは相変わらずの印象でした。
あ、あと挿絵は欲しかったですよね…。
私的に便利な萌評価と迷いましたが、結末まで読ませて欲しい!の希望を込めて、迷いに迷って萌え×2にさせていただきました。
ローズキー文庫の版権をショコラ文庫が買い取り、電子再配信可能となった作者デビュー作(あとがきより)。ショコラ文庫さん、ありがとうございます。カズアキ先生のイラストはありません。
展開がジリジリすぎて、ほんとにクライマックスくるんだろうか?と不安になるくらい、メインの二人がすごーく狭い範囲をぐるぐるする、(ページ数の割に)実は短い期間を描いた再会ものです。
好悪が分かれるお話だろうなァ…。守屋のキャラにハマれるかどうかが決め手かもしれません。ムッツリが過ぎて得体が知れない不気味さと紙一重なんですよね…。ヴィジュアルの描写が好みだったのもあって、個人的にはツボでした。
三島も複雑なキャラで、彼の生い立ちからくる二面性をうまく擦り合わせられれば、守屋と惹かれ合う理由がもっと伝わってきたような気がするのですが…。
にしても、守屋と再会して直後の三島は軽薄で愚かすぎて、あまり好印象は持てません。高校時代を少しずつ思い出しながら自分を見つめ直していく三島が、子供の頃から現在まで求め続けていたものは一体何だったのか…。守屋と偶然再会するまで、ブランクが10年。三島の方はたやすく高校時代の感覚に戻れたけれど、守屋は違いました。明らかな拒絶はせずとも、言葉少なに三島を突き放そうとするのです。
特に再会後の二人の曖昧な関係性は、あえてわかりにくく内実をぼかして描かれています。そこで、雨の出番なんです。雨の降るタイミングがものすごく効果的で、守屋の本心を読み解いていくカギにもなっているところにシビレました…。これほどまでに人物の心情を違和感なく表現している雨の使い方は希少かも、と。
最後のエロは守屋がずっと抑えていた分、欲望が爆発しちゃう豹変ぶりが見もの。静かな激しさが逆にいやらしいです笑
読後感は萌でしたが、雨の描写が印象的でしたので、萌え×2にさせていただきました。
面白かったです〜。彩東先生のユーモアのセンスにメロメロです!羽純ハナ先生の端麗なイラストが素敵でした。
エンタメ作品においても文章がしっくりくるかどうかって個人的にすごく重要なんですが、その点、作者の文章は自然に入ってきてくれて、地味に笑いのツボも鷲掴みされてしまって…。明らかなコメディではないのに、ふとした描写にフフっと笑わせてくれます。
ヤクザと料理人(見習い)のカプですが、かわいい子供が出てくるからか、ほのぼのとしていて安心して楽しめるお話でした。
それなりに女性陣も登場するけれど、己の本能に従順な天然さんたちで嫌味がないですし、ヤクザ攻めとはいっても穏健派なので、抗争やら流血沙汰には至りません。クスリ的なものは出てきますけど…笑
とにかくおこちゃまの桜太朗くん(4歳)がか~わいくて…♡
刀瀬(建設会社経営の若頭)のお仕事ぶりがメインじゃなかったのがよかったのかな。仕事を終えた後に家でパパになる顔をたくさん見せてくれるので、ほのぼの度を上げてくれているのかも。老舗フレンチレストランを解雇され、刀瀬組の料理人として雇われた郁生が桜太朗くんと仲良しになっていく様子が、とーっても微笑ましいです。
メインカプのどちらかがヤクザでも、こんな爽やかなお話もアリなんだ…と、わたしの中では画期的な中道ヤクザBLでした。
刀瀬さん、硬派の中の硬派ですよね。男らしさや権力を見せつけるために女を侍らせるようなヤクザではなく、女性関係よりも親友を大事にしていたり。桜太朗くんを健康的に育てようと、食べ物に対するしつけもきっちりしていたり。そんな彼に無自覚な「もふり癖」があったせいで、思いがけない恋が始まります!
夜、郁生が刀瀬のために酒の肴をせっせと用意するシーンがあって、郁生自身はあんまりお酒に付き合おうとしないんですね。その理由がクスッと笑える。前作のあの人を思い出しちゃって笑
刀瀬が「ゲイじゃない」と公言したのはカモフラージュ?…じゃなかったとしても、二人が抵抗なくあの流れになっちゃうのは少々気になりましたが、ヤクザだしBLファンタジーってことで、楽しかったからまいっか〜と笑
最後に収録されているSS「夏の終わりのおはなし」がかわいかったです。おきまりのイチャラブじゃなくて、刀瀬家のドタバタが読めて嬉しかったな。爽やかな読後感はそこからきているのかもしれないですね。
で、気になるのは桜太朗くんが大人になったらの展開…。これは妄想が捗っちゃいますよ〜。
この同人作品がちるちるに登録されていて評価もそこそこ入っているのは、配信時期によるためでしょうか。とにかく登録してくださってありがたいです。正直、作品登録大変です…。
内容は先のレビューどおりで、全く同意です。女性キャラ、レイプ、喪失体験などが苦手な人にはおすすめしません。うーん、ストーリーを作るための重要食材とはいえ仕上げはカタルシス添えなので、完全に夜明けの腐女子向けかな?
読み応えがあるのは男女複数カップルのサイドストーリーも同時進行しているからだと思いますが、絡ませ方が絶妙に上手いですよね。そういうとこ、惚れ惚れします。
推しは真砂さん。彼の業の深さは、最も愛する人との別離でしか贖えない。そして相手も共犯者であることを自覚して自ら罰を課している。真砂がお金で喜一を買っても、商売から離れた彼には絶対手を出さないのは、本当に大切なもの…愛の片鱗に触れてしまったからなのでしょう。
喜一のことが嫌いな仕事仲間、マリーさんもいい味出してますよね。喜一がマリーさんに嫌われている理由を自分で言い当てるセリフとか掴まれます。機微をうがつセリフまわしが上手いです。
野原作品を読んでいて毎度ムズムズするのは、キャラの一貫性です。普段の受けと、攻めと一緒の時の受けのギャップが上手いこと萌えに変換できないんです。攻めを前にするといきなり女子になる。攻めの方も変身要素があるにしても、登場シーンとクライマックスで微妙に違和感がある。キャラ変の繋ぎの書き方次第で激萌えするところだと思う。
あとは文章の相性なんです。ストーリー自体がドラマティックで重いので、キャラのリアクション(表情を含む)によって心理描写する場合、そこが凝りすぎていると個人的に疲れちゃって…。小説にマンガっぽさは求めてなくて、もともとが淡々とした文が好きなため好みの問題にすぎませんが。番外編はほぼマンガとして読んでました笑
こういう作品は最近商業の小説で読めないので、ありがたく読み終えました。
2014年に第7回B-PRINCE文庫新人大賞優秀賞を受賞されている作品ですので、執筆されたのは電子書籍刊行年よりだいぶ前ですね。
本作は先日拝読して個人的にすごく好きだった『夏の庭に、あたたかい雨』(第5回B-PRINCE文庫同賞受賞)の後に書かれたようですが、テーマに通底するものを感じました。シリアスなトラウマを抱えた主人公がありのままの自分を絶対に否定しない人に出会い、前を向けるようになっていくお話です。
競泳選手として将来有望視されていた高校生の龍一。高校でも水泳部のエースで特待クラスに所属していましたが、トップアスリート一家に生まれた重圧と双子の弟との確執に苦しんでいました。ケガで泳げなくなり、自分の居場所や生きる意味を失いそうになった時に浅見と出会います。屈託なく優しい言葉で包み込んでくれる彼は、龍一にひと時の避難場所と癒しを与えてくれるのですが…。
浅見の住む家は、彼の祖母が二匹の猫とともに遺していったもの。引っ越してきたばかりでライターを生業にしているようだけれど、詳しいことは語りません。飼い猫にも名前をつけていないし、たまに不躾な編集者が訪ねてくるくらいで、交友関係も不明。なんとなく怪しげで謎めいた人物なのです。
どちらが受け攻めかは期待を裏切られず地味に嬉しいのですが、ストーリーの要所で予想を裏切る種明かしを後出しされたりするので、不意打ち効果大。先が気になってどんどん読み進めてしまうのは、お話の運びが巧みだからだろうと思います。
こういった苦しみの果てに救いが感じられるお話、個人的に大好きなんですけれど…。
作者のTwitterで、本作以前の作品は書くのが苦しかった時期に創作したのものだった、とのツイートを目にしました。先日拝読した作品もそうだったのかと思うと、自分が好きでハマった作品は作者が本当に書きたいものではなかったのだろうかとしょんぼりです。『花嫁のカヤ』こそが本当に書きたかった作品だそうなので、これは読まねば…。
龍一や浅見の抱える苦悩が作者と重なるかのように思えたのは、浅見の職業がライターだったからでしょうか。彼らの心情にシンクロしていくうちに、わたし自身も辛くなり、時には身体的にも疲労を感じるほどでした。作者の産みの苦しみが直に反映されていたからなのだろうかと、後から知ったツイート内容から憶測してみたり。
作家様に書きたいものが書けない時期があってくれたからこそ、『夏の庭』やこの作品に出会うことができました。それがきっかけで、設定で食指が動かなかった他の作品も読んでみようと興味が湧いたので、とにかく一つひとつ過去作品を書き上げてくださった先生と当時の担当者様に感謝しかありません。
そういえば、第6回B-PRINCE文庫優秀賞の『あなたの物語を、聞かせて。』はどこかで読めるのでしょうか?
66ページと短いですが、関係性萌えは満足させてくれました。2010年Webサイト掲載作品です。先生、2010年にそれまで書き溜めていらっしゃった作品を大放出されたのかしら…。評価的には萌×2と萌の間くらいの感覚です。
曳船作業員の森尾は職場の歓送会で飲み過ぎ、後輩の砂村に介抱されながら二人が住む独身寮へと帰った。歓送会は森尾の命の恩人である井上先輩と女性社員の結婚報告も兼ねていたのだが、帰寮後、森尾が過去に井上と秘めた関係にあったことを砂村に暴かれてしまう。以来、森尾は自分に懐いていたと思っていた砂村から冷たくあしらわれるようになり…
森尾、砂村、井上の三角関係が性癖に「ど」刺さりしました。三角関係大好物なんです!曳船っていうお仕事が興味深かったですね。しかも男くさい職場で女性社員が少ないなんて、妄想が捗るじゃないですか…!
冒頭、迫力のある海難事故シーンから始まり、いったいどんなお話なのかドキドキさせられました。「きみの花 追憶の青」よりもメインになる人物が多いのにページ数が少なかったので、こちらはガッツリと中編~長編で読んでみたかったですね。
三人の関係性については、井上→森尾→砂村の矢印があんなに短い中でクッキリと浮き彫りにされており、うんまいな~と思わず唸りました。きっと、長さも自在に調節できるし、どんな設定でも萌えさせてくれる作家様なのだろうと信頼しちゃいます。
最後の方はお約束通りにささーっと終わってしまったのが残念でしたが、本編後の「恋をつなげて」にエロが詰まってました。砂村が欲しくてたまらない森尾のおねだりには淫乱さが滲み出ていて、悪くないですね〜。…欲しがりなお兄さんは嫌いじゃないです♡
イラストレーター(漫画家)さんきっかけで読んでみました。kindle unlimitedでも読めます。
ちょっと長めのお話。餡玉先生、初めて読みましたが面白かったです。タイトルどおりのストーリーで、ヤクザに懐かれてしまったのは霊が「視える」男子高校生。擦れてなくって真面目な子がヤクザに惚れられちゃうなんて…。大阪弁バリバリのコメディで、ホラー色は全くありません。霊に取り憑かれてしまう理屈やお祓い方法は簡潔だけれど説得力があって、違和感なくコメディ一直線で楽しめました。
攻めの美形どヤクザな椿が魅力的なので紬はもちろんのこと、椿と同じ施設育ちで兄貴分の忍海、組長側近の遊佐、舎弟の宍戸──。彼らと椿の裏の関係性にめちゃくちゃそそられました。
セリフには勢いがあるし、キャラが生き生きとしていて、受け攻め以外のスピンオフが読みたくなりますね。個人的には警察庁に勤務する忍海が気になっちゃってます。
紬が素朴で真っ当なので、彼目線を基準に据えた上で、裏社会のドンパチやオカルト要素がのびのびと描かれていて純粋に笑えました。描きようによっては暗かったり深刻にもなりそうな設定なのに、一貫してコミカルに終始しているところに作者の力量を感じましたね。
椿も人間はもとより、猫やら犬やらに取り憑かれちゃって、かわいいやら気の毒やら…笑
若頭としての面子も丸潰れ。だけど、凄味があって腕力も強いので、やんちゃ臭さとのギャップに紬ともども痺れちゃいます。おぼこな紬もかわいいし、個人的に椿がなんたって萌えキャラでした。ヴィジュアルの希望としては長髪めのイメージだったけど…。
エロがいつもいいところで寸止め状態で、お預けくらい続けたのも、紬の成長に合わせてくれているんだろうなと愛を感じました。いかにもあんあん♡なエッチシーンにだいぶ慣れてきましたが、濡れ場はこれくらいピンクがかってなきゃダメなのかな…?最終的には読み手の好みに拠るのでしょうけれども。
web小説そのものに馴染みがない者にとっては色々と新鮮でした。webだと作者さん裁量の更新スタイルでしょうから一章が短く、人によっては章ごとにタイトルがつけられていたり、セリフに「♡」が入っていたり。ノリがよくてサクサク読めますし、瞬時に映像が浮かぶのでアニメ作品みたいに次回の更新日が待ち遠しくなるのがよくわかります。商業作品とは異なるしきたりや創作文化を少し知ることができて勉強になりました。
ある程度章をまとめて詳細なタイトルを外したら、もっとすっきりと読めたかも。一気に読みたい派としては、章ごとに一時停止されちゃうと逆に読みにくく感じるかもしれないなと思いました。