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女性chikakumacoさん

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我の涙腺キーがみーち作品の勘所と連動している話。

前巻で、尊いわぁー、可愛いわぁー、くすっぐったいわぁー、ジワリ来るわぁ、なんて。感動していたら。それどころの騒ぎでは無かった。
涙腺キーが押されっぱなしで、涙と鼻水の洪水に見舞われてしまう。
もちろん。尊いわぁー、可愛いわぁー、の連打は押し捲られる。ところが、本作はジワリ来る、なんて。生易しいものでは無かった。読みながら、それこそ。私の涙腺キーはタガが外れてしまったのだ。
「高3の夏」と銘打ってるからには、卒業後のアレコレを考えているんだろう。タイトルから容易に想像はつく。
瀬戸は、建築系の大学に進学するべく標準を定めて準備をしているが、菊池は、恋人の瀬戸と離れたく無い、という気持ち以外、何もまだ考えてはいない。学園ものの醍醐味である文化祭や体育祭、部活動等々をザックリ端折って、卒業間近の彼等にフォーカスを定めて描いて行く。そして。瀬戸の何処か厭世的な眼差しや遠慮がちな態度は、彼が幼ない頃に大好きな父を病気で亡くした記憶に起因すると明かされて行く。くだくだしい説明はない。それは、みーち先生のシンプルな絵の様に。物語の中で、簡潔に表現されていく。瀬戸が自分に課した、「欲張らないこと。」とは。願わないこと、夢見ないこと、と同義なのだと。気付かされて、その切なさに私は泣いてしまう。愛情はそこにあるのに。手を伸ばして欲しがる事を「良くない事」だと断じている。それでも。菊池の真摯な優しさにいつか、気持ちは解けて行く。
菊池は、セクシャリティがどうとかは、若干どうでも良くなっていて。瀬戸だから、好きなのだと気付いている。素晴らしい!この安定感よ。この2人に割り込む隙は何も無いのに。瀬戸は、少し怯えているのだ。何かが変わって行くのでは無いかと。
それは当て馬の登場によってヒヤリとさせられる。中学生の瀬戸の家庭教師をしていたという塾講師の錦川は、瀬戸にエッチな手解きをしたのは自分だと菊池に告げる。動揺する菊池。しかし余計な事を吹き込む彼は、実は瀬戸の初恋でも何でも無い。ただ興味本位で抜き合いをしただけだ。錦川もそれ程瀬戸に執着している訳では無いが、少し意地悪だ。でも、我々が心配する程、錦川は悪い人でも無い、という事は終盤で明かされるので、そこは是非本編でハラハラして頂きたい。

瀬戸の突発的な事故による入院生活、見舞いに来た菊池が同室の少年と気持ちを通わせる事で。菊池もまた、将来の自分を描いて行く。生活の中で見出して行く未来。それが本当に自然というか、まぁ、ある程度予想は付くとは言え、やっぱりくだくだしく無くて、とってもナチュラルに読めて。すんなりと腹落ちして行く。菊池は子供達に関わる仕事をしたいと自発的に思う様になり、遅まきながら進路を確定する。それぞれの道へと邁進する彼等に立ちはだかる距離。卒業しても一緒に居たいと願う彼等は、違う進路、というので物理的に離れてしまうのか。遠恋になっても気持ちは変わらない、と宣言する菊池の軽々しさに一抹の不安を覚える瀬戸。自分の進路も夢も、瀬戸と一緒に居る事も。「欲張る」のは、菊池の方っていう。男前度を見せるのもいい。そう、瀬戸が欲張れないなら、菊池がその分欲張ればいい。そう結論付けた様にも見えて。ニクいというか、ホント、泣かされました。んー。やっぱり尊いわぁ。大学違うから、一緒に住みたいけれど、とりあえずは、それぞれ別の駅で一人暮らしをスタートさせる。
生活サイクルも若干違う2人。それでも、一緒に居たいから。「今日、俺んち寄ってく?」タイトルがドカンとここにオチる。如何にも気が利いていて、ニクい。ニク過ぎるよ!
高校の時、寄り道に何度と無く言い合った2人の台詞がここに来て、ドカン!クーッ!
微笑ましいやら、ニクいやら、泣き濡れた後にホッコリ笑顔。してヤラレた感も凄いけど。此処に持って来るまでに語られたエピソードを思えば。参りました、という気持ち。そして、穏やかで優しい気持ちになる読後感。
ありがとうございました。

嗚呼、10代にして。この魅惑のノンケ落としったら!

瀬戸がまず、ヤベーヤツである。
イケメンなのは勿論。やることなす事スマートで。己れの欲よりも、相手の幸せを願える良いヤツなのだ。合掌。
齢10数年でありながら、この完成されたスパダリみよ!これはもぅ。好きにならずにはいられないでしょうよ。

みーち先生は、「俺(=吸血鬼)の獲物がゴーインすぎる!」を持っていて、時々読み返してしまう程好きなのですが。あのカサッとした線で、キャラデザも2種類程度しか無く(攻め受け確定している。)シンプルなんだけど、繊細な表情が読み取れてしまう巧みさが素晴らしい。かの短編集の中でも「後輩のパソコンのEnterキーが俺のちくbと連動している話」(タイトルが長くて出オチで全て。)をこよなく愛しているものだから、本作もそういった短めのコメディかと思ってて、何なら油断していた。瀬戸の、科白の一つ一つが、菊池の発する言葉の速さとは違う。まるで、時をたゆたう様に。それだけがキラキラとゆっくり聴こえてくるのだ。イケメンだからね。(強調)それもさることながら。彼の表情が言葉以上に発している気持ちが、想いが、切なくなる程ギュッと、ジワリと、心を掴んで離さない。

冒頭でこそ。BLあるある的な「魅惑のノンケ落とし」的な始まりをする。自身で女の子が好きだと言いながら、童貞あるあるなのか、気持ち良い事に流されてしまう、菊池。彼のその単純さ(チョロさ)につけ込む様にして、エッチな事をドンドンかまして行く瀬戸。スマートだが、手慣れている風の瀬戸は、この時ちょっと黒い。手のひらの上で菊池を転がしている様にも見える。けれど。読み進める内に、我々は気付かされてしまう。瀬戸の、苦しい胸の内を。流されて気持ち悦がっている菊池を見るのは嬉しい。しかし、本当に、純粋に、菊池を好きで、恋をしている瀬戸は、「好きな人」の幸せだけを願っている。そして、恥じてはいないものの、自身が性的マイノリティだという事に引け目を感じているのだ。自分は決して「選ばれることは無い。」と。高校生にして、こんな哀しい結論を自分に下している。だから、普通に可愛い女の子・宮坂の登場で、瀬戸は静かに身を引こうとする。宮坂もいい。2人の様子を気付いた彼女もまた、そっと身を引くのだ。
きちんと告白して。自分の気持ちを整理して。
だから。菊池も自分の気持ちに気付く。素っ気なく振る舞おうとする瀬戸に、振り払われても、ちゃんと。自分の気持ちを伝える菊池もまた。男前なのだ。
何なの⁈ この子達!尊過ぎる!

「描きおろし」の「1年前の話」も良い。放課後の電車内。シンプルな絵柄なのに、午後の空いた車内に、暖かな陽射しが差し込んでいる空気感が余す所無く描かれている。彼等の通う高校は、住まいは、郊外なのだろう。そして瀬戸のモノローグ。気持ち。菊池の、気持ちのいい単純さに救われた瞬間。何処を切り取っても素晴らしい。
みーち先生は、空気感を描く天才だと思う。

拗らせたのは、心か。身体か。

6巻で。一旦幕引きがあり。4年の月日が経ち。7巻からまた。
物語は再開する。
矢代は、一度は捨てた(つもりでいた、)百目鬼と再会を果たす。
ところが。何処か拗れてしまった2人は、おそらく自分の本当の気持ちには気付いていない。
目を背けては、苛ついている。
何だよ、それBLかよ。いや、BLなんだがな。

百目鬼が天羽さんのツテで世話になっている、桜一家5代目組長の綱川には、5代目を継ぐ際に一悶着があった。それが今回の件に関わっている事が分かる。
先代に仕えていた奥山が、襲名出来なかった事が私怨となり。綱川に復讐を企てているのだろう。
実際に、綱川の娘が幼い頃誘拐されたという一件もある。
きな臭くなって来た事件に、関わらない方が良いと若頭の連に諌められるが、矢代の方でも、裏カジノで焦げ付かされた金の回収という名目で、実は半グレ集団の竜頭(リューズって。これまた如何にもな。)と奥山組、または三角さんの居る道心会と因縁のある極星会傘下の奥山組との関係と動向を探っている。
6巻までの、事件とはまた別に。幾つもの組の抗争に発展して行く事件なのかもしれなくて。ヤクザ者だが、組を持たない矢代もまた。これに呑み込まれて行くのかもしれない。
ページを行き来して見返してしまう程、ちょっとややこしい事になりそうなのだ。

私がショックだったのは。そう。4年も経ってしまったのだから仕方の無い事なんだろう、とはいえ。
あんなにも愚直に。雛の様に矢代を慕い、庇い、一途に執着していた百目鬼が女を抱いている。(涙)
もちろん行為そのものは描かれてはいない。
矢代は、百目鬼に押し倒された際にそれに気付く。そして。切なくて、胸を痛めるのだ。
百目鬼は、矢代の躰を弄り回した挙げ句、挿入せずに帰る。
百目鬼は百目鬼で、4年も経って未だ美しい矢代が、刑事の井波にいいように抱かれている事や、矢代が他の誰かに抱かれている事に嫉妬している。
何なんだ、一体⁈
百目鬼は知らない。矢代が百目鬼を知ってから以降。誰にどんなに抱かれても勃たない事を。
どんなに痛みを伴う行為をしても。どうにもならない事を。
矢代の心と躰に、傷付けられた痛み。少年だった彼に打ち込まれた楔。
「漂えど沈まず、されど鳴きもせず」
結局私はまた1巻から読み返す羽目になってしまう。
ヒリヒリと胸は痛むけれど、今思えば4巻までは。気楽だったのだ。
百目鬼は知らない。こんなにも美しい人を傷付けている事を。
それを思うとき。涙を流さずにいられない。哀しくて、哀しくて。嗚咽。

事件は。2人の恋は。何処に漂着するのだろうか。
これ以上傷付いて、傷付いて、どうなるのだろう。
物語が始まってからずっと。自棄の様に漂っている様な矢代に。
穏やかに生きられる日を、ただひたすらに願います。

本作ではまた。「ななたん」こと七原の軽口は、癒やし。彼はいつの間にか独り身になっている。
3巻の冒頭に登場していたキャバ嬢だった女とは別れたのか。
また、七原の冴えないボサボサ頭の弟分だった杉本が、実は大学出で、その抜け目の無さで金を稼ぐ様になっていて、前髪を後ろに撫で付けて少々パリッとしていたりもする。
時間の経過を感じられる演出だ。

Devil Life コミック

SHOOWA 

セクシー悪魔ライフ!

SHOOWA先生の新作‼︎ が拝めるなんて‼︎ 近年、原作とかされてたけど、SHOOWA先生の作品はやはり先生の絵で読みたい!と、思っていたから。嬉しくて堪らない!早速ページを開くと興奮が止まらない‼︎ ああっ!なんてセクシーなんだろうー‼︎ 扉絵のマルコシアスとソロモン!
何て色気のある絵なんだろう。そして、ギャグが THE SHOOWA!逆に時代感を感じさせない。この懐かしさと今っぽさ。
あとがきによると、厳密には新作では無いという。2011年から、読み切りをスタートして。10年の間、ブランクありながらも描き続けていたという。それに描き下ろしにて、ネタばらし、というか物語の背景を補足している。
馴染みの無い方にはちと難しく感じられるかもしれない。
旧約聖書の神々を、悪魔を、王を。ファンキーに、アナーキーに描いて、ポップに仕上げた快作だと思う。
イスラエルの王・ソロモンは、現代では所謂「なんでも屋」を営んでいる。
冒頭はこの物語の導入部として。これ以上のものは無いだろう。
封印されていた悪魔、というか小悪魔と言った方が良いだろう。ベリアルは、忠実な僕(しもべ)・オセを連れて下界へと脱走する。人々を惑わせ、堕落させて、欲のままに奔放に生きるベリアル。ソロモン王に忠実なマルコシアスは、ベリアルを回収しに下界へ降りる。
後半にシリアスめいて来る事を思えば、これと次に続くエピソードは気楽なものだ。
クスリと笑わせて、物語世界に引き込んでくれる。
そして。マルコシアスとソロモン王との出逢いと。
この世界の、聖書としての成り立ちと。この世界の不安、嘘や欺瞞。恐怖。
召喚術を駆使して、悪魔に魂を捧げて。血の契りを交わし、魂で繋がれた2人の行方。
善悪では括れない、連綿と続く人の営み。
「平和な時代なんてねーわ。」と語るソロモンの言葉。
この世界は、神々の気まぐれで生み落とされた人の歴史。今も世界の何処かで紛争は起こり、何処かで平和は蝕まれて行く。それでも。
魂は惹かれあい、常にそれを求め続ける。求道者の様に突き進むソロモンとマルコシアスは、時空を超え、何度でも何度でも。邂逅し合うのだと。
そして。それがただ人の生きる道。
我々は、元より悪魔と天使のハイブリッド、なのかも知れない。なんて。
ちょっと良い話では無いか、と思って。胸が熱くなってしまうのだ。

ソロモンとマルコシアスの濡れ場、は無いし。ひたすら何だかエロいけど、そういうのは無い。マルコシアス曰く、「魂でヤッている。」様なものだと云うが。
身も心も、なんて騒ぎでは無いのだ。血も魂も捧げているのだから。
そうは言っても。以降、続編があるのなら。それも見てみたいよね。

恋はタイミング。誰もが誰かに特別な気持ちを抱く。

一応。完結編なのかな?
「憂鬱な朝」や「花は咲くか」。まだ続いている「日に流れて橋に行く」も既に7巻。
それ以前の作品群には短編や上下巻ものも確かにあるものの。
本作は勝手に長く続くものだと思い込んでいた。
それ程までに。周防と亮は拗らせていたのだから。
「普通」という言葉で自身に呪いをかけた周防は、自分の気持ちにも、亮の気持ちも解っていながらも気付かないふりをし続けて来て。
亮も一緒に居られなくなる事に怯えて。蓋をして見ないフリをして来た10年。
危うい均衡は遂に破られる。
失ってしまう事の方がずっと怖い。気付いた2人は、2人で生きて行く事を選び取って行く。
「恋って、ホント、タイミングだよねー。」という御園さんの言葉は永遠の真理だ、と私は常々思っている。そしてラスト周辺のモノローグにも、概ね同意だ。
つり橋効果的な事件が発動しなくても。生死を分ける様な運命的なことが起こらなくても。
「特別な関係」と「特別な気持ち」は続いて行くのだろう。
そんなロマンスをある意味否定して「アンチロマンス」と銘打っていても。
これは永遠の命題「友達同士の間に恋は生まれるか?」という永遠の問いに応えたある種ロマンティックなアンサーなのだ。
多くの恋が。気持ちが。「タイミング」の無さに泡と消えるというのに。
これをロマンスと言わずして何と言おう。
作者も「あとがき」に書いている様に。泡と消えた気持ちを抱えて、フツーに生きている大人たちが2人の恋の為にお節介を焼くのもいい。
私は過去に有った気持ちを無かった事にしている准一さんと戸和田さんの大人の方のロマンスに期待したんだけど。どうやら准一さんの方がスッパリ終わらせてしまったというので。
とても残念に思う。突然登場した御園さんと佐久間店長の間にも、一方的な想いはあった。
佐久間さんの何事にも偏見無く「常態」である事が、御園さんの気持ちを揺さぶったのに。
「常態」である佐久間さんには届かなかった。気付いて貰えなかった。だけど特別な関係は続いている。御園さんは佐久間さんを誰よりも信頼している。
「恋はタイミング」。沢山の誰かがきっと。見過ごしている。
周防と亮は、それを見過ごせなかった。見過ごしたくなかった。
これはまさしく「ロマンス」の物語。

ところで。彼女が居た事のある周防よりも、意外にも積極的であった亮がタチであろうと目星を付けていたのだが、最初は周防が亮を抱く。そうしてラスト周辺ではリバっている。そうだよねー。ナチュラルに性癖分かれる事の多いBLだけれども。同じものが付いてるんだもんねー、などと変なところにも感心してしまう。亮はずっと、周防を抱きたかったんじゃないのかな、と思うのだ。うん。

「自分の好きに素直であること。」

思いっクソ馬鹿馬鹿しい、ハピクソライフはまだまだ続く。
もう何でもアリ!なのだ。
上京してからもクズカスコンビは夜な夜なセックスライフ。
絶賛同棲中である。そこに甘い雰囲気は無いが、互いに挿れられる事を望んでいるので
離れ難い。実にアホな理由である。
そしてレオくんも妹の牡丹ちゃんの店の調理を任される為に上京していた。勿論まだ葛谷の事を諦めてはいない。レオくんのセックスは凶暴なので、恐れた葛谷は、神に願ってしまう。
レオくんがインポになる様にと。

急所をメガトン級カスタマイズしてみたり。着脱可能にしてみたり。アホアホな願いを実現してみたりと。神は性に対して奔放だったりする。はらだ先生の頭の中を覗き見た様なトンデモ世界が余す事なくここに繰り広げられている。アホやん。酒の上の話やん!な事をツラツラと作品世界にしてしまえるというのは凄い。やっぱ天才だ!と思う。ぷぷっ。
しかしはらだ節とも言えるだろう。
このアホアホっぷりが際立つ世界の中で。「しりもじりふぐり」先生のエピソードはキュッと胸を締め付けるのもニクい。
コマが敬愛する「しりもじりふぐり」先生は、リョナイラストを描くイラストレーターだったが、人気作家になれた事で、公序良俗に反するリョナイラストを全て削除したという。
コマは今の作品も好きで応援しているが、過去の作品も大好きだと真摯に話すが、先生はそれを黒歴史として認めない。イラストレーターとして、やっと食べて行ける様になれたのに、そんな過去がバレたらまた仕事もファンも失くすだろう。「これからは万人が見ても、良いと思えるものしか描きません。」このセリフを大きく書いたのにはきっと。意味がある。
はらだ先生は時に。センセーショナルなテーマで作品を描かれる。賛否はもちろんあっただろう。ファンの多さでは「しりもじりふぐり」先生よりも多いだろうし、お仕事に縛りも無く伸び伸びと描かれていると信じてもいるが。もしかして。もしかすると。ほんのちょっぴり。
「しりもじりふぐり」先生の様な心持ちになった事があるのかも。
もしくは。私の様に。なるべく「万人が見て良いと思えるもの」を作っているという人間達に、エールを送ってくれているのでは無いかと、勝手に涙ぐんでしまうのだ。
「しりもじりふぐり」先生はコマ達との出逢いの後、「たまには好きに描くか。」とペンを走らせる。このエピソードのラストカットだ。サラリと終わらせているが、込められたメッセージは、とても熱い。
好きなだけでは食べていけない。生きていけるのはほんの一握り。
幾度と無く聞かされた言葉にはポジティブさは無い。
それに対して「自分の好きに素直であること」は、とてもハッピーでポジティブなのだ。誰かにとってクソかもしれなくても。きっと。自分のハッピーライフを送る事に必要な事だから。
なんてね。
どんなアホな事を言ってても、作品の根底にある温かさは、作者の良識に委ねられている。
はらだ先生はやっぱり凄い。

ところで、黒目バッチリ塗り込められた、宇津巻の切れ味鋭いツッコミ(或いはボケ)が好きだ。彼の目的が不明なとこも好き。シュールな彼のエピソードにも期待したい。
何かと粕谷に突っかかって来る同期の横島(ヨコシマ=邪って。)の狙いは、粕谷の元カノ椿ちゃんでは無く、粕谷本人かも知れないなっていう。コレはちょっと楽しみ。
レオくんのインポはいつまで続くのか。葛谷は解禁後のズブズブは回避出来ないかもね。
まだまだ楽しみ!

心あるもの。責めを負うもの。魂と命の行方。

架空の国の、架空の時代のファンタジーだと思っていた。いや、実際そうなんだけど。
物語は実は。私たちの住まうこの世界の「現代の何処か」で起こっているかもしれない事なのだと、警笛を鳴らす。
そうなのだ。結婚だと言って、幼女を性的に搾取する村や、宗教コミュニティで洗脳して前時代的な暮らしをする村。ネットで情報を簡単に得る事が出来るこの時代に、情報統制を強いる大国。私たちが知っていたり、いなかったりする、信じられない様な倫理観や正義の元に暮らしている世界は確かにある。
本書はそういった世界観の一つであったのだ。幼ない子供を覡として、黒海の魔物と戦わせ、幼ない内に死なせる。
周囲の大人達はそんな覡を忌み嫌いこそすれ、決して救おうとはしない。綿々とそれを続けて来たという歴史。島といういかにも閉塞感のあるこの世界で。時に牧歌的に語られていたそれは。突然現実感を伴って露呈して行く。ここは、現代から隔離されていた。レティは、タブレットで島の外の誰かと通信し、スマホを使っている。黒海の魔物に襲われること無く、その水を採取して検査していたりする。彼女たちは最初から傍観者だった。奇異な村の奇異な現実をただ研究材料として見ていたのだ。
彼女達大人の違和感の理由が明らかになって行く。
他の国、他の場所から来たという彼女達は、郷に入っては郷に従っていただけだが。
流石に死にかけているマニエリを見殺しには出来ず、アルトに救いを求める。
前巻で、墨痣がひろがっているマニエリを何故救わないのかと憤っていた私だが、死にかけてようやく。アルトはマニエリを救う。いや、も少し早く何とか出来た筈だろう。やっぱり悔しくなってしまう。アルトめ。
マニエリに付きっきりのアルトにイチャつけないエルヴァ様の嫉妬は可愛い。

一方で。東の覡は、「ビジョン」を見る。アルトが泣いているという、それは未来か。予知か。
私はJ.Jエイブラムス監督のTVドラマ「LOST」を唐突に思い出す。
ジェット機の墜落からスタートする物語は、突如ファンタジーとなり。
謎の島での「他の者たち」との邂逅、時間軸の移動。そして最後は全てが「死後」の世界だったのか?という謎オチで終わるのだ。
俗世から、現代から切り離されたこの「謎の島」は危険なコミュニティなのか。死を招く時間軸の歪んだ世界なのか。それとも。彼等は「他の者たち」なのか。
いくつもの不安と不穏を孕んで、物語は続く。
アルトが泣いているという未来には震えるが、どうか。子供達が救われる未来を。
これを余所の国の文化と捨て置いていいものか。
進んだ文明が全ての人にとって良い事だとは勿論思わない。
ただ。何処であっても命は等しく尊いものだという結論に至って欲しい。

アッと驚かされたストーリーテリングの巧みさに神評価を進呈したい。
表紙の麗しさもとても素晴らしい、と思う。いつまでも魅入られてしまう美しさだ。

最高の Happy ever after !!

少し。間が開いていたかと思うので。1巻から没頭して読み返してみた。
私の評価は初読の際、それ程芳しくは無かったかと思う。時々、続き物は完結してから纏めて買うという姐様がいらして。よく待てるものだと思っていたものだが、今なら分かる。
私は本書を読みながら、ダラダラと涙を溢していた。
2巻以降は多分。ずっと「神」だ。ジュダートを取り巻く全ての事柄には絶妙な緩急があり。気持ちはすれ違いながら、少しずつ。ほんの少しずつ近付いて。力強く運命を掴み取り、自分という存在を肯定して生きて行く。互いが「番」という抗えない運命に。抵抗しながらも惹かれ、自らそれを選び取る。オメガバースの王道と言ってしまえばそれまでだが。
「獣人もの」を抵抗無く読ませてしまうという草分け的存在なのでは無いかな、と思う。少なくとも私にとってはそういう作品だ。

6巻の終わり。ウィルが過去を含め、主人公になりつつあったので、物語はジュダートを取り巻く人々に移って行き、壮大なサーガとなる事を期待していた。ある意味見事な肩透かしである。洒落者で気障で、軽口ばかりを叩いていたウィルは、壮絶な過去を持ち、β でありながらもそれを受け入れ難く。フリオの好意にも見て見ぬふりをしていたが。
彼のダメっぷりを含めて。親友であるジュダは受け入れている。
弱々しく儚げなフリオはいつの間にか吹っ切れた様に明るくなっていて。そんなウィルを甲斐甲斐しく世話を焼いている。この2人は心配しなくてもうまく行くんだろう。
物語はそこまで描かれず、形勢逆転しつつある彼等の様子を匂わせて終わる。うーん物足りない!

ジュダートにとってはそれこそ「Happy ever after」である。物語中、いつも「過去の物語」として描かれていたので、ダート同様にジュダの両親は亡くなったものだとばかり思っていた。「トネリアの爺い」が取り仕切るジークフリード家から遠く逃れて、両親は農業を営み、穏やかに暮らしていたというのだ。ビックリ⁈ ジュダは愛するダートを連れて、愛おしい両親へ会いに行く。後に子供達が生まれ、自分の家庭を持つ事になるダートにとっても両親となる温かい家族。孤児として生きていたダートにもたらされた健やかな温かい家族という絆。ジュダは強引で、我儘で、独占欲の強い塊だが、両親に愛されて育った「育ちの良い」男なのだ、という事がよく分かる。
んもぅ、本当に、本当に、良かった!頑張ったね!ダート!
この後はいつまでも幸せに。本編では子供達は出て来ないので、ダートの幸せは「プチミニョン」にて。ほっこり甘やかな日常が続いて行くのだと。それが知れてとても嬉しいと思うのだ。
「レムナント」よりもアッサリと完結してしまう所謂シンデレラストーリー(もしくは「紫の上」)である「ペンデュラム」も好きだが。この5年間、作者が「レムナント」に拘り続けた熱意をも強烈に感じられた作品でもありました。
何より、外見が変わり難い獣人と違い、15歳の少年からどんどん美しい青年になって行き、「プチミニョン」では家族に愛される最強の美人ママ!この変遷を辿るのも一気読みの楽しみでもありました。
堂々完結、寂しいけれど、おめでとうございます。そしてありがとうございました!
またいつかどこかで。愛おしい番外編を楽しみにしています。
というか、運命に抗うフリオの恋を成就させてあげてほしー!

君が幸せでいられる事が、きっと俺の幸せ。

ああもぅ。泣きました。嬉しくても人は泣くんだよ、という圭太の泣きっぷりが可愛い。
想い合う2人が、可愛くて。愛おしい。

ランキング上位から中々陥落しないので。これは本年度のアワードに確実にノミネートされる作品だな、と思っていたけれど、なかなか手に取れなかったのは。このタイトルに引っかかっていたからだ。「割れたカップを戻すには」と対になる言葉をどうしても連想させる。「覆水盆に返らず」。私はこの言葉が嫌い、なのだ。施設で育ったという圭太程の寂しさではなかったにせよ。子供の頃にこの言葉をそれぞれに私に教えた両親は、別れてしまった。幼ない頭の中で、溢れ出る水をまたすくって。その盆に戻せないものか、とイメージしていた事を思いだす。そう、割れたカップは、割れたままなのだろう。それはとっても不穏なのだ。物語は、このカップが割れてしまうところからスタートする、ファンタジー。
驚いたのは、圭太が、10歳若くて付き合って半年の頃の、桔平を抱いてしまうこと。桔平はまだ、開発されていないので、戸惑いながらも圭太に身体を預けてしまう。未成年では無いが、この「浮気」と「禁断感」にはムズムズしてしまった。
それに比べると、10歳年上の桔平にガッツく圭太は可愛い。外見が変わっても、圭太にとっては愛おしい、離したくない恋人。若い情欲に戸惑いながら、28歳の圭太が大切に抱いてくれたこと、気持ち良くしてくれたこと。それを思い出した桔平は、年上らしく圭太に手解きをする。どちらの入れ替わりカップルもとてもとてもエッチぃ。
圭太が10年後も桔平と一緒に居るのだと知り、圭太は嬉しがって泣く。圭太には並々ならぬ想いがある。28歳の桔平は、10年前に戻ったことでそれを知る。

愛をひとかけらも取りこぼしてしまわぬ様に。この10年に積み重ねて来た圭太の想い。
それを知った桔平の、やはり愛する圭太に捧げる想い。
圭太を幸せにしたい、という桔平の決意がいい。そう。相手が幸せでいられるという事が、自分の幸せ。愛し合う、というのはきっとそういう事なのだ。
そして、それは。側にずっと居ること。居られること。
この可愛い絵で、ずっとエッチぃのにも驚かされましたが、しみじみと温かく。終盤に出て来る「足湯」の様に、ほっこりと温まる。良いお話でした。
カップの秘密は分からないままだけど、割れたカップは歪にも修復されて。2人の住まいに飾られている。いつか見た、夢の様な出来事を、大切に大切に。2人は忘れ無いんだろう。
その時の愛情を、恋を。次の10年も重ねて行くんだろう。
読み終えた後に、嬉しくて温かい涙。
割れたカップはまた、きっと。新しいカタチに成る。「覆水盆に返らず」と対の言葉とはならないのだと。
手に取って良かった。ランキング上位には意味があると、いつも思う。

歪んだ運命を元に正せよ。恋人たちの絆を見くびるな ‼︎

涙腺決壊‼︎ 痺れる‼︎ くーっ‼︎
いやぁ、久々に涙しました。久々に1巻から読んだら、もーっ。
凪、カッコいいよなぁ。琴音だってやるじゃん‼︎ そうそう、皓ちゃんは寂しかっただけ。
自身の片割れだと信じていた凪に御子である最愛の琴音がいること。
自分は、過去に出逢えた筈の御子に捨てられたと思っていたこと。
本作は、ツンデレ過ぎる皓ちゃんの救済がメイン。と言っても、解決間際で終わるので。次巻を待たれる方がもっと。ぶわーっ‼︎ってクルものがあるんじゃないかと。
ちょっとだけ残念に思いました。そうは言っても。このジレジレ感にもクルものはございます。

冒頭は、甘い甘い凪と琴音の日常から。凪は冬眠に入るという、人外あるある。
ずっと人間化しなかった眷属のカエルくんこと、ジルが琴音の神気によりめちゃ渋い執事姿になったり。
凪が冬眠から目覚めたら久しぶりのエチに感じまくる琴音。とかとか。これだけでも1巻丸っとエピソード化出来そうなものだけど。それはそれ。主題は、皓ちゃんの過去の恋と別れであります。
なんと。200年も前に召喚した皓月ちゃんの御子は、麒麟の萌桃に囚われていたという。
すっかり忘れかけてたけど、琴音の腐男子的視点も盛り沢山なのは健在。萌桃は一見可愛い女の子だが、このBL世界には女性が居る筈は無い、つまり「男の娘」。しかもBLあるある「インキュバス」ポジ。可愛い顔して鬼畜な萌桃は、命を賭してこの世界に戻って来た皓の御子、遥を攫って、飼い殺しにしていたという。
そう。片恋に終わったのだと恨み続けていた皓ちゃんの恋は実は成就していたのだ。
良かったね、と思う間もなく。遥の命はあと18時間で尽きるという。
凪、琴音たちは、皓ちゃんの想い人の命を救う為、麒麟の塔へと向かう。

皓ちゃんと遥の出逢い。ツン過多の皓ちゃんの心をも解いて行く、遥との心の交流。
凪の時もそうだったけど、何より神獣は、自分好みの御子を得るというので、遥のルックスはちょっと凪にも似てたりするんですよね。しかも遥は人気アイドル。ファンを大切にして来た彼のキラキラオーラは、皓ちゃんにもビシビシ効いてるんです。
この「遥と皓ちゃん編」と言ってしまってもいいくらいに、丁寧に描かれる2人の物語。
それだけでも涙。皓ちゃんの心情を思って涙。
そして恋人達を救う為に闘う琴音、琴音を護り抜く凪の姿に涙。
琴音の終盤の決め台詞も痺れます‼︎‼︎ BL知り尽くしている琴音だからこそ。出て来る言葉、なんですよねえええ。

次巻、大団円‼︎ 手に汗して待ってます‼︎

描き下ろしには、凪冬眠中に堪らなくなって。独りエッチする琴音。お約束ですよね。