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自分の大切なものを差し出す優しさ

表題作の「黄色いダイヤモンド」は、真面目で口うるさいサラリーマン・邦彦が落ちこぼれで子持ちの幼なじみ・勇への長い片思いを実らせるお話です。80ページ弱の作品ですが、“優しさ”についてしみじみ考えさせられて、何度も読み返してしまいました。

勇は深く考えることが苦手なため、お金をだまし取られそうになったり、セックスで邦彦の機嫌が直ると考えて、邦彦を傷つけてしまったりもするのですが、そこには「困っている人を見捨てられない、相手を喜ばせたい」という優しい心があるのだと思います。
涙が止まらない邦彦を残して立ち去ることができず、邦彦の望むまま抱かれる側になる姿は、自分自身を差し出しているようで、読んでいて胸に迫るものがあります。恋人同士になった後、勇が亡き妻の形見の指輪を邦彦にプレゼントする場面では、数少ない自分の大切なものを差し出す姿に胸を打たれます。
多くを持たない勇が見返りを求めず自分自身や自分の大切なものを差し出すことは、誰もができることではなく、すごく尊いことではないでしょうか。
タイトルの「黄色いダイヤモンド」は、そんな勇の優しさを表している気がします。いわゆる勝ち組ではない勇は“ダイヤモンド”ではなくて“トパーズ”かもしれないけれど、その優しさはダイヤモンドの輝きに負けないと思います。それに黄色いダイヤモンドは本当に存在するのですよ。美しい色合いのものは希少価値がとても高いそうです。勇の優しさも同じではないでしょうか。

「教えてあげる」とか「してあげる」といった優しさは、純粋な思いからでも、どこか上から目線になりがちで、相手に受け入れてもらえないものなのですよね。勇のためと厳しくしてばかりの邦彦や、勇の息子・俊一に好意を寄せるお金持ちの秋森くん(同時収録「歯が痛い」に登場)の振る舞いから、あらためてそう感じました。
“優しさ”って、身近な言葉ですが、奥深いなと思います。

優しい二人のピュアな恋物語

刑務官のケインと、犬耳・犬尻尾を持つ囚人H3の、もどかしく切ないピュアなSF恋物語です。
木原さんには珍しくハッピーエンドです。木原さんの痛い話が大好きな私ですが、読後はじんわりと幸せな気持ちで大満足です。

ケインは職場では明るく振舞っていますが、スラム街出身であることやゲイであることを隠しているため、心の中では孤独を感じています。担当した囚人H3は精神体が寄生しており、その人格は宿主のものではありません。宿主の肉体から精神体が吐き出される数か月後まで、ケインはH3を見張ることになります。マジックミラーのような独房で、ケインは外からH3の様子を見たり話し声を聞くことはできますが、H3からは外の世界は全く見えないし聞こえません。白い箱の中に閉じ込められ十数年間を孤独に過ごすH3の唯一の楽しみは恋愛映画鑑賞。登場人物相手におしゃべりする寂しげな姿を見て、ケインは密かにあれこれと世話を焼いてやるようになります。

見つめ合うことも直接話すこともできない、この特殊な状況の中で、二人に恋が芽生えていく過程がとてもピュアで素敵なのです。
ケインがH3を喜ばせたくてH3がリクエストした映画をすぐに差し入れたり、体がかゆそうなH3にすぐ皮膚薬を差し入れたことで、H3は自分を気に掛けてくれる優しい存在が初めて現れたことを知り、やがて恋をします。ケインもまた、一人芝居のように自分に感謝し愛を告白するH3を愛しく思います。見返りを求めず、ただ相手を想い気遣い合う二人のやり取りがとても尊くてキュンとします。

ケインの髪の色を知りたがるH3にケインが自分と同じ髪の色の主人公の映画を立て続けに差し入れたり、H3がケインのためにクリスマスに歌を歌うエピソードが、可愛いけれど、もどかしくて切なくて、作品中でとても好きです。

ケインとH3は、生い立ちは違いますが、それぞれ孤独の中にいたことは同じです。それでもピュアな心を失わず、孤独な人や困った人への優しさを持っているところがいいなと思いました。無視されたり差別されたりする痛みを知っているからこそ、他人に優しくなれるのかもしれません。二人のそんなバックグラウンドもしっかり描かれていることが、物語に奥行きを出しているように感じました。

二人が無事結ばれることになった最後の種明かしにはアッとなりました。H3が独房に長い間入れられていた理由というのが、周りの猜疑心や差別心だったというのが、二人のピュアな心をさらに引き立たせているようです。