chill chill ちるちる
 
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【第1回】

「ようこそ、BL荘へ!」
 突然だけど、「BL(ボーイズラブ)」は好き?
 私は……もちろん、大好きです!
「ホモが嫌いな女の子なんていません!」って誰かが言ってたけれど、ほんと、そのとおりだよ!

 私はナルヨ、BL歴4年。
 毎週、池袋の『乙女ロード』へ通って同人誌を買いまくり&読みまくり、ついにこの前、自分でもBL小説を書き始めてしまった。
 だって、あんなにいっぱい、BL小説が書店に並んでいるんだもの、私もみんなが読みたくなるようなBL小説書きたい!
 ……って思ったものの、
 うまく書けない……。

「う~ん? どうして上手に書けないのかな?」
 主人公の『受』はもちろん、恋人の『攻』も、かっこよく見えない……。早く2人をくっつけてラブラブにしたいのに、イマイチ盛り上がらないし。
 設定がおかしいのかな?
 大体、〝設定"ってどうやって決めたらいいの?

 ……なんて、悩みながら歩いていたせいか、近くの門柱にぶつかっちゃった。
 イタタ……ん?
 そこには「BL荘」と書かれた表札がかかっていた。
 あれ? こんなところにアパートなんてあったっけ?
 それに「BL荘」なんて、おかしな名前。

  ぶつかったはずみで、門が開いた。まるで、手招きされているみたい。入ってみたい……けど、地震が来たら今にも崩れそうなボロアパート……。
 結局BLの誘惑に負けて、門の内側へと足を踏み入れた。

「あのー、こんにちは?」
 ドアをノックしても、返事はない。ちょっと迷ったけど……入っちゃえ!
 足を踏み入れた先は、かなり古びた薄暗い木の廊下だった。軋む廊下を進みながら、あたりを見回すと、壁に沿って扉がいくつも並んでいる。
「ん? 扉に何か書いてある」
 近寄って眺め、ドキッとした。そこに書かれていたのは……。


『小説を書くための基本』
『好きなジャンルを選ぶ』
『かっこいい男子キャラを作る』
『萌えるストーリーを考える』
『ラブシーンに挑戦』
『いよいよ完成! それから』



 ……なんなの、これ。フツー、アパートのドアに書いてあるのは住人の名前でしょ?
「でも、ちょうど私が気になっていることばっかり。ちょっとのぞいてみようかな。やっぱり『かっこいい男子キャラを作る』だよね……」
「待ちたまえ」
「ギャ――ッ!」
 突然、背後から声をかけられて飛び上がった。振り向くと、頭の先から黒いマントをかぶった怪しい人が立っている。
「スミマセンッ、スミマセンッ、スミマセン――ッ!!!!」
 こんなマント着てるなんて、ヤバい人かも!?
「やれやれ、これだから素人は困る。いきなり『好きな男子』から行こうとするとは」
 陰気で、ブキミな声。めちゃめちゃコワイー!
「物事には順序というものがある。自分の興味のあるものしか見ようとしないから、いっこうに上達しないんだ」
「はぁ……」
 あっけにとられている私にかまわず、黒マントは続けた。
「ようこそ。私はこのBL荘の管理人だ。ここを見つけられたということは、君はBL小説を書き始めたばかりの新米だな?」
「そ、そうですけど」
 どうしてわかるの? やっぱりこの人、なんかヘン!
「あの、おじゃましました。私、帰ります!」
 そうして玄関を振り返った、つもりだったけど……。なぜか、入ってきた玄関のドアが見つからない。ウソ、消えちゃった?
 あせる私の心を見透かしたように、後ろから管理人は言った。
「――君がここを出るためには『鍵』が必要だ」
「鍵? どこにあるの?」
「このBL荘の部屋のひとつひとつに鍵がある。それらを6つ全部集めると、玄関を開けることができる。そのためには各部屋を回り、新米からBLマスターになるのだ!」
「え――っ!!!!!!」
「それぞれの部屋には、BL小説の真髄が詰まっている。そのすべてを己のものにすれば、今をトキメクBL作家も夢ではないぞ」
「トキメキBL作家に!?」
 とんでもない展開に驚いたものの、よく考えたらこれって願ってもないチャンスじゃない? だって、私はステキなBL小説を書きたいんだから! 

「わかりました、私、やります!」
「やる気だけはあるようだな。では……」
「さっそく、『好きな男子キャラを作る』部屋から入ろうっと! これで魅力的な受と攻キャラが作れるようになれば、あとはラブラブシーンを……うふふ……!」
「こら、だから順を踏めと言っているだろうが! おまえはまず『小説を書くための基本』から学ぶのだ!」
「きゃぁあああ!」
 管理人に、ネコをつまむように襟首をつかまれて、一番手前のドアから中へ放り込まれてしまった。
そこは、『小説を書くための基本』という部屋だった……。



ナルヨ、BL小説家を目指す   画:赤根 晴




BL小説家を目指すナルヨちゃんの運命はいかに!?
次回は、基礎中の基礎『小説を書くための基本』をお届けします。
あなたもナルヨちゃんといっしょにBL小説家目指して、B-PRINCE文庫新人大賞にレッツチャレンジ!

次回更新予定日:4月16日

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