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CANIS-THE SPEAKER- 4 コミック

ZAKK 

伏線とミスリードとフェイク情報の配置

「CANIS-THE SPEAKER」は、読み終わった後、すぐ友と語り合いたくなる本です。そうしないと、頭の中で組み上げたパズルが、「あ、崩れそう…」。友と語らって、「あの伏線はどうなったと思った?」「あの謎は解消された? どこで?」と、確認し合いたいです。残念ながら、私の腐友は、遙か遠方。無念です。
今回最終巻4巻が出て、やっとすべての謎が回収できるのか? なにしろこれまでの3巻を経ても、彼らサム・ハル・ノブの、落としどころが、目指すものが、まったくわかりません。他の謎が、いやむしろ増えた感さえありました。
4巻は、購入してまずさらりと一読、それから最初の「-Dear Mr.Rain-」から7冊全部読みました。私の読み取りは合っているでしょうか。取りこぼしはないか。いまいち自信がありません。
なにしろ、サムが財務長官への就任が決まったシーンは、2番目の巻「-Dear Hatter- (#1)」の、沓名の部屋のテレビ画面に、というくらいの情報の散らばり具合が恐ろしいのです。1コマも見逃せません。





ここから、ネタバレになります。しかし、私の解釈は間違っているかもしれないので、誤読で、ネタバレにならないかもしれません。

まずはちょっと整理。
メアリー・ロスとメアリー・ロス孤児院出身の優秀な子どもたちを広告塔にして、B&B社のコミュニティ支援プログラムに、恵まれない子どもたちを救う寄付を世間に呼びかける。このコミュニティ支援プログラムの寄付を通して、4つのNYマフィアと日本の貫田組が、様々な闇取引で得た収入の、資金洗浄をしていた。また、事業の一端として、アジアを拠点とした、児童の人身売買網を展開。その児童たちの供給元の一端(他の孤児院でも行われていた可能性がある)を、メアリー・ロス孤児院が担っていた。
ふう… 彼らの敵の概要はこんな感じかな。
3巻は、B&B社のエドワーズ兄弟の始末を、4人のマフィアのボスに委ねた、ところで終わりました。
この作品の難しいところの一つは、はっきり「〇〇は死んだ」と語ってくれないところです。状況的に「これは殺されるな」と判断して、物語を読み進めねばなりません。うっかり「実は生きていた」もあり得ます。今回のマッケンジーがいい例。
このように、ZAKK先生が意図的に張り巡らせた読者へのミスリードと、登場人物たちが、心情表現なしに(!)発するフェイク情報が、作品には溢れています。
そして、これは緻密な情報戦の物語なのだ、と気づかされます。
エドワーズ兄弟に続き、4人のマフィアを片付け、あとは、メアリー・ロスと阿左美が残されました。
阿左美とは、彼がネットのマーケットに提示した世界の闇取引情報(もちろん、阿左美が介在したすべてではないだろう)を、残らず買い取ることで、3人は阿左美の顧客となりました。
そして、残ったメアリー・ロスの首に、サム・ハル・ノブの3人は、いつでも引き絞れる絞首台の縄をかけたのでした。当時のメアリー・ロス孤児院の帳簿という縄を。
彼女は、いつ暴露されるかもわからないことに怯えながら、コミュニティ支援プログラムという犯罪の生き残った孤高の犯罪者との罪業を背負って、「世界的な慈善家」を演じ続ける、生き地獄の道を歩み続けることになったのではないでしょうか。
サムが、阿左美から買い取った闇取引情報に自分を紐づけたフェイクニュースを、世間に広め経済界を混乱に導き、3人は4巻の表紙絵の如く雑踏に紛れて消えます。
なぜ、サムが消える前に、自分の会社NNCMのコミュニティ・ファンドの投資先を、メアリー・ロス財団にしたのかが、私にはまだ謎です。
ドプンと作品世界に没入して、頭の中で再度パズルを組み合わせてみたくなった時、私はまたこの7冊を続けて読むでしょう。すごい作品です。
ところで、ラストの直前に、彼らはどんな斬新なプレイをしたのでしょうか? 知りたくてたまりません。彼らは3Pですが、リバなんでしょうかね。
ZAKK先生の次回作が、楽しみでなりません。

きたか…!

意味ありげなタイトルと表紙絵に、「もしかして、水壬楓子さんに、久しぶりに痛い期が来たかな?」と思いました。以前、ブログかあとがきで、「5年に一度くらいの割りあいで、非常に痛い話が書きたくなることがある」と書いていらしたので。「スキャンダル」しかり、「ラブシーン」しかり。

アメリカで法医学の研究をしていた高倉左季は、1年間の約束で日本の大学に招聘され、14年ぶりに帰国した。そこで、ずっと会っていなかった幼なじみの殺人事件に、接することになり…

痛いというより、非常に重苦しいです。
作中のラブシーンすら、二人の背景と心情がのしかかり、まるで、心臓を圧迫されるように重苦しくてなりません。鈍痛がきますね、これは。
前半で、左季の背負っている過去にガツンとやられ、後半では、事件と過去の謎が解明されていきまたガッツーンとやられました。
これは、ぜひネタバレなしで、その衝撃を味わっていただきたい作品です。

周到な違和感の果てに


「近々、白泉社版を入手しよう」と考えていたので、角川文庫版の発売はすごくありがたかったです。
一般文庫は、BLレーベルより価格が安く、レジにて驚きました。でも、一般文庫版は挿絵が1枚もありません。そこが残念です。




<以下ネタバレを含みます>

主人公は、山田浩一と青海満(みっちゃん)。みっちゃんが語り手の一人称で、物語は進みます。
物語の最初の方で、「これは涙のエンドになるな」との予想がついてしまいました。
その予想は違わないのですが、そこまでたどり着く過程の描き方が丁寧で説得力があり、かつ、思わぬ展開を見せるので、頁をめくる手が止まりませんでした。

まず、冒頭でいきなり、浩一が交通事故で死にます。
この事故の様子、遺体の様子が、詳細かつ生々しくスプラッタ。めまいを起こしてしまいそうなほどでした。
結果、浩一は生ける死体となってしまいます。ゾンビではありません、生ける死体です。
この後の、みっちゃんの行動がすごいです。(浩一が延々と「みっちゃん」と呼び続けるので、本名の満より、頭の中で「みっちゃん」になってしまいます。)
冷静かつ沈着に、サクサクとことを運びます。
クラス委員長を説得し、わちゃわちゃ楽しいクラスメイトたちを、浩一が遺体であることを、他の人たちには秘匿するよう巻き込んでしまいます。
この謎の結束力は、高校生ならではのものでしょう。
変なことを頼んでいるシーンなのに、この辺り、妙にわくわくします。
その後も物語はどんどん進んでいくのですが、チラチラといくつも変な違和感が、私を襲いました。「これは、いわゆるミスリードというヤツなのでは…?」と思ったのですが、いつの間にかまんまと乗せられましたね。それもまた善し。
一番の違和感は、みっちゃんの冷静さです。
それは、過去の浩一とみっちゃんが語られていくにつれて、どんどん大きくなっていきます。
幼い頃の母の死。亡くなったという先生の恋人。目の前の生ける死体の浩一。
輝ける新しい生命の誕生。
みっちゃんは、次々と「死」と「生」に対峙していきます。
この物語は、まさに「生と死の物語」なのです。
ラストも近くなり、違和感はみごとに回収されて、私は涙をこぼすことになりました。
ラストのエピソードは、おそらくこの文庫化のための書き下ろしでしょう。新装版を買って、本当によかったと思いました。